みんなで力を合わせた運動会も終了し、いよいよ修学旅行の季節。
武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われる。
今年の修学旅行は、6月23日から6月26日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つ。
また、大学に進学したばかりの大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われる。
修学旅行の行き先は、みどころたくさんの沖縄。
沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出をいっぱい作ろう!
修学旅行の3日目は、自由行動となっている。マリンスポーツを体験したり、離島へ移動して観光することもできる。
離島の一つである宮古島は、沖縄本島と石垣島の間に位置する。
宮古島をはじめ、周辺の池間島、来間島、伊良部島、下地島は珊瑚が隆起してできた島で、大きな山や川がないという特徴がある。また、透明度を誇る海の美しさはピカイチだ。ぜひ一度、実際に目にして欲しい。
東平安名崎(ひがしへんなざき)の岬から西の方向に、美しい珊瑚礁が目の前に広がる吉野海岸がある。水の透明度が高く、魚の種類も豊富で、シュノーケリングの人気スポットとなっている。シュノーケリングは他の場所でもすることはできるが、吉野海岸がとりわけ人気なのは、波打ち際のそばまで珊瑚が接近していることが理由の一つに上げられる。
宮古島では、沖縄屈指の美しい珊瑚礁やクマノミなどの魚をシュノーケリングで間近に観察することができる。
「ねえねえ、修学旅行の自由行動の日はどうするか決めた?」
修学旅行のしおりを熱心に読んでいた榛名・真秀(中学生魔法使い・dn0222)が、顔を上げてそう訊ねる。
「わたしは前から宮古島に行ってみたかったから、これに参加しようかなって思ってるんだ」
そう言って真秀が指し示したのは、しおりに書かれた宮古島でのシュノーケリングのページ。シュノーケルなどの道具は貸し出ししてもらえ、もぐる前にガイドが丁寧に使い方を教えてくれるので、誰でもすぐに気軽に水中を散策することができる。
「宮古島の珊瑚はすっごく綺麗なんだって! しかもそれがすぐ目の前まで広がっていて、お魚さんもたくさんいて……夢みたいだよね。すっごく楽しそう! ねえ、良かったら一緒に参加しよう?」
エメラルドグリーンの海に広がる、宝石のように美しい珊瑚礁。
魚たちと泳ぐひとときの至福の時間を一緒に体験しませんか?
●修学旅行・三日目
修学旅行もいよいよ三日目。この日は自由行動となっており、各自が選んだアクティビティを満喫できるようになっている。
早々に梅雨明けした沖縄の天気は本日も晴れ。宮古島の海もエメラルドグリーンに輝き、透き通っている。
吉野海岸は幅が500メートルもある広いビーチで、砂浜近くまで接近している珊瑚礁のおかげで波もとても穏やかだ。
初心者がシュノーケリングを体験するのにもぴったりである。
宮古島に訪れた生徒達は、シュノーケリングに必要な道具を身につけ、真剣にガイドの説明を聞き入った。
あとはこの美しい海を体験するだけ!
●いざ、煌めきの珊瑚礁へ
「お家柄上、泳ぎは超得意だし、シュノーケル超楽しみ!」
京都発祥の水を司る術師一族である洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)が宮古島の海の澄み渡った水面を見てうきうきと声を上げる。一緒に来た友人達を振り返ると──。
「……で、ここに準備しました漬物石が」
早鞍・清純(全力少年・d01135)が、なぜだか波打ち際にものすごく重そうな石を準備していた。
「それはどこから持ってきたんだ、家からか? 大変だっただろうけど、うっかり落とさないようにしまっとこうな」
飛行機にも乗せて来たのならすごい根性だな、などと思いつつも水海・途流(星楽・d08440)は、清純の持ち込んだ漬物石を彼の荷物の上にえいやと追いやる。
「え!? シュノーケリングって漬物石で沈む作法じゃないの!? 命を賭して深海まで潜らなくていいの!?」
軍艦島で先日潜水した清純だが、都会っ子なので、いまひとつよく分かっていないようだった。
そうこうしながらも海に入っていく三人。
(「あわよくばリア充静流をなんとかしてやりたい」)
そんな願望を抱いている清純は、潜ると見せかけてフィンで思いっきり水を静流にかけてやろうと奮闘するが、上手くいかず変な踊りを踊っているかのよう。
「なあ静流、こいつ沈もうとしてばたばたしてっけどそろそろ突っ込んだ方がいっか? ほっとく?」
「うーん、なんと言うか見事に自滅しているような……なあ水海、いっそ早鞍とは他人の振りするか?」
「ってあっ、おい! 変な踊りで水かけんな! 沈めて浮かばない様にしてやろうか!」
ここでもう一度漬け物石の出番かと思われたが、静流は清純を助けようと動く。
「あんまり暴れるとカメラの未来があぶないぞー……ってもう遅かったか」
修学旅行中、風景画撮影と称して、清純が生活防水のデジカメで撮りだめた水着女子たちがこの瞬間、宮古島の海に消えたのだった。
「防水カメラって言ってもあれだもんな、水中カメラじゃねーと塩水はな……さらば数日間の女子の思い出……」
途流と静流が手を合わせてカメラを拝む。清純は涙目になっている。
「ほらほら、折角来たんだからおれらの目だけで見れるきれーなもの、見て帰ろーぜ。……やべえおれ今ちょーカッコイイ事言ったよな??」
「水海もいいこと言ってるし、陸に戻ったらカキ氷奢ってやるよ。シークヮーサーシロップにするか?」
失敗もいろいろあったけど、高校二年生の修学旅行、友情とともに記憶に残る思い出がたくさん!
「ガイドさんがいるならきっと大丈夫でしょう」
初めてのシュノーケリングに、自分を落ち着かせるように呟いたのはアルジェント・ヴィザルト(銀の死を舞う華・d20673)。普段は殊勝な態度を見せることが多いアルジェントだが、泳ぎだけは苦手なのだ。生まれは内陸地なのだから仕方ない。
「大丈夫です。潜れはしますから。だって人間沈むものですし? 大丈夫!」
ぶつぶつと自分に言い聞かせている様子を見て、榛名・真秀(中学生魔法使い・dn0222)が声をかける。
「アジェ先輩、ガイドさんが吉野海岸は遠浅の海が広がっているから、深いところでも水深は2メートルくらいって言ってますよ」
「少し苦手なだけなんです……これを期に泳げるようになったら、とか思っていませんよ?」
そう言いつつも、ライバル兼宿敵兼恋人に勝つためにも今回で泳ぎは克服しようと内心意気込んでいるのだった。
ガイドを筆頭に、他の生徒達が海に入ると、アルジェントも慣れないながらも四苦八苦しながら海へと入る。
ライバルのことを思い、泳ぎを克服することばかり考えていたが、目の前に広がる美しい珊瑚礁や熱帯魚たちに、しばし心奪われる。足につけたフィンが泳ぎを助け、ちょっとした泳ぎのコツも掴めたのかもしれなかった。
自由行動はどこも魅力的で迷った末、一足先に海を楽しむことにした蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)。ガイドの説明をしっかり聞いて、道具を身につけいざ海へ!
「さあ真秀さん、行きましょう!」
同じ中学二年生同士、一緒にシュノーケリング体験をする二人。
「え、敬厳くんも7月生まれなの?」
「7月11日生まれなんです」
「じゃあわたしと二日違いだね!」
初対面なはずなのに初対面じゃないような不思議な気持ち。
そしていざ潜った海の中。すぐに目の前に広がる美しい珊瑚礁に、色とりどりの熱帯魚たち。こんなにもすぐに楽園のような景色が堪能できるなんて!
(「……すごい。水族館みたいです!」)
あ、そうじゃなくて、水族館が海みたいなんだと思い直す敬厳。ただ、どれだけ言葉を重ねても、実際に見た者にしかこの気持ちは上手く伝えられないだろう。水面に上がり、隣の真秀ににっこりと微笑む。
「はあ、素敵な体験でした……!」
シュノーケリングも珊瑚礁も初めての結城・桐人(静かなる律動・d03367)は、その外見と眼光の鋭さから威圧感を与えがちだが、今日ばかりはうきうきとした様子が見受けられ、いつもより柔和な印象になる。
「私もシュノーケリングは初体験なのでとてもわくわくします」
桐人の様子を見て桜月・花音(桜花のマーメイド姫・d02286)も柔らかく微笑む。
「折角だし、水中用のデジカメを用意して写真とか撮っちゃいましょうか」
こちらは何度か経験のある綾峰・セイナ(銀閃・d04572)。けれど、友達と一緒に行くのは初めてなので、今までとはひと味違う。
いざ海に潜ると、そこは海の外から見える珊瑚とはまた違った美しい世界が広がっている。綺麗な珊瑚を見つけ、触れないぎりぎりの距離でじっくり観察する花音。三人は少しずつ場所を移動し、新たな珊瑚礁や魚と出会い、その美しさに目を奪われる。次々と写真を撮っていたセイナだが、写真に収めきれない美しさに言葉をなくす。
花音が目配せで「綺麗ですね」と伝えると、桐人とセイナもすぐに頷き返してくれる。そのことが嬉しくて、花音ももう一度頷き返す。言葉は発せなくても、同じ景色を見て伝わる気持ちに、三人はこの瞬間心で繋がっているようだった。
しばらく泳いだところで桐人が、写真撮ろうか? とジェスチャーで二人に示す。一度水面に顔を出し、セイナが桐人にカメラを渡すと、桐人は女子二人を撮ってあげるべく離れてカメラを構えようとする。
「何そんな寂しいことしてるの、こっち来なさいな」
「そうですよ、桐人くん」
「!?」
離れようとした瞬間に女子二人の息のあった見事な動きで、あっという間に二人の間に連れ戻される桐人。カメラすらもセイナに奪われ、素早く自撮りでぱしゃり。
花音とセイナは悪戯っぽい笑顔で、桐人は硬直した表情で写っているかもしれない。けれどそれも、この旅行の素敵な思い出のひとつになるだろう。
(「宮古島の海の中……うわさに違わずとても綺麗なのよ」)
スイーツ餃子を司るご当地ヒーローである高嶺・楠乃葉(餃菓のダンプリンフィア・d29674)は新作スイーツ餃子のインスピレーションのためにもとシュノーケリングに参加したのだった。
透明度の高い海に、砂浜そばまで珊瑚が広がっているので、海に入ってすぐに美しい珊瑚礁とその波間を泳ぐクマノミなどの熱帯魚が観賞できる。
「オレンジなのもスイーツ餃子的に食欲沸くの」
クマノミの鮮やかなオレンジ色を思い出し、海から上がった楠乃葉はさっそくイメージをメモに取る。
「オレンジの果汁を練り込んだ餃子の皮にして……クマノミの白い模様は練乳かけて表現するとして中身の餡は何にしよう? むうー……餡子は安直かなぁ」
「わたしはチョコとかもいいと思う! オレンジとチョコって合うもん」
そこへスイーツ大好きな真秀がちょっとしたアドバイス。
「なるほど、そういうのもありかもしれないの」
その後、二人はスイーツについて熱く語り続け、美しい海に見守られ、新しいレシピも完成したのだった。
マルク・イツァム(驟雨と稲妻の雨季・d28677)は姉のようにいつも自分を気にかけてくれる大切な存在である蓬栄・智優利(淫乱ピンクの申し子・d17615)と参加。智優利が近頃疲れているように見えたので、修学旅行を機に、一緒に宮古島まで遊びに来てみたのだ。
「水中カメラをレンタルしてみた」
せっかくの機会なのだから、美しい景色を思い出に残したい。
二人は海に潜ると、すぐに一面に広がる珊瑚礁や色鮮やかな魚の群れに遭遇する。それをマルクが次々にシャッターを切ってカメラに収めていく。隣を泳ぐ智優利はもちろん、時々自分も。
「綺麗だったねー!」
海中探索を終え、身軽になった二人は海辺を散歩する。早速先ほど撮ったばかりの写真を海の見える砂浜で確認。
「私、大切な家族ができたら、一緒にきれいなもの見たかったんだ☆……大切な人と、綺麗なものを共有したかった♪」
それが、家族がきちんといなかった、捨てられた過去を持つ智優利の願い。
少しは気晴らしになったか、弟らしいことが出来ただろうかと思っていたマルクは姉の言葉にはっとなり、カメラを見ていた視線を向ける。
「だから、今日は付き合ってくれてありがとう☆」
無防備だったマルクの頬に、智優利からの感謝のキスが不意打ちでやってくる。
「……今度は何処に行こうか」
そう言うことは俺じゃなくて恋人に……と直接言うことも出来ず、代わりにマルクは智優利の髪を優しく撫でる。
智優利も目を閉じ、祈るように心で呟く。
ヒトは変わっていく。恋人も、友達も、別れたり離れたりして変わることはあるけど、マルクはずっと家族でありますように――。
大学一年生の五人組は、去年まで高校のクラスメイト同士だった仲間達でシュノーケリングに参加。
「夏だ! 沖縄だ! 海潜るぞ!」
佐々木・紅太(プロミネンス・d21286)が海の美しさに何度も、ヤバいを連呼していた。
「ヤベェほんっと沖縄の海ってマジヤバイくらいキレーだな!」
「うむ、沖縄の海の青さって透明で特別感あるわー。好きだわ」
「沖縄ったら海だよな!」
衣幡・七(カメレオンレディ・d00989)と時吉・大和(自堕落ヒーロー・d20182)も紅太の言葉に頷く。
「すごーい! 潜らなくても、海の底まで見えるみたい!」
葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)も砂浜から海を見ては感嘆の声を上げる。水の透明度が高いので、珊瑚礁やそこに泳ぐ魚の姿が既にしっかり目に入るのだ。
「世界屈指のスポットだっけ。高校の頃、皆で海へ行きたいと話していた事が実現して嬉しいよ」
大学へ進学してそれぞれの学部へ進んだけれど、こうしてまた一緒に楽しい時間を過ごすことができるとエアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)は目を細めた。
「幸運を呼ぶウミガメの話はハワイだったかしら」
「ウミガメ見ると幸せになるの? 見たいっ」
七の言葉に百花が瞳を輝かせる。
「沖縄でもいろんな場所で見れるはずなんだけど。見れたらきっと幸運が舞い込むんだぜ」
紅太の言葉に、大和も頷く。
「この海見てたら奇跡くらい起きそうだよなあ」
「悠々と泳ぐ姿が見られたら、それこそラッキーだね」
エアンが期待に胸をふくらませる百花に微笑みかける。
「はやく行こう行こう!」
七がみんなに声をかける。故郷の新潟とはまた違う海の色に、柄にもなくテンションが上がってしまった大和も早く潜りたくてうずうずしていた。その手には水中カメラ。この思い出をしっかりと残すために。
「シュノーケリング初なんだけどオレ、息出来るんかな」
ガイドに説明を受け、道具を身につけたものの、紅太は初めてのシュノーケリングにどきどき。
「ももも、潜れるようになって良かったじゃないか。頑張ったね」
エアンに誉められ、嬉しそうに微笑む百花。頑張ってみんなと一緒に潜れるように準備をしてきたのだ。そしていざ海の中へ。
(「……わぁ、綺麗!」)
思わず口を開けて叫びそうになり、慌てて百花は口を閉じる。水族館でしか見たことのないような色鮮やかな熱帯魚が悠々と泳いでいる。
(「ヤバイ! スゲェ! 魚! 魚スゲェいる!」)
息が出来るのか不安を感じていたことなどどこへやら。紅太は魚を見てはしゃぎまくっていた。それを見て笑う七。近づいていき、魚と一緒に遊ぶように優雅に泳ぐ。そんな二人を見ていたエアンは心を和ませ、海中で仲間達とハンドサインで交わす会話も楽しんでいた。
海中を泳ぎ、珊瑚や魚、太陽からの日差しを受けた海面などを撮っていた大和が、ジェスチャーで皆に合図し、写真に収めていく。七と紅太はピースサインで元気に。エアンと百花は仲良く寄り添って。
ジェスチャーでカメラマン交代をエアンが大和に申し出て、大和も無事パシャリ。
その後、七もカメラマンとなり、エアンと百花のラブラブショットをしっかりとカメラに残す。撮る方も撮られる方も楽しいひととき。
(「ウミガメに会えるかな?」)
紅太が仲間とはぐれないようにしながらも、少し離れた場所まで泳いでいく。
遠くに魚にしては大きな影のようなものが見える。
(「あれ! あれあれ! もしかしたらウミガメじゃね!?」)
急ぎ仲間に知らせるべく元いた場所へ戻っていく紅太。
大きなジェスチャーで、みんなの注意を引き、彼方を指差す。
七が、エアンが、百花が、大和が、一斉に視線をやる。
先ほどより小さくなった影がゆったりと泳いでいるのが皆の目に入る。魚のようには見えない。けれど、ウミガメだというほどはっきりもしない。
けれど。
めったにない奇跡が起こったって不思議じゃない。
高校時代を一緒に過ごした仲間たちと、こうしてもう一度一緒に過ごせるという幸せが今実現しているのだから。
作者:湊ゆうき |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年6月25日
難度:簡単
参加:16人
結果:成功!
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