団地、奥さん、米屋とくれば

    作者:森下映

    「そういえば、1階の角部屋に越してきたばかりのご夫婦の話、きいた?」
    「きいたきいた! 新婚だったのに、あっというまに離婚してまた引っ越しちゃったんですって?」
    「そうそう。しかも理由が奥さんの浮気。相手は出入りしてたお米屋さんらしいわよ〜」
    「やだ、今時そんなのあるの? って……そもそもこのあたりに配達してくれるお米屋さんなんてあったかしら……」
    「そういえばそうねえ……」
    (「……ん?」)
     金髪と赤毛がミックスされた、華やかなピンク髪の少女が振りかえる。
    「キャロライン、今のきいた?」
    「ナノ!」
    「これはちょっと……なんかありそうだよね?」
    「ナノナノ!」
     妙な噂を耳にした椋來々・らら(恋が盲目・d11316)とナノナノのキャロラインは、報告のため学園へ急いだ。

    「やっぱり都市伝説だったよ。情報をありがとう!」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)は、ららとキャロラインにぺこりと頭を下げると、説明を続けた。
    「今回灼滅してほしい都市伝説はイケメンの米屋。イケメンといってもいろいろあるけど……たぶん団地妻を狙うイケメン米屋、ときいてみんなが思い浮かべるようなイケメンなんじゃないかな……」
     都市伝説は団地の1階の角にある部屋に『団地妻』がいると、午前11時に米を届けに現れる。ちなみに部屋の中に『団地妻』以外の者がいると現れないが、『団地妻』は何人いてもok。今は空き部屋だが、近々また夫婦が引っ越してくるようなので、家庭不和や万が一の犠牲を防ぐためにも灼滅しておくべきだろう。
    「室内はあまり荒らしたくないから、戦闘場所は部屋の入り口を出て左側に曲がると出る、団地裏の空き地がいいと思う。簡単な人払いと音の配慮くらいで十分戦えるよ」
     都市伝説は『夫』が現れると戦闘モードに入る。
    「頃合いみて、必要ならトイレで着替えるとかして、夫役の人が出てくれば大丈夫じゃないかな? 『夫』が登場すると都市伝説は一瞬逃げようとするけど、こちらから正々堂々勝負しろ! とでもいえばのってくるから問題ないはず」
     戦闘時、都市伝説は細長い風船に似た武器を使う。
    「風船にしては変な形なんだけどね……都市伝説本人曰く『エチケット』で持ち歩いているんだって」
     ポジションはクラッシャー。
    「それから、これも一応渡しておくね!」
     と、まりんが取り出したのは炊飯器。
    「電気、ガス、水道は開通してて、エアコン有り。コンロ、備え付けのダイニングセットなんかもあるよ。都市伝説が届けにくるお米はなかなかの高級ブランド米みたいだから、お昼代わりに食べてから灼滅するのもいいんじゃないかな? 都市伝説は団地妻の作ったものなら喜んで食べるし、出現から時間を稼げるほど弱体化も期待できるよ。じゃ、うまくやってきてね! 頼んだよ!」


    参加者
    紫月・灯夜(煉獄の殺人鬼・d00666)
    椋來々・らら(恋が盲目・d11316)
    天瀬・麒麟(中学生サウンドソルジャー・d14035)
    狩家・利戈(無領無民の王・d15666)
    黒姫・識珂(エクストラブライブ・d23386)
    大神・狼煙(仮面の召使い・d30469)
    早河・天祢(天淵一閃・d34306)
    貴夏・葉月(その食欲は都市伝説・d34472)

    ■リプレイ


     ピンポーン。
    「はーい♪」
     応答したのはフリフリのエプロン着用、キュートなおさなづま☆ の椋來々・らら(恋が盲目・d11316)。
    「待ってたよー♪ 今あけるね〜♪」
     ピンクのくせっ毛をゆらしパタパタと駆けるらら。一緒に早河・天祢(天淵一閃・d34306)も玄関へ。
    「団地妻ってテレビとかで見たことあるけど、要は団地の奥様? なんか子供の頃のおままごと思い出しちゃうなー! 懐かしいね!」
    「そうだね♪」
     答え、ららが鍵をあける。
    (「ん、旦那さんが留守だからって、嫌らしい事をしたらダメって思うよ」)
     後ろで待つ、エプロン姿の天瀬・麒麟(中学生サウンドソルジャー・d14035)。
    (「でも、こんな都市伝説がでるのは、皆が嫌らしい事をしたいって思ってるからなのかな……? そうだったら悲しいね」)
     ガチャリ。
    「奥さん、米屋です!」
    「米屋さん! 取りあえず僕にお米を下さい!」
     ドアが開くなり、貴夏・葉月(その食欲は都市伝説・d34472)が言った。着物の上に割烹着をつけ、少々時代錯誤もといレトロな団地妻である。
    「わかりました」
     米屋は担いでいた米をおろしながら、にっこり笑い、
    「愛をこめてお渡し、うわっ」
    「わあ……!」
     米袋を奪い取った葉月は中を見てうっとり。
    「つややかー! さすがブランド米だね!」
     まさに、この米目当てに団地妻役を買って出た天祢も覗きこむ。葉月はすでに目の色を変え、
    「もう生でもいいよ、食べちゃうよ……!」
    「奥さん、それでは貴女の素敵なお腹が壊れてしまう」
     近づく米屋に、
    「あら♪」
     可愛く応える葉月。だが視線は完全に米。
    「貴夏先輩、炊いたらもーーっと美味しいよ☆」
     ららがよいしょとお米を持ち上げた。
    「あ、奥さん、俺も一緒に」
    「いつもお疲れさま」
     米袋を持つららの手を上から握ろうとした米屋の前に、麒麟が立つ。
    「ん、……きょうもゆっくりしていくんでしょ?」
    「そうできたら、嬉しいな?」
     麒麟は肩を抱き寄せにかかる米屋をかわし、
    「でも、先にご飯にしないと」
     らら、葉月、天祢はその間にお米をキッチンへ。麒麟は米屋をやりすごしつつ、
    (「こういうのはすごく嫌だなってって思うよ……きりん、ちょっと前まで淫魔だったのもあるけど……」)
    「……ん、まだダメ」
    「ぐ」
     台所でまでもベタベタしてくる米屋の鳩尾に、麒麟の肘鉄がヒットした。
    (「だから、こういう都市伝説は淫魔と同じですごく嫌……」)
    「今、鮭焼いて、お味噌汁もオマケに作ってるからまっててね!」
     天祢がお玉を手にウインク。
    「さ、座って待っていて……」
    「そうだね」
     麒麟に促され、米屋は渋々腰をおろす。
    (「ん……、だから余計に痛めつけて倒したいって思うよ、そのためのチェーンソー剣だし」)
     米屋の肩に手を置きながら、麒麟はまだ封印されている武器を思い浮かべ、
    (「目指すは嬲り殺しかな」)


    「いい匂いしてきてましたねえ」
     ベランダにて。団地妻の不倫の結果悲惨な末路を辿る男の話を語り、人払いを行っていた大神・狼煙(仮面の召使い・d30469)が言った。
    「人様の家庭に土足で踏み込みめちゃくちゃにする、そんな間男は生かしておけねえ!」
     その隣、胸に晒をまいてスーツを着こみ、男装中の狩家・利戈(無領無民の王・d15666)。
    「ぶっ潰してやる! ……と、うまいなこれ」
    「お口にあったならよかったです。おにぎりもありますよ?」
     狼煙持参の弁当箱に詰められているのはから揚げ、ポテトサラダ、魚の煮付け。よかった、顔は怖いのに……なんていう仲間はここにはいなかった。
    「はん、米屋だか何だか知らないけど、ホントロクでもないわねっ! 徹底的に叩きのめしてやるわ!」
     金髪縦ロールが、今日はビシッと決めたサラリーマン風スーツの肩にかかっている。黒姫・識珂(エクストラブライブ・d23386)は棒付きのキャンディーをなめながら、
    「ところで、灯夜はお腹すいてないのかしら?」
     空き地で待機中の紫月・灯夜(煉獄の殺人鬼・d00666)の方を見た。気づいた灯夜は、大丈夫、というように片手をあげてみせた。傲岸不遜なお嬢様、とみえて根は優しい識珂なのだった。
     一方室内では、
    「ん、海苔の佃煮もどうぞ」
     しっかり自分も食事をしながら、麒麟が佃煮の小皿をすすめた。
    「ありがとう、これは嬉しいな」
    「佃煮は昆布もあるよ。あとたらこでしょ、それに味のりも!」
     天祢も、もぐもぐお米を堪能しつつ、言う。米屋は、
    「鮭もお味噌汁も君が作ってくれたんだって?」
     と、天祢の脇腹に手を回そうとした。が、
    「やだなーお米屋さんたらー」
    (「うわーやっぱりセクハラはイケメンでも抵抗あるなあ」)
     のらりくらりとかわす天祢。負けじと米屋もにじり寄る。
    「お礼、させてほしいな……ウッ!」
     米屋がうずくまった。目にもとまらぬ素早さで手刀を食らわせた天祢は、すでに別の椅子でもぐもぐ。
    (「機敏さには結構自信あるんだー」)
     今日は天祢の好物の肉はないものの、ブランド米には満足している様子。
    「ららも手料理振る舞いたいとこだったんだけど、あんまり得意じゃないんだよね……」
    「いいんだよ!」
     米屋がガバっと起き上がる。
    「奥さんのその気持ちだけで俺は、」
    「それでね……はい! ららお手製のお茶漬け、どうぞ召し上がれ☆」
     ららが笑顔でお茶漬けを差し出した。と、米屋は、
    「お茶漬けもいいけど、そろそろ君が食べた」
     バシッ!
     ららに抱きつこうとした米屋を襲う突然のハリセン【一刀両断】!
    「あれ、どうしてハリセンが? まあお米屋さんもまずは食べよ?」
     ハリセンをしまいながら葉月が言う。
    「そ、そうだね」
     米屋は首をコキコキしつつ座った。葉月は米屋のスキンシップにもうまいこと応えつつ、ひたすらご飯を食べ続ける。
    (「倒したら消えちゃうんだから、倒す前に全部食べちゃおう」)
     時間がたてば米屋の戦闘力も落ちる。団地妻たちは存分にブランド米を味わい、
    「お、きたぜ」
     利戈が葉月からの連絡に気づいた。
    「じゃ、俺は玄関に回るな。よっ、と」
     利戈はベランダの手すりに片手をつくと、軽々と飛び越える。次いで狼煙も、
    「では、私も身を潜めるとしますか、わっ!」
    「ちょっと、すごい音したわよ。あと、これ忘れもの」
     識珂が手すりの上からお弁当箱を差し出した。
    「あ、ありがとうございます……イテテ」
     打った腰をさすりつつ、狼煙は弁当箱を受け取り、ずり落ちた眼鏡を戦闘に備えて外す。途端、露わになる鋭い眼光。
    「待ってろよ、都市伝説……イテテ」
    「無理するんじゃないわよー?」
     よろよろと歩いていく狼煙に、識珂が言った。


    「おう、帰ったぜー」
     玄関から聞こえた利戈の声に、米屋は心なしか生き生きと立ち上がり、
    「大変です奥さん! 旦那さんだ!」
    「ん、そうみたいね……どうする?」
     麒麟が肩にかかる金髪を払いながらたずねると、
    「ここはひとまず失礼!」
     米屋は逃走の王道、ベランダへ。が、カーテンを開けるなり、ガラッと外から窓が開く!
    「お、お前……最近様子がおかしいと思っていたら、そんな男を連れ込んで!」
     そこには、悔しげにスーツのネクタイを握りしめ、ワナワナ震える夫、識珂が。
    「あ、あなた、仕事に行ったはずなのに……まさか僕を疑って、隠れて……?!」
     言いながらも葉月は、茶碗と箸は離さず。そして、
    「帰ったっていってんだろ……あ? んだテメエ?」
     どこぞの若頭かといった風体の利戈も部屋に入ってきた。と、米屋の顔を見るなり、
    「あっ! お前さては最近噂の団地妻に手を出してるって米屋だな! 人の女に手を出そうたぁ、ふてぇ野郎だ!」
     識珂も飴を片手に、
    「よくもうちの妻……達、をたぶらかしたわね……」
    「ちがうのー」
     ららが、だだっと走り寄る。
    「裏切りとかそういうのじゃなくて、ただ寂しかっただけなのー、ヨヨヨ……」
     ものすごい棒読み台詞とともに、ららは、いつのまにかいた夫、ナノナノのキャロラインの足? 元? に泣き崩れた。なぜか当たるスポットライト。
    「……って、おい」
    「は、はい」
     こっそり逃げようとした米屋の襟首を利戈が掴む。
    「逃げんじゃねえ! この根性無しが!」
    「いえ、逃げようなんてそんな、」
    「けっ、俺と勝負して勝てたら見逃してやる!」
     ドン、と利戈はそのまま玄関方向へ米屋を突きとばし、
    「表ぇ出ろ!」
    「そうよ! 白黒付けてやろうじゃないの!」
     続き、識珂がネクタイを投げつけた。
    「お米屋さんそんな決闘だなんて……」 
     と、こちらもまだ食事中の天祢が、
    「男らしくて良いじゃない!」
     煽る。米屋は尻もちをついたままフッと笑い、
    「いいでしょう。受けて立ちます」
     額に垂れたネクタイの片端を払いのけた。


    (「そのテの業界では古き良き伝統のシチュエーションだな」)
     待ち伏せていた灯夜の方へ、米屋、団地妻、夫の一団がやってきた。
    (「まぁでも、放ってはおけないな」)
    「さあ、まずは潰してやろう! どこかは……分かるな?」
     利戈は、拳にピシリと雷光を走らせつつ凶悪な笑みを浮かべ、
    「うちのに手を出そうとしたこと、後悔させてやるわ!」
     識珂はスーツの袖をまくりあげ、片腕を鬼のそれへと変化させる。
    「神よ我に力を貸し与えたまえ」
     葉月がスレイヤーカードを解放。霊犬の琴寧も現れた。
    「行くよーどらちゃん!」
     天祢の傍らにはもふもふのウイングキャット、どらやきが。
    「や、やだなあ、奥さんたちまで……、!」
     後ずさりながら、麒麟の冷たい視線に気づいた米屋が凍りつく。
    「……ん、お前みたいな都市伝説は皆を不幸にするだけだから……不幸になった人の分まで苦しんで死んで」
     麒麟は妖気を纏った槍を米屋の喉元につきつけ、
    「きりん、お前みたいな男はゆるせないって思うから……」
     バシュ! と槍から発射された氷弾が米屋の喉元を貫いた。普通の人間なら急所だろうがそこは都市伝説、まだ余裕の笑みで怪しい風船をふくらませる。重ねて灯夜の放った魔法により、体温は底をつきつつも、米屋はそのまま風船を投げた。
     バシャン!
    「げっ、きったねえな!」
     射線に飛び込み、ガードを作った利戈の腕で水風船が破裂。
    「風船つーか、アレじゃねえかこれ!」
     中身は一応水らしい。が。
    「これを持ち歩くのはエチケットだからねねねね」
     米屋、歯の根をガチガチいわせながらドヤ顔。
    「エチケット? ららは夢を守る魔法少女だからよくわかんないにゃー」
     と、ららは黄色標識を掲げて、前衛の防御を強化。キャロラインのシャボン玉も米屋の背でバチンと弾ける。その間に天祢の放った帯に包まれ、どらやきの回復にも助けられ、すっかり身体の乾いた利戈は米屋へ接近、
    「ったく、ふざけやがってっ!」
    「ぐふっ!」
     雷鳴鳴るアッパーカットに、折れた歯が宙を飛ぶ! 何とか体勢を立て直した米屋を、今度は隠れ潜む狼煙が放った弾丸が追う。逃げる米屋。しかし、
    「怒りの鉄拳、味わいなさい!」
    「ぐあ!」
     揺らめく桜の瞳とは不釣り合い、付呪をも得る識珂の鬼の腕に殴り倒されたところへ、狼煙の弾丸も命中。這う米屋の目に映る着物の裾。
    「お、奥さん、」
    「米……」
    「え?」
     米屋が見上げると、そこには巨大な十字架型モノリス『紫縁』を持ち上げた葉月と、それを少々困ったように見守る琴寧。
    「米がたりねぇぇぇぇぇぇ!! 琴寧も行けぇぇぇぇぇぇ!!」
    「んぎゃああああ!」
    「米よこせぇぇぇぇぇぇ!!」
    「うげええええええ!」
    「米ぇぇぇぇぇ!!」
    「ひぎいいいいいい!」
     琴寧の撃ちこむ六文銭の降る中、葉月に叩き潰される米屋だった。


     回復手段がない上、ひとたび逃げるそぶりでも見せようものなら、
    「間男しようなんてフザケタ野郎の命はここで通行止めだ! ひゃっはー!」
     と、利戈の赤色標識に殴り倒され、
    「間男許すまじ! 二度と悪さが出来ないようにしてあげる」
     流星の重力をのせた識珂のシューズに蹴り潰される。こちらは仲間の回復をきっちり行う傍ら、米を求めて十字架を振り回す葉月も健在。付呪を得た灯夜の攻撃も鋭い。そして影ながら支援する狼煙。だったが、
    「そこでさっきから物騒な話をしているのは誰かな?」
     鼻血をふきながら米屋が言った。実際語られていたのは、不倫を持ちかける米屋をフッて夫との愛に生きた団地妻の、心あたたまーる話だったのだが、
    「見つかっちまったら仕方ねぇな」
     米屋は、姿を現した語り手の狼煙に近づくと、
    「どうして隠れていたんだい?」
    「たとえ結ばれなくても陰ながら支える。それが本当に大切に相手を思ってる証ってもんじゃねぇの?」
     びしっと言い切る狼煙。これに米屋が固まろうものなら不意打ち叩き込んでやる! とばかりバベルブレイカーを可動させ、た、が、
    「ありがとう奥さん!」
    「ハ!?」
    「俺のために陰ながらお弁当を作ってくれていたなんて!」
    「エ!?」
     狼煙、見下ろした片手に弁当箱。弁当で団地妻認定とは都市伝説さすがアバウト。
    「なんて健気な……顔は怖いのに」
    「ウ」
     急所を刺されてもそこは戦闘中、崩れ落ちそうになるのを踏みとどまったところで、死角に回りこんでいた灯夜が米屋の身体中を斬り裂き、
    「うちのに何してくれてんのよ!」
    「げふっ!」
     識珂が炎の蹴りを見舞い、
    「ほんと、しつこいよっ!」
    「うげ」
     天祢も煌めき散らせて踵落とし! さらにキインと響く麒麟のチェーンソーの駆動音。
    「ん、その不幸の元凶……、抉りとってあげるね」
    「え、えぐりとる、って、」
    「……ん、不埒な男は苦しんで苦しんで苦しみぬいて地獄に堕ちるって、そんな都市伝説ができるくらい」
     麒麟がチェーンソー剣を向けた。
    「苦しんで死んで」
    「ぎああああああ!」
    「よーしキャロライン、とどめいくよ!」
    「ナノ!」
     文字通り抉られた米屋を、ららの白光の斬撃とキャロラインのたつまきが襲う。
    「ぐああおおおくさーーーん!」
     叫び声を残し、米屋は消滅した。ららは、からん、とソードを取り落とすと、
    「やっぱりワタシにはアナタだけなのー」
     締めの大根演技でキャロラインに縋りつく。
    「はっ、よく考えたらいろいろやらかしたかも!」
     米屋とのスキンシップ応酬を思い出し葉月は赤面。が、
    「それにしてもお米、欲しかったなあ……」
     主人の執着には琴寧もドン引き。一方天祢も、
    「お米屋さん……お米は置いてこうよ……!」
     どらやきをもふもふしながら、ものすごく悔しがっている。そして利戈は風船攻撃のあとが気になる様子で、
    「クリーニングのESP持ってくるべきだったか……とっとと帰って風呂入ろ」
     ららも立ち上がり、
    「ま、とりあえずこれで夫婦円満、一件落着だね☆ またお腹すいちゃったし、おうちに帰ってご飯にしよっか、キャロライン」
    「ナノ!」
     帰路についた。と、一人佇んでいた狼煙も慌てて眼鏡をかけ、
    「あ、私も帰ります!」
     今度こそ全員で、空き地を後にした。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ