修学旅行2015～与那国の夏の一時

■リプレイ

●与那国に降り立つ朝
　那覇から約一時間半の距離にある、沖縄は与那国島。
　日本最西端の地であり、国境の島でもある与那国島。
　与那国空港はカウンターが一つしか無く、何処か町の公民館的な建物へと到着した灼滅者達。
「う～ん……やってきたよ～与那国島～♪」
　手を広げ、嬉しそうに微笑む武野・織姫（桃色織女星・d02912）に、五十嵐・姫子（大学生エクスブレイン・dn0001）が。
「ええ、そうですね……日本最西端の島。中々遠い所ではありますが、それだけに田舎の雰囲気がとても良い場所ですね」
「うんうん。本当にのんびりした感じの島だね～……それに何より在来馬に乗れるのが、すっごく楽しみ♪」
　満面の笑みを浮かべる織姫を見ていると、同じ武蔵坂Horse clubの仲間達も。
「ヨナグニウマか……話に聞いた事はあるが、此処まで来なければ出会えるんだな」
「うんうん♪」
　保科・飛将（スノーライト・d02264）に織姫が頷き、そして。
「よ～っし！　ヨナグニウマさんに早速乗りに行くよ～！！」
　と拳を振り上げた織姫が、ヨナグニウマに乗れる馬広場へと向かう。
　……そんなHorse clubの仲間達を見送り、そして姫子は他の仲間達に振り返り。
「さて、と。皆さんはどうされますか？」
　と訪ねると、クリスティーナ・フェラツァーニ（大学生サウンドソルジャー・d13131）が。
「ミーはモクテキ二つネ！　モスラ捕マエニキタヨ！」
「もすら……ですか？」
　小首を傾げる姫子に、クリスティーナは。
「ソウネ！　モスラモデルの日本最大の蛾ネー！」
「……あ、聞いた事があります。でも、あれって……」
　と言おうとしたその瞬間に、クリスティーナは。
「デモヨナグニサンを捕マエルハ夜、マズハ綺麗ナ海デサーフィンネ！！」
　と、持ってきたマイサーフボードを抱えて、海に向けて走り去って行ってしまう。
「あ……行っちゃいました……」
　猪突猛進な彼女に、苦笑するしかない姫子なのであった。

●透き通る海
　そして、与那国島の海、ナーマの浜。
　西崎のすぐ近くにある、プライベートビーチのような、美しい海。
　透き通った海水を手に取る、全く色のついてない、透き通った海水が本当に美しい。
「……うん。綺麗な海岸線ですね……」
「ＹＥＳ！　綺麗ナ海デサー泳グネ！」
　と、先陣切って海へと突撃していくクリスティーナ。
　何処で買ってきたか判らないサーフィンで繰り出し、露出度の高い水着を着込み……胸を揺らしながら波へと乗っている。
　……そんな彼女に、ちょっと顔を染めつつも。
「まぁ……折角の修学旅行ですし、少しは羽目を外しても、いいですよね……」
　と、暖かく見守り、そして彼女も海へ繰り出す。
　……と、泳ぐ二人の横で、曹・月華（ロサギガンティア・d22472）と、エニシア・サーディオン（救うために棄てたモノ・d26860）も浜へ到着。
　色だけが反転した、おそろいの水着に身を包んだ二人……と、海へと入る前に。
「月華さん、日焼け止め、塗って上げるね？」
「ん……ああ、ありがとう」
　砂浜に腰を下ろして、まずエニシアが月華の背中に日焼け止めを塗り……そして逆に月華が、エニシアに日焼け止めを塗り合う。
　そして塗り合った後に、一緒に海で泳ぎ始める。
　水に浮いたり、軽く泳いだり……浮いたまま、照りつける空の日射しを受けてみたり。
　都会の喧噪を離れ、ノンビリとした時間を過ごしていく。
　そして小一時間程、泳いだ後、二人は濡れた身体の上に、おそろいの白いワンピースを羽織り、そして海を眺める。
　……西に向いたナーマ浜……その視線の約100km先には、月華の出身地、台湾がある。
「ああ、私の祖国、台湾は見えるかしらね……」
　と、月華が目をこらす……流石に100kmもの距離となると、空気が澄んでないと中々見えるものではない。
　……でも、揺らめく地平線の先に、ほのかに見える影……。
「……あ、見えた、気がします」
　くすりと笑うエニシアに、月華は。
「そう……あそこが私の祖国。いろんな事があった所……エニシアも、機会があれば、台湾へ一緒に行かないかしら？」
「うん、いつかきっと、一緒に行きたいな……」
　そっと、身を寄せて微笑むエニシアに、月華は、エニシアの肩を軽く引き寄せ、微笑む。
　そして……互いの暖かさを、暫し感じ合った後に。
「……ね。また、泳がない？」
「ん……うん」
　こくり、と頷き、二人はまた海へ。
　優しい波に身を任せ……ていた、その時。
「……」
　静かに、月華はエニシアを抱きしめる。
　そして……。
「……愛してる」
　小さく、彼女に囁いた月華。
　突然の言葉に、顔を赤くしながら、エニシアは。
「うん……わたしも……」
　と、小さく答え……そして、月華に身を任せた。

　そして同じ頃……ナーマ浜からちょっと離れた所には、武蔵坂Horse clubの仲間達が集まっていた。
　そして目の前には、待望のヨナグニウマ。
「お馬さんだーヒャッハーイ！！」
　と興奮気味に由津里・好弥（ギフテッド・d01879）が声を上げる……そして織姫が。
「これがヨナグニウマっていう在来馬だよ～。小さくって可愛いよね～」
　と仲間達に紹介すると、それに木島・京（大学生シャドウハンター・d05919）と、飛将、蒼井・夏奈（小学生ファイアブラッド・d06596）も。
「これがヨナグニウマ……話には聞いて多が、本物を見るのは初めてだな」
「そうだな。サラブレッドよりかなり小さいのだな」
「ヨナグニウマさん、小柄だから乗りやすそう！」
「そうだね。日本固有の在来馬は皆、小さいからね～。サラブレッドよりなじみやすい……かもね～」
「そうだな。在来馬は小柄な馬が多いからね。重種って言う馬車とかの馬と比べると、同じ馬とは思えないほど大きさに差があるんだよなー」
「ああ。乗り方など、同じなら良いが……じゃあ、今日は宜しく頼むぞ」
　最後に飛将が、ヨナグニウマの背を優しく撫でる。するとヨナグニウマは、ブルルッ、と奮えた後、撫でてくれた飛将に顔を向けて、じゃれるような動きを見せる。
　そして、海馬遊びについてのレクチャーを簡単に受けて、いざ……乗馬。
「少しはお馬さんに乗れるようになったから、きっと大丈夫……？　指示とかはムリだろうけどー……あわわわ」
「ととと……危ない危ない。夏奈ちゃん、大丈夫？」
「う、うん……ちょっとびっくりしたけど……えへへ」
　織姫と、ご主人さんの助けを借りて、身を戻す夏奈。
　他のHorse clubの仲間達も、それぞれ。
「普通の馬さんには最近乗せて貰えるようになりましたからね。そのテクニックでヨナグニウマさんに乗せて貰うですよ！」
「そういえば、みんな乗馬の経験があるんだな。俺は昔、ちょっと乗った事はあるけど、本格的に乗った事は無いな。振り落とされない様にしないとな」
「大丈夫だよ～。だってヨナグニウマさんは、優しくて大人しい子達だからね♪」
「そうだな……本当、おとなしい性格だと聞いてたけど、本当に暴れないんだなぁ……小柄だけど、結構パワーもあるみたいだし……」
　そして織姫を先頭にして、ヨナグニウマで砂浜をパカパカと歩き始める。
　……美しい海岸線を歩きながら、ヨナグニウマの動きに先ずは慣れていく。
　大体慣れたところで、ご主人さんの指示で、一緒に海の方へ……。
　……馬と一緒に、水の中へ潜っていく……周り一面、大海原。
「お？　おぉ、おぉー。海に入れるんですね。す凄いですよ。水陸両用です。さすがヨナグニウマだなんともないぜー」
　と好弥が驚きながら言う言葉に、飛将、夏奈も。
「おぉ、海の中に馬と一緒に入っていくのはすごいな。京しいし、背が揺れるたびにどんどん、海面が近づいてくる」
「うん。お馬さんに乗ったまま海に入るのって、歩くたびに水面が近づいてきて怖いなぁ……でも、大人しいから安心する。それに京しい～♪　泳がなくっても良いって不思議だね～」
　と、そんな二人に織姫はくすりと笑いながら。
「そうだね。そうそう好弥ちゃん、お馬さんって泳ぐのは結構上手なんだよ？　プールトレって在る位だからね～。と言っても、今は泳ぐわけじゃないけど。それに夏奈ちゃん、この子達は小さいから結構沈んだ感じで凄い新鮮だよねー」
「へぇ、普通の逢魔さんも泳ぐの得意なのですか。水とは無縁そうな顔してやりますね」
「うんうん。結構深い所までー…………こ、これ以上はダメ～！」
　どんどん深い所まで歩いて行き、ヨナグニウマさんの背中はもうすっかり水の下。
　でも、ヨナグニウマはその位の水位の所を、のんびりと歩き回る。
「凄ーい。その気になれば、乗って本州に帰れるのじゃないですか？　天下を獲ったんじゃないですか？」
　と好弥の言葉に苦笑しつつ、飛将が。
「本当深い所まで来たなぁ……ここで水の掛け合いは……流石にムリか。やっぱり、びっくりするよな。でも、水に浸かるだけで十分京しい。でも、水の中、走らせてみたいなぁ。あ、泳ぎが上手いなら、一緒に泳いだりしてもみたいな」
　ヨナグニウマとしたいことが、次から次へと出てくる。
　でも、ヨナグニウマは、背中に乗せた皆と一緒に、海の中を一歩、一歩、のんびりと歩き続ける。
　……そして、小一時間程して、海から上がっていく。
　そして砂浜で、ヨナグニウマさんから降りて……。
「これだけ賢いなら、ダンスとか出来たりしそうだな……ま、今日はありがとうな。とても楽しかったぞ？」
　と飛将が馬の背中を撫でて感謝を伝えると、夏奈も。
「うん、ヨナグニウマさん、ありがと～！」
　とその背中をなでなで。
　そんな灼滅者達の感謝に、ヨナグニウマ達も、其の頬を嘗めてお返し。
「いや、本当に貴重な体験だったな。またいつか、乗りに来たいね」
「うん、そうだね～。みんな、今日も一日ありがとうございました♪　また、明日のイベントも宜しくね～」
　京に織姫がニコニコと笑いながら、Horse clubの面々は、ヨナグニウマとのふれあい広場を後にするのであった。

●ナーマの浜の夕べ
　そして夕陽が水平線に落ち始めた頃……。
　ナーマの浜にやってきたのは、九鬼・宿名（両面宿儺・d01406）と、白崎・水姫（百華銀霜・d01720）。
「沖縄と言えば海、ビーチってイメージかも。だって青い海が橙に染まるのって、凄く綺麗だと思うんですよー」
　と、水姫の言葉に、宿名が。
「そやな。静かなプライベートビーチみたいやし、ほら、丁度夕陽もいい具合やしなー」
　と笑う。
　宿名は黒い水着に薄手のパーカー、焦げ茶のサンダル。そして水姫は、薄紫の水着と水色のサンダル、そして白いサマーパーカー。
　そして二人、しっかりと手をつなぎながら、砂浜をのんびりと歩く。
「旅行の中でまた旅行してるみたいで不思議な気分やけど、二人で旅行とかしたかったし、丁度良かったねぇ」
「うん。自由行動って長さじゃないけど、こういうのも新鮮。でも、こうやって、二人でいられる時間が長くて、嬉しい、かなって……」
　その言葉を言うと共に、顔を赤くする水姫。
　彼女の言葉に、宿名はくすり、と笑いながら。
「そやね。でも今度は、最初っから二人っきりで来よな？」
　と言うと共に、チュッ、とキス。
　驚いた表情を浮かべる水姫、それに嬉しそうな笑顔を浮かべる宿名。
　……視線を落とす水姫。でも……その腕は、ぐっ、と宿名にくっつけて。
「……うん……二人で、また来よう、ね……」
　と、宿名に囁くように呟いて……そして、夕陽の差し込むナーマの浜を、しっかりと手をつなぎながら、歩いていった。

●夜の波
　そして……すっかり夕陽も墜ちた、夜。
「そうですか……ヨナグニウマさんは、小さいのに力持ち、なんですね？」
「うん、凄かったよー。それにどんどんと海の中に入っていくんだよ？　周り一面海、って感じで、ちょっと怖かったけど、すっごく楽しかったー」
　姫子に夏奈が興奮気味にし、そして織姫も。
「この与那国島にしか居ないお馬さんなんだよね～。修学旅行で沖縄に来たからには、やっぱり乗らないとね！」
　と笑いながら話す。
　たった一日だけの、与那国島……色々な思い出が出来た。
　そして窓から見上げる夜空もまた、空は雲一つ無い快晴……月明かりが、ぼんやりと島内を照らしていて、ちょっと幻想的な光景。
　……と、そんな幻想的な光景の中、麦わら帽子と虫取り網で森の中にいたのは、クリスティーナ。
「ヨナグニサンはダメだけど、それならサイカブトを捕まえるヨ！」
　気合い十分、サイカブト捕獲に精を出すクリスティーナ。
　……しかし、サイカブトもまた、沖縄県外への持ち出しは禁止されている昆虫。
　ホテルに帰ってきた時、指摘されたクリスティーナは、しょんぼりしつつ。
「なら、仕方ないネ。それなら標本だけでも持ち帰るヨ！！」
　と、決してしょんぼりし続ける事無く、次なる事に熱意を燃やす彼女なのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年6月25日 難度：簡単 参加：10人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 0
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