武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
今年の修学旅行は、6月23日から6月26日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
また、大学に進学したばかりの大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。
修学旅行の行き先は沖縄です。
沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
沖縄でも屈指の豪華さを誇るリゾートホテルがある。そのホテルはプライベートビーチを擁しており、かりゆしビーチと呼ばれている。
モクマオウの樹が立ち並ぶ海岸を抜けると、目が眩む程の白い砂浜と青い海がいかにも南国に来たと実感させられる。
プライベートビーチとはいえ、ホテルの利用者以外の一般客にも開放されており、誰でも海ならではのアクティビティを体験できるのだ。
そんなかりゆしビーチでは昨今、海の上を飛ぶ人影が目撃されるという。
一体何者が、何の目的で海上を飛行しているというのか。
不可解な事象の正体とは……!?
「『フライボード』っていうのがあるんだって!」
迅速なネタばらしだった。
観澄・りんね(高校生サウンドソルジャー・dn0007)が修学旅行のしおりや『沖縄』と表紙にでかでかと主張されている観光ガイドブックを抱えながらキミに話しかけている。
フライボードとは、数年前にできた最新のマリンスポーツのひとつだ。
両足にノズルが付いた専用の器具を装着し、それらとホースを接続した水上バイクからの排水の力を得て水上数mを飛行するのだ。
垂直はもちろん、あらゆる方向に移動でき、飛行の自由度はなかなか高い。
上達すればイルカのような動きで『泳ぐ』ことだって可能だ。
自在に操るには少しの練習とコツが必要だが、簡単な動きだけならすぐにマスターできるとのこと。
さらに、フライボードと似たような仕組みで水上を滑空する『ホバーボード』というものもある。
こちらは後方にホースと噴射口が装着されたスノーボードのような形のボードに搭乗し、進行方向に対して横を向きながらスタイリッシュな水上の冒険を楽しむことができる。
スノーボードやスケートボード経験者ならこちらのほうが取っ付きやすいかもしれない。
フライボードが飛行や滞空、ホバーボードが滑空や滑走というイメージが近いだろう。
飛ぶのが怖いというようであれば、『ウエイクボード』もある。
これはスノーボードに近い形の板にプレイヤーが乗り、水上バイクなどの小型モーターボートに曳航されて水上を進むウォータースポーツだ。
ただ引っ張られるだけ? いやいや、実際はバランスを取るのが難しく、そして奥の深い『スポーツ』なのだ。
乗っているだけでも爽快感があるが、引き波を使ってジャンプしたりトリックをキメたりする楽しみ方もある。
どれも存分に海を楽しめるのは間違いない。
ぜひ、普段は味わうことのできない体験をしてみてはどうだろうか。
「どう? もっと修学旅行が楽しみになってきたよね!」
りんねはフライボードの紹介ページを差し出しながら目を輝かせている。
「3日目の自由行動の時間に行けるみたいだから、その時に一緒にやってみようよっ!」
今すぐにでも沖縄に飛び出したい衝動を抑え切れない様子で手を差し出す。
もし予定が確定していないのならばりんねと、あるいは友人たちと水上を飛んでみてはどうだろうか。
「私はフライボードにしてみようかな。そうそう、写真だけじゃわかりにくいから動画もあるんだよ! ほらっ!」
……彼女のプレゼンテーションはまだまだ続きそうだった。
●レッツマリンスポーツ!
「よし、誰が一番ホバーボードで華麗に舞えるか勝負だ」
仁王立ちで宣言した煉火に応じる希沙と狸姫。
「最初は何より慣れないと。まずバランス……ちょっ、これ、難しぶわあぁっ!?」
「ぶちょーは焦りすぎなのかなっ? こうして大きな円を描いて上昇して……うわっぷ!?」
「ほう、いきなり大技は狙わずに狸姫くんの様な動きをすればいいのか――よし、立てた!」
「煉火先輩も狸姫ちゃんも上達早いなぁ。よ、よし……!」
希沙も見ているだけでは終われない。
少し腰が引いた格好で乗り始め、思いの外あっさりと綺麗な姿勢で滑走しだした。
「おお、うまいな希沙くん!」
「な、なんとか」
慣れてきた3人は、煉火曰く『テレビで見たくるくる飛ぶ奴』にトライ。
先ずは希沙だが。
「ってえっ、希沙くんすごい! 今のすごいぞ!!」
「綺麗な動きなのだねっ! ボクも負けじとチャレンジするのだ!」
空中旋回も鮮やかにこなすのには2人も驚き、そして火を付けた。
「コツは掴んだぞ、ここだ! 超高度ジャンプ!」
「水中ダイブ! 更に水上に上昇……ってぶちょーこっちにこないでー!」
「あっ狸姫くん! その位置はぶつかうわーっ!?」
「ひゃー! 見た見た? 今さきすごい――あっあっ先輩あぶなぶっ」
衝突は回避したものの落水して大きな水柱が上がり、その飛沫が希沙をも巻き込み無事海中の2人の仲間入りを果たしたのだった。
海面に顔を出した一行はお互いを見つめ合い、大いに笑った。
「ところでこの勝負」
「誰の勝利なのかなっ?」
「ふはは、ボク達皆が審判。つまり、全員が華麗だと思えば全員の勝利なのである!」
勝者たちはハイタッチで互いの健闘を讃え合った。
「え、あ、あれ? リャーナ、マリンスポーツって聞いたんですけどぉ……?」
「どう見てもマリンスポーツじゃろうが!」
ビーチに着く前までは泳げるものとうきうきだったリャーナは、真っ青になっていた。
「なんか、飛んでませんかぁ!?」
人が泳いでおらず、飛翔していたから。
「三雨さん、もしかして詳しい話を聞いていなかったんですか?」
アイスバーンの問いに、リャーナはカクカクと頷く。
「早速全力全開で飛びに行くのじゃ!」
「負けないぞー! ヤッホー!!」
「あれっ、いつの間に両腕が――い、いぃやぁ~~っ……!」
リャーナはシルビアと雛子に挟まれて海へと引き摺られていった。
「ストちゃん、ゆきと一緒に行こっ!」
「ええ、いいですわよ。あの太陽を目指して飛びますのよー!」
結月とストレリチアも遅れるものかと駆け出していく。
「ここで秘密兵器さんの登場です。行ってください、ドローンさん!!」
海上を飛び回る仲間たちの撮影に最適の道具だ。
アイスバーン操るドローンに見守られながらシルビアが飛ぶ。
「にゃははは! 妾はイカロスのように太陽を目指すのじゃ!」
それを聞いたストレリチアはずずいと空中でシルビアに並んだ。
「同じことを考えてますのね、しぃ! こうなったらどちらがより速く、高く飛べるか競争ですわっ!」
「受けて立つのじゃ、直子!」
そんな2人を眺めつつ、結月はようやく慣れてきたようで。
「もう少し高く飛べるかな? ……あれ? もうこれ以上行けない? ……あ、あっ!」
迂闊にも高い場所でバランスを失ってしまった!
「おっと、大丈夫ですか?」
「リャーナちゃん!」
何だかんだで上手に飛べているリャーナが助けに来てくれ、結月は落下せずにすんだ。
「一度高度を下げて体勢を……あれ?」
「えっ、ええ! 落ちるぅっ!!」
かと思いきや不意にリャーナの水流が不安定になり……結局2人揃って飛沫に消えた。
一方雛子は。
「フッフッフ! このスリルがたまらないぞ!」
うつ伏せの姿勢で海面ギリギリを飛ぶという遊びを見出していた。
「悪い子はいらっしゃいませんかあー!」
「その声は!」
イルカのようにホップしながら近付くのはストレリチア!
「私は海の空賊。攫わせて貰いますのよ!」
「太陽目指してたんじゃないの!?」
海中から飛び出した瞬間に上から雛子をキャッチ!
「な、なにをするん」
「とりましたのよー! あら?」
「「うばばばばっがばっ!」」
失速及びバランス喪失によりエスカレーターのように沈んでいく2人。
「わっ!? みなさん落ちちゃいました!?」
ドローンを退避させ、浮き輪を持って水面に近付くアイスバーン。
その瞬間、何者かに脚を掴まれた!
「ひゃあ!?」
「ゲットだぜ! あはははー!」
雛子だ!
素早く体をホールドし、そのまま深い場所まで移動して。
「高橋さん!? いつの間に海の空賊に――」
「一緒に飛びたかったのだ! いざ、ぎゃー!」
バランスが取れず即落下しました。
「お、アイスバーンも来たのじゃな?」
声を掛けられ上を見ると、シルビアと結月、そしてリャーナが揃って飛び、手を降っていた。
「今度は全員で高く飛ぶのじゃ! っと、おお!?」
一瞬の油断が即顔面ダイブになるのがフライボード。
水面から顔を出したシルビアは大きな声で笑い、皆も同じように笑った。
「それにしても、みんな可愛いな」
集まったクラスメイトを見て、恵は思わずため息が出る。
皆それぞれ自慢の水着を着て、体型をうまい事主張し、実に女の子しているのだ。
「俺だけ悪目立ちしてないかなぁ……」
無論恵も女だが、中性的な顔立ちなので服を着ていればハーレム状態と思われてしまうやもしれない。
「何言ってるのー。恵ちゃんも可愛いよ」
「そうそう、恵も結構注目されているようだし。勿論いい意味で」
さりあと朔耶の言葉に、恵は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
「そういえば水着、琴弓さんは学校指定のだよね?」
「え? 学校の行事だし当然だよね?」
りんねの疑問に躊躇なく応える琴弓。
「確かに動きやすいけど、お色気が足りないですねー」
「多少はいいけど、お色気過ぎは駄目なんだよ」
ビキニ姿で軽くしなを作る悠花を叱る委員長の図。
「さて、フライボードの順番どうしよう? テストの点数順とかで……」
「トップバッターいっきまーす!」
「悠花さん、私もっ!」
迦楼羅の案は即棄却された模様。
一番槍の悠花、バランスに気をつけるも、
「よっ、ほっ、にゃっ……にゃー!?」
うまく飛べずに着水。それを見ていたりんねが続く。
「とぉりゃあああ!」
浮遊と着水を繰り返しながらも、かろうじて飛んでいるといえる状態に。
「ここでも煌めくヤマカン100%というやつですね!?」
「だね。ここでギター弾けたら最高がぼごぼ」
コントロールを忘れ、りんね無念の退場。
迦楼羅は早速戻ってきたりんねに質問モード。
「どうどう? 楽しい?」
「これまでにない爽快っぷりだよ!」
「舞姫は泳ぐのは不得意なのじゃが、大丈夫じゃろうか。怖くはないのかの?」
「沈まないし、きっと怖さも吹っ飛ぶから大丈夫!」
りんねからピースサインを受け取り、舞姫はそれならばと立ち上がった。
そして少しの練習の後。
「お、おお、おおお……!!」
舞姫は空を飛んでいた。バランスを取るのに必死で体が硬直して中々周囲を見渡す余裕はないが、確かに飛行していた。
「舞姫さん顔がこわばってるこわばってる」
「む、その、一瞬でも油断できんのじゃ……!」
そんな表情も悠花のカメラに収めていく。
「この浮遊感、遊園地とかとは別物なんだよ」
かなり自由度の高い飛行体験は、そうそう味わえないと琴弓は感動しながら体をコントロールする。
ふと近くを見てみると、なんと朔耶が宙返りを決めていた。
「すごい、もうあんな習熟したなんて。ちょっと羨ましいんだよ」
「琴弓もセンス良いみたいだし、すぐ出来るようになるかもよ?」
「じゃあ、少し教えてもらおうかな」
その近くでは迦楼羅が格闘していた。
「フライボードー!」
飛べる事は飛べるが、中々思い描いたようにはいかない。
「海が私を空に行かせたくないのね……」
「ねぇ、それなら一緒に飛んでみない? なんとなくわかってきたし、コーチングもできると思うよ」
諦めかけていたそこへ伸ばされた恵の手を、迦楼羅は思い切り掴んだ。
それが功を奏したか。
「空を飛んでいるはずなのに、空の上を歩いているようだったの!」
「俺も楽しかったよ」
うまく飛行でき興奮する迦楼羅と恵は熱い握手を交わした。
各々が堪能し尽くした頃。
りんねとさりあはビーチで一休みしていた。
「さりあさん、いい飛びっぷりだったね!」
「あいどるぱわーのおかげかな! それにしてもやっぱり沖縄はあついね! 日焼け止めきちんと塗ってある?」
「もちろん! けど焼けてもいいかなって思ってて」
「そうなんだ。でもだめだよー!」
ビーチは紫外線が強くケアは重要との話に、りんねは感心しきりだった。
その後さりあは「もう一回どう?」とりんねを誘い、仲間たち合流しまだまだ海を楽しむのだった。
誰が言い出したか高度勝負。
「勝負すんなら最下位がトップにサータアンダギー奢りなっ」
掌に拳を打ち付ける兎紀だが、慧一と彰二は浮かない顔。
「けーちゃにしょーちゃ、大丈夫ー?」
「ううう……絶叫系とか苦手なんだけど……」
「は、はあ!? 俺は別に問題ねーし!?」
「震えてるよね?」
「……うるせーこれは武者震いだよッ!」
心配する勘九郎に背中を向ける彰二。
「大丈夫だって、落ちても海だし痛くねーって!」
「でも……」
「安全なスポーツだし、きっと楽しめると思うよ」
冬人に背中を押され、慧一も決心したようだ。
暫くの練習時間を設けて、いざ本勝負の時!
「最初俺! 俺やるー!」
元気よく挙手した勘九郎は、「うおおおお!」と叫びながら一気に浮上!
「勘、バランス感覚凄いなあ。もうあんな高さまで」
「感心してると負けるぜ、冬人!」
イタズラっぽく笑いながら後を追う兎紀。
「いっくぜー……うっひょおおお!」
あちこち旋回しながら、しかし上昇していく兎紀。
「次は俺かな。兎紀にも負けられないしね――わ、すごい!」
想像以上に力強い浮力に驚きつつも、しっかりと舵を取る冬人。
「彰二も慧一もどうー? 大丈夫ー?」
上からの声に「大丈夫に決まってる!」とぶっきらぼうに返す彰二は、
「もーこうなったらヤケだヤケ、いけるとこまでいってやんぞ畜生ッ!」
必要以上に上を見つめながら浮上を始めた。
「練習では全然うまくできなかったけど……ええい、ままよ!」
最後に慧一がフライト!
ついに全員が空に集まった。それぞれ笑顔を浮かべるが、これは勝負。
不意に誰かが頭ひとつ抜き出て――やがて全員力尽きたように落下していった。
「ぷはっ! 慧一と彰二も見なおしたぜ。で、勝ったの誰だーっ!?」
「最後、けーちゃが飛び出したよね!」
「俺も見た。間違いなくトップだね」
「ほ、本当!?」
小柄で細身だったのが物理的に、そして恐怖が消え楽しさを覚えてきた事による精神的な思い切りから最高高度を叩き出したのだろう。
「最下位はうさぎちゃんだなー」
「あー、最後まで結構フラついてたよな兎紀!」
すっかり余裕を取り戻して笑っている彰二を「言うなって!」と抑えながらも、
「マジかー……。ま、二言はねぇ。奢ってやるからついて来い!」
「まだ時間あるし、もう少し飛んでからでも」
「だな!」
笑い合う仲間たちに、慧一は小さく感謝の言葉を呟くのだった。
「おっ、おっと? 思った以上に難しいっすねこれっ! うわ、戻れっ、もど、ぎゃー!」
「助けてやりたいが自分の事で手一杯だ! 生きろ虎!」
「そんなっ、りゅー!?」
初のフライボードに苦戦する虎次郎と龍治。
早速暴走させている虎次郎だったが、どうにか着水し事なきを得たようだ。
「はぁ、助かったっす……」
「俺は飛行が安定してきた。気持ち良いもんだな」
「ブザマなものだなぁー! とらじ、りゅーじ!」
「……上からあの声が聞こえてこなければ」
龍治たちの頭上では、既に乗りこなして優雅に空中遊泳と洒落こんでいるくるりが増長していた。
「ふははは!! 高い! 高いぞぉー! 世界の頂点に君臨するに相応しい眺めである!」
「馬鹿め! 身に余る高さを求めた者には天罰が落ちるっす!」
「聞こえんなぁ! 見よ! 見上げよ! この私を! 首が痛くなるほどに! この優雅さに! 目を潰すがよい! はっはっはー!」
普段、身長的に見上げる立場にあるくるり。
だが今はくるりこそ頂に存在し、くるりこそ下界を睥睨する存在なのだ!
「あーハイハイうるせぇよすげぇな! 良かったね!」
「はっはは……はぁぁあああ!?」
天下は終わった。
べちーん、と水面に大の字で落ちたくるりを見て、しかし龍治はそれがたまらなく可笑しくて。
「っ!!」
爆笑を抑えきれず自分まで落ちてしまった。
「って、りゅーっ、お前もっすかーっ?!」
「いやだってよ、くくっ!」
「ええい、もう1回だもう1回っ!」
「おお、すげー! 飛んでる! 飛んでるぜ!」
フライボードに慣れてきた武流は、全身に感じる風と浮遊感に感動を抑えられなかった。
「調子はどうだ、奏音?」
そのまま奏音がいる場所まで移動してみると。
「武流くんも随分慣れたみたいね!」
「なんだ、余裕そうじゃないか!」
「まぁねー♪」
実は奏音、思ったより高く飛ぶフライボードに腰がひけていたのを「見栄張った手前みっともない姿は見せられない」と自分を奮い立たせてここまで練習を積んだのだった。
「そうだ、ちょっと見てて」
折角の機会、奏音は回転を加えたループをして見せた。
どう? と自信と自慢に溢れた顔でウィンク。
「すごいな! 俺も結構動けるようになったんだぜ」
と、今度は武流がムーブを披露。
しかもそつなくこなしているが、実は高度のように思える技だ。
「う。な、なかなかイケてたよ?」
「そ、そっか?」
「あたしほどじゃないけど、ね♪」
「オレは高い所平気だけど、ミサトはどうかなー? 泣いちゃうんじゃね?」
「そ、そんなことないよ! 全然平気だもん! 楽しそーじゃん!」
仲良く言い争うアキラと海砂斗は交互にフライボードに挑戦する事に。
まずはアキラ。
「おおっ、テレビで観るよりもすげー! なんだ簡単じゃん!」
「いけーがんばれアキラ!」
海砂斗の応援を遠くに聞きながら飛翔するアキラ。
「このままテレビの技を……あ」
「とべーアキ……あー……」
べしゃりと落ちていくアキラを、海砂斗は遠い目で見送った。
さてお次は。
「へいへい、びびってるぜー♪」
「びびってないから!」
声援を受け、いざ出発する海砂斗。が。
「っひゃーー!! ぎゃーーこわい! ほうきとちがうこわいぎゃー!」
「雄叫びかー? ……お? 結構うまいじゃん! カッコいいぞー♪」
空は飛び慣れているためか、飲み込みは早そうだが……。
「そ、そっかなでもこわい!」
「本当に飛んでるわね……楽しそうじゃない!」
「わわ、なんか叫びながら飛んでるけど、すごいね……」
「……大丈夫かしら」
「だ、大丈夫だよっ!」
実際に見て目を輝かせる曜灯と、少し後退る勇介。
自分に喝を入れて――簡単な講習を受けてからいよいよ初飛行へ。
「手のチューブで姿勢補助するのね?」
「す、すごい、ほんとに飛んでる!」
ひとつひとつ確認しながら徐々に高度を上げていく。
「曜灯の方はどんな感じ?」
「こっち? ご機嫌よ」
「さっすがだね!」
最初はミスも多かった勇介も、随分慣れたもの。
曜灯は舞い踊るような動きも出来るくらい余裕だが。
「フォーメーション組んでみる?」
「うん、ぜひっ! ばっちり決めてみせるよ!」
「いいわね? せーのっ!」
対照的な水平方向のトンボ返りを連続して繰り出していく。
「ぃやっほー!」
「悪くないわね。うん、気持ちいいわ」
完璧なコンビネーションに自然と心は踊った。
「こ、これは思った以上に難しいですよ……」
ホバーボードをチョイスした流希だったが、制御にかなり苦戦しているようだ。
「いっその事ずっと機首を上に向けていれば落ちはしなって、なんで反転するんですか……!?」
策士策に溺れるとは。
「おっ、大丈夫か?」
そこへフライボードで『泳ぎ』かかった行部が流希を引っ張りあげた。
「これは、どうも。今イルカのように泳いでいたようですが……」
「へへ、前から気になっててね。実際やってみたらこれが本当に気持よくて!」
「ボクたちもやり方を教えて貰おうと思ってたところなの」
後からやって来た楠乃葉と、
「上下反転ならボクも最初にやっちゃったんだよなー」
ザ・相撲少年といった体型のハリマも合流した。
ちなみに楠乃葉とハリマは同学年同キャンパスの別クラスで、話が合っていたそうな。
そこへイルカ泳法の行部を見かけて気になり、今に至る。
「まだちょっとバランスに不安があるけど……あわわっ!? とっとっ……とっ! このふわふわ感、すごく癖になるのよ」
崩れそうになる体勢を餃子な尻尾でうまくバランシングを行う楠乃葉。
水餃子にならないか不安だ。
「ホバーボードはどんな感じなの?」
「いやはや、こちらもなかなか手強くて」
それでも爽快だったと流希は語った。
「いつか海の上だけじゃなくて、陸地でもこんな小型の機械で空飛べるようになるのかなー」
「それはロマンがあるなぁ。さ、今は海の上のロマンの続きといこうぜ!」
ハリマの夢に共感しつつ、行部たちは再び海上の旅に出るのだった。
作者:黒柴好人 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年6月25日
難度:簡単
参加:34人
結果:成功!
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