武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
今年の修学旅行は、6月23日から6月26日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
また、大学に進学したばかりの大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。
修学旅行の行き先は沖縄です。
沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
修学旅行一日目。
那覇空港を降り立つと、そこは熱帯の空気。
鮮やかな色彩豊かな自然と、独特の料理、異国情緒漂うすべてのものが、みんなを迎えてくれるだろう。
音も例外ではない。
聞こえるリズム・ハーモニー・メロディはたおやかでノスタルジック。
聴く者の心に、あるときは寄り添い、あるときは招く。
今回、みんなを招くのは『エイサー』と『三線』の音色。
エイサーとは念仏踊りが変化した、祖先の霊や亡くなった人の霊を送迎するための踊り。
男性の舞は太鼓踊り。勇壮ではつらつとし、その踊りは見るものの心を揺るがし、鳴る太鼓は心に響く。
女性の舞は手踊り。優雅でたおやか、そして繊細。風を招き潮を呼ぶ手の舞は、見るものの心を清らかにしてくれる。
アクロバティックで迫力ある動きと、静かで柔らかな動きは、まるで沖縄の熱気と爽やかさを現したよう。
そして三線の地唄。一見地味な役だが、三線を弾きながら唄う姿はエイサーの土台。まさに影の主役にふさわしい。
独特の衣装に身を包んで踊るエイサー、そして演奏する三線。
きっとあなたの中の力をみなぎらせ、そして癒してくれるでしょう。
あなたも、琉球のおとを、こころとからだで体験してみませんか?
「っていうことで、エイサーと三線が気になるんだ!」
力説するのは、千曲・花近(唄花のご当地ヒーロー・dn0217)。筒状に丸めたしおりが、ギュッと鳴る。
民謡を愛するご当地ヒーローとしては、琉球の音は非常に興味深い。
「当日は、エイサーと三線、別々でレッスン受けた後に、パークのステージの上で、合同で実演させてもらえるんだって」
本番では、エイサーで着用する伝統的な衣装に身を包む。
太鼓踊りは頭巾を被り、打掛と羽織りを着る。下はニッカボッカーに足袋。
手踊りは琉球絣にリボン型の鉢巻。
そして三線は琉球紬の浴衣を着る。
「レッスンしてくれる人は、パークの演者さんや踊り手さん。本格的なんだよっ!」
と、目を輝かせる。
この学園には踊りや音楽に長けた者もそうではない者もいる。音楽や踊り、歌や演奏に苦手意識を持っていても、問題はない。
「大丈夫っ! みんなで踊ったり演奏したり歌ったりしたら、きっと楽しいんだからっ! お披露目し終わったら、きっと達成感でいっぱいだよっ!」
にっこりと笑う花近は、それに。と続けた。
「こんなアツい踊りが亡くなった人をお迎えお送りする踊りだなんて、なんか神秘的っていうか、不思議。だよね?」
小さく眉が下がる。その伝統芸能が持つ切ないバックグラウンドに少しだけ想いを馳せ……。
「きっと、明るい踊りにも意味があるんだね。だから、一緒に沖縄の音を楽しもうよっ♪」
●あざやかな、いろ
修学旅行一日目。やや西に傾いた南国の陽はキラキラと輝く。
パーク内の屋外ステージで、エイサーと三線の話を聞いた武蔵坂学園の生徒は、それぞれ、エイサーと三線のレッスンを受ける。
琉球紬、琉球絣、鉢巻に羽織に内掛けにニッカボッカー。それぞれの衣装を早速身に纏う者もいれば、本番までとっておく者もいる。
大太鼓、締太鼓、パーランクー。そして三線と必要な楽器を手に。
さぁ、琉球の勇壮でたおやかで、鮮やかなおとを楽しもう。
●はじける、おと
三線組の十三人は、まずはぐるっと円になって、レクチャーを受ける。
弾く音は一音一音華やかに。唄のメロディーは遠く遠く響く。
兄弟達とはなれた僧侶見習いの智水は、死者を迎え送る踊り、エイサーに以前から興味を持っていた。
「その中でも、やっぱり三線に興味があったんだよね」
それは自信の生まれゆえ。
手にした三線を眺め、爪弾いてみる。
蓮華はギターを嗜む。ゆえに三線にも興味を惹かれた。
「形は違うが、音楽の魂は同じだと思う」
そう言って、預かった三線を丁寧に弾いていく。
同じく三線に引かれたのは、ウクレレを嗜む流希。
「え、歌もですか? 弾きながら歌うのですか……!」
スタッフにそう教えられて思わず声が上がる。
「で、出来ないと思っていてはいつまでも出来ませんし……」
何事も挑戦だ。流希はおなか一杯息を吸い込んだ。
「……やっぱり難しいわねぇ」
ピアノを学ぶ音愛。三線を構えながら周りを見渡して、他の皆や先生の演奏、手さばき、歌い方を勉強する。
三線を選んだ【武蔵坂軽音部】は、七人の大所帯。
錠は二年前の修学旅行でもエイサーと三線体験に参加し、そのときはエイサーの太古踊りを体験した。
「マジ懐かしいぜ!」
と、ステージのあちら側のエイサー組を眺めると、
「ほほ、これはえぇもん着せてもろたわぁ」
紺地に白の幾何学模様の図柄。まり花は琉球紬に袖を通してほっこりと笑んだ。
そして手にした三線を弾くと、慣れ親しんだ三味線の音とは別の鳴き声がする。
「本当に違うんなぁ。これが、異国情緒……。沖縄の色を感じますぇ」
「なんだろ、ちょっとウクレレ感というか……、民俗を感じられていいわね」
鳴る音を聞きながら、壱は渡された初めての三線に胸を弾ませると、葉月は三線のチーガ(胴)に張られた蛇の皮に感動。
「結構格好いいな。個人的にちょっと欲しいかも」
と、各々立ったままでエイサーを構えて音を奏で出す。普段はそれぞれ違う楽器を専門に扱っているが、音楽を嗜んでいるだけあって飲み込みも早い。
「弦楽器、すごい新鮮……」
いつもは歌専門の理央も、弾き語りの要領でリズムに乗って地唄を歌う。
いつもは主旋律を弾くことはない壱も、弦を押さえて爪弾いていく。
「ベースとはやっぱり違うのね」
悪戦苦闘する仲間には、三味線奏者のまり花や現地の演者が教える。
「ここはな、こうなんよ」
「……奥が深いな」
教えてもらって桐人は、再び三線の弦に向かう。
音は徐々に音楽に変わる。
それぞれ奏でる音色は人それぞれ。だけどそれが味になる。
それが、沖縄の音。
「沖縄の音楽ってリズムも音階も独特よね。面白い!」
上級者の演奏を見よう見真似の千波耶も繋がる音に、おもわず弦を弾く手も弾む。
「琉球音階のクセは慣れるまでが大変だけれど、何とか物にしてやるぜ!」
意気込む葉月。その意気は仲間共通の心意気だ。
【吉祥寺2-8】のゲイルは仲間で一人、三線を選んだ。
「踊りとか、なんか疲れそうじゃないですか」
と、自主練習に励む。
確かに激しく動く太鼓踊り。そして腕を上げる手踊り。両者とも体力が必要そうだ。
槭は、食より伝統芸能の方が興味がある。だけど、友人にその事を話したら「渋い」といわれた。
まぁ、そんな事は日常茶飯事。だけど。
(「受け継がれてきた心に触れるのは楽しいのにな」)
槭は三線を弾きながら、沖縄の風、そして琉球の音に想いを馳せる。
●たおやかな、まい
手踊りの七人は、踊り手の反転の舞を真似ていく。
滅多に人間形態をとらない鸞は、
「あ、部外者ではございませんよ」
と、踊りの合間合間に説明して行き、手踊りに参加していた。
「なかなか難しゅうございますね」
地元伊豆のあんこ節の手踊りとは、手足の運び方も違う。
「男性は力強さ、女性は手足の繊細さが要求されるのでございましょうか」
【吉祥寺小6蓮】の仲良し四人組も、エイサーの手踊りに挑戦だ。
「うん、波や風を意識した動きなのね。リズムもゆっくりだし、足運びも穏やかね」
所作を研究するように、曜灯は舞い手を見つめた。
「わ、私……、運動が苦手なので、うまく踊れるでしょうか……?」
「おどり、はじめて。ボク、じょうず、できる、かな?」
雨衣とアレキサンドライトが不安げに舞い手に尋ねると、心強い答えと笑顔が返ってきた。
「でも、教えていただけるので……、頑張って踊れるようになりたい、です」
「雨衣、リーテ、慌てないでゆっくりやればいいわ。ゆっくり、大きく動かすの」
と、一足お先にコツを掴んだ曜灯は、ふんわりと舞って見せた。
「えっと、こう、ですか?」
最初はたどたどしかっためりるの舞も、次第に綺麗にたおやかになっていく。
「慣れるととっても楽しいですー!」
笑顔は友達同士に伝染していく。
【吉祥寺2-8】の、手踊りを選んだ花夜子とライラ。
初めてのエイサーに不安気味の花夜子。でも、と隣を見た。そこには、リボンの鉢巻を頭に舞いて琉球絣に身を包んだライラの姿。
「……皆と踊るのは、とても楽しいね」
そう言われて、思わず笑んだ。
(「友達もいるし、大丈夫だよね」)
隣では、太鼓踊りを選んだ面々が、それぞれの太鼓を手に激しい踊りを叩き込まれていた。
「……もっと男らしく、しっかり踊ってね」
振り向いたのは、恋人の巧だ。
●ゆうそうな、ひびき
太鼓踊りは【吉祥寺2-8】の四人。という事で、花近が太鼓踊りに加わる事となった。
「よろしくね♪」
にっこり笑んだ花近に、おもむろに近付く海。
「君の瞳は沖縄の海の色に似ているね……」
突然のお褒めの言葉に、小さくきょとんとしつつも、
「ありがとー♪」
と、笑む花近。
「『はいさい、ぐすーよー・ちゅー・うがなびら。千尋やいびん』……コレで合ってるかな?」
覚えた琉球弁で、締太鼓を手渡された千尋が自己紹介をすると、太鼓踊りのダンサーはにっこりと笑んだ。
「よし、合ってた! 予習の成果バッチリ!」
巧は声をかけてきた恋人に見せるように締太鼓を打ち鳴らすと、足を高く上げて舞って見せた。
たんっと靴がなる。
「意外と激しい踊りですね」
独特のリズムに足運び、そして太鼓の演奏。
「これを寸分の狂いもなく連動させるのは結構難しいねぇ」
舞ってみて、千尋はうーんとうなる。
「でもこんな賑やかな踊りが、死者の霊を迎えるモノとは実に面白い」
笑んで見せると、再び体を動かし始めた。
「このくらい、余裕だね!」
海も負けじと、パーランクを手に舞って見せたが。
(「難しいよこれ……」)
上がる息に、頑張りが滲む。
高身長の寅騎は、エイサーの要である大太鼓に挑戦する。
三線の音をしっかりとらえる者が担う、エイサーの音頭取り的役割だ。
そう教えられて、寅騎は遠くで鳴る三線の音に耳を澄ましながら、いっこいっこ確実に響を刻んでいく。
「みんなすごい! 俺も負けてらんないねっ」
花近も四人と共に、太鼓を響かせて元気良く舞を練習した。
●おととまいと、ひびきがであう
沖縄の日は徐々に西に傾き、世界が黄色身を帯びていく。
「琉球絣って、素敵な色身ね」
曜灯が選んだ鮮やかな藍に花が染め抜かれた琉球絣を、みんなおそろいで着ることにした。
「みんなお揃いですー!」
めりるはご満悦。
「わぅ。いしょう、すてき。ね」
アレキサンドライトも自分と、友達の姿を交互に見て小さく笑むと、めりるは瞳を輝かせた。
「リーテさん、違和感ないの、すごいです……!」
「ボク、にあう?」
頷きあう仲良し四人組。
「みんな、すてき。なの」
舞台袖では、琉球紬に身を包んだ【武蔵坂軽音部】の面々がぐるりと円を作っていた。
錠の提案で、円陣を組む事にしたのだ。その輪はやがてしっかりとした輪になる。
「円陣とか! 軽音らしい!!」
千波耶は声を弾けさせると、
「――了解だ」
気合一杯。桐人も頷く。
「エイサーのひと達も居るんだもの、素敵な曲になりますように!」
三線と地唄はエイサーの土台。壱は可愛らしさの中にも威勢よく、声をあげると手を輪の真ん中に。
「よし、頑張ろう! 最高のステージにしたいしね!」
と、理央の手も重なる。
「俺らなら、絶対良い演奏が出来るって!」
「皆はんと一緒なら、えぇお歌、奏でられると信じてはります。せやから、きばっていきましょ」
仲間をぐるり見渡す葉月と、ふんわりと笑むまり花。その笑顔は信頼の証。
そして徐々に手が重なり。
最後に音頭をとるのは、錠だ。
「よっしゃお前ら、ビビってんじゃねェぞ! 本番も派手にキメようぜ!!」
威勢のいい声が沖縄の空に響いた。
蓮華も黒に白い花の映える紬に身を包み、赤い帯を結ぶ。そして、三線を手に、ふと沖縄の空を見上げた。
(「踊りは死者の霊を迎えて踊ると言う。なら、この三線と歌もお母さんに届くだろうか」)
(「やっぱり、本土とは文化が違うんだな……」)
槭は着付けた琉球紬を眺めて、姿見の前でくるり。
「(やっぱり、奄美群島の文化に似てるんだな)」
鹿児島出身の槭は、ふるさとの文化に近い琉球文化に身をゆだねていく。
「皆」
【吉祥寺2-8】を手招きして、寅騎は本番郎の衣装に身を包んだ仲間と記念撮影。
「めんそーれ」
シャッター音が響き、ファインダーにはそれぞれ本番に向けた表情が切り取られた。
「皆の心をひとつに!」
海が声を張り上げると、仲間もそれに応えて、士気が上がる。
いよいよ本番。ステージ前には一般のお客さんが、今か今かと二十五人を待っている。
鸞は色んな表情を見せる学園の仲間を見渡した。
(「皆様も自らもが楽しめますよう、全力でサポートさせていただきとうございます」)
「エイサー、エイサー、ヒヤルガエイサー」
【吉祥寺小6蓮】の四人の踊りはとても愛らしいものとなっていた。
(「お友達と踊るなんて、楽しいですねー!」)
めりるがにっこりと笑めば、横に並んだ雨衣も曜灯も微かに笑んで。
(「わぅ。みんな、いっしょ、おどる。たのし、ね?」)
アレキサンドライトもふんわり笑めば、
(「おんがく、ふしぎ、はじめて、きく。の。おどる、は、いのる?」)
祈りを込めて踊る、不思議な舞。
【吉祥寺2-8】の花夜子とライラは年長者らしい優雅な舞い。
女性の手踊りは優雅さとたおやかさ、そして繊細さが大切。
この三つに気をつけながら、扇を手に踊る花夜子。
三線の音、そして太鼓の音も交じり合って、祈る。
(「おじいちゃん、見守っていてね」)
鸞も精一杯踊り、周りをサポートする。
「エイサー、エイサー、ヒヤルガエイサー」
三線と地唄はエイサーの土台。影の主役とも言える。
一音外し、音愛の顔がぽぽっと赤くなる。だけど、気を引き締めなおして弦を弾き歌う。
歌に自信がなかった流希も、小さいながらに地唄を歌う。声の小ささは三線の演奏でカバーだ。
エイサーの後ろで蓮華は、唄い、鳴らす。
甘い声と鮮やかな響は、亡き母へ送る音。
(「自分は大切な人と居て、幸せです」)
【吉祥寺2-8】の唯一の三線奏者、ゲイルは目の前で踊る仲間の背を見つめながら、ふっと笑んだ。
(「クラスで行動とか、修学旅行っぽいですねぇ。よきかなよきかな」)
(「うん、やっぱり初めてだと難しい」)
独特の音階に、智水は四苦八苦。だからこそ、やりがいがあるというもの。
(「何事も、ひたむきに……」)
(「役回りが地味、大いに結構」)
目の前で舞い踊るエイサーの後ろで、弾ける三線の音色と、落ち着きのある歌声を響かせる槭。
その音色は、琉球の文化や風土、そして徐々にオレンジに傾く沖縄の空気にとけていく。
【武蔵坂軽音部】の七人はチームワーク良く弦を弾き、歌を唄う。
もちろん、他の生徒との調和も忘れない。
時折、視線を交えて笑顔を交わす。
少し音を外した壱に、錠はアイコンタクトでフォロー。
(「演奏に慣れた仲間達と一緒なら、心強いわ」)
(「拙い音でも皆で繋げれば大丈夫。まずは楽しんで演りましょ」)
仲間の躓きは皆でカバー。自分も躓けば皆が助けてくれる。千波耶は信頼のおける仲間との音を、一つ一つ大事に刻んで。
(「教えて貰った地唄は拙いかも知れないけれど、俺だって音楽に携わる人間だ」)
手元を見る眼差し。葉月は、時折上げる目線に真摯な気持ちを乗せていく。
理央は、心地いい三線の音に、仲間と奏でる絆に身を委ねていく。
(「素敵な音楽を奏でられるって本当に最高」)
(「皆で一緒に奏でるからカバーしあって良いハーモニーになる気がする」)
この瞬間が心地よくて、霧人の口元は思わずほころぶ。
「エイサー、エイサー、ヒヤルガエイサー」
【吉祥寺2-8】の太鼓踊りと花近も、力強く勇壮に、そして賑やかに派手に舞い踊る。
皆、髪を全て鉢巻の中にまとめ。
打掛と羽織り、そして動きやすいニッカボッカーは風になびいて、一段と勇壮に、賑やかになる。
千尋も力強く足を踏み鳴らし、締太鼓を打ち鳴らす。
(「戦いによって命を落とした全ての人のために……」)
パーランクを響かせて祈りの舞を披露するのは、海。花近もそれに追随して、軽やかに舞ってみせる。
締太鼓を打ち鳴らして、巧は小さく顔を上げる。
皆の息が合う。音は溶け合い、踊りは風を呼び。
息が合う美しさに、小さく酔いしれて。
(「でも、楽しんでいきましょう」)
大太鼓を叩き舞う寅騎も、三線の音に耳を傾けて唄い踊る。
練習どおりに出来るかというプレッシャーは、やがて掻き消えていく。
(「……まぁ、楽しいのが一番だね。お客さんも僕たちも……」)
そして思うは、この踊りの意味。
真摯な気持ちで、弾き、唄い、踊り、叩き。
踊りの熱気と興奮、そして静やかさと弾ける音色は、たくさんの人の祈りや想いを連れていく。
●おとのあと
演奏が終わると、メインステージの前にはたくさんの人だかりが出来ており、皆、笑顔で拍手を送っていた。
(「うちらのこの歌が、お先に逝きはった人たちの導になるんやなぁ……。なんか、胸が熱くなる話なんよ」)
沖縄のこころを耳で、目で、肌で感じながら、まり花は空を見上げる。
この唄声が響く音色が、空に解けて自分を見守ってくださるご先祖様の癒しになるように。
「お疲れー! 楽しかったね!」
【吉祥寺2-8】も集まってハイタッチが続く。
弦楽器を嗜む事があるライラは、ゲイルから三線を借りると、ひと鳴らし。
その音色は風にとけていく。
音愛は自分と共にあった三線をそっと撫でると、スタッフの元へと急いだ。
三線の音に魅了されたのだ。だけど、この相棒は借り物。ならばと購入を決意したのだ。
「どこかで購入できませんか? できれば、安いものを」
これがこの先、新たな相棒になる。
花近は遠巻きにこの景色を眺めていた。爽快感や喜びと祈り、そして新しい想いや、思い出が生まれた瞬間。
鉢巻を取ると、少し汗ばんだ髪が露になる。それを手で梳いて――。
「ねっ。お披露目し終わったら、きっと達成感でいっぱい! でしょっ?」
こうして仲間と一緒に奏で舞う異国情緒あふれる音は、最高で幸せで。
この音は皆の胸の中で鳴り響き続け、きっと忘れられない思い出に変わるだろう。
作者:朝比奈万理 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年6月23日
難度:簡単
参加:24人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 1
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