●荊棘の姫君
いつか、この庭園が花でいっぱいになる日を夢見た。
荒れ果ててしまった庭がかつてのような色とりどりの花の楽園になるように願った。
けれど、ただ夢見て願っているだけではいけないこともちゃんと知っているわ。
だからまずは花をたくさん集めることにしたの。
あたしの夢を叶えてくれる、可愛い可愛いお花さん達を――。
枯れ木と葉ばかりの荒れた庭園に初夏の風が吹き抜ける。
別荘地の一角に或る邸宅。長く放置された屋敷と庭は荒れていたが、今は数人の使用人らしき人々が其々の補修に入っており、かつての姿を取り戻しつつあった。
「さあ、従順なお花さん達。あたし好みのお庭を作って頂戴」
使用人たちが働く中、庭先に置かれているテーブルに座っている少女はひとりで優雅なティータイムを楽しんでいた。その視線の先には自分が『花』と呼ぶ使用人達によって少しずつに整えられていく庭園がある。
「承知しました、イバラ様」
「駄目よ、あたしのことは姫様か茨姫と呼びなさいと言ったでしょう?」
使用人の一人がそう答えると、イバラと呼ばれた少女は厳しい口調で答えた。申し訳ありませんと頭を下げた使用人は『茨姫』と呼び方を変え、庭作業に戻って行った。
「言っておいた通り、あの辺りの生垣は迷路状にしてね」
おとぎ話に出て来る迷いの森みたいにね、と好き勝手に自由気儘な指示を出す少女は理想の庭が完成することを夢見る。
茨姫が望むのは何の不自由もない自由で華やかな日々。
そして――花に囲まれた庭で人間の血を貪る、自分にとってだけ楽しい未来のこと。
●花茨の迷路
軽井沢の或る別荘地が今、ブレイズゲートと化している。
其処に巣食うヴァンパイアによって付近の人々が強化一般人として使用人にされるという事件が多発しているらしい。事前に調査に向かい、別荘地の情報を持ち帰った灼滅者の話を聞いた君は仲間と共にブレイズゲートへ赴くことを決めた。
この地域の中心となる洋館はかつて高位のヴァンパイアの所有物だったようだ。
高位吸血鬼はサイキックアブソーバーの影響で封印され、配下達も封印されるか消滅するかで全滅したという。
しかし、この地がブレイズゲート化した事で件の配下達が甦ってしまった。
かのヴァンパイア達は領域外に影響するような事件を起こすわけではないが、付近の人々に危険が迫っているのなら放ってはおけない。
今回、倒すべき敵はイバラという少女ヴァンパイアだ。
十代半ば頃の外見の彼女は我儘な姫とあらわすのが相応しい。その愛らしい美貌と力を使って忠誠を誓わせた使用人をこき使い、自分の好きな花だけが咲く迷路庭園を作らせようとしているようだ。
例の庭は今、まだ花は咲いていないものの形は出来上がってきている。
庭園の完成を急ぐためイバラは今後も使用人を増やそうとするはずだ。これ以上ヴァンパイアに取り込まれる人々を増やさぬためにも早急にイバラを倒す必要があるだろう。
しかし、自分のことを最優先に考えるイバラは襲撃者が現れた場合、隙あらば逃げ出そうとする。その際に使用人達をけしかけて自分だけ姿を晦まそうとするため、逃げられてしまわぬような手段を講じなければならない。
例えば、あらかじめ使用人を相手取るメンバーとヴァンパイアを狙うメンバーを分けておくだけでもいくらか対応しやすくなる。
ヴァンパイアが執着するのは庭自体ではなく、自分が生き延びることだ。もし逃がしてしまえばまた違う何処かで同じことを繰り返すに違いない。
それ故に今回、此処で決着を付けなければいけない。
そうして、ヴァンパイアの灼滅を心に決めた君達は件の屋敷へ向かった。
参加者 | |
---|---|
九条・茨(白銀の棘・d00435) |
天城・桜子(淡墨桜・d01394) |
久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057) |
天雲・戒(紅の守護者・d04253) |
栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767) |
希・璃依(シルバーハートクイーン・d05890) |
八重沢・桜(百桜繚乱・d17551) |
唯空・ミユ(藍玉・d18796) |
●姫と姫
花を操る姫君が君臨する小さな庭園に訪れたのは招かれざる客。
庭仕事を行う使用人達。そして、それを満足げに見つめるお茶会中の少女ヴァンパイア。それらの影を確認し、灼滅者達は堂々と庭に踏み入る。
「あら、誰かしら?」
ヴァンパイアが訝しげに此方を見遣ると、九条・茨(白銀の棘・d00435)がゆっくりとした足取りで近付き、くすりと笑む。
「私の名も『茨姫』なの。どちらの棘が危険で美しいか、勝負と行きません?」
そう告げた彼はいつもの茨ではなかった。長い髪は二つ結いにされ、眼鏡は掛けられていない。つけまつげにラメ入りシャドウ、オレンジのチーク。髪には薔薇の花飾り。そして何より、リボンで飾られたドレスを身に纏っている。
それらは傍らに控える希・璃依(シルバーハートクイーン・d05890)や、今この場には姿を現していない唯空・ミユ(藍玉・d18796)によるメイクアップの賜物だ。
気品ある姫のように振る舞う茨の従者の如く、天雲・戒(紅の守護者・d04253)も恭しく礼をし、久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)と共に茨の両脇に立つ。
「こっちは茨ん姫だぞ~!」
織兎が改めて茨を紹介すると、ウイングキャットのまーまれーどが花吹雪を上から降らせた。すると、イバラの使用人達も対抗するようにヴァンパイアを守る布陣を取る。
ヴァンパイアは茨をじっと見つめると、呆れたような溜息を零した。
「姫って……貴方、男よね?」
綺麗だけど、と小さく付け加えたのを聞き逃さず、栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767)はびくびくした演技を行いながらそれがどうしたのかと首を振る。
「綺麗は、正義だから。こちらの茨姫だって負けてない、よ」
「茨姫を名乗っているようだが、お前は偽のプリンセスだ。気品、優雅さ、優しさ、美しさの全てにおいて足元にも及ばない」
戒が挑発的にヴァンパイアを貶すと、使用人のうちの一人が怒りをあらわにした。
「貴様、イバラ様に何てことを……!」
「ふん、言わせておきなさい。口では何とでも言えるわ」
使用人を諌めるようにイバラが一歩踏み出し、茨を睨み付ける。
その頃――庭園の茂みの影からはミユと八重沢・桜(百桜繚乱・d17551)、天城・桜子(淡墨桜・d01394)が様子を窺っていた。
「イバラ姫VS茨姫ですね……!」
「お化粧って詐欺よねって私、思う」
ヴァンパイアの自称姫と、部員がコーディネイトしたイケメン姫と自称イケメンをそっと見比べ、桜はわくわくとした気持ちを覚える。対する桜子は部長のあまりの変わりように化粧の神秘を感じていた。
彼女達は仲間が挑発して気を引いている内に相手を逃がさないよう囲い込む予定だ。
だが、ミユはふと視線を感じる。
(「使用人さんのお一人がこちらを見ているような……?」)
嫌な予感を覚える前に、強化一般人が桜達の居る茂みを指して叫んだ。
「イバラ様、向こうにも敵が!」
「いいわ、貴方達はそっちを殺しなさい。私はこの気に食わない奴等をやるわ!」
呼びかけに答えたイバラは三人の方へ使用人を嗾け、自分は茨や戒、璃依達を見据えて敵意を見せた。
「イバラ姫決定戦が今はじまるー?」
璃依は軽い口調で首を傾げながら、しっかりと敵を見据える。
茨とイバラ。姫の座は決して譲らない。それぞれの姫を主にする灼滅者とダークネス達の戦いは今、庭園の中で幕あけた。
●イバラと茨
「そっちがその心算なら、八部咲きの桜……関山キーック!」
桜は自分に向かってきた使用人に狙いを定め、地を蹴り上げた。囲い込む作戦は失敗したが、不意を打たれたわけではない。だから大丈夫、と気を引き締めた桜の蹴撃は相手を見事に貫く。
敵に待機組の居場所を悟られた現状、ヴァンパイアを抑える心算が自分達が抑えられることになってしまった。ミユは予定の狂いを感じていたが、慌てている暇はない。
「でも、どうしてばれたのでしょう……」
「ふふ。従者に身の回りを警戒させるのは当たり前でしょ?」
ミユの呟きを聞いたイバラは得意げに言う。つまり、待機班を見つけた使用人は索敵や警戒を任されていたのだ。
桜にミユ、桜子と使用人四人。結果的に三対四となった状況に戒は手を打つべきだと察し、ライドキャリバーに突撃を命じる。
「往け、竜神丸!」
使用人を遮るようにして疾走した竜神丸は桜子達の援護に入る。これで何とか同数で抑え合う戦いにすることができた。
当初は使用人を狙う予定だった璃依は機転を利かせ、此方に回って来れない桜子と桜の代わりにヴァンパイアを狙うことを決める。ライドキャリバーを呼んだ璃依は、自分達が茨を護る盾になるのだと己を律した。
「ふりる、このまま攻撃だー!」
除霊の結界を張り巡らせた璃依に続き、ふりるが機銃を掃射する。
ちなみに普段はリーゼント付きヤンキーバイクなライドキャリバーは今回、お姫様仕様でふりふりドレスを着せられていた。
同じく、ほんの少しだけメイド風の衣装を身に纏った弥々子も気合を入れる。
「手加減はしない、の……!」
敵の合間を駆けた弥々子が使用人を狙って鬼神の力を発現した。力いっぱい振り下ろされた一撃は敵を穿ち、その身を揺らがせる。
桜子はイバラへの道を邪魔する使用人を片付ける為、鏖殺領域を広げた。
「倒せ、なら簡単なんだけど。逃がすな、って難しいのよね……。ま、姫様のご命令とあらば完遂してみせましょ!」
邪魔者をすぐに倒してヴァンパイアに向かってみせると心に決めた桜子は敵を次々と穿っていく。織兎もまーまれーどを向かわせ、皆を守ってくれと願った。
「いっくぞ~~!」
そして、織兎自身も仲間を援護する為にラビリンスアーマーを展開していく。
一方、イバラはライバルともいえる茨を狙って赤き逆十字を生成していた。
「さあ、受けてみなさい!」
鋭い一閃は璃依の横をすり抜け、真っ直ぐに茨を貫かんとして迫る。烈しい衝撃が巡るが、寸での所で逆十字の威力がいなされた。
「容姿はそれなり、でも仕草はなってないわね。淑女が踊る時は、こう――」
ステップを踏むの、と告げた茨は痛みを堪えながら反撃を繰り出す。紅蓮の斬撃は今しがた失った体力を取り戻すかのようにイバラを貫いた。
其処に続く形でビハインドのワルギリアスが飛び出し、使用人に霊撃を打ち放つ。
戒は自分も部長を守ると密かに決め、「皆ノリノリだな」と戦場を見渡した。茨姫イバラに心酔して忠誠を誓う使用人達、茨団長に感銘を受けて集まった銀庭の団員達。どちらもほんの少しではあるが似ている気がした。
だが、勝つのは此方だ。
仲間達が果敢に戦う姿を瞳に映し、弥々子も小さく頷く。
「負けない、の……!」
血に濡れた庭園など造らせはしない。今、此処で――自分達が忌まわしき血の庭を終わらせるべきなのだから。
●咲かない薔薇
幾度も攻防が繰り広げられ、激しい魔力や衝撃が散る。
抑えられていた桜子達はいつしか使用人を圧倒しはじめ、一人、また一人と強化一般人達が倒れて行った。だが、逃走する可能性があるかもしれないヴァンパイアに不利を悟られてはいけない。
「なかなかやるようね。でも、あたしの方が強いわ!」
イバラが形勢を逆転しようと璃依に向けて紅蓮斬を放つ。一瞬の痛みが彼女を襲い、その眉が顰められた。すると、不意に桜が声をあげる。
「これが……イバラ姫さんのお力……そんな、茨姫さんの力が及ばないなんて……」
「す、少しくらいは及んでいるわよ」
桜によるあまりの唐突な言葉にイバラは思わず突っ込む。ミユもここぞとばかりに敵を煽てる作戦に入り、驚いた様子を見せた。
「まさか、姫さまの強さと美しさは唯一絶対のはずですのに……」
「えっ……もう一度聞くけど、男よね?」
イバラは茨とミユを交互に見て冷や汗を流す。その際、ミユや桜は素早い手際で最後の使用人を打ち倒していた。
攻撃を受けた本人である璃依もやられたふりをしなければいけないと察し、口を開く。
「なんて手強いンダー」
それは少し、否、かなり不自然な間合いだった。
璃依が痛かったのには違いないが、灼滅者は有利な立場にいる。明らかな演技に対し、イバラはついにわなわなと震え出した。
「貴方達、ふざけてあたしを馬鹿にするのもいい加減になさい。この状況でそんなことを言って何の心算なのよ!」
付き合ってられないわ、と踵を返そうとするイバラ。
彼女が自分を守って倒れた使用人のことを気にも留めていない様子に、弥々子はどうしてか胸が痛くなった。しかし、灼滅者達が易々と敵を逃がすはずがない。
すぐさま桜子がイバラの前に回り込み、往く手を塞いだ。彼女達が最初に茂み側から回り込んだことが功を奏し、二の足を踏んだイバラは迷路庭園に入れないでいる。
「逃がしたらお仕置きされちゃうの、ごめんなさいね」
そう言いながら、ちらりと桜子が見遣ったのは茨だ。あの人が私達のお姫様だもの、と冗談めかして語った桜子は尖烈なる一閃をヴァンパイアに見舞った。
「逃がさない、よ」
其処へ弥々子による妖冷の弾が放たれ、イバラの身が更に傾ぐ。
「あらあら逃げ腰? 自称姫の気品も、地に落ちたものね」
くすくすと中性的に笑った茨はドレスを翻し、炎を纏う蹴りを向けた。庭園を揺らめかせた炎がおさまった刹那、間髪入れずに璃依が先程の反撃を打ち込む。
「逃げるというコトは、美貌も力も負けを認めるというコト。それでいいのか?」
「何よ、偉そうに!」
たじろいだイバラは灼滅者達を睨み付けた。
織兎は此処からが畳み掛けるチャンスだと感じ、まーまれーどに呼び掛ける。
「よし、トリプルアタックだ!」
主人の声を受けたまーまれーどはふりるとワルギリアスを伴い、サーヴァント達による三連撃が次々とヴァンパイアを貫いていった。織兎自身も癒しに専念し続け、仲間が誰も倒れぬように力を尽くしてゆく。
だが、イバラはまだ逃げようと機会を窺っている。
戒は竜神丸を敵の背後に回り込ませ、自らも真正面から駆けた。
「逃がさないぜ。子猫ちゃん。もといイバラちゃん」
今回はどちらの茨姫のカリスマが勝つか勝負と言うところだったが、勝利は自分達の部長が手に入れたも同然だ。笑いを噛み殺した後、戒は真剣な瞳を差し向けた。
その一瞬後、キャリバーの突撃と戒の放った炎が敵を包み込む。
「痛い……っ! やめ、て……!」
苦しむヴァンパイアのドレスは土や血で汚れ、炎で煤けていた。少女の綺麗な服も髪も、もっと汚すことになるのだろうと感じ、弥々子はぎゅっと掌を握る。
「可愛いものが汚れちゃったら大変、なの。だけど……!」
ヴァンパイアを灼滅しに来た自分達には血を血で塗り重ねることしか出来ない。だからごめんね、と告げた弥々子は螺穿の槍で敵を穿った。
桜も好機を掴み取り、サクラの花めいた魔方陣を展開していく。
「――魔力開花……いきますっ」
「ここからはもう、演技もおふざけもありません。本気です」
桜に機を合わせたミユも魔術杖を握り締め、ひといきに敵との距離を詰めた。2人が打ち放った魔力の奔流は真っ直ぐに敵を貫き、爆発するかのように衝撃を散らせる。
茨も間もなく終わりが訪れると感じ、凛と表情を引き締めた。
「もういいだろう。……イバラ、君は再び死すべきだ」
一瞬だけ口調を普段のものに戻した茨は静かに告げ、鮮血の如き緋色の衝撃をイバラに与える。よろめき、苦しがるヴァンパイアは虚ろな瞳で虚空を掻いた。
「嫌よ、まだ生きていたい。あたしは、いつか花の咲く庭園で――」
その言葉が言い切られぬうちに桜子は最後の一撃を与えようと狙う。人を人とも思っていない存在に情けは無用。何よりも、それがヴァンパイアならば尚更だ。
「イバラには恨みないけど、ヴァンパイアそのものが私は好きじゃないのよね。覚悟しなさい。これで――最後……ッ!!」
そして、思いを言葉に変えた桜子は渾身の一撃を放った。
衝撃が敵の身を貫いた刹那、甲高い悲鳴が庭園に響き渡る。倒れ込んだ少女は事切れ、その姿は幻だったかのように消え去った。
こうして、花咲く庭を夢見た少女は何を咲かせることなく、その生を散らせた。
●花集う銀の庭
「ぱらりらー♪」
お決まりとなった勝利のファンファーレを示すように、ふりるが軽快な音を鳴らす。
璃依は仲間達に笑顔を向け、無事に勝ち取った結果を確かめた。弥々子もほっと安堵の息を零し、誰にも怪我がないことを嬉しく思う。
そして、彼女は持ち込んだカメラを取り出して仲間にそっと視線を向ける。
その先にはツインテールを弄りながら仲間と話す茨の姿があった。どうしようかと迷う弥々子の傍ら、カメラを覗き込んだ桜が小さく笑む。
「写真、撮っちゃいましょうか。よい記念になりますねっ」
「ん、撮っちゃうの」
油断している茨をファインダーに納め、弥々子達はシャッターを切る。「ん?」と振り返った茨は写真に撮られたことに気付くも、無邪気な少女達を怒る気はなかった。
「……ふふ、本当に似合いますね」
意外に綺麗に取れた写真画面と本物を交互に見つめ、ミユは改めて茨の完璧なお姫様姿に感嘆を零す。何よりも、ミユ自身のお気に入りのリボンがとても似合っているところが良い。桜子も似合うことを認めざるを得ないと納得し、ふと戦いを思い返す。
「それにしても、最近は何だか妙に変なのにばかり縁があるわね。奇縁か良縁か、判断つきにくいけどさ」
結果的に女装をすることとなった部長を思い、桜子はおかしげに溜息を吐いた。
きっと良縁だったのだと織兎は明るく笑い、カメラを借りてひらひらを手を振る。
「茨ん姫~もう一枚写真撮って帰ろうよ~」
「次は皆で茨姫を囲んでにするか?」
織兎の提案に璃依も同意し、洋館の前で記念写真を撮る準備を始めた。仲間の様子に目を細め、イバラは緩やかで何処か不思議な心地良さを覚える。
「……やれやれ。楽しかったけど、疲れる演劇だったよ」
「イバラ勝負はカリスマ力の差で決着したということで、一件落着だな」
ふ、と笑った彼につられて戒も薄く笑み、自分達が手にした勝利を思った。
自ら茨姫を名乗ったヴァンパイアは花が踏み潰され、枯れたとしてもきっと何も感じなかっただろう。だが、自分達の茨姫は違う。
彼は部員という花を大切に思い、慈しんでくれる。姫ではないけれど、と冗談めかした笑みを浮かべた戒は手を振り、仲間達の元へ踏み出した。
――花と茨姫。
その名が何よりも相応しいのはきっと銀の庭に集う自分達に違いない。そう、思えた。
作者:犬彦 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年7月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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