小豆色のカッパはあんこがお好き?

    ●噂
    「薄いピンク色のカッパがいるって噂があったじゃん?」
    「あったあった。チェリーピンクのもいるって噂もあったねー」
    「そんな噂もあったっけ」
    「うん。あったあった」
    「でさ、小豆色のカッパもいるっぽいよ」
    「小豆色? 小豆色って、ピンクなんだか紫なんだか茶色なんだかイマイチよくわかんない色でしょ?」
    「まぁ、うん。小豆色は小豆色なんだろうけど。小豆色のカッパはね、あんこが好きで、メタボってるんだって」
    「メタボかー……うちの両親と同じだなー……」

    「今度のメタボ河童は、餡子好き……と」
     御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)が戦った薄いピンク色のカッパは、マシュマロが好きでメタボなカッパだった。ブラックコーヒーが好きな闇色のカッパは、メタボではなかったが。
     裕也は、小豆色のカッパの噂を学園に報告する事にした。

    ●教室にて
    「みんな! 小豆色のカッパを倒してきて欲しいんだかっぱ!」
     奇妙な語尾で言ったのは、カッパ(緑色)の着ぐるみを着た少女──野々宮・迷宵(高校生エクスブレイン・dn0203)だ。着ぐるみの顔の部分はくり抜かれており、そこから迷宵の顔が出ている。
    「裕也くんのおかげで、小豆色のカッパの出現を察知できたんだかっぱ! 小豆色のカッパも、例の川に現れるんだかっぱ!」
     緑のカッパ……じゃなくて迷宵が、黒板に張られた地図を指差した。とある田舎町の、とある川だ。
    「小豆色のカッパは、あんこが大好きだかっぱ!」
     こしあんでも粒あんでも、あんこであれば問題ない。あんパン、あんまん、たい焼き、どら焼き、羊羹なども食べる。
     好物を川辺に置いておけば、小豆色のカッパ(薄いピンク色のカッパと同程度のメタボ)が川から出てくるはず。
     戦闘は、小豆色のカッパが陸に上がってからになる。相手は、好戦的で人を襲う習性がある都市伝説。川に逃げられる心配はない。
     一般人でも近付ける場所ではあるが、近付こうとする者はいないだろう。
    「小豆色のカッパは、音楽系魔法で攻撃をするんだかっぱ!」
     メタボなお腹を叩いて音を発生させ、魔法を発動させるようだ。
     なお、頭の皿は弱点ではない。それでも皿を狙うなら、スナイパーの「部位狙い」が必要になる。
     皿に一定以上の攻撃をヒットさせる事が出来れば、皿が割れる。ただし、皿が割れても、敵の戦闘力は変化しない。体力が残っているならば、戦闘不能にもならない。
    「みんな! 小豆色のカッパを倒してきてくれだかっぱ! 川に行くときには小豆色のカッパの好物を忘れずに、だかっぱ!」
     サイキックの活性化や装備品の確認も忘れずに、だかっ……忘れずに。


    参加者
    御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)
    明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)
    龍ヶ崎・藍(天雷无妄・d26058)
    葉真上・日々音(人狼の狭間に揺れる陽炎・d27687)
    フェイ・ユン(侠華・d29900)
    庭・瞳子(狩猟中毒・d31577)
    帯刀・伊織(延命冠者・d32708)
    コンスタンティア・ウォルコット(グリムリーパー・d34235)

    ■リプレイ

    ●あんこ
     あんこの中で最も一般的なのは、小豆を甘く煮たもの(小豆あん)である。こしあん派と粒あん派が対立しているとかいないとか。
     小豆色のカッパは、どちらも好きらしいが。
    「餡子、美味しいですよね。ちなみに、僕はこしあん派です」
     御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)が「藍さんとご一緒、わくわくしますねぇ♪」と続ける。
    「最近の河童の色は変幻自在なんだな。今回は裕也さんと一緒だし、楽しめそうだぜ」
     龍ヶ崎・藍(天雷无妄・d26058)は、修学旅行のお土産を持って来ていた。1箱に1つ、島唐辛子入りの激辛饅頭が潜んでいるらしい。
    「ちょっと反応が楽しみだ! オレは食べてないから、どの位辛いのかわかんねーけど……河童の反応見てから食べるか決めよ」
    「そういえば、餡子って小豆だけですかね? ずんだとうぐいすのお団子持って来てみたんですが、どうなんでしょう」
     饅頭の横に、裕也が団子を置く。
    「どんな反応してくれるのか、楽しみですね」
    「カッパ。ジャパニーズモンスター河童だね」
     英国女子なコンスタンティア・ウォルコット(グリムリーパー・d34235)が、たい焼きを取り出した。
    「モリアティさん、この鯛焼きを川辺に置いたら戻って来てね」
     ウイングキャットのモリアティ(モノクルをかけて帽子をかぶっているメタボ)が、たい焼きを持って川辺に。その後、コンスタンティアの元へ。
    「カッパが出てくるまで、ここで待機だな」
     カッパの好物が置かれたのを確認し、帯刀・伊織(延命冠者・d32708)が身を隠してカッパを待つ。
    「もしもカッパが寄ってこなかったら、これを置いてみましょうか」
     庭・瞳子(狩猟中毒・d31577)は小豆の塊をスタンバイ。
    「あんこばっかり食べるなんて贅沢だなぁ」
     カッパの出現を物陰で待つフェイ・ユン(侠華・d29900)には、筋肉質な肉体を持つビハインド──无名が付き添う。
    「あー、あんこの事思い出したら、和菓子食べたくなってきたわぁ……」
     人狼の葉真上・日々音(人狼の狭間に揺れる陽炎・d27687)が「もみじまんじゅう……どら焼き……。じゅるり……」と言った時──。
    「ここにあるのは、全部僕ちんのなんだな」
     小豆色のカッパが姿を見せた。
    「餡子好きってなら、余程じゃない限り、メタボになるのは仕方ない……のか……?」
     藍の視線の先には、カッパのメタボなお腹が。
     カッパが大きく口を開け、たい焼きも団子も饅頭も突っ込んでいく。
    「ずんだもうぐいすも、いい感じにグリーンな味を出して……って、辛いんだな!?」
     どうやら、激辛饅頭の辛さが時間差で来たようだ。
    「く、口直しを……」
     残っているのは、饅頭が1個だけ。食べる前に割って中身を確認。
    「中身は普通なんだな。……まさか、見た目は普通でも辛い……?」
     意を決して饅頭を飲み込む。
    「ちゃんと甘いんだな。僕ちんは今、幸せを噛みしめてるんだな。あんこを食べたし──」
     カッパが、灼滅者たちに視線を向けた。
    「哺乳類に、先祖返りである僕ちんの偉大さを思い知らせちゃうんだな」
    「小豆色のカッパ……また珍妙な都市伝説も居たものですね。聞くところによれば、色んな色のカッパが居るとか……」
     明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)が眼鏡を外し、スレイヤーカードを手に。彼の横にいるのは、霊犬のスクトゥムだ。金色の剣をくわえ、体の横には盾らしきものが。
    「さぁ、鮮血の結末を」
    「今回の獲物は小豆カッパね。──ロゥ、ルゥ、狩りの時間よ」
     瞳子は、白い霊犬のロゥと対をなす、影の犬を喚び出した。
     武装した灼滅者たちを見て、カッパが「むむっ……」と唸る。
    「喋る河童なんて珍しいね。モリアティさんが親近感湧いているけども、人を襲うなら倒さなきゃ」
    「翼が生えた猫なんて、初めて見たんだな。僕ちんをやっつけに来たみたいだけど、哺乳類に負ける僕ちんじゃないんだな。返り討ちにしてやるんだな!」

    ●メタボなカッパ
    「僕ちんは、動き回らなくても攻撃ができちゃうんだな」
     カッパが、お腹を叩いて攻撃的な音を奏でる。
    「まとめて倒しちゃうんだな!」
     メタボなお腹から生じた音が魔法へと変換され、前衛にいる灼滅者たちに襲いかかった。
    「これで半分片付い……てないんだな!? そんなバカな!」
    「あの程度の攻撃に耐えるなど、他愛ない事だ」
     カッパの死角から、一羽の斬撃。
    「っ! 意外と威力があるんだな……!」
    「浄霊眼」
     指示を受け、スクトゥムが仲間を癒す。
    「犬のくせに回復魔法……なかなかやるんだな」
     感心しているカッパに、无名が接近。柳葉刀状の剣を敵の頭部に振り下ろす。
    「僕ちんの皿を……! でも、そんなに簡単には割れないんだな」
     えっへんと胸を張ると、カッパのお腹がぶるんっと揺れた。
    「お腹たぷたぷしてる……。えっと、もっと運動した方が良いんじゃないかな?」
    「運動とか、めんどくさいんだな。ダイエットして魔法使えなくなっても困るし」
    「こっちも、音で攻撃しちゃうよ!」
     フェイがギターを掻き鳴らし、ソニックビートを発動させる。
    「……びっくりなんだな。あのギター、鈍器じゃなかったんだな」
    「一体、河童は何体いるんでしょうね」
    「いっぱいいるんだな」
     裕也が、お気に入りのチェーンソー剣を手に敵に肉迫する。
    「メタボ河童、覚悟──あ」
     カッパの目の前で、裕也がコケる。
    「裕也さん!」
     チェーンソー剣が、カッパに迫る。
    「うぎゃあっ!?」
    「…………。作戦通り!」
     顔が赤い。
    「作戦じゃないでしょ、絶対(裕也さん可愛い……)」
     藍が影の先端を刃とし、敵の皿に狙いを定める。
    「その体型、泳ぐときとかに影響したりするんじゃね?」
    「特に影響はないんだな」
    「カプサイシンには、脂肪燃焼効果があるらしいぜ!」
     敵に向かって伸びた影は、狙いをわずかに外して虚空を斬った。
    「カ……カプサイシンには脂肪燃焼効果が……」
    「あの饅頭、辛かったんだな! お前、僕ちんをからかったんだな!」
    「今回はジャマーで邪魔邪魔したるでー! 秘術、日々音ミラージュ!」
     日々音が、忍者っぽい動きで白き炎を放出。
    「ただの犬耳娘かと思ったら、忍者犬だったんだな……!」
    「犬ちゃうで、狼やで!」
    「カッパでもメタボになるのか」
     伊織が言うと、カッパは「いろんなカッパがいるんだな」と応じた。
    「……というか、この手の噂にも世相が反映されるようになってきたというべきなのか。その皿、割れるとどうなるんだ?」
    「皿が割れると、僕ちんのプライドも砕けるんだな」
    「そうなのか」
    「まさか、お前も僕ちんの皿を!?」
     警戒するカッパだったが、伊織の姿を見失う。
    「(どこに──)ぐっ!?」
     斬られて気付く。伊織が自分の死角から攻撃してきた事に。
    「なんか、私はカッパとの縁があるみたいね……。まあ、今回のカッパも、ささっと狩って終わらせるわ」
    「これまでにもカッパを……?」
     瞳子がカッパと戦うのは、これが3度めの5匹めだ。
    「ロゥは浄霊眼を。往きなさい、ルゥ」
     ロゥが仲間の体力を回復させ、瞳子の足元から飛び出した影の犬は敵を斬る。
    「……人間が犬好きって話は、本当みたいなんだな」
    「それにしても、どうして餡子が好きなんだろう?」
     コンスタンティアが首を傾げる。
    「河童は胡瓜が好きって聞いたけども」
    「今も、キュウリは嫌いではないんだな。あんこ好きになったのは、あんこを食べて覚醒したからなんだな。先祖返りの性質なんだな」
    「先祖返り?」
    「僕ちんみたいな特別なカッパを、一族ではそう呼ぶんだな」
    「なるほどね」
     モリアティはリングを光らせ、コンスタンティアは怨念系の怪談を語り始める。
    「……お前たち、哺乳類の割には強いんだな。だけど──僕ちんも、普通のカッパとは違うんだな!」

    ●音
    「今度は、これなんだな!」
     カッパがお腹を叩くと、情熱的な音が炎を発生させる。
    「くらうんだな!」
    「やらせはしない」
     裕也に炎が襲いかかるが、スクトゥムが盾となった。
    「頑丈な犬なんだな……!」
    「遅い」
    「いつの間に……!」
     高速で移動した一羽が、カッパの死角へと回り込むと同時に斬っていた。スクトゥムは、自分自身を癒す。
     无名の霊障波が、皿に向かって飛んだ。
    「あの幽霊、また僕ちんの皿を……!」
    「……さっきから河童のお皿狙っているけど、无名は河童に恨みでもあるの? 河童が嫌いなの?」
     フェイに問われるも、无名は武闘家っぽいポーズ(カッコイイ)をするだけだった。
    「まぁ、いいか。炎ならボクだって!」
     バイオレンスギターに炎を宿し、振り下ろす。
    「鈍器っ!?」
     炎に焼かれたカッパに、裕也が接近。チェーンソー剣での攻撃を仕掛けた。
    「このチェーンソー使いめ……!」
    「今度は蹴ちゅま……け、蹴躓かずに済みました……」
    「代わりに噛んだけどね(可愛い人だなぁ……)もし皿に当たったら、裕也さんに何かしてもらおうかな?」
     藍が繰り出すのは、破邪の光を発する斬撃だ。
    「……当たった」
    「当てられたんだな……!」
    「藍さんに僕のおやつを奢りま……でも、当たっただけで割れては……」
    「ヒビすら入ってないんだな。ヒビが入ったら、割れる1歩手前なんだな」
    「なぁなぁ、カッパって基本、きゅうりが好きなんやろ?」
     日々音が訊いた。
    「きゅうりにあんこ付けて食べたりするん? っていうか、なんかこう『カッパ直伝の秘密レシピ!』みたいなお菓子とか無いん? なぁなぁ」
    「僕ちんは食べる専門だから、レシピとかは知らないんだな。キュウリには、あんこよりも味噌の方が合うんだな」
    「普通の食べ方やなぁ」
     赤色標識を引っ提げ、カッパに接近。
    「絶対禁止! 日々音ストライク!」
    「ゴルフスイングッ!?」
    「その皿、狙ってみるか」
     伊織が、縛霊手で殴りかかろうとする。
    「まさか、今度は皿を!?」
     皿を狙うと見せかけて、普通に縛霊撃。
    「まぁ、素直に狙うのも良いかとは思ったんだが」
    「……策士なんだな」
    「さあ、あなたは他のカッパたちと違って、私たちに強く抗ってくれるのかしら?」
    「……カッパを狩る者の目をしてるんだな……!(多分だけど)」
    「往きなさい、ロゥ」
     ロゥが駆け出し、斬りかかった。
    「犬の分際で……!」
    「焼いてあげるわ」
     瞳子は、炎を宿した剣を振るう。
    「……お前も炎使いだったんだな……!」
    「モリアティさん」
     モリアティが、コンスタンティアを見る。
    「種族を超えた友情は、ほどほどにね?(河童がどう思ってるかは知らないけども……)」
     モリアティの表情は、少し困ってるように見えない事もない。
    「──迷う必要はないんだな。カッパと哺乳類は、相容れない存在なんだな」
     そう言ったカッパを、モリアティが殴る。
    「……それでいいんだな。ペットはペットらしく、主人を大切にするといいんだな。──人間、この僕ちんを倒すといいんだな!」
    「これで終わりだよ」
     コンスタンティアのグラインドファイアが、カッパにとどめを刺す──。
    「哺乳類もなかなか……やるんだな…………」
     カッパが仰向けに倒れ込んだ。
     コンスタンティアは、カッパを吸収するかどうか悩んでいる。その間にカッパが消滅してしまったが、まだ悩み続ける。
     冥福を祈るように、裕也が手を合わせた。
    「せっかくですから、河童に渡さなかったお団子を食べて行きませんか?」
    「ボクはみたらし団子持って来たよー」
     フェイが団子をもぐもぐ。
    「お団子パーティーってコトで、うちが持ってきたんはこれ! おはぎ!」
    「(もぐもぐ)おはぎ?」
    「……ええやん! 団子ちゃうけど似た感じやし、ええやん! なんか、あんこの話しとったら食べたくなったんやもん!」
     日々音が容器のフタを開けると、おはぎがぐちゃっとなってた。
    「……。ええやん!」
    「カラフル水まんじゅうとあん玉おみくじです」
     一羽(眼鏡あり)が持って来た水まんじゅうは、色だけでなく味もいろいろ。あん玉は、中が赤いと大吉らしい。
    「私は、いちご大福とこれを」
     瞳子が炭酸ジュースを取り出すと、伊織が「それは何味なんだ?」と問いかけた。
    「小豆味です」
    「小豆味か」
    「小豆味です」
    「お疲れー! 疲れを癒す意味合いも含めて、皆でお団子(?)祭りだぜ!」
     藍が飲み物を配っていく。
    「ふふ、皆さんのお菓子も楽しみですっ」
     裕也は甘党だ。
    「でも、カッパかぁ……。うん、やっぱりないかな。メタボはモリアティさんだけで十分」
    「コンスタンティアちゃんも食べる?」
     フェイに声をかけられて、コンスタンティアもカッパの消滅に気が付いた。

    作者:Kirariha 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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