チェンキャタハンターG

    作者:空白革命


     山中。木々がやったら開けたエリアに、ひたすらドでかいムカデ眷属がいた。
     でっかい身体で地を這い、木くらい軽くなぎ倒してしまうようなノコギリヘッドを振り回す凶悪なヤツだ!
     通称モンスターチェイン。
     通常のムカデ眷属チェインキャタピラーをなんでもいいからとにかくでっかくしたというような割と頭の悪いモンスターである。
    「ちぇいーん!」
     しかも鳴き声おかしいし!
     

    「はいっ、やってまいりました眷属退治の依頼でございます」
     エクスブレインの説明によりゃあ、山中の所々岩が突き出てるようなエリアにはぐれ眷属が現われたんだそうな。
     ここでいう眷属というのはダークネスが作る配下モンスターのことで、中でも主人を失った野良の連中をはぐれ眷属という。
    「チェインキャラピラータイプの改良版で、とにかくデカいのが特徴だそうな。
     一匹だけじゃ寂しいのか何なのか、小さくて弱い廉価版キャラピラーをいくつか従えて行動しているそうですねえ」
     流れとしては、エリアの外側をうろうろしている廉価版キャラピラーを蹴散らして準備運動してから、がっつり本番に挑む形になりそうだ。
     とはいえ相手は眷属。灼滅者パワーなら余裕をもって倒せる相手でござる。
     頭をやわらかくして、楽しくやろう!
    「ちょっぴり歯ごたえのあるボスキャタでございますから、ちょっぴり気をつけて、でも気楽にお楽しみくださいませ」


    参加者
    田所・一平(赤鬼・d00748)
    羊飼丘・子羊(北国のニューヒーロー・d08166)
    シュクレーム・エルテール(スケープゴート・d21624)
    御納方・靱(茅野ノ雨・d23297)
    銀城・七星(銀月輝継・d23348)
    可罰・恣欠(リシャッフル・d25421)
    星見乃・海星(ぼくは星をみるひとで・d28788)
    南野・まひる(猫と猫と猫と猫と猫と猫美少女・d33257)

    ■リプレイ

    ●例のBGMをかけたければ、そうすればいいじゃない! もう、ばか!
     僅かに翻る半ズボン。
     尾を引くマフラーと、つやめくほっぺ。
     ぱっちり両目を開いた羊飼丘・子羊(北国のニューヒーロー・d08166)が、『褐色の半液体』をつけたロッドを翳した。
    「日本列島全国各地、ご当地愛がある限り! 北国のニュー☆ヒーロー羊飼丘子羊、参上!」
    「あの、すみません。そのロッドから必要以上に鉄の臭いがするんですけど……」
     途中まで言いかけて、御納方・靱(茅野ノ雨・d23297)はこほんと咳払いした。山中の石をひっくり返すというか、不穏な藪をつつくというか、なんか触れない方がよさそうな気がしたからである。
    「えー、気温湿度ともに虫の多い時期となりました。みなさん本日も害虫駆除を頑張りましょう。ね」
    「「えっ?」」
     田所・一平(赤鬼・d00748)と銀城・七星(銀月輝継・d23348)が携帯ゲーム機を手に振り返った。
     暫くの沈黙。
     二人ははたと気づいて画面に顔を落とした。
    「肉貰ってっていいすか?」
    「研ぎ石とドリンク忘れないようにね」
    「そこっ、クエストを続行しないでくださいよ!」
    「なによ、山中でひと狩り行くっていうから来たのに!」
    「俺なんか今日のためにハードごと買ったんですよ!」
    「そのハードを前衛的なフリスビーにしたくなかったら今すぐしまってください」
     しぶしぶゲーム機をしまう一平たち。
     ふと、石に腰掛けたネコに目が行った。ネコっていうかねこ・ざ・ぐれゐとさん年齢不詳独身ウィングキャットである。
     そのネコが、なぜか血走った目で虚空を見つめていた。
    「な、なあ、なんでこんなに殺気立ってるんだ? こういうヤツなのか?」
    「うーん、普段はもっと可愛いんだけどなぁ」
     南野・まひる(猫と猫と猫と猫と猫と猫美少女・d33257)は指を顎にやって小首を傾げた。
    「心当たりとかないんです?」
    「朝ご飯に唐辛子を大量にエンチャントしたよ」
    「人によってはワンチャン殺害まであるわね。まさに殺人ウィングキャット」
    「いやなに、ヤる気があるのはいいことである」
     シュクレーム・エルテール(スケープゴート・d21624)がえっへんと胸をはった。
    「まあ役に立つかわからないが、私のコレクションを使ってみるのである」
     そういうと、シュークレームはお腹のところにあるポケットに両手を突っ込んだ。
    「知っているとは思うが私は骨董店を営んでいるのである。特に人造物が好きで刀や壺なんかをひたすら収集しているのである」
    「へー、すごいねー」
    「すこぶる興味がありますー」
     すげえ棒読みで左右から覗き込む星見乃・海星(ぼくは星をみるひとで・d28788)と可罰・恣欠(リシャッフル・d25421)。絵的な想像をするために補足するが、恣欠は全身布ぐるみの怪人で、海星は青い髪の男装王子様みたいなコである。なにげに人間形態書いたの初めてかもしれん。
    「よいしょである。この袋はなんと……」
     シュクリームは道具袋を取り出し、開いてみた。
     しゅーくりーむがマックス入っていた。
    「おやつで埋まっているのである」
    「なんか意図的に名前が捻られてると思ったらそういう伏線でしたか」
    「この後何回名前を間違えるか賭けだね」
     ニッコリする恣欠(布のよれ具合から推察)と海星。
     ほーらくえーといってネコにしゅーくりーむ喰わせるシュクレーム。
    「では皆さん準備はいいようですから」
     恣欠はごっほんと咳払いをして、巻き貝の先っぽをくわえた。
    「ヒトデ狩りといきましょうか!」
    「ヒトデ!?」
     ぱーぷー。

    ●ぱっぱらぱーぱっぱっぱっぱーぱーらーぱー(あらゆる権利に触れない演奏のしかた)
    「ヒーロー☆ロッドぉ!」
     背景にたっくさんお星様を散らしつつ、子羊はウィンクした。
     片膝上げて片腕上げてのチアリーダーみたいなポーズだが、掲げているロッドがぶっすりチェンキャタさんを貫いている。
     そして緑色の体液がどばどば垂れていた。
     背景に散ってるお星様と同じくらい垂れていた。
     そしてはいっ、決めセリフ!
    「生肉、剥いでみちゃう?」
    「うーん、セキセントリック」
     岩肌にチェンキャタさんの死体をびったんびったん叩き付けてる笑顔のショタを、海星はえもいえぬ顔で眺めていた。
     そこへ颯爽と現われるチェンキャタ。海星は振り返り、指を鳴らしてマジックミサイルを発射した。
     ぱきーんと頭のノコギリで弾くチェンキャタ。
     海星は不敵に笑い、チェンキャタへと飛びかかる。
    「やっぱり、使うしか無いか……アレを!」
     海星は空中で発光。
     大量のお星様を背景に散らし、光が晴れたときには海星もまんまお星様になっていた。
     いや、死んだ的な意味じゃない。
     お星様型の物体。ようはヒトデになっていた。こっからはもう海星さんのことはヒトデと表記することにする。
    「スター☆アタック!」
     ジェットを噴射しながら高速回転し、チェンキャタさんを蹴散らしていくヒトデ。
    「うーん、エキセントリック」
     靱は顎を撫でつつ頷いた。
     振り向いてみると、そんな彼らを囲むチェンキャタたち。
    「さて、こちらもやりますか!」
    「ん、やる気出すよ! ちょっとね!」
     靱とまひるは手をぱたぱた組み合わせ、周囲に影や煙を充満させた。
    「『かわいいオトモの群れ』!」
    「『十の幼霊獣と蛇神の申し子』!」
     二人の周りから影や幻影のネコ的なやつや不思議な幻獣が大量に沸きだし、チェンキャタさんたちを蹴散らしていく。
     ちなみに。出てきた幻獣というのは羊と猫又とアンゴラウサギと鯨とユニコーンとペガサスとグリフォンとドラゴンとワオキツネザル二匹と蛇神である。突っ込みどころがありすぎてなにをどう言っていいのか分からないと思うが、本当にそう書いてあるんだからしょうがないじゃんよう!
     軽く異次元めいた光景に、一平はほんのり和んだ。
    「やっぱりハンターといえばあのネコよね。まひるんたちも出せない? チャーハンつくるネコ」
    「出せるは出せるけど……たぶんチャーハン食べれないよ?」
    「あら残念」
    「そのかわり私のネコが満身創痍でチャーハンつくるよ」
     まひるはねこ・ざ・ぐれゐとの首根っこを掴んで持ち上げた。既にボッコボコにされていた。
     とはいえサーヴァントがチャーハンを作れるとは聞いたことがない。ぐれゐとさんもめっちゃ首を振ってるので、たぶん作れないと思う。
    「もういいわよ、作るわよ自分で!」
     一平は素早くエプロン(ハート型のやつ)を身につけると、カセットコンロの上で黙々とチャーハンを作り始めた。
     右から飛びかかるキャタ。押さえ込むアンゴラウサギ。チャーハンをひっくりかえす一平。
     左から斬りかかるキャタ。白刃取りする影絵ネコ。チャーハンをかきまぜる一平。
     上から組み付こうとするキャタ。飛行してかっさらっていく影業のカラス。
    「あれはっ!?」
     一平が塩こしょうを振りながら見上げると、カラスがターンして七星の手の上へとまった。
    「いいぞヤミ、この調子で行け」
     そんな七星をギラリとにらむチェンキャタ。
     地面すれすれで襲いかかるノコギリアタックを、七星は紙一重で回避。
     通り過ぎたチェンキャタが左右真っ二つに割れる。
     七星の足下から姿を現わす影業のネコ。
    「いいこだ、ユウラ」
     不敵に笑う七星。チェンキャタがずらりと取り囲んだ。
     七星が身構えると同時に、恣欠が颯爽と空から現われた。
     ずどんと拳をついて地について顔をあげる恣欠。
    「ピンチのようですね!」
    「ピンチじゃないですけど……っていうか今どっから来ました!?」
    「細かいことはよろしい! さあリチャード・チェイス君!」
     恣欠が両腕を広げると、影業でできたシカがずどんと空から着地した。蹄を地について顔をあげるシカ。
    「だから今どっから来たんだよ!」
    「玉砕です!」
     シカが角だけ飛ばしたのか自ら突っ込んだのか、とにかくチェンキャタたちを片っ端からばしばし蹴散らしていった。
     シカと恣欠(シガ)がかかっていることについて誰か突っ込んでほしいが、そこまで詳しく調べてくれる人がいるかどうかである。
     あ、そうそうかかってると言えば。
    「なぜこっちを見るのである?」
     シュクレームがシュークリーム両手に振り返った。
     そこへわらわら寄ってくるチェンキャタの群れ。
     シュークリームはシュクレーム両手に身構えた。
    「どうしてこんなことになったのか、私にも分からない。けれどやってしまったからには……やりとげるのである!」
     うおーと言いながら突撃するシュークリーム。
     シュクリームは両手に持ったシュークレームを全力で投擲。べしゃーと顔ではじけたシュクレームが瞬間冷却。クリームにまみれたチェンキャタたちがかちこちにかたまり、そこへシュクリームを掴んだ拳によるシュクレームパンチが炸裂。
     ぐしゃーとやったシュークリームが結界化し木っ端みじんに吹き飛んでいった。

    ●ボス登場シーン? カットだカット!
     武器を研ぐ恣欠。
     武器を研ぐ恣欠。
     武器を研――。
    「ぐほあ!?」
     研いでる途中で巨大なボスキャタが突っ切り、恣欠が吹っ飛んでいった。
    「ああっ、恣欠さんが開幕から吹っ飛ばされた!」
     空をずーんぐり飛んでいくボスキャタに砲台化した腕を向け、『殺虫!』とかいいながらアシッドを乱射する靱。
    「それにしてもきもい! 空飛ぶムカデもどき!」
     その後ろに恣欠がぐしゃーと落下した。
    「か、回復を……」
    「あっはい! 今すぐ!」
     靱は慌てて駆け寄り、乱暴に広げた布で恣欠をぐるぐる縛り始めた。
     最初から布ぐるみだったのに更に布にくるまれてよく分からなくなった恣欠が、空を飛ぶボスキャタを見上げた。
    「気をつけてください。奴は稲妻をまき散らすことができますよ」
    「それは知ってますが……なんだかコウノトリに運ばれる赤子みたいですね」
    「ここは任せて! 必殺技があるんだよ!」
     子羊がタルを抱え、にっこり笑った。
     殲術道具じゃないってことはこれを今までずっと抱えて持ってきたことになる。想像して楽しもう。
    「ひっさつ――子羊☆ビーム!」
     と言ってぶん投げた。
     そしてそして爆発した。
    「ビームじゃない!?」
     そして恣欠が吹っ飛んだ。
    「ぎゃあああああああああ!」
    「なんで!?」
     ぐしゃあと頭から地面に落ちた恣欠が、震えながら手を上げた。
    「大丈夫……灼滅者は……サイキック以外の攻撃は……つうじませんから……ね……」
    「死ぬほど痛そうですけど……」
     そこへボスキャタの稲妻攻撃。地面をばちばちはねるスパークからダッシュで逃げる子羊たち。
     途中で七星とシュクレームの二人組とすれ違った。
    「あ、危ないですよ!」
    「いや。ご心配なくです」
    「襲い来る敵あらば、迎え撃つのみである!」
     素早く身構える二人。
    「ユウラ、ヤミ!」
     七星は影業を解き放ち、ボスキャタへと攻撃を仕掛ける。
     飛行中に顔を攻撃されて軌道がぶれるボスキャタ。
     やや頭が下がったところで、シュクレームは素早くジャンプし、顔面へとシュークリームを繰り出した。
    「シュークリーム斬である!」
     死角からの斬撃で敵の腱や急所を絶ち、足取りを鈍らせます。
    「シュークリッパーである!」
     高速の動きで敵の死角に回り込みながら、身を守るものごと斬り裂き、殺害します。
    「ジグザグシュークリームである!」
     シュークリームをジグザグに変形させ、敵の肉を回復しづらい形状に斬り刻みます。
    「以上マニュアルからのコピペである」
    「おい最後のおかしいぞ……おっとやべ」
     ロリにしか見えない年上にうっかりため口をきいちゃった事実にきづいて口を押さえる七星。
     とはいえダメージはきっちり入っていたようで、ボスキャタはずずーんと音をたてて地面に墜落した。
     すぐざま空に浮き上がろうとするボスキャタに、一平とヒトデが一斉に飛びかかった。
     頭や背中にがっしり組み付く二人。構わず空に浮き上がるボスキャタ。
    「武蔵坂のカマドウマとはアタシのこと!」
    「それ言われてイヤなやつなんじゃ」
    「背中破壊ならまかせろー!」
     ボスキャタの背中を棒でがっしがっし殴り続ける一平。
     背中の甲羅がじょじょにひび割れ、しまいにはばきーんと砕け散って内側の甲羅があらわになった。
    「よーし、いくよー!」
     ヒトデがここぞとばかりに手足と頭(☆の上にある三つの角っこ)をがっと持ち上げ、勢いをつけて傷口に叩き付けた。
     ぺぎゃーと悲鳴をあげるボスキャタ。
     それまでの制御をうしない墜落していく。
     が、墜落した先にいたのがまひるだった。
    「あわわわわっ、なんでこっちにくるの? こうなった最後の手段だよ、ぐれいとばーりあ!」
    「ニ゛ャアアアアアアア!」
     最後といいつつ最初からずっと使っているが、さておき、まひるはねこ・ざ・ぐれゐとを思いっきり叩き付け、ボスキャタの軌道をずらした。
     でもって大きな斧をどこからともかく引っ張り出す真昼。
    「せーの!」
     よろめきそうになりながら大上段に振り上げ、全力でもって叩き付けた。
     響き渡る轟音。吹き上がる土砂。
     びくんと跳ねるボスキャタ。
     はずみで吹っ飛んでいく一平とヒトデ。
     関係ない所で爆風に巻き込まれる恣欠。
     血みどろの顔で笑う子羊。
     シュークリームをもぐもぐする七星と靱。
     白目を剥いて気絶したネコの口にシュークリーム突っ込むシュクレーム。
     振動と轟音がやんだ時には、ボスキャタは跡形も無く消え去っていた。

     かくして!(いつもの)
     恐ろしき大型眷属モンスターキャラピ……キャタピラー? とにかくあのでかいやつは倒された!
     ありがとう灼滅者たちよ! そして運動しまくった後のシュークリームは本気で吐きそうになるからマジで気をつけるんだぞ灼滅者たちよ! またあう日まで!

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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