甘い匂いに誘われて

     野乃・御伽(アクロファイア・d15646)は、こんな噂を耳にした。
     『ハチミツ好きが高じて、蜂のコスプレを強要する都市伝説が存在する』と……。
     この都市伝説は蜂のコスプレをした美女で、他の相手に対しても蜂のコスプレを強要しているようである。
     しかも、コスプレを拒否した相手に対して、大量のハチミツをぶっかけているらしく、その匂いにつられて犬やら猫やらオッサンやらがペロペロと舐めに来るらしい。
     そのため、嫌々ながらもみんな蜂のコスプレをしており、都市伝説が確認された場所の周辺がカオスな状況と化しているようだ。
     また都市伝説が尻から生やしている毒針に刺されると、身体中に毒が回ってしまい、ハチミツ風の膿が溢れ出してしまうようである。
     その上、匂いも強烈で、犬やら猫やらオッサンやらを引きつけてしまうので要注意。
     そう言った事も踏まえた上で、都市伝説を倒す事が今回の目的である。


    参加者
    エミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔・d02818)
    マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)
    葉月・十三(あなたの街の殺人鬼・d03857)
    春日・和(胡蝶の夢・d05929)
    野乃・御伽(アクロファイア・d15646)
    焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)
    八城・佐奈(バッドアップル・d22791)
    戸地田・愛子(とじこもりまなこ・d28461)

    ■リプレイ

    ●ほのかに漂うハチミツの匂い
    「なんであんな噂、聞いちまったかなー」
     野乃・御伽(アクロファイア・d15646)はウンザリした様子で、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     都市伝説は蜂のコスプレをしており、それを他の相手に対しても、強要しているようである。
     そのせいで老若男女、犬から猫まで蜂のコスプレをさせられているようだ。
    「今度は訳わからない頭の悪い子っぽいの出てきたね。……と言うか、はちみつ好きが高じてコスプレってあんまり関係なくねってのとか、オッサン調子に乗ってるんじゃねとか、蜂のコスプレばっかってどんだけカオスとか、もうツッコミどころがね……。でも、ネタが転がってきたら拾うのが使命……。マルティナがこれを見逃すはずがないの……」
     マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)が、警戒した様子でネタを探す。
     霊犬の権三郎さんはそれを見て、深い深い溜息をついた。
    (「コスプレはなんとなく嫌ね……」)
     八城・佐奈(バッドアップル・d22791)が、知り合いの事を何となく考える。
     コスプレは嫌だが、場合によってはする事になるだろう。
     もちろん、全力で回避するつもりだが、絶対にコスプレをしないとは言い切れない状況であった。
    「……まったく、蜂のコスプレを強制するなんていったい何を考えているのかしら! でも甘い香りのするハチミツ風の膿が、どんな匂いなのかはちょっと気になるわね……」
     戸地田・愛子(とじこもりまなこ・d28461)が、ハチミツ風の膿に興味を持つ。
     どちらにしても、膿である事に違いはないと思うが、どんな匂いがするのか試しに嗅いでみたいようだった。
    「それに、はちみつぶしゃーなんて贅沢ねぇ。はちみつって結構高いもの。お持ち帰り、出来るかしら?」
     春日・和(胡蝶の夢・d05929)も、蓋付きの瓶を持参してワクワクする。
     だが、ハチミツと膿を区別しておかないと、物凄く痛い目に遭いそうだ。
    「でも、都市伝説は毒を持っているらしいので、こんな恰好をしてみました。これ、毒針防止用でもあるのです!」
     エミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔・d02818)が、丸いホットケーキのコスプレ姿でニコッと笑う。
     これならば、例え都市伝説が襲い掛かって来たとしても、必ず身を守れる……はずである。
    (「とりあえず、都市伝説の灼滅に全力を注ぐとするか」)
     そんな仲間達を物陰から見守りながら、焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)が行動を開始した。
     なるべく、被害を最小限に。なるべく、早く都市伝説を灼滅するために……!
    「噂をすれば、現れましたね、妙な連中が……」
     葉月・十三(あなたの街の殺人鬼・d03857)が、闇纏いを発動させる。
     それと同時に現われたのは、蜂のコスプレをした老若男女達であった。

    ●華麗に舞うミツバチ達
     一体、誰がそんな事を望んでいるのかと問われれば、そこに答えはないだろう。
     例え、まったく需要がなかったとしても、都市伝説には関係ないのだから。
     そして、その結果が目の前の光景と言う訳である。
     それはまるで仮装集団。何かのイベントだと思えば、それほど違和感がない。
     だが、それ故に事態が深刻にもかかわらず、色々な意味でシュールな雰囲気が漂っていた。
    「わ、蜂さんの衣装中々可愛らしいわねぇ。なごさんも着てみたいにゃ♪」
     それに気づいた和が予備の衣装を持っていた一般人に駆け寄り、物陰に隠れて着替えをする。
    「ふふ。どうかしら、似合ってる? おとぎ先輩も着ましょうよぉ。何ごとも経験よ~」
     和が思わせぶりにポーズを決め、御伽にも蜂の衣装を進める。
    「いや、わざわざコスプレする意味分かんねーし! 人にさせる意味も分かんねーし!」
     御伽が即座にツッコミを入れた。
    「……あら? どうやら、我儘さんがいるようね」
     都市伝説が含みのある笑みを浮かべて、催眠下にある一般人達と一緒に御伽の前に立つ。
    「お前がハチミツ好きなのは分かった。否定はしない。けど周りに対するアピールの仕方なんか違くね!? ハチミツぶっかけて来る意味とかさらに分かんねーし! 何よりそのハチミツ舐めに集まって来るオッサンが一番意味分かんね──よっ!」
     御伽が続け様にツッコミを入れた。
    「だったら、味わってみればいいじゃない。その身でジックリと、ね!」
     都市伝説がニヤリと笑って、隠し持っていたハチミツを、御伽めがけてぶっかける。
     その巻き添えを食らった霊犬のドリィが、全身ハチミツまみれになって固まった。
    「ドリィ、すっごくいい匂い……!」
     すぐさま、愛子がウットリとした表情を浮かべ、ドリィの匂いを嗅ぎ始める。
     これにはドリィも、困り顔。
     どう対応していいのか分からず、オロオロ、あたふた。
     傍にいた霊犬の権三郎さんは、自分じゃなくてよかったと言わんばかりにホッと溜息。
    「あ、権三郎さん、自分は関係ないって思ったでしょ? 分かってないなぁ、権三郎さん……。こういうのはノリが大事だよ……。そんなわけで、混ざってくるべし……」
     それに気づいたマルティナが権三郎さんをガシィッと掴み、都市伝説めがけて放り投げる。
     次の瞬間、都市伝説がバケツいっぱいのハチミツを、権三郎さんにぶち撒けた。
     その匂いに誘われて、催眠下にあるオッサン達が、涎をじゅるり。
     まるで変質者の如く、舌をレロレロとやり始めた。
    (「ないないない、オッサンのキスとか二度とごめんだ……!」)
     御伽が寒気に身を震わせる。
     途端に過去の依頼で受けたオッサンからの熱い口づけがフラッシュバック。
     血の気が下がって戦意喪失。
     それを目の当たりにした和も、怯えた様子でぷるぷると身体を震わせる。
    「今日のわたしは、食べる!」
     そんな中、エミーリアがホットケーキにハチミツをかけて、黙々と食べ始めた。
     しかも、お湯が入った水筒と、おろしショウガとレモンが入った瓶も持参し、ホットはちみつドリンクを堪能!
     精一杯、力一杯、満喫しまくりであった。
    「きゃあ!? ちょ、ちょっとどこを舐めて……、ひゃぁん!?」
     一方、愛子はオッサン達に襲われ、驚いた様子で声を上げる。
     その中にはドリィの姿もあり、ドサクサに紛れて、愛子の顔をペロペロし始めた。
    「きゃ、きゃはははは、い、いきが、いきができなっ!?」
     そのまま、愛子の身体に掛かったハチミツを舐めつくす勢いで、ドリィが独占状態。
     まわりにいたオッサン達も、トリィの身体を舐めるのに夢中なようである。
    「……調教した方がいいのかな?」
     佐奈が殺気全開で、オッサン達に当て身を放つ。
     なるべく死なない程度にやっているが、イライラしているせいで加減が出来ない。
    「おい、こら、覚悟は出来ているだろうな」
     その間に秀煉がライドキャリバーの黒王号と共に、都市伝説の前に陣取った。
    「い、いつの間に……!」
     都市伝説がハッとした表情を浮かべる。
    「それでは灼滅させていただきます」
     そう言って十三が闇纏いを解除すると、スレイヤーカードを解除した。

    ●蜂の女王
    「キィィィ! こうなったら、毒針でツンツンしてあげるわ!」
     都市伝説が殺気立った様子で、尻から尖った針を出す。
    「……そんなの、当たらない」
     それに気づいた佐奈が都市伝説の攻撃を避け、鏖殺領域を展開する。
     しかし、都市伝説はニヤリッ!
    「ま、まさか……」
     その途端、和がハッとした表情を浮かべた。
     都市伝説の狙いは、佐奈ではなく、御伽。
     幾度となく迫って来たオッサン達の猛攻から逃れ、半ば放心状態にあった御伽を狙っていた。
    「くっ……!」
     その一撃を食らった御伽が、グッと唇を噛んだ。
     だが、唇から流れたのは、血ではなく、ハチミツ風の膿。
     ほんのり甘く、適度にドロッとした魅惑のスイーツ。
     それと同時に脳裏を過ぎりのは、催眠下にあるオッサン達。
     このままでは間違いなく、唇めがけて群がってくる。
     しかも、間違いなくディープキス!
    「もうオッサンはうんざりなんだよ……!」
     死んだ魚のような目で、御伽が言葉を吐き捨てる。
    (「そんな展開、頼まれたって御免だ」)
     それ故に、御伽はスレイヤーカードを解除した。
     少しでも早く、この悪夢を終わらせるために……!
    「余計な連中が来る前に灼滅いるか」
     そんな空気を察したのか、秀煉が都市伝説に縛霊撃を仕掛ける。
    「クッ、身体がっ!」
     都市伝説が信じられない様子で汗を流す。
     圧倒的な力の差。
     アリがゾウに戦いを挑んだような絶望感。
    「これで……終わらせます」
     次の瞬間、十三がレーヴァテインを放ち、都市伝説にトドメをさした。
     都市伝説は全身炎に包まれて断末魔を響かせ、消し炭と化して消滅した。
    「……あれ? ひょっとして、もう倒しちゃったの?」
     そノ途端、エミーリアが驚いた様子で声を上げる。
     ホットケーキを食べるのに夢中で、戦いが始まった事すら、気づいていなかったようである。
    「うぅ……、服がよだれとハチミツでべったべただわ……。お洗濯でどうにかなるのかしら……?」
     一方、愛子は涎とハチミツでベタベタに服を見つつ、深い溜息をもらす。
     それとは対照的にドリィは、ご機嫌。
     もしかすると、美味しいハチミツを満足するまで、舐められたせいかも知れない。
    「権三郎さんは……大丈夫ね。……と言うか、奇麗になった?」
     そんな中、マルティナが権三郎さんに視線を送る。
     権三郎さんは妙に毛がツヤツヤしており、ハリとコシも出ているようだった。
     だが、権三郎さんの気持ちは複雑。
     何か言いたげな表情を浮かべて、マルティナの顔を見つめていた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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