破滅を誘う蒼

■リプレイ

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　夕陽に照らされ、強い風が吹き荒れるとある草原。
　ロード・クロムが作り上げたデモノイド、クロムナイトを灼滅する為、８人の灼滅者達はこの場所に訪れていた。
「前に戦った時はデータを回収されたから、今度はその暇も与えず叩かせてもらうわ」
「ここで倒したとしても、長引けば経験として引き継がれてしまう……何とかして早く決着をつけたいわ」
　アリス・バークリー（ホワイトウィッシュ・d00814）と各務・樹（虹雫・d02313）はそう言い、クロムナイトの出現を静かに待ち続けていた。
「自分が来たからにはシリアス領域なんてモンは色々と保証期間切れっ♪　両腕がデカくて震える剛杭なんて、昼下がりの奥さま方に大人気そうな個体デスが、確実に箸は持てねーデス」
「………………来たぞ。実験体のお出ましだ」
　喜美濃・前和（パペットドクター・d21221）の言葉を軽くスルーしつつ、藤堂・焔弥（赤い狂星・d04979）が前方に目を向ける。
　灼滅者達の存在に気づいたクロムナイトが、こちらに急接近していた。
「ふーん、あれがクロムナイトさんね……中々凶悪な面してんなー」
「ロードの好きにさせたくありませんし、被害も出したくありませんし。少し気合を入れましょう」
　鷹司・圭一（スクエアリングの糸・d29760）と細氷・六華（凍土高原・d01038）がそう言って、戦闘の構えを取る。
　そしてクロムナイトが、不意に高く跳び上がる。
　ドォォォォン！！
　地面に叩きつけられた杭は激しい轟音を鳴らし、灼滅者達に大きな衝撃を叩きこんだ。
「お前がどれだけ強かろうと、この先の町には一歩も近づけさせねえ！」
「『蒼の力、我に宿り敵を砕け』……クロムナイト。本当に色々の形態に変化してるみたいだけど、一般人を傷付けての進化なんて絶対に認めないからな！」
　吉野・六義（桜火怒涛・d17609）と香坂・翔（青い殺戮兵器・d23830）がスレイヤーカードを解放し、クロムナイトと相対する。
　そして、破滅を誘う蒼き怪物との闘いが始まった。

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「『起きろニオブ、狩りの時間だ』」
　解除コードを唱えると、焔弥の身体中にデモノイド寄生体が迸り、皮膚を覆っていく。
「軍艦島でベレーザの研究データが亡失した時は、苦虫を噛み潰したような気分になったものだが……まだ進化の可能性は残っていた様だな」
　灼滅者としてデモノイドの研究を行っているという焔弥は、寄生体を纏わせた巨大な斧を構え、クロムナイトに接近する。
「研究者が違えば完成品もまた違うという訳か……その力、見させてもらうぞ」
　焔弥が振るった斧はクロムナイトの右腕に深々と突き刺さり、蒼い肉片が辺りに飛び散った。
「ギギギギギギ…………」
　クロムナイトは抉られた腕を気にも止めず、灼滅者達にギョロリと目を向ける。
「実に興味深い……これ程の成果を出したロード・クロムとは、一度直に逢って話をしてみたいものだ」
　焔弥はそう言って、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ギギギ、ギ……！」
　クロムナイトは両腕の杭を高速回転させながら、灼滅者達に猛突する。
「相変わらず強力な攻撃ね。でも、その動きは見切ったわ」
　アリスはクロムナイトの動きを見切ると、銀色の影の刃を複数展開させて威力を殺し、自身に当たる直前でその動きを完全に停止させた。
「じわりじわりと蝕むように……積み重ねて参りましょう」
　六華は槍に纏わせた妖気で氷を練り上げると、クロムナイトの身体に深々と突き刺しその身を凍らせた。
　そんな激しい闘いが続く中、前和は敵の急所について真剣に考えを巡らせていた。
「………………………」
　人体の急所は肉体の正中、即ち背骨にそったラインに存在する。
　同時に、感覚器官もしくは口腔内等の肉体の外部と内部に存在する点は、生物として避けようがない弱点である。
　しかし、該当個体は前面に対して強大な破壊力とそれに見合った防御力を可兼ね揃えていると見られ、正面突破はまず不可能と推測される。
「つまり、無防備なケツに『ＤＭＷセイバー』をブッ刺すのは合理的な判断なのです。えんがちょっ！」
　ガキン。
「な、意外と硬いデス……！！」
　壮大な前振りと共に放たれた一撃は鋼の装甲に阻まれ、なんか思ってた程のダメージを与える事が出来なかった。
　何してんだお前と誰かが呟いた気がしたが、とにかく闘いは続く。
「データ収集の件もそうだが……そうでなくとも、早めに撃破したいところだ」
　前和に続いて飛び出した圭一が巨大なハンマーを振り降ろし、鋼の兜にヒビを入れ、同時に身体を大きく揺らす。
「ソロモンの悪魔に利用されるために生み出されて、生まれてからも他のダークネスに利用されるだけのデモノイド、か」
　翔はサイキックの力を毒薬に変換させると、殺人注射器を構えクロムナイトと相対する。
「デモノイドがどこまで進化するかは、同じデモノイドを宿すオレとしては見てみたい気もするけど、一般人を犠牲にされるのは困るんだよね」
　そう言って翔はクロムナイトの首からサイキック毒を流し込み、その全身を猛毒で蝕んだ。
「戦うだけの兵器。例えそれがオレ達の宿命でも、何の為に戦うのか、その理由だけはオレの意思で選び続けるよ」
　翔は更に片足に炎を纏わせると、クロムナイトの真正面から飛び掛かる。
「オレの帰りを待っててくれる人の為にさ！」
　そして放たれた蹴りはクロムナイトの顔面に突き刺さり、放たれた爆炎はクロムナイトを包み込む。
「このまま続くぜ……目標補足、くらいやがれ！！」
　片腕を寄生体の砲台へと変えていた六義は力を込め、巨大な死の光線でクロムナイトの肩を貫いた。
「ギギ……ガガ……！！」
　全身に傷を負ったクロムナイトは不気味な声を発しながら、再び二本の杭を地面に叩き付ける。
　そして放たれた衝撃波と砕けた地面が、灼滅者達に襲いかかった。
「本当に強力な攻撃ね……攻撃する隙が中々ないわ」
　樹がそう呟いて腕を振るうと、戦場に放たれた優しい癒しの風が、灼滅者達の傷を癒した。
　と、その時。樹がセットしていたアラームが音を響かせ、戦闘開始から５分経過を灼滅者達に知らせた。
「５分経てばデータ収集が完了と確定してる訳じゃあないけれど……これは中々厳しいかもしれないわね」
　恐らくこのままでは長時間の戦闘は免れないだろうと樹は算段し、そのまま槍に自らの妖気を集束させていく。
「だったら隙が出来た今の内に、可能な限り攻撃を叩きこんでおかなくちゃね」
　樹が槍を軽く振ると、樹の周囲に無数の氷のつららが現れ、それらが一斉にクロムナイトの方を向く。
「その身を凍らせてあげるわ」
　そして放たれた無数のつららがクロムナイトの全身の装甲を突き破り、次々と貫いていった。
「ギ……ガガ、グ、オオオオォオォオオ…………！！」
　クロムナイトの頭部を覆っていた兜が砕け散ったその時、クロムナイトは灼滅者の身体に響く程に大きな雄叫びを上げた。
　灼滅者達の猛攻によって受けた傷が瞬く間に癒され、そしてその身体能力が高まる。
　それでも尚クロムナイトが負った傷は深かった様だ。
　しかし、闘いはまだ続く。

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「……ギギ、ガ、ガ……」
　傷を癒したクロムナイトは身体からデモノイド寄生体を抽出すると、右腕の杭に纏わせその威力を大幅に強化する。
　破滅的な一撃が放たれるであろうそれを、クロムナイトは躊躇なく灼滅者達に向けて突き出した。
「……さすが苛烈ですね。回復を疎かにしたら、倒れてしまいそうなくらいに」
　仲間を庇いその攻撃を受け止めた六華の体力が、一気に削り取られる。
「すぐに回復するわ。そう簡単に倒れさせはしない」
　そう言って樹は七色の鮮やかなリボンを放ち、六華の身体を包み込んでその傷を癒した。
「これで何とか動けますね……慌てず。慎重に、正確に」
　長引く戦闘時間に対する焦りを静かに抑え、六華はバベルブレイカーの内部機構をフル駆動させる。
「確かに攻撃力は半端では無いですが……鈍足ですね。良い的です、きっちり決めさせていただきます」
　そしてジェット噴射でクロムナイトの懐まで急接近した六華は、バベルブレイカーの杭を高速回転させる。
「麻痺してくれれば、六華たち護り手ももっと攻撃に入れるんですけれどね」
　そして放たれた捻じれた杭がクロムナイトの胸に突き刺さり、激しい回転はその身体をガリガリと削り取っていった。
「身に着けた装甲以外は、他の個体とそう大差無い様に見えるんだがな……やはりここまでの強化が為されているのは、ロード・クロムの力に依る部分が大きいか」
　焔弥はクロムナイトを注意深く観察しつつも拳を振るい、荒々しい雷の闘気をクロムナイトに叩きこんだ。
　と、その時。戦闘開始から８分経過を示すアラームが戦場に響いた。
「短期決戦――まだそう呼べる範囲だといいのだけれど」
　アリスは淡い白光で構成された剣、光剣『白夜光』を構え、クロムナイトと対峙する。
「クロムナイトが最初に開発されてから四ヶ月。随分時間が経ったけど、それでも実験を止めないロード・クロムは実に勤勉だこと。褒めてないわよ？」
　アリスは目の前のクロムナイトではなく、彼らを創り上げたロード・クロムに語るかの様に、言葉を続ける。
「いつか戦場でぶっ倒せる日が来るまで、せいぜい首を洗って待っているのね。それまで、その悪行をことごとく潰していくから」
　そう言って、アリスは剣を携えクロムナイトに接近する。
「…………ギギ、ギ……！！」
　そしてクロムナイトが放った巨大な衝撃波が、再び灼滅者達を襲う。
「じゃあ、目の前の初期ロット量産型を叩き潰すとしましょうか――あなたの動き、ちょっと鈍り過ぎよ？」
　放たれた衝撃波と瓦礫の僅かな隙間をくぐり抜け、アリスは剣を突き出す。
　その一撃はクロムナイトの身体の中心を貫き、かなりのダメージを与えた。
「グガ、オォオォオォオオオ…………」
　苦しげに咆哮を上げるクロムナイトは両腕の杭を振り上げるが、その隙に接近した前和が黄金に輝く派手な盾をデモノイドに叩き付ける。
「いくら攻撃力が高かろうが、届かなければどうという事はないのデス」
　前和が積み重ねてきた盾での攻撃が上手く作用し、怒りに我を忘れたデモノイドは前和に狙いを定めた。
　しかしその攻撃は空を切り、前和に届く事は無かった。
　そしてそのタイミングで、灼滅者達が聞きなれたアラーム音が鳴り響き、戦闘開始から１０分が過ぎた事を知らせた。
「正直、戦況自体は全然悪くないんだけどな……」
　圭一の言う通り、現状この戦いは、灼滅者達の優位に進められているといっていいだろう。決してピンチでは無い。
　鈍重なクロムナイトの攻撃を耐えつつ、確実に攻撃を仕掛けていっていた。
　しかし防御が脆くない相手に短期決戦を望むには、あと一歩攻撃が及ばなかったのかもしれない。
「ガ、ガ…………」
　そしてクロムナイトは己の片腕に寄生体を纏わせると、巨大な砲門を形成した。
「そういえば、敵さんも同じサイキックを使うんだったな。まあ、そりゃそーか……とにかく今は、出来ることをするだけだ」
　圭一はそう言うと自らのデモノイド寄生体を迸らせ、片腕を巨大な蒼き刃に変形させた。
「…………行くぞ、ライドウさん」
　デモノイドである敵の異形の姿と自身の右腕を重ね合わせる圭一だったが、そのまま静かにライドキャリバーの『ライドウ』と共に駆けだした。
「オォオォオオォオオオオ！！」
　クロムナイトが巨大な死の光線を撃ち放つが、圭一は闘気の拳でそれを掻き消す。
　そしてライドウがアクセル全開でクロムナイトに突撃すると、その足元を砕き大きく体勢を崩した。
「はいはい、さっさと倒れておくんなし」
　圭一は呟き、淡々と刃を振り降ろす。
　放たれた蒼き斬撃はクロムナイトの肩を綺麗に斬り、クロムナイトの右腕がゴトリと地面に落ちた。
「グ、オォォオオォオオオォオオオオオオ！！」
　あまりの痛みにクロムナイトは吼える。
　そして右腕は瞬く間に再生されたが、その形はどこか歪になっていた。
「こいつも流石にもう限界って所か……一気に畳み掛けよう」
「そうだね、こいつはここで終わらせる！」
　圭一に続いて飛び出した翔は炎を纏わせた蹴りをクロムナイトの腹に叩きこみ、同時に巨大な爆炎がその全身を強く焼け焦がした。
「このまま決めるぜ……急成長もいいけど、基礎を疎かにしてるとそこに付けこまれるって事だな！」
　駒込のヒーローである六義は、ソメイヨシノの枝から作り上げたという木刀型ロッドを構え、六義はクロムナイトに真正面からぶつかっていく。
「オォォオオォオオオオオ…………」
　クロムナイトは突撃してくる六義に向けて杭を叩きこむが、六義は一歩も退かない。
「どんな相手だろうと、背を向けるわけにはいかないぜ！」
　そのまま六義は木刀を突きだし、クロムナイトの胸を打つ。
　直後、放たれた桜色の雷がクロムナイトを貫いた。
「グ、ギギ、オ…………」
　クロムナイトはぎこちない動きで杭を振り上げる。
　しかしその攻撃が放たれるよりも早く、灼滅者達は一斉に攻撃を仕掛けた。
　前和が放った斬撃が首を抉り、
　翔が振り降ろした標識が脳天を打つ。
　六華が放った氷の刃が足元を凍りつかせ、
　圭一が放った死の光線が全身を焼く。
　焔弥が放った炎の蹴りが肩を砕き、
　樹が突き出した槍が頭を抉る。
　アリスが放った銀色のオーラが全身を打ち、
　六義が両手にご当地の力を宿していく。
「桜色に染まりやがれ！　ソメイヨシノビーム！」
　六義が両手を突き出すと、そこからまるで桜吹雪の様なビームが放たれる。
　桜吹雪はクロムナイトの全身を包み込み、クロムナイトの全身は徐々に崩れ落ち、消滅していく。
　そして桜吹雪が止むとそこには既にクロムナイトの姿は無く、完全に消滅していた。
　闘いが終わり静かになった草原に、灼滅者達は少しの間佇んでいた。
「……灼滅はできたけど、データがロード・クロムに渡っていないか心配ね」
「本体との決着もつけたいですね……倒せなくなる前に」
　アリスと六華はそう言って、殲術道具を封印する。
「ま、無事終わって良かった良かった……さて、帰るかね、ライドウさんよ」
　心中は未だに複雑な圭一はライドキャリバーと共にその場を去り、一同もそれに続く。
　ロード・クロムが作り上げたデモノイドの一形態、クロムナイト。
　かなりの強敵ではあったが、灼滅者達は勝利を収め、灼滅する事が出来た。
　短期決戦には僅かに及ばなかったかもしれないが、灼滅者達は多くの一般人達の命を救うことが出来た。
　ロード・クロムや他ダークネスたちの動向に注意するのもいいが、今は学園に帰り、戦いの傷を癒すとしよう。
　

作者：のらむ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年7月7日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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