●いよいよ修学旅行へ
武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
今年の修学旅行は、6月23日から6月26日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
また、大学に進学したばかりの大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。
修学旅行の行き先は沖縄です。
沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
●琉球古武術研修
恒例の修学旅行を前にして、相良・隼人(大学生エクスブレイン・dn0022)は幾つかの観光雑誌を横に置いて、また違った書物を目にしていた。
隼人の手にあるのは、琉球古武術に関する本である。
「高校の時の修学旅行は、俺はフラフラしてるだけだったからな。……まあ折角だから、琉球古武術を学びたいと思って先生や向こうさんと話を付けてみたんだ」
自身も古武術を学ぶ者として、ぜひ琉球古武術について実際にその目で見てみたいという思いがあったようだ。
琉球古武術とは、古くから琉球で行われてきた武術であり、多くの流派が存在するという。
武器を使用した武術を主とした流派が多く、棒術、釵、トンファーや手甲など様々な武器を駆使する。
「今回はそのうち、棒術とトンファーを中心に学ぼうと思う。修学旅行だから、武術を学んだ事のない連中も沢山来るし、棒術やトンファーなら痛い思いをする程度で済むだろう」
まあ、自分で学びたい武器があるなら止めはせん、と隼人は付け加えた。
一通り型を学んだ後、それぞれ組み手を行う。
道着着用の上、必要であれば防具や具足も貸し出ししてもらって着用するといい。
ただし一部の武器は殺傷能力がある為、扱いには注意するようにとの事である。
「日程は23日、到着して午後からすぐになるから飛行機の中で十分体を休めておけよ」
そう言うと、隼人は楽しそうにパンフレットを眺めた。
琉球古武術は、古くより沖縄で伝えられてきた独自の武術の事である。徒手空拳と武器により構成されており、他で見られない武器を使用する。
日頃様々な武器を使用して戦う灼滅者達も、この機に学ぼうという者が多い。
修学旅行初日であるが、元気な声が道場に響く。
●
元気よく挨拶をして、さっそくトンファーを構える悟。
「肘までしっかり護れるんやな」
「相手の武器を絡め取る事も出来るんですね」
綾奈もそう言い、ふと口を閉ざす。
悟が見ると、綾奈は首を振った。
「…もっと強くなりたいって思って」
綾奈の脳裏にどんな事が浮かんだのだろう。
真剣な顔の綾奈は、どこか辛そう。
「トンファーも殲術道具に出来へんやろか」
「面白そうね」
悟の意見に、綾奈が頷いた。
殲術道具に、という意見にンーバルバパヤは笑顔。
積極的に型を学び、指導を受けて早くも手の内で使いこなしている。
「トンファー極めると、ビーム出せるて本当?」
ンーバルバパヤが周りに聞くと、苦笑いの指導員の横でアルヴァンが頷いた。
あー、出せる出せる。
軽く答えながら、アルヴァン自身はしっかり学ぶ。
どうやら隼人は棒術を習っているようだ。
「おし隼人、相手になってくれよ」
せっかくなら、女の子の方が。
そう思ったアルヴァンだが元々肉体派の隼人、ぐいぐい攻める。
「強いな…」
「なんだ、降参か?」
そう話して一息ついていると、ンーバルバパヤが声を上げた。
実戦的な組手を学ぶうち、何かひらめいたらしい。
皆と型を学んでいた春だったが、実践訓練として光明に声を掛けて組手をしてみた。
「ご指名とあらば」
光明は終始落ち着いて、戦い慣れている様子。
もしかすると、そのトンファーは自前では。
そう春が聞くと、光明は頷いた。
「技の練度を上げる為にも、しっかり解析したいと思ってな」
光明の戦いは、春にも参考になる所。
水分補修も十分に、と光明はスポーツ飲料を差しだした。
こうして手合わせに挑んでいるが、実と貫はお互いの実力はよく知らない。
お互いクロ助やらいもんと一緒のイメージが強い。
「よろしく頼む」
貫は一礼すると、棒を構えた。
武器を使う戦闘に四苦八苦する貫も、ある程度型にはなっている。
「両手で棒をしっかり握って」
構えを見抜いた実がそう言うと、棒を絡め取って間接極めに持ち込んだ。トンファーを自在に振り回せるだけの経験がある実相手では、分が悪い。
「いややっぱ難しいな」
貫は改めて旅行後に再挑戦を頼むのであった。
生徒が汗を流す中、リィザはその中に奈落を見つけた。
丁度トンファーを習っていたリィザは、奈落との手合わせに挑む。
「ふふ、のて様が相手でしたら、何の遠慮もいりませんわね」
「こっちも、そう簡単に負けるつもりはない」
リーチが短いリィザは、低く構えて押してくる。
間合いを離しつつ、奈落も応戦する。
「ちっ…少しは手加減しろよな」
懐に入られると、棒を使う奈落にはやや不利である。リィザの勢いは激しく、ヒヤリとする事はあったが奈落が一勝を納めた。
●
棒術は槍に似た構えの武器であるが、古武術においては体裁きも重要。
蹴りが加わる棒術に感心するうち、真忌は兄とはぐれていた。
「…あ、隼人さんお手すきでしたら」
と隼人を呼び止め、組手を頼んでみた。
隼人も棒を構える。
棒術の使いは、さすが真忌が上手。
「学園に来る前、少し学んだんです。でも流派が違いますから…」
「そうか。俺の家は柔術はあまり主体としてなくてな」
隼人がそう言い顔を上げると、舞うように一刀が棒を使いこなしていた。
棒術の動きは、見ていて美しい。
「棒術は琉球古武術の基本、ってどこかで読んだよ」
桂が言った。
確かに棒で攻撃を受けながら、蹴りを繰り出す。
実戦的な動きは、ダークネスとの戦いに生かせよう。
「組手を頼めるかい?」
一刀に言われ、桂は頷いた。
その分、棒術は難しい…桂はゆるりと身構えた。
肩の力を抜いて、式夜はリラックスした様子でエウロペアと組手を行う。
手の内での取り回しが難しく、式夜の棒が釵を弾いた。
「接近戦で使える武術を体験したくての」
そう言うエウロペアに、式夜も指導しつつ自身も棒術の確認をする。
棒術の動きに、感心する式夜。
「棒なんてただ振ってればいいと思ったけど…っと、今度はこっちが空いてるな」
間合いが分からず踏み込んで来たエウロペアの足元を、式夜が叩いた。
「なんですぐ上手くなっとるん!」
エウロペアは思わず声を上げた。
剣一もそうだが、蓮二も戦いは我流である。
自分の体をどれだけ正確にコントロール出来るか、そういう参考にと考える剣一と、カッコイイ身のこなしの基本も、と言う蓮司と。
「直接俺達の役に立つ、とは思ってないんだけどさ」
「そうかな…っと!」
棒を上手く回しながら足払いが決まった蓮二は、満足そう。
剣一は構え直し、頷いた。
「なるほどな、人間相手なら理にかなってるんだ」
「無駄がないって言うか…試してみる価値はあるかも」
戦いについて話しながら、戦う。
二人で試うのも、少し新鮮。
槍にしろ、剣にしろ向きが決まっている武器である。
「棒術は面白い動きをするのだな」
習った型を試しつつ、優京は供助と実践訓練。
棒のどちらも使いながらの戦いに、優京は感心する。
「仕掛けて来いよ」
軽く供助は声を掛けて誘った。
お互い得意武器ではない為、有利不利はない。
落ち着いている優京相手に、供助は自ら踏み込むように仕掛ける。
-もしかして予習してきたのか-
供助の動きを見つつ、優京は受け流した。
だが、やや供助の方が慣れが早いようだ。
様々な武器を眺めながら、壱は感嘆の声を上げる。
「棒術も少し特殊なものを使うのね」
「…さあ、始めましょう」
真剣な眼差しで棒を構える司に気付き、壱が振り返る。
壱以上に真剣に型を学ぶ司に、壱も気圧されそう。
「…」
普段槍を使う司相手には無謀だったかしらと壱。
一通り型を学ぶと、さっそく対戦に挑んだ。
突きや棒の長さを生かした戦いには、司が勝る。
「全力で殺る気で挑んだ者の方が勝つんですよ!」
目が生き生きと、司は棒を壱に突きつけた。
不慣れながら潤子も、那月に手助けをしてもらいながら棒術の型を覚えてきたようだ。
組み手も、那月は潤子の動きを待つように。
「習ってようにやってみろ」
受け身の那月に潤子が振りかぶる。
慣れてくると、次第に潤子に笑みが戻った。
「本気で掛かって来ていいよ!」
「やらないよ」
怪我を心配して、那月が言う。
それでも負け時と挑む潤子を見て、那月は溜息をついた。こうも挑戦されれば、挑まずには居られまい。
しかしまだ潤子に後れをとる那月ではない訳で。
一通り習って準備運動を終えると、戒は氷霧と向き合った。
「始めるとしよう」
挑戦的に笑う戒に、氷霧は静かに棒を構える。
剣とは違う間合いの棒術に、氷霧は興味を惹かれた。間合いや突きを主体とした棒裁きに、やや違和感は残る。
「戒さんとは以前刃を交えましたが…普段とは違う獲物同士。こういうのも一興ですね」
ふと微笑み氷霧が言った。
勝負は一勝一敗、だが戒がやや押していたか。
「今度は私の勝ちだな」
そう楽しそうに言う戒に対して、氷霧もまた楽しそうに笑う。
●
道着も少し新鮮。
足運びを確認しつつ、曜灯は基礎をしっかり学ぶ。
「うん、確かに技につなげやすいわ」
離れた目標に接近し、技の確認をする。
舞踊は学んでいたが、武道は独学だという曜灯。
一方ナギサは空手ばかりだった。
「足裁きか、なるほど」
曜灯の言葉を聞き、ナギサも習う。
組手を頼むと、お互動作を確認するように組手を行う。
「…怪我をしないようにね」
ナギサは言ったが、次第に曜灯の組手も熱を帯びる。
学園の灼滅者の多くが独学であったが、それ故基礎を学びたいと考える。
「私の武器は元々穂先が重くて」
星希は、殲術道具についてそう話した。
構え、振りなどを学び自分の武器を思い返す星希。
「…それは?」
「これは櫂、エークだよ」
勇介は、手にした櫂を構えて言った。
槍より穂先の重い櫂の動きに、星希は目を奪われる。
櫂の動きを学びつつ、勇介は何かを心に刻もうとしているよう。
「いつか、この経験が役立つようにと思って」
勇介は、櫂を握る。
そういった様々な武器に歴史がある。
見聞きして、実際ヌンチャクを手に取って流希は源流と言われる意味を感じ取る。
「守りにも使うんですねぇ」
流希は型を教わりながら、頷く。
空手は学んでいたが、武器も動きにも興味をそそられる。
「組手ですか?」
「いや、止めておこう」
舞斗は流希に断ると、サイを手にした。
攻撃にも守りにも適したサイ、そして棒術…と一通り学ぶ舞斗。
「ベースは古武術系なんでね、異種格闘戦になるのは避けたい」
それより、丁寧に仕上げたいという舞斗に、雄哉も同意した。
雄哉もそれらの武器は触るのも初めて。
「使いこなせれば強力だけど、一歩道を誤れば自分に跳ね返るからね」
きちんと身についただろうか、と雄哉は組手の空いてを求めて隼人に声を掛けた。
組手ならば、隼人が断るはずがない。
オズウェルと伊万里は、二人ともヌンチャクでの型を習っていた。
「琉球古武術っていうと、ヌンチャクとかトンファーですよね」
そう伊万里が言っていた。
しかしいざオズウェルと組み合うと、伊万里の顔つきが。
「ホワァァァ」
「その顔、それが本気になった伊万里の力なのですね」
伊万里に乗ったオズウェルも、ヌンチャクで打ち合う。
真面目にやろうと思っていた伊万里も、つい笑い出した。
「ぷっ…あはははっ!」
「伊万里!その顔は卑怯ですよ」
オズフェルも笑い出し、ここは仕切り直しに。
山刀や釵、特徴的な武器を嵐は眺めながら手にする。
「琉球古武術、確か一つは王族で御座ったか」
そう言いながら釵を取ると、背後に仁王が立った。
「よぉ鳴神。組手の相手をしてくれねぇか」
組手が始まると、仁王は慣れた手つきで、ヌンチャクを使って攻撃を仕掛けた。
釵の爪を使って捌こうとする嵐。
「ハッ、やるじゃねえか」
型の一つ一つを体に馴染ませるように、仁王は攻撃する。
ヌンチャクを釵が受け止めると、仁王は笑った。
「捕り物の扱いは知って御座る」
嵐も笑う。
男子誰もが一度は憧れる、ヌンチャク。
「よく遊んだよなぁ」
太一は思いだしながら、型を習う。
熱志の習っているトンファーも、映画で見なれた武器だ。実際お互いに手合わせしてみると、思った以上に難しい。
「…くっ」
トンファーで攻めるのが困難な熱志は、守り重視で挑む。
このまま隙を見て打ち込み…と熱志が狙った所で、太一がバックスイング。
「…と見せかけて!」
股抜きからのすくい上げ…。
…が、失敗して悶絶の太一である。
「あ、ちょっと待って!」
むろん、容赦なく熱志の攻撃が決まった。
物珍しそうに、龍也はトンファーに手を伸ばす。
重さを確認していると、椿は棒を構えていた。
「りゅーやおにーさん、これでいい、かなぁ?」
「おー似合ってるじゃないか」
念の為、龍也は椿に防具を付けさせる。
一方元々武器は好きでは無いと言っていた光滋も、武を理解する為と学ぶ。
組手はそれぞれ三人二組。
「光滋くん、には…負けたく…ない」
懸命に椿は棒を振るが、トンファーの動きに面白さすら感じる椿相手。
防ぎ、攻める光滋は椿を圧倒した。
「じゃあ、光滋相手には遠慮なく」
今度は龍也に代わり、組手に挑んだ。
先ほどと違い構えをみせた光滋。
遠心力を利用してトンファーを使い、蹴りを繰り出す。
「これは本気で掛からないとな」
そう呟き、龍也は光滋を見据えた。
棒術とトンファーとを見比べ、夜トは棒を手に取った。
「んじゃ、俺はトンファーで」
舜はトンファーを手に取る。
舜は実家でも棒術を習っており、それならとトンファーを選択。
「…舜の流派は、色々と取り込んでいる感じ、だったよな」
「あーどうだろう」
技までは、と答える舜。
一通り習うと、さっそく舜と夜トは組手を始めた。
「これってリーチ的に俺が不利じゃん?」
向き合って気付いた、舜。
-これは手加減攻撃の延長線か-
棒術を確認するように、舜と打ち合った。
同じように葉月は棒、司はトンファーを選んで見た。
「薙刀や槍のようでいて、また違う動きなんですね」
型を習いながら、葉月は楽しそうにしている。
舜の話を聞いて、葉月も帰ったら棒術の自主練をするのもいいと考える。
「こちらでは、箒を使ったり鳥を捕まえる事を主体とした術もあるとか」
司がそう言い、くすりと笑う。
組手の相手は葉月と。
「さぁ貴夏さん!手加減はなしでございましてよ」
接近戦が得意な司は、自信ありげ。
葉月は他の人の訓練や型を見て、習ったものを生かそうと構える。
様々な武器を前にして、シェレスティナは目を輝かせる。
ひょいとミカエラは、棒を手に取って振ってみる。
「こんな感じ、かな?」
振りながら横を見ると、自在に回して振る熟練者達の姿。
一方かなめは、ヌンチャクを手にする。
「ヌンチャクならお任せ!」
やはりかなめも、憧れのスターの姿が脳裏にあるらしい。
マテリアルロッドだと思えば、トンファーも同じようなものかも…と言いかけて、ミカエラはそれがヌンチャクだと気付く。
振り回すかなめにシェレスティナは歓声を上げた。
「きゃー!かなめちゃんカッコイー!」
「…ホアタッ!」
気付くとシェレスティナが、床に倒れていた。
慌てて初子を呼ぶかなめ。
「かなめ、こっちで組手でもやってみようか」
ミカエラはさりげなく誘うと、組手を始めた。
団扇で扇いでいると、初子の視線の下でシェレスティナが目覚める。
「わたしも…お兄ちゃんや皆みたいには、まだまだ、です」
しょんぼりした様子で初子が話す。
兄の姿が脳裏にある、という初子。
「良かったら、手合わせ…お願い、出来ますか?」
シェレスティナはこくりと頷き、立ち上がる。
レンタルした拳法着を身につけ、立夏は器用にヌンチャクを振る。
「どーよ瑞稀っち、オレかっこいいっしょ?」
自分では決まったと思ったポーズなのに、瑞稀は今日子とお話し。
ぎこちなく振る瑞稀であったが、慣れがあるのを見抜く今日子。
「もしかして、棒術をやっていたのかい?」
「はい、随分前に…」
瑞稀は、それが慣れというより染みついていると感じて居た。
おいてけぼりの立夏は、隼人に視線を送る。
「どうした、ヌンチャクが当たったのか?」
きょとんとした隼人はこういう正確な訳で。
三人というのは組手にアンバランス。
「隼人はオレの相手してくんネ?」
「ほう、組手の相手は断らんぞ」
にやりと隼人は棒を手に笑う。
今日子は瑞稀と向き合い、型を習うと手合わせを行う事にした。
「遠慮無く打ち込んでくださいね」
「もちろん、手加減などする余裕はないだろうからね」
今日子も瑞稀から漂う緊迫感に、今日子も気を引き締める。
習う武器を選ぶ段になって、真っ先に手を上げたのが千鳥だった。
「はいはい!釵って武器を使ってみたいです」
千鳥が挙手すると、ユリアーネも手を挙げる。
先が分かれた釵は、短剣や十手に似ている。
「え?逆手で持つの?」
ユリアーネは構えを教わりながら、感嘆する。
手の中でくるりぐるりと、回して突いて。
「変わった武器もあるもんやなぁ」
「慣れてくると楽しいかも。…後で組手もお願いね」
ユリアーネは千鳥に言う。
そんな二人の横で、六尺棒を構える兼弘とアレクセイ。
「思ったより長いなあ」
兼弘は斬鑑刀のように振り回すが、勢いがない。
「先端重量もありますもんね。…打ち下ろしは強いでしょうが」
とアレクセイも振って確認。
やはり振るより突きがメインになりそう。
何だかんだと思考しながら型を習う二人。
「なるほど、突きか」
「長沼先輩はよく軽々と振れますね」
慣れてきたのか、振り回して動きを習う兼弘に感心するアレクセイ。
見習いながら、アレクセイも棒術にのめり込む。
暁は討魔は、共にトンファーを習っていた。
「クルクルと回って、斬新な武器でござるな」
「思わずぶつけそうでござるな」
討魔がそう言い、暁に笑ってみせると…鈍い音が。
自分のトンファーがぶつかり悶絶する暁。
ふう、と深呼吸すると構え直す暁。
「大丈夫でござる。……影守殿には負けられぬでござるよ」
口調被り、髪の長さ被り、身長は負け…と暁は悔しさを胸に。
討魔は、ふ…と息をついて笑う。
「討魔忍法の技、ご覧頂こう」
「何をっ、四方祇護陣流、味わって頂く!」
熱い戦いが、今始まる。
馴染み無い武器を学べるあって、古武術学部の生徒達は興味津々。
「振り回しての殴打や棍棒のような打突も可能、近接格闘最強ではあるまいか」
演舞を見て、感嘆する正流。
防具を付けての組手は、同じくヌンチャクを手にした広樹に頼んだ。
「お手柔らかに」
「お願いします」
礼をして、広樹も構える。
遠心力を意識して、引きつけての回避を試みる正流。
攻撃しながら、魔術との融合について思案する広樹。
「考え事は危険ですよ!」
持ち手を撃ちつつ、正流が足を払った。
二人の戦いに、トンファーを構えたまま京音も見取れる。
「すっごい迫力だね」
恐る恐る振る京音であったが、皆習うより慣れろ派。
集中して型を習っていた紗織に声をかけた。
「もう組手を始めてたのね」
紗織はぱっと顔を上げ、京音と向き合った。
習った事をどんどん組み込んで攻める、京音。
「うん、慣れてきた」
「左手が空いているわね」
紗織は京音の動きを見つつ、指摘。
先ほどから受け流している紗織であったが、攻めとなると隙が出る。見ていた隼人が、ぽつりと指摘。
「田抜、剣と違って棒術は自在に使わないと長さが無駄になるぞ」
「うう、分かってる、さっき言われたとこよね」
しゅんとなった紗織。
そして棒術を誰より真剣に見ていたのが、久遠である。
一通り習うと綱姫と組手を行ってみた。
「京八流とミキシングでいきますえ!」
跳躍で躱し、攻める綱姫。
久遠は終始受け身に回っていた。
終わった二人に、サズヤが拍手を送る。
「渡辺、棒はもっと遠心力や反動を生かすといい」
「戯は棒術を習っていたのか?」
サズヤが聞くと、久遠は頷いた。
綱姫もまた自分の流派に棒術があったが、失伝していた。
「何か掴めればええけどと思って習うたけど、性に合うとるみたいやわ」
綱姫は言った。こうして習うことは、大きい。
それぞれ学部の仲間は、古武術を学んだ経験があるようだ。その動きを見ているだけでも、いい経験になるとサズヤは感じて居た。
皆の動きを見て、桜は目を輝かせる。
「どれもカッコイイなぁ…俺なんか武術習った事ないもんな」
桜が呟くと、自分も独学だと亨。
「刀なら使っているが、棒術は慣れないな…扱い難い…!」
亨は剣とのリーチの違いに、手こずっている様子。
それでも、動きが次第に体に馴染んでくる。
「二人とも、組手をしてみるか?」
サズヤに声を掛けられ、桜が笑顔になった。
にやりと笑う桜は、お手柔らかにと二人に言う。
「慣れては来たが、実戦に使える程じゃないぞ?」
「俺も覚えた通りには出来ない」
サズヤが亨に答えて言った。
すっかりやる気の桜は、生き生きとしている。
「武器を交えて語り合うのもいいかもしれないな」
亨はそう言うと、武器を構えた。
作者:立川司郎 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年6月23日
難度:簡単
参加:67人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 13
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