武者アンデッド北へ~黒南風ノ合戦

    作者:志稲愛海

     白の王セイメイの前に、武者鎧のアンデッドが平伏し、下知を待っている。
    「北征入道への合力が、そなたらの望みでございますか」
     セイメイの言葉に、武者鎧のアンデッドが更に深く平伏する。

    「よろしいでしょう。各地に封じていた武者達を呼び起こし、北征入道の元に馳せ参じさせましょう」
    「蒼の王コルベインの北征洞窟が現世に出現する事は、私の計画の助けにはなれど、邪魔にはならないのですから」
     

    「鎌倉時代の武者っていえばなんか、やぁやぁ我こそは~とか言ってる系?」
     飛鳥井・遥河(高校生エクスブレイン・dn0040)は、いかにも歴史があまり得意ではない感溢れる台詞を吐きながらも。
    「いくつもその存在が発覚した、札幌の地下ダンジョンなんだけどさ。白の王・セイメイがね、その札幌のダンジョン事件を起こしているノーライフキングに援軍を派遣しようとしているらしいことが察知されたんだ」
     集まった灼滅者達に、察知した未来予測を語り始める。
    「白の王・セイメイが送り込む援軍はね、鎌倉時代の武者のような姿のアンデッド達で、強力な力を持ってるらしいんだ。アンデッドらは古戦場とか、因縁のある地域に封印されていて、出現するまでまだ時間はあるんだけど。ただ、出現してから10分くらいで、今度は地に飲まれるように消えて、北海道のダンジョンに転移してしまうみたいなんだよ」
     だからその前に待ち伏せして、現れた敵が消えるよりも前に灼滅して欲しい、と。
     そう言った後、さらに遥河は、より詳細な事件の概要を告げる。
    「武者アンデッドの数は、合計9体。その中で、無敵斬艦刀を持ってる1体は、特に強力な武者アンデッドなんだ。残りの配下武者アンデッドは、日本刀を持ってる武者が4体、天星弓を持ってる武者が4体だよ。戦闘になると、アンデッド達は守りを重視した陣形を取って戦うみたいだから、全てを撃破するのはちょっと難しいかもしれない」
     今回の敵は、セイメイ配下の強力なアンデッドの群れ。
     その中でも、無敵斬艦刀を持った『小夜嵐(さよあらし)』という名の武者アンデッド1体は、ダークネスに準じる能力を誇るほどの手練れだという。配下も決して侮れぬ強い力を持ち、その上今回は10分という時間制限も伴う。そのため、武者アンデッド達全てを倒すことは難しい状況かもしれないが。
     しかし、このまま易々とセイメイの援軍を札幌に送らせるわけにはいかない。送られる援軍の力をできるだけ減らすべく、アンデッド達の討伐を今回はお願いしたい。
     そして戦場は、海沿いの夜の古戦場。
     幸い一般人などはおらず、見通しもよく戦闘の障害となるものはない。夜であるため少々暗いが、月明かり程度はあるようだ。この場で待機していればアンデッド達が現れるので、武者達が消えるよりも前に、できる限りの数灼滅して欲しい。
    「白の王セイメイが援軍を送るってことは、札幌のダンジョン事件が大きく動き出そうとしてるかもしれないから。今回セイメイの配下の武者アンデッドを可能な限り灼滅して、そして、札幌のダンジョン事件の動きに備えておかなきゃだよね」
     遥河はそう周囲をぐるりと見回した後、気をつけて行ってきてね、と。
     信頼する灼滅者達を、合戦へと送り出すのだった。


    参加者
    東雲・凪月(赤より緋い月光蝶・d00566)
    雨谷・渓(霄隠・d01117)
    迫水・優志(秋霜烈日・d01249)
    時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)
    新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)
    神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    ブリジット・カンパネルラ(金の弾丸・d24187)

    ■リプレイ

    ●月下の夜戦
     日中は遠く見渡せた海の景色も、今は密やかに闇に沈んでいる。
     だがそんな夜の漆黒にぽっと浮かんだのは、複数の灯火。
     雨谷・渓(霄隠・d01117)は腰のカンテラの明かりを頼りに、海沿いの古戦場に光源を設置して。時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)の作り出した炎が赤々と燃え、周囲を照らし出す。
     今宵、海沿いの古戦場に赴いたのは、8人の灼滅者とサーヴァント達。
     出現が予知された武者アンデッド達を待ち構えているのだ。
     いや、未来予測されたのは、この古戦場だけではない。
     待機しながらも、迫水・優志(秋霜烈日・d01249)が気に掛けるのは、別の場所で同じ案件に携わっている大切な人の事。
     だがすぐに、顔を上げて。
    (「それに気を取られてましたじゃ、洒落にもならないからな」)
     そんな結果になったら多分、暫く口を利いてくれないだろうし、と。
     漆黒の瞳をそっと優しく細めた後、眼前の古戦場へと意識を集中させる。
     それに何より、今回事件に関わっているのは、白の王・セイメイだという。
     かねてから白の王に嫌悪感を抱く優志にとって、その目論見は何としても打破したい。
     そして蘇った武者達は、地下迷宮事件が多発している北へと向かうという。
    (「戦力を集めるという事は、大きな戦いが近づいてきているという事かしら」)
     リンフォースのリボンをきゅっと付け直しつつも考察を巡らせるのは、神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)。
     そうならば尚の事、その戦力を削っておきたいところだ。
    「武者の都落ちって、ヨシツネさんが鎌倉を追い出されて奥州に逃げたのを連想させるね」
     ……もしかしているのかもね、と。
     夜の古戦場を眺めつつ呟く、ブリジット・カンパネルラ(金の弾丸・d24187)。
     そして、ノエルをそっと撫でる新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)が、ライフルに巻きつけた懐中時計で時間を確認した……直後。
    「!」
     ぼう、と灯ったのは、鬼火の如き不気味な光。
     その数は、9に及ぶ。そう……古の武者達の封印が解かれたのだ。
    「……そろそろ来る頃だね、皆、行こう……!」
     その炎が武者と成る瞬間、月下を舞う蝶の如く踊り出たのは、東雲・凪月(赤より緋い月光蝶・d00566)と華月。
     そして、金の髪と赤いリボンを闇に靡かせながら。
     真っ先に敵前へと向かう姿は、まさに『弾丸のブリット』。
    「落ち武者狩りね! 何企んでるか知らないけど、叩かせてもらうよ!」
     刹那、弓の武者を射貫く、噴射された帯の衝撃。
    「狙い撃つ、よ」
     さらにブリジットと同時に同じ武者へと見舞われた、眩き光線と猫魔法。
     ――制限時間は10分。
    「ん、北行きの道はこの古の戦場で終わり、だよ」
     タイムキーパー役の七葉とノエルも、武者へと奇襲を。
     そして戦場に殺界が成された瞬間。左手の指なしグローブを改めて嵌めた優志が、握る紫紺の穂先から放つは、冷気の氷柱。
     その凍てついた鋭撃が、弓武者を射抜かんと唸れば。
     暗視スコープで敵の陣形を確認済のファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)が投じるのは、幾つもの小型LED。その光と音痴な歌で、敵の撹乱を狙う。
     その明かりに武者達が怯む事はなかったものの。
    『!?』
     灼滅者達の存在に気付いた敵の群れ。
     だが、敵が戦闘態勢を整えるその前に。
    「その特急便はキャンセルしてもらうわ!」
     明日等が戦場に広げたのは、弓の武者を複数巻き込む翼の如き帯。北へ行かせまいと、衝撃と共に敵を捕縛して。主と連携したリンフォースが、にゃにゃ~! と猫魔法を放つ。
     そして生じた眩い輝きは、破邪の白光と霊撃。
    「負けるわけに行かない戦いだからね、本気で行くよ」
     凪月と華月の藍の髪がふわり月に踊り、剣から迸る斬撃と霊撃が敵の身を捉えて。
     大将・小夜嵐に注意を払いつつ、皆の盾となるべく竜雅は地を蹴りながらも。
    「小夜嵐を倒すにしてもまずは配下の数を減らさないとな」
     本格的に鍛え始めた魔力を焔色の十手型ロッドに込め、仲間達と同じ弓武者へと雷撃を放つ竜雅。
     今回は敵の数を減らす事を重視し、集中攻撃して各個撃破する作戦。
     守り重視の布陣である敵の群れに対し、積極的に攻める戦術。
     ――そして。
     淡々とした表情こそ開戦後もあまり変わらないが。渓もまた、胸に抱く思いは仲間達と同じ。
     敵の群れを北の地へと行かせぬ為に……そして可能な限り、大将も討ち取りたいと。
     古書を紐解く様に、携えた魔導書の禁呪が成した炎が、敵の只中で大きく爆ぜる。
     だが――その時だった。
    『……ヤァヤァ……ワレ……コソハ!』
    「!」
     巨大な鉄塊の如き刀を、いとも軽々と振り回して。
     小夜嵐が前衛へと叩きつけたのは、強烈な一撃。
     いざ、尋常に勝負――黒南風の合戦は、これからが本番。

    ●刹那の合戦
    「4分経過、目標を右の弓の武者にして」
     よく通る声で、確りとそう告げる七葉。
     4分の間で討ち取った敵は、弓の武者2体。
     まずは弓使いを狙うべく攻める灼滅者であるが。
     そうはさせぬと、日本刀の武者や己に回復強化を施す小夜嵐が、体を張って衝撃を肩代わりしていた。
     制限時間は10分。いかに時間内で、より多くの敵を倒せるか。
     タイムキーパーである七葉の声を聞き、一番手負いの弓武者へと一斉に攻撃を仕掛ける灼滅者。
     強力な敵の群れを、時間内に全て倒す事は、厳しいかもしれない。
     でも。
    「あの野郎の思い通りになんざさせるかよ」
     紡がれた言葉に宿るのは、強い憤り。
     冷静さを欠かず、それ以上語る事こそしない優志だが。
     これまで、樹海や火葬場等で目の当たりにした、白の王・セイメイの行い。
     それは優志にとって、不快以外の何物でもない所業だ。
     だから、白の王の目論見を打破する為に。静寂な夜の如き、深い漆黒のジャケットを翻して。
    『……! ガッ』
     セイメイが蘇らせた弓武者へと毒を帯びた漆黒の弾丸を撃ちこみ、打ち倒す。
     これで、弓使いの武者はあと1体。
     だが、刻々と迫る制限時間。
    「次は、最後の弓の武者を狙うよ」
    「ボスは最後に潰すとして! まずは、弓からボコボコにするよ!」
    「いくわよ、リンフォース!」
     七葉の指示に頷き、連携し地を蹴るのは、ブリジットと明日等。
     刃と化した風が、敵を斬り裂かんと渦を巻いて。放つ度に精度が上がる帯の衝撃が戦場を舞い、にゃあっ! の一鳴きと同時に猫魔法が炸裂する。
     さらに、ある意味強烈な歌声と霊魂を破壊する強力な斬撃が。
    「俺の歌を聴けぇッ!」
     死ぬほど音痴ではあるが。ヒーローの如き熱いファルケの歌声が戦場に響いて。
     クールな反面、眼前の強敵に心躍らせながらも、巧みに剣を操る凪月と、再び霊撃を繰り出す華月。
     だが、そんな連携攻撃にも一切躊躇する事なく。割って入った小夜嵐や日本刀の武者によって、目標の弓武者への攻撃がまたもや全ては届かない。
    「……っく、流石に強いね……!」
     得物を握る掌に伝わる、小夜嵐の堅さ。
     だが――それでこそ、血が滾るというもの。
    『……首ヲ……オイテケ……!』
    「ッ!」
     竜雅へと叩きつけられたのは、唸りをあげる強烈な一撃。
     それは気を抜けば、小夜嵐の言葉通り、一瞬にして首を獲られてしまう威力を誇っているが。
     まるで、燃え上がる魂に呼応するかの様に。竜雅の金色の髪が炎の如く逆立ち揺れて。
    「地獄に送り返してやるぜ、骨野郎!」
     赤き瞳に一層、激しい闘志の火が灯る。
     そんな小夜嵐だけでなく、日本刀の配下の攻撃も決して侮れない。
     だが攻めの姿勢を貫き、身を呈し強烈な攻撃から仲間を庇う前衛達を支えるのは、七葉の癒しの霊力。にゃっ! と仲間や主を庇いつつ、ノエルが肉球パンチを敵にお見舞いする隙に、負った皆の傷や状態異常を浄化して。
    「5分経過、弓を狙うよ」
     後方から戦況を見極め、確認した残り時間を仲間達へと伝える七葉。
     優志が日本刀の武者の牽制を担う間、最後の弓武者へと猛攻を仕掛ける灼滅者。
     だが敵の守りは堅く、敷かれた陣形ゆえに。各個撃破を狙った集中攻撃も、思ったより通りにくいが。
     それでも、より多くの敵を討つべく、全力で攻撃を重ねていく。
    「北の地で今度は何を引き起こす気か知りませんが、思うように事を進めさせはしません」
     ――武者アンデッドの群れを、北の地にはいかせない。
     刹那、心の深淵に宿る漆黒の彩を、毒の弾丸に変えて。
    「北へ行く前に再び土の中へお帰りを」
     渓の撃ち出した衝撃が最後の弓武者を毒で蝕み、討ち取る。
     そして、予め立てていた作戦通り、次に得物の切っ先を向けるのは。
    「6分経過、次は小夜嵐を狙うよ」
     強力な実力を誇る、大将の小夜嵐であった。

    ●夜の嵐
    「お前は最後に潰すといったな……あれは嘘だ!」
     そう、ビシイッと言い放った後。
     異形巨大化した片腕の拳を握り、小夜嵐を殴りつけるブリジット。
     だがその拳を受けても揺らがぬ姿は、大将に相応しい風格を漂わせている。
    「流石に『小夜嵐』と呼ばれただけはあるってな……」
     でも――北へは行かせない。絶対に……!
     優志はそう、漆黒の柄を強く握り締めて。鋭き紫紺の彩りが、今度は激しい螺旋を描き出す。
     今、別の場所で戦っている大切な人と一緒に。
     二人の家に、お互いが無事に帰れるように。
     だが、その攻撃から咄嗟に庇う、配下の日本刀武者。さらにまた別の配下がふるう刃が月の如き冴えを見せ、後衛の灼滅者達へと纏めて向けられるも。
    「時間稼ぎなんかさせないわ!」
    「にゃ! にゃにゃ~!?」
    「ん、頑張って」
     息の合った連携を取った明日等と七葉、リンフォースが一斉に動きをみせて。
     漆黒の髪とリボン靡かせ、構えたバスターライフルから魔法光線を明日等が見舞えば、続くリンフォースの肉球パンチが敵の動きを制限して。仲間の傷を癒すべく、指先の霊力を解き放つ七葉。
     残り時間は、あと僅か。
     だが回復を挟みつつ繰り出される小夜嵐の刃の威力は、衰える事などなく。
     巨大な刀を振り回す様は、その名の通り、夜の嵐を巻き起こすかの如き衝撃を生んで。
    『首ヲ……ヨコセェェ!!』
     戦場に雄叫び轟く度に燃え上がるのは、絶対不敗の精神。
     だがこれまで、配下の攻撃を肩代わりしてもいた大将は、決して無傷ではない。
     小夜嵐は勿論、配下の攻撃も強力ではあるものの。
     残り時間、より攻撃に専念すべく、全力で得物をふるう灼滅者達。
    「貫かせてもらうよ……!」
     凪月の流星の如き蹴りが叩き込まれ、再び迸る華月の霊撃。
     だが、やはりダメージは与えてはいるものの、決定打とはならない。 
     眼前の小夜嵐は、ただの傀儡か――それとも、信念を持った武者の太刀筋なのか。
     それを見極めんと、同じ得物を構える竜雅は全力で敵将と斬り合うべく地を蹴って。
     愛刀を引き摺る様に一気に駆け、間合いを詰め懐に潜りこむと。
    「俺の一撃必殺!」
     漆黒の天をも焦がすかの如き炎宿る刃で、思い切り斬り上げる。
    『! グ、アアァッ』
     その必殺の刃に、思わず声を上げる小夜嵐。
     そして、音痴な歌を歌いながらも繰り出したファルケの槍が螺旋の衝撃を見舞わんと唸りを上げるも。
     またもやその一撃は、身を呈した配下によって阻まれる。
     そんな、一進一退の攻防となった戦況の中。
     妖気を宿す槍から凍てつく氷柱を成しながらも。
    「地下鉄ダンジョンを利用し何を行う気ですか、他のダークネスも絡んでいるのですか?」
     ふと小夜嵐へと、鋭撃と共に、言の葉を投げてみる渓。
     小夜嵐は冷気の氷柱を力任せに振り払いながらも。
    『……イザ……北征入道サマノ、力トナルベク……』
     ぶつぶつと呟く様に、そう口にする。
     それは渓の問いに答えたというよりは、目的を再認識しただけの様にみえる。
     これ以上尋ねても、有益な答えが返るとは思えない。
     ――それに。
    「7分経過だね。目標を、一番手負いの左端にいる日本刀武者に、切り替えるよ」
     そう告げる、七葉の声。
     ダメージは与えてはいるものの……残り時間で大将首を獲れるか、定かではないと判断したのである。
     そしてそれは懸命であったといえよう。
    『北へ……ウオォォッ!』
    「……ッ!」
     夜の海を震わせる叫び声と共に振り下ろされたのは、まさに一騎当千の一太刀。
     そして仲間を庇った竜雅は強烈な一撃をモロに浴び、地へと崩れ落ちる。
     ただでさえ高い攻撃力を誇る小夜嵐に何度も積み重ねられた、肉体を活性化させる絶対不敗の暗示。その強化は、より脅威的な力となっていたのだ。
     そして……今は傀儡と成り果てたかもしれないが。この地で遥か昔戦った小夜嵐は、当時は信念を持った武者だったのかもしれない。
     だがそれでも、武者達を北へと向かわせるわけにはいかないから。
     最も弱っている日本刀の武者へと、一旦標的を変える灼滅者達。
     皆に声を掛けた後、蒼にも白にもみえる澄んだ刀身に宿る「祝福の言葉」を風に換え、優志も回復に回って。
     明日等も冷気の氷柱を撃ち出し、リンフォースが猫魔法を繰り出せば。猫パンチを敵へと見舞うノエルと共に、仲間の身を帯の鎧で覆い守護する七葉。
     そして。
    「これでお終いにするよ、再び、今度は安らかな眠りを……ね」
     凪月の放つ斬撃が、華月の霊撃と共鳴する様に光を帯び、日本刀武者の霊魂を容赦なく両断して。その存在ごと破壊したのだった。
     残る敵は、小夜嵐と配下3体。
    「9分経過、もう一度小夜嵐を狙うよ」
    「最大火力で、ぶっ飛ばすよ! 唸れ、轟音爆砕っ!」
     瞬間、握る杖が巨大なハンマーの如く変形して。全力の魔力を小夜嵐へと叩きつけるブリジット。
     さらに、歌エネルギー、チャージ完了!
    「聴かせても魂に響かないのならば、直接叩きこんで響かせるのみっ」
     ――刻み込め、魂のビートっ!
     歌の下手さは、今は問題ではない。
    「堪能しな? これが魂の旋律、サウンドフォースブレイクだっ」
     続くファルケも、魂をこめた歌と共に魔力を叩き込んで。
     揺らいだ敵将へと、再び毒を宿す漆黒の弾丸を撃ち出す渓。
     そんな猛攻に、一層上体を大きく揺らした小夜嵐であったが。
    「……!」
    「10分経過、タイムアップだね」
     まるで地に飲まれるかの様に――武者アンデッドの群れは、この合戦場から消え失せたのだった。

     そして古戦場に、本来の静けさが戻ってきて。
    「お疲れさん。取り敢えず、戦力を削ぐ事は出来ただろうか?」
    「ん、これで敵戦力を削れたと思うよ。お疲れ様」
     優志に、こくりと頷く七葉。
     小夜嵐は討ち取れなかったが、配下5体を灼滅という戦果はあげられた。
    「セイメイの企みの手がかり、此処で見つけられれば良いけれど……」
     凪月はそう周囲を見回してみるも。広がるのはただ、波の音と静かな夜の世界だけ。
     近い未来――北の地で、何かが起こる予感を抱きながらも。
     灼滅者達は、月明かりに照る夜の海を後にしたのだった。

    作者:志稲愛海 重傷:時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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