ちらりとやつざき

    作者:陵かなめ

    「あはっ。こんなに沢山のお客さんが来てくれるなんて、りずみぃ感激☆ それじゃあ、『chi/la☆chi/La☆Lala』聞いてください!!」
     短いプリーツスカートと、ようやく胸が隠れるかどうかのトップスを身に纏った少女がウィンクした。
     20名ほどの観客が歓声を上げる。
     ここは、小さなレストランを改造したライブ会場だ。ステージで歌い踊っているのは、淫魔アイドル地良・りずみぃ(ちら・―)。キレのあるダンスと、明るい笑顔が売りのアイドルだ。聞くところによると、真のアイドルを自称しているらしい。
    「ち、ら、ラララ、ラ、りずみぃ♪」
    「りーずみぃ♪」
     りずみぃが激しく踊ると、短い衣装から色々な場所がチラチラと見え隠れする。それも観客を大いに沸かせた。
     観客が20名も居る幸せ。
     りずみぃは楽しげに嬉しげに、踊り歌い続けた。
     と、その時、会場の入り口に大男が現れた。男は確かに人の形をしているが、その片腕は大きく青く膨れ上がっていた。
     男は真っ直ぐりずみぃに向かい進む。進路上に居た客は、なぎ倒され一瞬で命を奪われた。
    「……え?」
     少し遅れて、りずみぃの困惑した声が響いた。
     
    ●依頼
     最近、ラブリンスター配下の淫魔が頻繁にライブを行っているらしい。
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)はそのように切り出し説明を始めた。
     今までは、バベルの鎖がある為、ライブを開いても客が集まる事は無かったのだが、仲間になった七不思議使い達に噂としてライブ情報を流してもらうなどして、一般人を集めるのに成功したらしい。
    「といっても、売れない地下アイドルくらいの人数だけどね」
     まりんが力ない笑顔を浮かべる。
    「えーと、それで、ライブに来るのが一般人だけなら、まぁ、問題は無かったんだろうけどね。この噂を聞いて、会場にやってくるダークネスが居るみたいなんだよ。今回は、自称、真のアイドル地良・りずみぃのライブ会場に、デモノイドロードが現れるんだよ」
     デモノイドロードは、会場に到着すると観客を蹴散らして殺し、そのままりずみぃの所へ向かうらしい。目的は不明だが、ライブ会場の一般人が殺されてしまう事態は、避けるべきだろう。
    「それで、みんなには、デモノイドロードが会場に入る前に灼滅して欲しいんだよ」
    「えーと。ん? りずみぃって、どこかで聞いたことがあるような……?」
     話を聞いていた空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が首を傾げた。
    「そうなんだよね。かなり昔に、フライングバニー服の強化一般人にアイドル対決を申し込んだ淫魔だよ」
     ああ、何となくそんな事があったような。
     まりんと紺子はどことなくどよんとした目をして遠くを見つめるのであった。
     しばらくして、まりんが気を取り直したように皆を見る。
    「はっ。それで、戦いの事なんだけど、デモノイドロードの名前は谷津先・記(やつざき・しるし)。デモノイドヒューマン相当のサイキックを使ってくるよ。ライブ会場の前が道路になっていて、その場で戦闘できるんだよ」
    「つまり、会場の前で待ち伏せして、デモノイドロードを灼滅すればいいんだよね。一般人の対策をしたほうがいいのかな?」
     現場の地図を見ながら紺子が言う。
    「うーん。人通りはほとんど無いし、もし一般の人が近づいてきたら声をかけて道を変えてもらうくらいの対策で大丈夫だよ」
    「それじゃあ、それは私がお手伝いしようかな。ライブが終わるまでに決着したらライブ見れるかなー」
     それはそれでちょっと楽しそうだと紺子が笑顔を見せた。
     
    「それから、もう一つの方法として、ライブを解散させるっていう手もあるんだよ」
     まりんが最後にとこう説明する。
     ライブを解散させた場合には、ライブを邪魔されたりずみぃとの戦闘になるが、一般人を安全に避難させる事ができるだろう。りずみぃの戦闘力はそれほど高くないが、戦闘中にデモノイドロード谷津先・記が乱入してくる可能性がある。そうなれば、難易度は上がってしまうかもしれない。
    「と言うわけで、説明は以上だよ。みんなで相談して、方針を決めてね」
     どうか無事依頼の遂行を。まりんはそう願い、説明を終えた。


    参加者
    ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)
    古室・智以子(花笑う・d01029)
    喜屋武・波琉那(淫魔の踊り子・d01788)
    木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461)
    桜吹雪・月夜(花天月地の歌詠み鳥・d06758)
    片倉・純也(ソウク・d16862)
    リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)
    白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)

    ■リプレイ

    ●人払い、待ち人来る
     街のネオンから少し離れた場所、小さな通りの片隅で白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)が深呼吸を繰り返した。
     胸が上下するたびに、衣装の裾がちらちらと揺れ捲くれあがる。
     履いている短いプリーツスカートも、気を配らなければすぐに色々見えてしまいそうだった。
    「じゃあ、人払い協力するねー。頑張ろうねー♪」
     空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が早苗の衣装をじっと見る。
    「ライブ、見れると良いねー」
    「うん。ライブが気になるし、なるべく早めに倒せるといいな」
     早苗がこくりと頷いた。今日の衣装は地良・りずみぃのステージ衣装を意識したものにしてみたのだ。
     2人に加え、アリスとミルフィ、バンリも協力して一般人を誘導する。
    「迂回の標識はここに設置するの」
     古室・智以子(花笑う・d01029)は仲間の近くで案内標識の設置を手伝っていた。
     ふらりと小道に入ってこようとする一般人を見つけ、皆で誘導する。
    「空色、交戦中の誘導も頼む」
     木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461)が紺子にこれからの指示を伝えに来た。
    「アイドル並に可愛くやっとけ」
     ラブフェロモンを使ってな、と。
    「うっ。お高いハードルだぜ。って、それはともかく、みんな居るからこっちは任せてね♪」
     これならば、皆は戦闘に専念できるだろう。
     さて、小さなライブ会場の近くでは、灼滅者達が来訪者を待ち構えていた。
     ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)がスカートの裾を気にして手を伸ばす。
    「紺子お姉ちゃんにお任せして大丈夫だよね」
    「うん。いい感じに人の気配も無くなったし、安心して戦えるよ」
     頷き、桜吹雪・月夜(花天月地の歌詠み鳥・d06758)は辺りを見回す。確かに一般人の気配は無い。人払いが上手く行っているようだ。
    「それにしても、最近よく淫魔が襲われているようね」
     敵を待つ間にと、リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)が呟いた。
     皆の共通認識は、これからやってくるデモノイドロードを倒し、淫魔のライブを守る事だ。
    「宿敵を助けちゃうのって……なんだか複雑」
     サウンドソルジャーである喜屋武・波琉那(淫魔の踊り子・d01788)が空を見上げた。すでに日は落ち、星がいくつか光っている。
     自分達の守るライブ会場からは、淫魔アイドル地良・りずみぃが何か挨拶をする声が聞こえてきていた。
     今は会場で頑張っているから。だから、見逃してやるのだ。
    (「もし、悪さをしたら」)
     その時はと、波琉那は考える。
    「淫魔に肩入れする気はないのだけれど……無粋な人は、嫌われるのが常なのよ?」
     隣に座る波琉那の様子を見ながら、リアナが小首を傾げて見せた。
    「どうやら来たようだ」
     周囲を警戒していた片倉・純也(ソウク・d16862)が告げる。
     視線は向かいのビルの上。
     大男がビルの屋上から飛び込んできた。
     着地したその姿は、人の形をしている。だが、その片腕は大きく青く膨れ上がっていた。
     男は周囲を気にした様子も無く、真っ直ぐライブ会場に向かってくる。
     灼滅者達もすぐに行動を開始した。
    「咲け、初烏」
    「イッツ・ショウタァーイム」
     智以子に月夜、仲間達も次々と戦う姿を整えた。

    ●ストーカー疑惑、女子の視線
     既存勢力への勧誘か、大淫魔の配下に収まる事が希望なのか、何にせよ。
     純也は相手を見ながら武器を構えた。
    「邪魔な一般人は斬り掃う思想なら、何が来るかを知ると良い」
     戦場内の音を遮断するようにサウンドシャッターを発動させる。
     同時に、ウイングキャットのすあまを伴いティセが飛び込んできた。
    「りずみぃさんに何の用なのです?」
     言いながら、男の周辺を凍りつかせる。
    「な……?」
     咄嗟に身を庇うように、男が腕を上げた。
     それからようやく、デモノイドロードが灼滅者達の姿を見る。
    「何だ? 貴様ら。邪魔をするなら、容赦はしないが?」
     纏わり付く氷を睨みながら敵、デモノイドロード、谷津先・記が口を開いた。
     そこに、月夜のギターが鳴る。
    「お供も連れずにってことは、プライベートの用事かな?」
     ギターから放出される激しい音波を谷津先にぶつけて見せた。
    「それとも朱雀門は余程人手不足なのかな??」
    「……っ」
     敵は自身の傷を見て小さく舌打ちをし、地面を蹴る。
    「何の事かは知らんが、つまり貴様らは俺の敵なのだな」
     膨れ上がった腕を刀に変え、キィンに斬りかかった。
     どうやら、灼滅者達を敵だと認識したようだ。
     左から右へ横一線の攻撃にキィンの身体が吹き飛んだ。
    「集客に知恵を巡らすお嬢さんに正面突破とは男らしい事で」
     打ち付けられた壁を片手で弾き、キィンが身体を起こす。
    「オレ達の妨害くらい想定出来ただろうに」
     間をおかず、ダイダロスベルト『Talisman of belief』の帯を射出させた。
    「淫魔を倒す。その先を果たす策を見せてくれ」
    「はあ?」
     ベルトの攻撃を受けながら、谷津先が訝しげな表情を浮かべる。
    「わざわざ淫魔のライブ会場を狙うなんて、……ずいぶんと陰湿なんだね」
     キィンの傷を癒しながら、早苗もデモノイドロードに声をかけた。
    「……ラブリンスター一派と1人で敵対するなんて、正気の沙汰じゃないと思うけど」
    「あ? は? まあ、確かに俺は1人だが……。いや。そもそも俺と戦っているのは貴様らだろうが!」
     谷津先はますます不可解な顔をする。どうやら、両者の間に何かしらの齟齬があるようだ。やり取りをしながらも、敵が後ろにステップした。距離を取り、次の攻撃態勢に入ろうとしている。
     その距離を再び詰めるようにリアナが躍り出た。
    「随分と勇んで淫魔と逢瀬をしたいようですね? そんなに彼女が好きなのですか」
     妖の槍『斬穿』をくるりと回し、敵の身体を抉り穿つ。
    「ぐっ」
     谷津先がバランスを崩したたらを踏んだ。
     そこを狙って波琉那が影を伸ばした。傍らには霊犬ピースが控えている。
    「わざわざ会場に出向いくなんて、度が過ぎたストーカーみたいでキモいんですけど~」
     影を絡みつかせながら、わざとげんなりした表情で相手を嗤った。
     波琉那の言葉に同調するように、智以子が蔑んだ目でデモノイドロードを見る。
    「もしかして、ストーカー? うわぁ……ドン引きなの」
     前衛の仲間に向けて夜霧を展開しながら、谷津先と大げさに距離を取った。
    「な、なんだと? す、ストーカー? 失礼な!! そんな事、まだ見ぬ相手にできるか!」
     その態度にカッと怒りを見せたデモノイドロード。
    「はっ、もしかしてチラリが目当てだったり?」
     その様子を見て、ティセは慌てて短いスカートを押さえた。
    「え、……最低」
     早苗も、露出の多い衣装の裾を押さえる。
     女子達からの咎める様な視線が谷津先を襲った。
    「だ、黙れ、黙れ、黙れ!! とにかくそこをどけ!!」
     居たたまれない気持ちを誤魔化すかのように、敵はことさら大声を上げた。

     両者の戦いは続いた。
     相手が1人である事、灼滅者達の回復が十分である事、それだけ攻撃に手が回せる事から、時間が経つにつれ戦局は灼滅者有利に傾いていった。また、純也が常に目を光らせているため、敵は逃亡する事が出来ない様子だ。
    「ち、ぃ。俺の邪魔をするヤツは、排除だ!」
     傷を負いながらも、デモノイドロードが腕を大きな砲台に変える。
     激しい死の光線が純也に襲い掛かった。
    「すあま!」
     ティセが呼ぶと、すあまが身体を滑り込ませ、攻撃から身を挺して純也を庇う。
    「私が回復を」
     急ぎ、早苗が癒しのメロディを奏でた。
    「谷津先記、10体目。其方にとって悪意とは」
     純也は淡々と言葉を紡ぎ、距離を詰める。
     攻撃を終えた敵を狙い、オーラを集めた拳で連打を繰り出した。
     畳み掛けるように月夜やキィン、智以子も攻撃を繰り出す。
    「貴方の生きていた記を、消すと致しましょう」
     続けてリアナが影を伸ばした。
    「貪り散らせ、ルサールカ!」
     言葉と同時に、影が敵を喰らう。
     デモノイドロードの身体がはっきりとよろけた。
    「あと一息、行くよ!」
     月夜は武器に宿した炎をぶつける。
    「てか、ホントにストーカー? チラリ目当てだった?」
    「……ぁ」
     最後に波琉那がギターで殴りつけると、谷津先はあっさり消え去った。
     紺子やサポートの仲間の働きもあってか、周辺に人の気配は無い。
     一瞬静寂。
     そして、ライブ会場からわっと湧き上がる声援がもれ聞こえてきた。

    ●チラチライブ、そして
     紺子達も合流して、りずみぃのライブへと確認し合う。
     仲間達を見送ったのはリアナだ。
    「今宵の主役はりずみぃさんですゆえ。裏方は裏方の仕事、という感じですね」
     言いながら、迂回標識の撤去や瓦礫の掃除など、戦い後の後片付けを始める。
     その他の仲間はライブ会場の中へ足を踏み入れた。
    「あはっ。こんなに沢山のお客さんが来てくれるなんて、りずみぃ感激☆」
    「「「「りずみぃちゃーん!」」」」
     ちょうどMCの区切りだったようだ。
     りずみぃがステージから呼びかけると、20名ほどの観客が揃って声援を贈った。
    「それじゃあ、『chi/la☆chi/La☆Lala』聞いてください!!」
     淫魔アイドルはぴょこんとその場で跳ね上がり、くるりと器用に回る。その度に、衣装の裾が跳ね上がり、チラチラチラチラ気になる部分が見え隠れした。
    「ライブを楽しむために来たわけじゃ無くて……あくまでりずみぃちゃんが会場の人を籠絡しないように監視するために見るんだからね!」
     そんな波琉那の小声は、観客の声にかき消される。
     どうやら会場のボルテージはどんどん上がっているようだ。
     ポップなイントロが流れ出し、りずみぃが四肢を見せ付けるようなダンスを開始する。
    「ち、ら、ラララ、ラ、りずみぃ♪」
    「りーずみぃ♪」
     やがて歌い出せば会場はそれなりに盛り上がった。
    「わ、わ、色々見えてます。あんなの恥ずかしくないのかな?」
     思わずティセは頬を赤らめる。
     見えちゃってる。しかも、完全にではなくて、チラチラ……しかし確実にどんな形状か分かるくらいには見えちゃっているのだ。
    「確かに、見えてるの。バッチリなの」
     周囲を見ながら拍手を贈り、智以子が頷いた。
    「うおおお! パンチ……ごほん。ちらりずみぃすわわーーん!」
     元から居た観客に紛れて、バンリが大きく上下に踊りながら声援を贈る。デモノイドロードの脅威は去った。これでチラリズム満載のパンチライブが楽しめる。楽しめるのだと!
     観客の様子を眉間に皺を寄せてみていたキィンが呟く。
    「盛り上がる所そこか?」
    「チ・ラ、ラララ、ラ、ちらりん、りずみぃ♪」
    「「「「「りーずみぃ♪」」」」」
     ……だが、それはそれで楽しい。なお、眉間にしわを寄せているのはそれが彼のデフォルトであり、その証拠にキィンはりずみぃに向けてウィンクして見せた。
    「あは☆ あなたと、ルララ」
    「「「「「ララ」」」」」
     それに気付いたのか、りずみぃがひらひら手を振る。
    「りずみぃさ~ん♪ あ♪ 見て下さいミルフィ、今、手を振って下さいました♪」
     歌を聴きながら、アリスがはしゃぐような声を上げた。
    「……まあ……それは宜しゅうございましたわね、アリスお嬢様」
     隣で、ミルフィは不機嫌そうにうなずき返す。
    「ありがとう! ありがとう!! みんなー! 大好きだよっ☆」
     ステージでは、歌い終えたりずみぃが観客に向かって大きく手を振り、退場しようとしていた。
    「はいっ、アンコール! アンコール!」
     最後の盛り上げにと、月夜がアンコールをコールする。
     観客の間にも、アンコールを求める声が広がっていった。りずみぃは満面の笑みを浮かべ再びステージ中央へと躍り出る。
    「あはっ☆ ありがとう! それじゃあ、もう一曲歌っちゃうねっ」
    「「「「「うおー!!」」」」」
     観客の声に会場が揺れた。
     ライブを楽しんでいた早苗も拍手で盛り上げる。
     やがて全ての歌を終え、りずみぃはステージから退場していった。
     りずみぃの姿が見えなくなっても、観客からは熱い声援が上がっている。
     静かに見学していた純也は、少ない人数と言えど、観客の心を掴んだりずみぃに拍手を贈った。

     その後は、リアナも加わり皆で楽屋を訪ねた。
     智以子や早苗から花を受け取ると、りずみぃは嬉しそうに微笑んだ。
    「気に入ってもらえればうれしいの」
    「あはっ☆ ありがとう! 花の差し入れって、真のアイドルっぽいわよね☆」
     他にも灼滅者達から次々に差し入れを受け取り、りずみぃはすっかり機嫌を良くしたようだった。
     キィンや純也から観客が盛り上がっていた事を褒められると、ますますりずみぃの表情が緩む。
    「最近よく、ラブリンスターさん達のライブをよく聞きます。近々大きなライブでも?」
     それに、七不思議使いの件もとリアナが質問する。
    「大きなライブ……。そうよねっ、私も真のアイドルとして武道館を目指したほうがいいわよね!」
    「……真のアイドルの目標は高いな」
     目を輝かせて夢を語るりずみぃを、すかさず早苗がよいしょした。
    「ありがとう♪ あら、あなたの衣装も素敵ね☆ 私にあこがれたのかしら? うふふ☆」
     早苗に目を向けたりずみぃは、その衣装を見て微笑む。自分にあこがれたファンに向ける温かな視線……を演出しているような感じだ。
    「武道館? それが夢か」
     純也が聞くと、りずみぃはとろんと瞳を半分閉じる。それからゆっくりと足を組み替え、「あは、夢☆ 愛☆ あなたと、ルララ♪」と口ずさむ。
     組んだ足は、目のやり場に困るほどチラチラと色んなところが気になった。
     その様子は妖艶で、やはり目の前のアイドルは淫魔なのだと思い知る。
    「あたしも、もっとチラリしたほうがいいかな?」
     ティセがスカートの裾に手を付け小首を傾げた。
    「そぅねぇ。ま、私には敵わないと思うけど、もっと、こう」
     りずみぃがティセのスカートを摘み上げる。
     あわててティセは飛び退いた。
    「こ、これ以上短かったら下着が丸見えだよ~」
    「あはは☆」
     冗談なのか本気なのか、りずみぃが嬉しそうに笑う。
    「それはさておき。今回に限らず、他のライブ会場にも乱入事件が相次いでいる様子なの」
    「七不思議使いの能力に目をつけたのは流石だが、情報が招かれざる客の耳に入る可能性も考えとけよ」
     智以子とキィンが言うと、りずみぃは優雅に首を傾げ立ち上がった。
    「うふ☆ 真のアイドルのしゅ、く、め、いってヤツかしら」
     リズムを刻むように指先を動かし、ウィンクしてみせる。
    「あは☆ ちょっと疲れちゃった。いっぱい汗かいたもんね☆」
     そう言って、りずみぃが髪を持ち上げると、汗が煌いた。
     まだまだ話したい事はあったのだが、りずみぃは大物アイドルよろしく自分の都合で席を立ち、ひらひらと手を振って闇に消えた。

    「デモノイドロードは何故淫魔に近づいてきたんだろうね」
     りずみぃを見送り、月夜が疑問を口にする。
    「倒しに来たわけじゃない、ような感じ?」
     谷津先との戦いを思い返し、波琉那が肩をすくめた。
     ともあれ、当初の目論見通り。灼滅者達は淫魔のライブを守り、デモノイドロードを灼滅した。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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