
大縄跳び。
長縄を2人で回し、それを大勢で飛ぶ縄跳びのこと。
運動会まではいかなくとも、学校の小行事としてクラス対抗などを行うことも多い。
「多くの数を、どれだけ多くの人数で跳べるかを競う、かぁ」
休日だというのに小学校のグラウンドに集まって大縄跳びの練習をする子供達を眺めて、ハンチング帽を被った少年は1人呟いた。
子供達から少し離れた場所にある鉄棒に歩み寄り、そこにひょいと飛び乗り腰掛けて。
跳んだ数を数える声を聞きながら、ゆらりゆらりと身体を揺らす。
誰かが躓いたのか、縄が一度止まって。
励まし合う楽しげな言葉が交わされてから、再び数えの声が響き始める。
それをぼーっと眺めていた少年は。
にやりと口元を歪めると、胸ポケットから小さな手帳を取り出し、開く。
そして誰にともなく話を始めた。
「それはとてもとても不思議な話。
大縄跳びをしていたら、いつの間にか1人増えていた」
物語る言葉につられるように、跳んでいる子供達の真ん中に、男の子が1人増える。
誰も気付かずに縄は回り続け、その増えた男の子は跳びながら前の子供に近づいていく。
「だけどすぐにまた元の人数に戻って」
そしてその手のナイフで背中を刺すと、絶命した子供はその場に倒れ、縄が止まる。
「どんどん跳ぶ人がいなくなって」
驚いて駆け寄る子供に、紅く染まった刃が翻り。
「いつしか縄もなくなって」
やっと事態に気づいた子供達が悲鳴を上げて逃げ出すのを、男の子は素早く追いかけ、縄をも切り裂き、殺す。
「そして大縄跳びは終わっていた」
死体が転がるだけの紅く静かなグラウンドで、男の子はナイフを手に立ち尽くす。
その光景を眺めながら、少年は開いていた手帳をパタンと閉じて。
「とてもとても不思議な話」
愉しそうに笑いながら、ひょいと鉄棒から飛び降りた。
「……っていうタタリガミのお話だよ!」
目深にかぶった帽子の下でからからと笑いながら、絡々・解(白紙の上・d18761)は灼滅者達を見回した。
その足元に座って見上げてくるのは八鳩・秋羽(小学生エクスブレイン・dn0089)。
視線に気づいた解は、首を傾げてから、すぐにぱあっと表情を輝かせて。
「アメちゃんだね!」
言いながら、秋羽の手にころんと飴玉を転がした。
そして灼滅者達へと向き直る。
「接触できるのは、タタリガミが都市伝説を生み出した直後からなんだってさ!
増える前に倒せればいいのにね! それだと気づかれて逃げられちゃうんだって!」
それより前にグラウンドにいることや、子供達だけに接触することは問題ないらしい。
ただ、都市伝説の出現条件からすると、子供達全員を先に逃がすことはできない。
さすがに灼滅者8人だけでの大縄跳びは、人数が少なすぎて駄目なようだ。
「グラウンドには16人の子供がいるよ! 縄を回してるのが2人、跳んでるのが14人。
あ、言わなくても分かった? そりゃ、1人じゃ回せないし、3人だと回し辛いもんね!
まあともかく、この16人を無事に逃がしてあげられるといいよね! ね!」
子供達の無事を優先するなら、出現条件を満たすことや、都市伝説が現れてからの対応なども考えなければならないだろう。
「都市伝説はね、普通の男の子の姿をしてるんだって!
でも、解体ナイフなんて持ってるから、他の子との見分けは簡単だよね!
近くにいる子から殺そうとするみたいだから、気を付けよう!」
そして、続けてタタリガミの説明をしようとした解の服を、秋羽がくいっと引っ張った。
「アメちゃん?」
問いかけに、ふるふると首を横に振って。
「……このタタリガミ、前にも見たこと、ある」
「ふぅん?」
「逃げるの、優先するから、こっちから何もしなければ、そのまま逃げる」
前と一緒、と言う秋羽に、解は少し考えるような仕草を見せてから。
灼滅者達に大仰に両手を広げて見せながら、笑った。
「ま、その辺をどうするかはみんなで考えればいいよ」
難しい話は後とばかりにからから笑って見せて。
「とりあえず都市伝説退治、いってみよう!」
そう締めくくった解の横で、秋羽もぺこりと頭を下げた。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461) |
![]() 篠村・希沙(暁降・d03465) |
![]() リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213) |
![]() 絡々・解(白紙の上・d18761) |
![]() 七塚・詞水(ななしのうた・d20864) |
![]() 糸木乃・仙(蜃景・d22759) |
![]() 炎帝・軛(アポカリプスの宴・d28512) |
![]() 夜神・レイジ(元炎血の熱血語り部・d30732) |
●大縄跳びを始めましょ
夜神・レイジ(元炎血の熱血語り部・d30732)はその小学校の校庭に足を踏み入れた。
ぐるりと見渡せば、サッカーのゴールが両端に1つずつ。
高鉄棒を備えた砂場に、用具倉庫と水飲み場。
うんていの横には、今はまだ誰もいない鉄棒が並んでいて。
校庭を囲むそれらを確認してから、レイジは賑やかな一団へと視線を向ける。
校庭の真ん中で、子供達は声を掛け合いながら楽しそうに大繩を跳んでいた。
順に並ぶうちの1人が大繩の中に入るや否や、誰かが引っかかって、止まる。
残念そうな声と励ます声が交わされ、そして次を始めようと動き始めて。
「練習熱心で素晴らしいじゃあないか!」
大仰な仕草で話しかけた絡々・解(白紙の上・d18761)に、子供達は揃って振り向いた。
「あら、楽しそう……
ね、私も少し混ぜて貰えないかしら?」
そして解の横からリュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)が進み出る。
興味津々輝く瞳は緑色で、肩の辺りで揺れる金髪も含め、子供達には珍しい色合いだ。
だが、リュシールの親しげな所作にラブフェロモンの効果も加わり、子供達はその色を好意的に捉えて。
「きれいー。がいじんさん?」
「僕らの学校に何しに来たの?」
「学校見学なの。私、今度日本に引越すかも知れないんだって」
「そっちのピンクのお兄さんも?」
「あはは。僕が小学生に見えるのかい?」
「見えないー」
あっという間に解とリュシールを囲んで、楽しそうに話しかけてくる。
「僕も混ぜてください!」
そこに、七塚・詞水(ななしのうた・d20864)も駆け寄った。
「僕もやりたい。まーぜーて!」
「わたしも縄を跳びたい」
御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)と炎帝・軛(アポカリプスの宴・d28512)も続いて、ラブフェロモンを使いながら子供達の輪の中に入っていく。
さらに、糸木乃・仙(蜃景・d22759)が大繩の片方を持つ子へと近づいて。
「頑張ってるね。でも、自分達も跳びたくない?」
みんなで跳ぼう、と盛り上がる子供達を視線で示し、そっと手を差し出した。
「良ければ変わるよ?」
「わたしも回すん変わるで」
篠村・希沙(暁降・d03465)も、もう片方を持つ子の横に屈み込んで笑いかける。
子供達と共に縄を跳ぶには背が高すぎると判断しての行動だ。
どうする? と伺い合う2人は、迷いながらも提案に惹かれているようで。
「一緒に跳ぼうよー。
それに、回してもらったらその分、たっくさんの人数で飛べるよね」
だから、裕也がその背中を押すように笑顔で誘いをかけると、すぐに大繩は仙と希沙の手に譲られた。
「じゃあ僕は皆が跳んだ数でも数えようかな?」
「ちゃんと数えろよー、ピンク兄ちゃん」
「任せてよ! 1の次は2、2の次は4だね!」
「ちがうよー」
解がおどけながら、子供達をさり気なく鉄棒のある場所から遠ざけていき。
「こっちからが太陽が眩しくなくて沢山跳べるかも!」
「とすると、縄はこの向きだね」
詞水は、子供達が鉄棒とは反対側に逃げられるように場所を考え、その誘導に従って仙が大繩を動かしていく。
子供達に被害を出さないために、紛れ込むだけではなく、タタリガミや都市伝説から護りやすい位置取りを考え、灼滅者達はそれぞれ動いていた。
「さあ、回すよ」
「頑張って跳んでな」
仙と希沙が回し始めた大繩を見て、子供達が順番に列を作る。
リュシールはその5番目を、裕也は6番目を取って。
次々と縄の中へ跳び入る背を追いながら、人狼の軛は、ふと思う。
(「大縄跳び……ヒトの遊戯、か」)
ヒトの子に紛れるために、軛は、耳と尻尾を隠して、いつもと違うヒトの子らしい服を着ていた。
それを改めて見下ろしてから、回る縄をじっと見る。
(「確かに、こう動く縄を見ると身体が疼く」)
思わず飛びかかりたくなるが、そうした遊びではないはずと衝動を抑え、他の子供達を観察すると、倣うように跳び込んだ。
そして、狙い通り11番目となった詞水は、入るタイミングが掴めないフリをして足を止める。
「がんばれー。跳べるぞっ」
「怖くないよ。大丈夫大丈夫」
後ろに並ぶ9人が、心配した様子で声をかけてくれた。
(「学園以外の同い年の子達と遊ぶのって、なんだかとても新鮮なのですよ」)
温かい声援を背中で感じて、その胸中を喜びと寂しさが過ぎ行く。
(「依頼じゃなく一緒に遊んで……普通にお友達にもなりたかったな」)
浮かんだ思いを振り払うように首を振って。
気を引き締めて縄の中心を見据えた詞水の目の前で。
『それはとてもとても不思議な話』
男の子が1人、増えた。
●大縄跳びを護りましょ
都市伝説の男の子は、跳ぶ子供達の列のちょうど真ん中……リュシールと裕也の間に現れるや否や、その手のナイフを振り上げる。
気付いた希沙と仙がすぐに大繩を止めようとするが、勢いがついた縄は止めようと思っても止まるものではなく。
だから、意図を察した軛がわざと縄にぶつかり、その身体を以って止めた。
しかしその間に男の子のナイフはリュシールを刺し抉る。
止まった大繩に、灼滅者達の雰囲気に、子供達は驚きながら首を傾げていたけれども。
「何が……ひっ!?」
「え、あ、やだぁっ!」
血まみれの刃に気づいた者から、顔を引きつらせ、恐怖に声を上げた。
パニックが広がりかけた、その時。
「さあ、逃げるよー。こっちこっち」
変わらぬ陽気さで解が子供達に手招きをする。
「あちら側に逃げて!」
裕也はそれまでの子供っぽい口調を投げ捨てて鋭く声を上げ、解の方向……タタリガミがいる鉄棒とは反対側を指し示す。
怖がりながらも誘導通りに逃げ出し始めた子供達を見ながら、希沙は近くにいた子の背を撫でるように優しく押して。
「こっちやよ。早よ逃げよ」
解と合流しようと足を踏み出しかけたところで、立ち尽くして動けない子に気付く。
即座に進路を変えて駆け寄った希沙は、怪力無双も使ってその子を抱き上げた。
その動きに、都市伝説がちらりと振り向くような動作を見せるが。
「おおっと。子供達には手を出させねえぜ?」
そこに飛び込んだレイジが斬艦刀で超弩級の一撃を繰り出し、反れた意識を粉砕する。
仙も子供達を庇うような位置を取りながら『藍緑の波』を射出した。
「あのお姉さんお兄さんについて行って。無事に家に帰れるからね」
そして子供達には優しく笑いかけ、安心させるように声をかけた。
戸惑いながらも頷きが返ってきたけれど、灼滅者を置いていくことに躊躇いが見えて。
だから、リュシールは元気よく声を張り上げた。
「実は私ね、正義の味方なの! こんな掠り傷全然平気だから心配しないでね」
大丈夫、と示すように、ぐっと手を握って掲げて見せてから。
「刺されっぱなしじゃないのよ、調子に乗るなッ!」
くるりと子供達に背を向けると、都市伝説に向けて、流星のごとく足を蹴りあげた。
「逃げて。早く」
「あっち側が安全です!」
半獣化させた腕を掲げた軛が短く告げ、詞水が割り込みヴォイスも使って逃げ道を示す。
それらの声にも後押しされて、子供達は逃げ出した。
再びそちらに意識を向けられないよう、リュシールはさらに男の子に接近して。
「まずは1人、私から減らすんでしょ? じゃないと都市伝説の話と違うじゃない!」
(「私の前で、パパとママの所に帰れない子は絶対出させない……!」)
声で心で叫ぶのは、挑発そして決意。
その姿から子供達へと視線を移した詞水は、逃げ遅れた子がいないことを確認して。
「いつの間にか1人増えてる……座敷童みたいな都市伝説なのですね」
ぽつりと呟いてから、百物語を発動させた。
「更にもうひとり、彼女の名前は花子さん……」
これで子供達に被害が及ぶことはないと、裕也は淡く微笑む。
でもすぐに気を引き締めると、チェーンソー剣を構えて都市伝説を睨み据えた。
「せっかく楽しんでいたのに、無粋な敵ですね。倒させていただきましょうか」
そのまま地を蹴り、一気に踏み込むと、裕也は無慈悲なる斬撃を繰り出す。
軛も鋭い爪を振り上げ、男の子に迫る。
その途中で視線を鉄棒へと……そこに座るハンチング帽の少年へと流した。
(「タタリガミ自体を消せれば良いが、守る者の居る状況では難しいか」)
でもそれは一瞬。
「致し方なし」
すぐに都市伝説へと意識を集中させた軛は、爪を振り下ろして男の子を切り裂いた。
●大縄跳びを倒しましょ
戦場を背に、解と希沙は子供達と校外まで逃げていた。
被害を確実にゼロにするための安全策たる護衛。
それもここまでくれば充分と、希沙は解に頷いて見せた。
「……兄ちゃん達、戻るのか?」
察した子が心配そうな顔を向ける。
希沙の服の端をぎゅっと握る子もいた。
そんな不安に向けて、解はにっこりと両手を広げて見せる。
「大丈夫。あの子たちすっごいつよいの」
「ピンク兄ちゃんも?」
「もちろんやよ」
希沙は服を握る手に自分の手を重ねながら、視線を合わせるようにしゃがみ込んで。
「わたしらは大丈夫やでな、絶対戻ってきたらあかんよ」
ふわりと笑えば、その子は橄欖石の瞳をじっと見てから、手を離してくれた。
「心配ならここで待ってておくれ!
安全になったら迎えにくるから、そしたらまたみんなで縄跳びしよう!」
駆け出しながらぶんぶんと手を振る解に、幾つもの了解の声が飛ぶ。
希沙も並んで、2人は仲間の元へと急ぐ。
でもその途中で、解の視線はチラッと鉄棒へと向いた。
今回は子供達の安全第一。だからこそ、手は出さないと決めた相手。
とはいえ気になるのは気になるわけで。
希沙も睨むような一瞥を向けた。
しかし、すでに鉄棒にタタリガミの姿はなく。
「すぐ逃げるなんて、臆病者」
悔しそうに呟いてから、希沙は戦う仲間達へと視線を戻した。
「報いは必ず」
そして2人は戦線に復帰する。
人数を欠いてはいたものの、サーヴァント2体の存在もあり手数に不安もなく。
戦況は灼滅者有利に推移していた。
レイジが炎を纏った刃を振るえば、その軌跡を追うように飛び込んだリュシールも蹴りに炎を乗せて。
裕也のチェーンソー剣がその傷口と炎とを広げ増やしていく。
さらに追い打ちをかけるように、軛と仙も、炎を纏った激しい蹴りを交差するように繰り出した。
やられてばかりはいられないと、男の子のナイフから毒の霧が生まれ、辺りを覆い尽くすが、すぐさまウィングキャットのみけだまがその尻尾のリングを光らせる。
詞水も仲間の背を押すようにその響きを奏で立てた。
お返しにと炎の奔流を生み出していたレイジが、まず2人に気付いて。
「戻ったな」
「待たせたかな? 待たせたなら、その分飛ばしてくよ!」
振り向くことなく声だけで出迎えたレイジに、解はからからと笑いながらビハインドの天那・摘木に歩み寄る。
「約束通り無事だね。それじゃ、行こう。ミキちゃん」
言うが早いか男の子の死角へと一気に飛び込み、その足を深く切り裂くと同時に霊撃が放たれた。
遅れはしないとレイジもまた炎を叩き込み、希沙も影の刃を生み出し放つ。
「それにしても、種も仕掛けもどうしようもないお話だよね。直最適すぎる」
3点、と辛口評価を呟きながら、仙はレース糸で編まれた白色の花コサージュ……『藍緑の波』を手に取る。
小さく光るアクアマリンのビーズに目を細めてから、それを男の子へ向けて射出して。
「楽しい遊びの思い出を怖いものに変えたりしないでよ」
放たれたレースな帯は、都市伝説を貫いた。
「何であれ伝説なら最後は大抵こう言うものよ……『めでたしめでたし』ってね」
リュシールは新たにチェーンソー剣を手にして。
「私が主人公の1人なら尚更だわ!」
叫びながら剣を繰り出し、傷とBSを広げていく。
男の子の周囲を夜霧が漂うが、傷は癒しきれないほどに深まり、さらにBSが積み重なっていて。
その動きはあからさまに鈍くなっていた。
「かような刃では、わたしに傷はつけられぬぞ」
繰り出されたナイフを避けた動きそのままに、軛は畏れを纏うと男の子の懐に飛び込む。
「白炎の力見せるまでも無い」
長い黒髪を翻しながら、斬撃が放たれた。
「都市伝説も出てきたからには遊びたいよね? みんな逃げちゃって寂しいものね?」
解は帽子の下で笑みを浮かべながらその手を差し出す。
「せめて手を引いてあげよう。僕の影業は手を引いてくれるんだよ」
だが男の子に届いたのは、影が象った手。しかも。
「手しかないけど」
解が肩を竦めると、何本もの影の手は、手を引くどころか男の子を捕えるように包み込んでいった。
「どっちが都市伝説か分からないですね」
その様子を見た裕也が苦笑する。
しかしその足元からは、油断することなく影が伸び、さらに男の子を飲み込んでいく。
ふと、レイジが思い出したように叫んだ。
「決めた! てめえは俺の都市伝説として吸収させてもらうぜ!」
「いいですね。是非、粋に使ってあげてください」
裕也が賛同し、七不思議使いの仙と詞水も頷いて見せる。
レイジは、ならばとどめをとばかりに自身の不思議『漆黒の業火』を滔々と語る。
炎に覆われていた男の子は、その姿をだんだんと薄れさせて。
「さらばだ」
「また遊ぼうね」
軛と解の挨拶と共に姿を消し、レイジは新たに得た感覚にぐっと手を握った。
●大縄跳びで遊びましょ
しばしして手を開いたレイジは、鉄棒へと振り返る。
やはりそこにハンチング帽の少年はいなくて。
「次現れたときこそ、絶対に灼滅する……!」
歯噛みするレイジの横で、仙もため息をついた。
「子供の多く居るところにばかり来るヤツは厄介だよね」
「どうして子供ばかり狙うのでしょう? 遊びを台無しにするのもひどいのです」
詞水も悲しそうに表情を曇らせる。
みけだまが低い位置にふわりと降りて、心配そうにその顔を見上げた。
仙はそんな詞水に一度目を伏せてから、気持ちを切り替えるように笑うと、足元に落ちていた大繩を拾い上げた。
「もう少しやっていく?」
「もちろんです」
「わたしもやりたいやりたい!」
提案に裕也が笑顔で手を挙げ、希沙が顔を輝かせながら四葉のブーツの踵を鳴らす。
軛も無表情にどこか期待を覗かせて近づいてくる。
「長縄、実はやったことないのです」
不安そうな詞水には、リュシールが大丈夫と笑いかけた。
先ほど大繩に入れなかったのは、全てが演技というわけではなかったようです。
「それなら、みんなを呼んでこなきゃ!
待っててくれたお礼に飴ちゃんもあげないとね!」
ぱんっと大仰に手を叩いた解が、笑いながら子供達の元へと走り出す。
その背中の向こうでこちらに手を振る小さな人影を幾つも見つけて。
詞水は、頑張って跳ぼう、と両手を握りしめた。
| 作者:佐和 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2015年7月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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