修学旅行2015～彩のクマヤーガマ

■リプレイ

●morning
　朝焼けの色が眩しい青の洞窟は冴え冴えとした静謐さを湛えて居て。
　その青は瑪瑙の色だと鶫は嬉しそうに小さく笑った。首を傾げる瑪瑙へと鶫は『キメ顔』で笑いかける
「きっと、洞窟は綺麗なんでしょうね。あ、でも――……キミの方が、綺麗だよ」
　きっとね、と付け加えて海へと潜る鶫の姿は青の中に隠された。静寂の青の中、その色に融けてしまいそうな彼へと手を差し出して。
　横切る蜂蜜色へと眸を伏せて、彼女の隣でゆらゆらと揺れる瑪瑙へと。鶫はYesを受け取ったのだと自己完結して笑みを浮かべた。
　ほら、やっぱり。キミの傍は心地良い。
　思ったより人が少ないのだと空気を吐きだして千波耶は葉を手招いた。
　おはようと挨拶する様に、横切る魚達の中で、洞窟を満たす青が聖域の様だと葉は唇に笑みを浮かべた。
「やってみたい事があるの」と意気込んだ千波耶がこっちこっちと手招いた。白い指の先、海中から差し込む光に彼女は「天使の梯子」と小さく笑みを浮かべた。
　葉くんも。その言葉が無くっても四か月前の約束とも言えない約束は、彼女のしたい事に何でも付き合うと決めた一種の決意の様で。
　シュノーケルを外して梯子へと手を掛ける様に水を掻く。見た事のない景色を見せて上げる――
（「ああ、お前はそうやって、まっすぐ光を目指してるんだな――」)

　払暁の光は、海の色さえも変えてしまう様で。
「――」
　ぽこり、と泡が空へと登るのを見届けて藤乃は希沙の手を握り締める。眠気眼に朝焼けが余りに眩しくて、藤乃の手を握り返した希沙はばたばたと手を揺れ動かした。
（「姉ちゃん達、ホント仲イイなー」）
　凄いね、綺麗やね。そんな想いは伝わったのか伝わらないのか。手を握り合う二人に思わず笑みを浮かべた健は宙を茫と見上げた。
　エメラルドグリーンからターコイズ、インディゴへ。光の煌めきと、陽と共に変わる景色は鮮明で――水中カメラの向こう側で健がへらりと笑う。
　360度見渡す青の中で、惚けた顔を取られたかと照れ笑いの希沙は藤乃のカメラを借りてぱしゃぱしゃと撮り続けた。
　指先を啄ばむ魚達は健と希沙へと歓迎を意味し、藤乃の映す世界の中で鮮やかな色を反射する。
　折角の修学旅行。写真に閉じ込めた世界は――きっと、学園で待つ刺繍倶楽部の皆へと届けられる筈だから。
　一緒に遊ぼうぜと手を伸ばし小次郎は「いざとなったら、俺のこと引き上げてくれる？」と冗句めかして笑う。
　小次郎の言葉にくすくすと笑った汐はぐんぐんと進む彼を追い掛けて鮮やかな海の中を進んで行った。
「汐！　見ろよ。魚の群れだ――……」
　きれい、の三文字さえも呼吸の泡となって昇って行く。差し込む光が作りだすコントラストの中で回遊魚達が踊る様に通り過ぎていく。
　一匹一匹、只の小さな魚達でも、絵画の様に美しくて。「俺も、ちょっと海が好きになったよ」と零す彼へと汐はへらりと笑った。
　きれい、と両の手を伸ばして志乃は眸を輝かせる。凄いですねと汐の手を引いて彼女はクラスメイトを振り仰ぐ。
　ゆらゆらと海に身を任せる渚へとこっちと手招いた志乃のテンションは鮮やかな蒼に魅入られたかのようで。
（「海……なぁ……」）
　軍艦島の調査で見た海の色を思えば、見えてくるものもまた違う。甲斐性を見せた厳治は魚達の群れを茫と見上げて空気をぽこり、ぽこりと吐いた。
　餌を手にした渚と唯乃が鮮やかな色を見せた魚達へと餌を一つ一つと手渡せば、指先を啄ばむ小魚が恥ずかしそうにその身を揺らす。
「―――」
　海に来たのは学園に来る前で。その時共にインディゴの海を見た人は隣に居ない――塗り固めた青の上に、鮮やかなまでのエメラルドグリーンが上書きされて行く。
「見て下さい、蟹ですよ。ふふふふ、鋏で挟まれちゃいますね」
　悪戯っ子の様に笑う志乃に待てと制止を賭ける厳治は何処か厳しい表情をしていて。
　そんな戯れに曇りガラスの瞳を細めた渚は「海島君は今日は一日潜ってるかんじかな？」と首を傾げた。
「一度上がって夜にもう一度かな。ふやけそうだ」
「無論だな。海水でヨボヨボになるぞ」
　頷く厳治へと志乃と渚が可笑しそうに目を細める。ここにこれて、よかったと――そう感じたのはきっと唯乃だけでは無い筈。

●afternoon
「うっひゃー！　沖縄のお魚さんこんなに綺麗だとは！」
　瞳を輝かせたアネラは翌檜を手招いて餌があるとこんなに寄って来るんだねと瞳を輝かせる。
　好奇心旺盛な侭、餌をバラまく彼女の隣で茫とした翌檜は『無表情』――内心はハイテンションだが、あくまで表情は硬い――のまま魚達へと餌を撒く。
「クマノミとかスズメダイとか如何にも南国って感じがする」
　すげぇと寄ってくる魚達に心も踊る翌檜へと「翌檜くん、ほら、面白い子見っけ！」とアネラが差し出したのは――カラフルナマコ。
「うえっ、要らねぇって！　クソッ！」
　ばしゃ、と海にリターンされたナマコに視線を零してアネラは「青の洞窟、沖縄にもあるんだぁ」と青の洞窟方面に進むナマコを追い掛けた。
　鮮やかな空色に負けないくらいのターコイズ。エメラルドグリーンから変化した海は、只、静かなだけではないようで。
「夜はどうなるのかな？　ちょっと怖いかも。自然って、偉大だよね」
　自然の中で育った楽天家。けれど、だからこそ自然の怖さを知っている。アネラの言葉に翌檜は「ハワイもこんな感じなのか？」と彼女の故郷を思い出したように小さく聞いた。
「ハワイはちっちゃいころにちょっとだけ、でも、いつか遊びに行けると良いな！　……卒業旅行とか！」
　見てみたいなら、見せてあげる。きっと、素敵な海がハワイにもあるから。
「ね、紗ちゃん手、繋いでも良い？」
　泳ぎは得意じゃないと肩を竦める仁奈に紗は繋ごうと柔らかく笑みを浮かべる。
　光を反射する青の世界は何処か落ち着いて。紗は傍らで眸を輝かせる親友をちらりと見て笑みを浮かべる。
「青の中、仁奈ちゃんの髪はとっても映えて綺麗だよね」
「ふえっ、紗ちゃんの方が綺麗だよ。髪も、瞳も海の青とキラキラして……融け合うみたい」
　融けてしまわないように――広大な海の中で身を寄せ合う二人は指先に触れる魚へと笑みを浮かべて視線を交わす。
　こんなにも近づいて、魚達を見れるなんて。幸せだと笑う彼女の傍らでターコイズが反射した。
　紗の指先へ一つキスをした小さな魚に「紗ちゃんに懐いてるみたい」と笑みを浮かべた仁奈は擦り寄る鮮やかな黄色に驚いた様に肩を跳ねさせる。
「フエヤッコダイかな？　きっと、仁奈ちゃんの光りに惹かれたんだね」
　ミルクティのような優しい色は、海に融け合っていくから。
　クマノミを探して一緒に行こうと二人で海を駆けていく。ほら、写真で残そう、きっと素敵な思い出になるから。
　エスコートするよと蓮二は鵺白の手を引いた。
「ふふ、わたしは水槽の向こう側にも海の底にも言った事無いわ。だって、嫌いなんだもの」
　鵺白の言葉に瞬く蓮二は夢がかなうのと同じだと魚の様に海を往こうと手を引いた。
　蓮二とならば、こんな青だって好きになれそう。海の蒼に、魚達に連れ去られないようにと彼の腕にしがみつき指先から餌を一つ二つと手放した。
「水槽ってこんな感じなのかしら」
「さあ？　……でもさ、可愛いな」
　人懐っこい魚達。鮮やかな水色に差し込む光は二人を世界に取り残してしまったかのよう。
　唇に弧を描き子供の様に悪戯一つ。鵺白がばらまく餌は蓮二の周りをぐるりと囲み――魚達が我先にと群がった。
「――」
　楽しんでる証拠だなとピースを一つ返した蓮二に鵺白は繋いだ手からこの楽しさが伝わればと強くその指先に力を込める。
　謂いたい事があるけれど――伝えたい事は、水の中だから今は飲み込んで。
　言葉の代わりにずっと、その手を握っているから。
　洞窟の中をぐん、と進むヴィルは鮮やかなその色に感嘆の息を漏らす。
「――……透き通っていて、とても綺麗……だけど……少し、怖さもある……な」
　まるで吸い込まれそうだと呟く言葉はざあ、とくる潮に流された。魚の群れに鮮やかな海の青。
　なんだって、彼にとっては馬頭差しい物だから。目に焼き付けるだけでは無く――写真の中でも、その青を捉えて。
　いつか。何時の日か、この場所でもう一度青が見れる様にときったシャッターの向こう側、差し込む光が優しげにゆれていた。
　桃色のウェットスーツ。揃いのそれに腕を通し雛罌粟は気分上々とリバーサルフィルムの入った水中カメラを手に海の中へと沈みこむ。
　優しい青はターコイズからインディゴブルーへと表情を変えながらも只、その場所に漂っている。
「南国のお魚さんって近くで見るの初めて……っていうか、こうやってウェットスーツ着るの自体はじめてかも！」
　楽しげに笑う竹緒へと「髪も綺麗で人魚姫見たい」と埜子は小さく笑みを浮かべる。
　そんな様子だって雛罌粟のカメラの中に収める貴重なシーン。
　カメラの事は良く分からないけれど、リコが収める世界はとても好きだと埜子が笑みを浮かべれば竹緒は「可愛く撮ってね！」と瞳を輝かせた。
　なあにとレンズにキスを一つした海の住民に雛罌粟は愛しげに瞳を細めて小さく笑う。
　見た事無い魚の群れに視線を奪われて慌ててジェスチャーで「こっちこっち」とアピールする埜子に雛罌粟と竹緒が視線を交差させる。
「えっと、あっちの穴の奥にお魚さんたくさんいるのかな？」
　行ってみよとやる気を抱く竹緒の指先に小さな魚がキスをした。
　良いモデルさんっすと瞳を輝かせ。良い笑顔が撮れたと泳ぎだす――そんな二人に背を向けて水上でぶは、と息を吐く埜子は「人魚って大変そう」と大きく酸素を吸い込んだ。

●moon time
「まるで星空ですね。綺麗です」
　ふわりと浮かぶ夜光虫。文具の言葉に彩は小さく頷いた。
　とっても素敵、呟いて寄せた身体に手の甲同士がこつん、とぶつかった。高鳴る鼓動にふい、と目を逸らし文具は小さく息を吐く。
「彩さんと一緒に見れるから、より一層綺麗に見えます」
「わたしも、文くんと一緒に見れるからすっごく綺麗に見えるよっ！」
　こつん、と当てた手の甲がすり、と撫でる。恋人同士――それでも、その雰囲気に飲まれることなく文具は緊張を秘めている。
　とくん、とくんと。繰り返す鼓動に「ねぇ、キス、して」と強請る様に眸を伏せった彩の唇に指先を当てて「二人きりの時で、ね」と囁けば、こつんとぶつかりあった額から仄かな温かさが感じられた。
　握りしめた掌は熱い。付き合い始め――恭輔とリィザは共に深くへと潜って行く。
　悠々と泳ぐ魚達へとライトを向けて小さく笑みを浮かべるリィザへと思わず唇が綻んで恭輔は感嘆の息を吐いた。
　鮮やかな世界は、インディゴで塗り固められていて。幸せだと頬を赤らめるリィザがふらつく様に恭輔へと幾度も触れる。
「―――」
　ぼこ、と泡が浮かびあがり、上を向く彼女に釣られて見上げた刹那、
　頬へ触れた柔らかな口付けに驚いたまま、絡めた指先をぐっと引き寄せた。ライトも無くなった暗闇の中で、重ねた口付けは仄かに潮の味がした。
「うわぁ、すごい、すごいね！　光の妖精たちって感じだよ、綺麗っ！」
　眸を輝かせ、宇宙を閉じ込めた様な夢の様だとなのははお留守番組にも見せたかったと小さく笑みを浮かべる。
「――嗚呼。至極幻想的な光景では御座いませんか？　あぶばばばば」
　泳げない――なんて事実を忘れてしまっていたリリィが水面へと飲まれ掛ける。
　幻想的なこの景色に圧倒されてしまったのか、リリィを支えたエリーゼは口をぽかんと明けて、小さく気を吐いた。
「まさかこれが全部微生物とは、中々不思議なものですね」
　彼女の言葉に小さく頷いたなのはは「感動だよね」と笑みを浮かべる。
　泳ぎに悪戦苦闘のリリィを懸命に支えるなのはとエリーゼは水中へと行こうとそっと彼女の手を引いた。
　泳ぎが苦手、だからといって幻想的なこの夜を満喫できないのは残念で仕方ない。
　その眸に焼き付けて、その心に刻みつけて。美しいその世界になのはは「言葉じゃ足りないくらい」と両の手を掲げる。
　水面も水上も、どちらも星が煌めき夜空の色を映し出しているから。ゆらりと揺れる月の光に浸かる様にエリーゼは「本物の宇宙に浮かんでるみたい……」と冗句めかして告げた。
「ふふ、これぞ花鳥風月ですのっ♪」
　それは『星空の海』。圧巻だと両の手を広げたラシェリールは傍らのシャルトリアに興奮気味に告げる。
「わぁ」と漏らす感嘆の息は白く浮かび上がる様な愛おしいラシェリールの姿が――きれいだったから。
「シャルトリア」
　差し伸べた掌に喜んでと告げる様にその手をとってシャルトリアは柔らかく笑みを浮かべる。
「すごいね、宇宙にいるみたい！　こんな光景があったなんて……貴方と観れて、嬉しい！」
　夜光虫がゆらゆらと。空の鮮やかな星を反射した海はきらきらと煌めいていて。
　彼の瞳の青の様な色は、きっと昼下がりのこの場所が秘めた静かなブルー。
「……この光景も美しいが、俺にはシャルの方が美しくみえるな」
　落としたシャッターに人魚姫が泡となって消えぬ様にと手を伸ばせば擽ったそうに笑ったシャルトリアは手招いた。
「ラシェ、貴方綺麗過ぎるよ。このまま瓶詰めにしちゃいたいくらい。……写真撮るなら、一緒に撮ろう？」
　手を取り合って。二人きりで星空と共に映ろう。大好き、の言葉は大きな海に飲み込まれぬようにして。
　海と同じ色をした空は、何処までも続いていて。沖縄の海に行きたかったと笑うマリーはくるりと水中を舞う。
「なんだか人魚になったみたいだわ」
　ちょっとした冗談は、幻想的な空の所為でナイーブに変化する。「人魚姫は泡になって消えてしまったのよね」と小さく呟く言葉は寂しげな闇に塗り固められた空を見詰めたからか。
「マリー」
　実らない恋の話しはいらない、とノエルは小さく唇に笑みを描く。それは、彼女と自分の話しには似合わない。
「オレはマリーを泡にはさせないよ」
「――……や、やだ、私は人魚なんかじゃないわよ！」
　慌てて否定するけれど、嗚呼、そんなのとっくにお見通し。もうひと泳ぎしようと伸ばされるその掌の温かさに眸を伏せってマリーは海の底を見詰める。
「お姫様」とそう、呼ばれるならば、王子様、一つだけお願いを聞いて？
「――この手を離しちゃ駄目よ」
　束の間の魚の気分。天使に人魚は似合わないけれど、君の王子は出来るならオレがいい。
　隠された場所。神秘の夜。
　星光の煌めく魚達の中、ライトで小さな魚達を見詰めるバンリへとぐん、とリュウキュウハタンポが近寄った。
　ぼこ、と出た泡と共に「凄いであります」と眸を輝かせる汐へと満面の笑みを向ける。
「ほら、バンリさん。こっち」
　無邪気な彼女ならきっと凄いと眸を輝かせてくれるであろう海中の宇宙――水中ライトを消した向こう側に海を飾った虫達の煌めきが星屑の様に指先へと触れた。
「――」
　飲み込まれそうな青の中、放心した様に見上げた水面には月が反射し静かに揺らいでいた。
「普段じゃこんなところに来られないし、なんだかデートみたい」
　冗句めかして告げる言葉にしては、何処となく緊張が伝わって。ならば語り合いましょうと笑みを浮かべた静香の唇が弧を描く。
「泡沫と流れる夢一夜――なら、夢語りで返しますよ」
　夜光虫の星屑の中、光りに照らされた横顔に暦は何だかなぁと肩を竦めて白旗を上げる様に小さく呟いた。
「いつも自分を崩さないところ、ろくみんらしいよね。絶対末っ子でしょ。それか一人っ子」
　その胸に抱く強情はある意味で彼女を形作る要素の一つ。ふる、と首を振る静香は「孤児院の育ちなのですよ」と小さく告げた。
　幼い頃は『こえ』を忘れ、愛しい義兄と出会ってから――別れて、泣き顔を美しいと告げられたその思い出。
「俺は笑ってるろくみんが一番好きだな」
　関係ないかな、と言葉を零して。暦は静香の横顔を見詰める。一夜の淡い夢物語。
　きっと陸に上がれば人魚の泡の如く、この夢は消えてしまうから。それでいい、この距離感が丁度良い。
　莉奈はこういう経験あるのと問い掛ける恢に緊張した様に莉奈は首を振る。
「どんな世界が広がってるんだろ……」
　覗きこむ仄暗い水の底。底冷えする程のインディゴを見下ろして泳ぐのは好きだと海の中へと飛びこんだ。
　掌は、温かい。感じるその体温が冷えて行くようで――深く深く、夜光虫を目指して底へと向かう。
「――」
　言葉を飲みこんだ、青にとっぷりと浸かったまま莉奈は声を飲みこんだ。
　ライトが無くとも、水中の灯りは淡く、美しい。僅かに掌に感じた感触をぐっと引きよせて恢の指先が莉奈の掌に描く文字。
『――すごいね。海の中にも空があったんだ』
　その擽ったさに落ちつかないと肩を竦めてからこくりこくりと何度も頷いて。
　海と空、二つの星空は莉奈にとって愛しい世界。共に居るのが恢だというだけで――鼓動がとくりとくりと騒ぎ出す。
　もう少しこのままと繋ぎとめる様に握りしめた指先に、飲み込んだ言葉は陸に上がってから伝えようと恢は唇を引き結ぶ。
　――きみと見られて、良かった。

　修学旅行、日に日に表情を変えていく鮮やかな洞窟の中。
　満ちては引いて、鮮やかな空と海のコントラストは、きっと思い出に残るだろう。

作者：菖蒲	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年6月25日 難度：簡単 参加：38人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 4／キャラが大事にされていた 3
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