世界遺産・白川郷に、突然城が現れた。
合掌造りの町並みの真ん中に、小ぶりで立派な天守閣。
似合っているようないないような不思議な光景に、合掌造り怪人は感動に打ち震えた。
「こ、この城を私にくれるのか!」
「この城こそ、あなたに相応しいと、安土城怪人様はご下賜くださったのです。そして、こちらも」
安土城怪人の手下は、後ろに控えるペナント怪人三体を示した。
「この手下は、自由にお使いください。数は少ないですが、いずれも精鋭揃い。必ずや、力になりましょう」
「お、おお! なんとありがたい! それにこのペナント……」
合掌造り怪人は、合掌造りが描かれたペナントに喜んで合掌した。
ペナントの片隅には、「合」「掌」「造」と刺繍されている。
「なんということだ! 私は必ず、安土城怪人様のお役に立つ! そして、世界征服を成し遂げて見せよう!」
合掌造り怪人が再び深く合掌する後ろで、ペナント怪人は見事な三和音の合唱を響かせる。
そんな様子を遠巻きに見ていた吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156)は、そっとその場を離れた。
●
「智秋はんが白川郷を調査してくれはって、合掌造り怪人の城を見つけたんや」
教室の片隅で、くるみは灼滅者達を見渡した。
「もう知ってはるお人もおる、思うけど。小牧長久手の戦いで勝利した安土城怪人が、東海地方と近畿地方の制圧に乗り出したみたいなんや。各地に城を建ててな、ご当地怪人を城主にして傘下に加えとるんや。皆で灼滅しに行ったってや!」
「白川郷に、お城を貰った怪人は、ここにいるよ」
智秋は白川郷の地図を広げた。
場所は、有名な合掌造りの家屋が立ち並ぶ集落の真ん中。
合掌造り怪人は、日本中の家屋を合掌造りにしようと目論み、何故か城内で養蚕と硝石生産に精を出している。
「干渉できるんは、午後一時。そやけどその時間、村長と警官二人が城の責任者に話を聞こか、言うて城に向かっとるんよ。ペナント怪人がこの三人の相手をしとる隙に裏口から襲撃すれば、奇襲もできるで。どうするかは任せるで」
三人をそのままにして奇襲をした場合、即席強化一般人となって襲い掛かってくる。大して強くなく、KOすれば救出できる。
城の中心には合掌造り怪人の旗があり、合掌造り怪人を強化している。
外からは見えない場所にあるが、そう広くない城のため、探索すれば見つけ出すことは可能。
正面から戦っても勝てる相手だが、旗を引きずり下ろすと、合掌造り怪人達のパワーアップはなくなる。
旗の周囲には、侵入者よけのトラップが仕掛けられている。
鋼糸が張り巡らされていて、触れるとガトリングガンが火を噴く。
一通り火を噴いたら、それ以上のトラップはない。
合掌造り怪人のポジションはクラッシャー。ガトリングガンに似たサイキックを使う。
ペナント怪人は三体ともディフェンダー。
鋼糸に似たサイキックを使う。
ペナント怪人は三体揃うと、合唱攻撃を仕掛けてくる。
「ホンマ、いろんな場所に城を貰った怪人がおるなぁ。その全部が安土城怪人に忠誠を誓っとるとしたら、えらい人心掌握……ちゃうな。怪人心掌握術や。悪さされても困るさかい、皆、気張って行ったってや!」
くるみはにかっと笑うと、親指を立てて見送った。
参加者 | |
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三國・健(真のヒーローの道目指す探求者・d04736) |
四津辺・捨六(伏魔・d05578) |
二階堂・空(跳弾の射手・d05690) |
日凪・真弓(戦巫女・d16325) |
ジェルトルーデ・カペッレッティ(ヴォーパルストライカー・d26659) |
明海・師宣(玻璃の海を漂う蛇・d29461) |
吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156) |
ヴァントレット・クロームハーツ(不信不盲の独蔑者・d32975) |
午後一時。
昼下がりの白川郷に、中年男性の黄色い声が響いた。
「智秋ちゃーん! またねー!」
城に向かって歩いていた村長と警官を呼び止め、ラブフェロモンで帰るように伝えたのだが。
村長の個人的なツボにはまったのか、両手を振って立ち去る村長に、吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156)は苦笑いで手を振った。
白川郷の真ん中に、でんとそびえ立つ城を、灼滅者達は見上げた。
合掌造りに白い城。タイムスリップしたかのような光景だが、この城はご当地怪人が支配する城だ。
「でも……。本当にかっこいいお城なの」
まだ築城間もないせいか、綺麗な色と守りのための作り。どっしりとした外見はかっこよく、白川郷の雰囲気ともよく合っていた。
智秋の声に、ヴァントレット・クロームハーツ(不信不盲の独蔑者・d32975)も感心したような声を上げた。
「はー、確かにすごい城だねぇ。こういう日本特有の文化はとても気になるけど、まずは先にやることをやらないとね」
頷き合った灼滅者達は、城の門を叩いた。
城の中は意外と広く、窓から入ってくる光で薄暗いながらも足元はしっかりしていた。
「何の用だ? 学生たちよ」
「合」と刺繍されたペナント怪人が、首を傾げながら灼滅者達を応対した。
「僕たち、新しい名所の噂を聞いて来たんだ! このお城、すごいぜ!」
三國・健(真のヒーローの道目指す探求者・d04736)が、キラキラとした目で周囲を見渡した。
「それに、白川郷の合掌造り! 名前の由来は、掌を合わせた様に組んだ丸太のことだよな?」
「その通り! 少年、よく勉強しているな!」
褒められて少し得意げな「合」に、健は畳みかけた。
「急勾配の茅葺屋根が合理的で独特な趣きがあるし、建築物の魅力は内部構造も重要なポイントだよな!」
「そうそう! 俺たち合掌造りについて学んでる最中だけど、ここに城があるなんて初めて知ったぜ!」
健に呼応するように、二階堂・空(跳弾の射手・d05690)も身を乗り出した。
「合掌造りの家々と、この城。マッチしていて素晴らしいぜ!」
「そうだろうそうだろう! それほどでもあるぞぉ!」
いつのまに現れたのか。ペナント怪人の残り二体も玄関に現れ、灼滅者達の褒め倒しに気を良くしていた。
「合掌造り、すごい素敵なの!」
素敵なののポーズを取るジェルトルーデ・カペッレッティ(ヴォーパルストライカー・d26659)の声に、智秋もまた頷いた。
「古風な建築、こうして間近で見ると、本当にすごいです」
「そうだろうそうだろう! 何せここは、合掌造り怪人様の城だからな!」
「掌」はでれりとペナントを崩すと、照れ笑いするように頬を掻いた。
ペナント怪人は現れたが、合掌造り怪人は現れない。
注意深く奥を覗き込みながら、明海・師宣(玻璃の海を漂う蛇・d29461)は首を傾げた。
「確かに、こんなカッコいいお城は、初めて見ました。……ここの城主って、誰なんですか? こんな立派なお城に住んでいるなら、立派な人なんだろうな。会ってみたいかも」
「そうそう! 造りを活かした伝統ある養蚕業って、体験学習してみたいけど、いいか? きっとイイ生糸が出来る環境なんだろうなー?」
「体験学習か! 待ってろ、今……」
灼滅者達のおだてにホクホク顔の「造」が振り返った時、銃声が城中に響いた。
●
時は少し遡る。
陽動班が城の中に入るのと同時に、蛇に変身した日凪・真弓(戦巫女・d16325)は裏口からするりと潜入した。
途中ペナント怪人を見かけたが、二体とも玄関へ向かって行って、こちらに気付いた様子はない。
真弓は注意深く城の中を探索した。
ほどなく。旗のある最上階へ到着した真弓は、旗と罠の様子を注意深くチェックした。
中央に立てられた旗の周囲には、鋼糸が網の目のように張り巡らされている。
部屋の隅にはガトリングガンが三丁据え付けられていて、あの一斉攻撃を受けたら回避するのは難しいだろう。
旗を支えるポールにも鋼糸が巻き付けられていて、旗を下ろす時に触れてしまう危険性が高かった。
ならば。
真弓は蛇のまま、ビハインドの鬼斬丸森綱に指示を出した。
ゆらりと現れた鬼斬丸森綱は、主の視線に頷く。
即座に突進。鋼糸が切れ、罠が一斉に起動し、爆音のような銃声が辺りに鳴り響いた。
三台のガトリングガンが、鬼斬丸森綱を襲う。猛烈な勢いの銃弾に、鬼斬丸森綱の姿がゆらりと消えた。
静まった室内に、真弓が駆け出そうとした直前。大きな足音が響いた。
「何事!」
駆けつけた合掌造り怪人の姿に、真弓はさっと身を隠す。
一匹の蛇に気付いた様子もなく。合掌造り怪人はガトリングガンを油断なく構えながら周囲を検めた。
「誤作動か?」
罠を起動させたビハインドはもういない。何もないのに起動した罠に首を傾げた合掌造り怪人は、階下から響く大きな音に振り返った。
「我が城に何をする!」
怒りも露わに、合掌造り怪人が立ち去る。
静かになった室内を確かめた真弓は、人間に戻ると旗を引きずりおろした。
「城主を気取るなら、せめて刀か弓でも持って頂きたいですね」
苦笑いをこぼした真弓は、仲間と合流すべく階下へ急いだ。
●
響き渡る銃声に浮足立ったペナント怪人の隙を突き、四津辺・捨六(伏魔・d05578)はライドキャリバーのラムドレッドに指示を出した。
「名前を示せ我が従輪。ここまで本領発揮出来る舞台はなかなかないぞ!」
捨六の声に、フルスロットルで駆け出したラムドレッドは、城の壁に体当たりする。城全体が揺れるほどの衝撃が走り、ペナント怪人は捨六を振り返った。
「おのれ曲者!」
「我らが合掌合唱の威力」
「身をもって知るがいい!」
ペナント怪人達は合掌合唱を放とうと口を開いた。
美しいと言えなくもない三和音が、後衛を襲う。
「合掌合唱「合」!」
「合」から発せられる高音が、精神をかき乱して抵抗力を失わせる。
「合掌合唱「掌」!」
「掌」が放つ歌声が、その場から動こうとする意志を低下させる。
「合掌合唱「造」!」
「造」が放つ重低音が、ペナント怪人の姿をぶれさせる。
三体が放つ連続歌唱攻撃に、捨六はWOKシールドを展開した。
ワイドガードを展開しようとするが、機能しない。捨六は舌打ちすると、智秋の前で盾を展開した。
盾越しに伝わる、ひどいノイズが捨六をかき乱す。
頭痛と吐き気に膝をつこうとするが、意思に反して動けない。
智秋は急いで駆け寄ると、ダイダロスベルトを解き放った。
ラビリンスアーマーが、捨六を包む。癒しの力に麻痺が解けた捨六は、安心したように息を吐いた。
「大丈、夫?」
「何とかな。……あの連続攻撃は、きついぞ」
「うん。……今、真弓さんが、頑張って、くれてると、思う。だから、私は、私のできることを……」
決意を込めた智秋の言葉に、捨六はにやりと口の端を歪めた。
「そうだな。俺には、俺のできることを」
捨六は立ち上がると、ペナント怪人達を睨んだ。
襲う痛みと違和感に、ヴァントレットは眉をひそめた。
幸い、体は自由に動く。だが、ペナント怪人達に対する奇妙な恐れが攻撃の手を緩ませる。
これではいけない。戦闘は苦手だが、ここで戦う意思を折る訳にはいかない。
「さて、足手まといにならないよう、頑張らないと!」
気合と共に己に喝を入れたヴァントレットは、ペナント怪人達に対する恐れが消えていくのを感じた。
空もまた、まとわりつくような音を振り払うように白妙ノ耀を振るおうとした。
だが、動きが鈍い。体を動かそうとするのに意思の力がいる。
戦闘では致命的な麻痺に抗うように、空は裂帛の叫びを上げた。
気合が体の隅々まで満ち、麻痺が消えていく。
再び白妙ノ耀を振るう。
意思と違わず震えるガンナイフに、空は笑みを浮かべた。
「さて。反撃といくか!」
空は油断なく白妙ノ耀を構えると、次の攻撃の予備動作へ移った。
「いっくよ!」
いくよ! のポーズを取ったジェルトルーデは駆け出した。
サビを歌い上げたペナント怪人「合」に向けて、マテリアルロッドを振り抜く。
雷の杖が轟音と共に「合」に突き刺さり、弾き飛ばした。
壁に叩き付けられる「合」の姿に、師宣は驚いた。
かつてジェルトルーデを助けた時に比べると、明らかに成長している。昔のイメージでいた師宣は、その成長に頬を緩めた。
「…………随分と強くなったね」
「あの時とは、ちがうよ!」
ちがうよのポーズで応えたジェルトルーデに、師宣は異形態を取った。
師宣の体が、水晶の海蛇の姿になる。
海のように深い色の硬質な体をうねらせた師宣は、口を大きく開くと光線を放った。
裁きの光が、己を癒す。
音波によって傷つけられた体に活力が戻り、欠けた鱗が元に戻る。
ペナント怪人達に対する重圧がまだ消えないが、まだ戦える。
師宣は長い首をもたげると、ペナント怪人に狙いを定めた。
大ダメージを受けてよろけた「合」に、健は拳を突きつけた。
「白川郷に宿るガイアの力この身に受けて……飛騨石豆腐キック!」
勢いよくジャンプした健は、壁を蹴ると三角飛びの要領で「合」に向けて飛騨石豆腐キックを放った。
飛騨に伝わる石豆腐のように硬化した蹴りが、「合」の腹に突き刺さる。
「合」は石豆腐よりも白い体に変じると、そのままほどけて消えた。
●
睨み合う両者の間に、大きな足音が響いた。
文字通り駆けつけた合掌造り怪人は、散らばる絹糸と一人減った手下に、怒りの怒声を上げた。
「おのれ、灼滅者ども! 何故ここが分かった!」
「だって、隠す気が全くないじゃないか。それだけ自信があるのか、他に狙いがあるのか……」
捨六は合掌造り怪人とペナント怪人を見渡すと、軽く肩をすくめた。
「何も考えてなさそうだね……」
捨六の挑発に、合掌造り怪人は顔を真っ赤にした。
雪が積もっていても溶けてしまいそうな顔に、ガトリングガンを構える。
「お前など、こうしてくれるわ!」
まるで図星をさされたかのように、爆炎の弾丸が捨六に向かって放たれる。
爆炎が捨六を包む。
炎に遮られた視界に、合掌造り怪人は喜びの笑みを浮かべた。
合掌造り怪人に呼応するように浮かべた「掌」の笑みが、凍り付く。
「播磨の旋風ドラゴンタケル! 一致団結の力で宿敵の野望は断固阻止!」
健は妖の槍を構えると、「掌」に向けて氷の礫を放った。
無数の氷が、「掌」に突き刺さる。
はためくペナントを急激に冷やされて、「掌」は頭を抱えて一歩下がった。
「掌」が見せた一瞬の隙を突き、ジェルトルーデがバベルブレイカーを起動させた。
「掌」の懐に一気に飛び込んだジェルトルーデが、死の中心点を貫く。
「飛んで火に入る夏の虫め!」
敵の内懐深くに入り込んだジェルトルーデに、大ダメージを負った「掌」が封縛絹糸を放った。
捕縛の絹糸が、ジェルトルーデに絡みつく。
鋭い絹糸がジェルトルーデを切り裂き、引き裂く痛みに眉をひそめた。
「こうてくれる!」
身動きできないジェルトルーデに、「造」が斬弦絹糸を放った。
針先よりも鋭く尖った絹糸が、ジェルトルーデを貫く寸前。
絹糸が盾に吸い込まれた。
炎に巻かれたはずの捨六が、一気に飛び出してジェルトルーデを庇ったのだ。
無傷の捨六に、合掌造り怪人は目を見開いた。
「ばかな! お前は我が怒りに触れて燃えたはず!」
「我が従輪は優秀でね」
捨六は後ろをチラリと見た。咄嗟に捨六を庇ったラムドレッドは炎に巻かれ、今はその姿が見えない。
怒りに歯ぎしりする合掌造り怪人の隙を突いて、智秋はラビリンスアーマーを解き放った。
「ジェルトルーデさん……!」
白い絹糸の上から、白いベルトがジェルトルーデを包む。
ベルトから滲みだす癒しの力に、絹糸がほどける。
その隙を突いたジェルトルーデは、絹糸を切り裂くと戦列に戻った。
「突進するのは、危ないですよ」
「倒れる前に、倒せば、負けない!」
負けないのポーズを構えるジェルトルーデに、師宣はクスリと笑った。
「ああ、確かにそうだな!」
師宣はヴァントレットをチラリと見ると、体を地面すれすれまで低くして「造」との間合いを一気に詰めた。
「造」に到達する寸前、体を大きく上げると腕に牙を立てる。
「ぐわっ! 何をする!」
牙から猛毒が流し込まれた「造」は、ペナントを青くすると膝をついた。
「そこさね!」
まるで先回りしたかのように、空のホーミングバレットが「造」に突き刺さった。
綿密に計算された跳弾が、「造」の死角から貫く。
そこへ、銃弾が降り注いだ。
ヴァントレットのクロスグレイブの、全砲門が開かれる。
十字架型の巨大モノリスから放たれた砲撃は、合掌造り怪人とペナント怪人達に容赦なく突き刺さる。
「効率よく、一掃したいところだね」
ヴァントレットの声に、「掌」と「造」の体が絹糸となって消えた。
●
手下を全て倒され、一人になった合掌造り怪人は、怒りに合掌を震わせた。
「おのれ! おのれおのれ灼滅者! せめて一矢なりとも報いてくれるわ!」
合掌造り怪人はガトリングガンの全砲門を開くと、後衛に向けて銃弾の嵐を巻き起こした。
「死ね! 我が砲弾の嵐、受けてみよ!」
迫る砲弾にダメージを覚悟した後衛の前に、真弓が割り込んだ。
銃弾が着弾する。
もうもうと立ち上る埃が収まった時、倒れているのは一人もいなかった。
攻撃を受け止めた真弓は、少し誇らしげに笑うと絹布の旗を高々と掲げた。
「お待たせです。成果は上々でしたよ」
「さすがです、真弓さん!」
智秋はラビリンスアーマーを放つと、真弓の傷を癒した。
「お、おのれ小娘! どこに潜んでおった!」
悔しそうに地団駄を踏む合掌造り怪人に、灼滅者達の殲術道具が迫る。
「合掌造りこそ、日本家屋の原風景ー!」
大きく吠えた合掌造り怪人は、深々と合掌すると四散して消えた。
静かになった玄関に、真弓は一礼した。
「これにて――終幕です」
その言葉に、灼滅者達はほう、と緊張が解けるのを感じて息を吐いた。
「あー、やっと終わったねー。みんなお疲れ様」
「お疲れ様、です」
にっこり微笑む智秋は、初めて見る師宣の姿に、目をキラキラさせた。
「わ、わわ……水晶の、蛇……? ……青くて、キラキラしてて、きれい。……すごい、の。触っても、いい……?」
素直に褒められた師宣は、恥ずかしがりながらも嬉しそうにそっぽを向いた。
「い、いいよ」
「ありが、とう」
智秋は青い体に、そっと触れた。硬質な冷たい感触が心地よい。
照れて更にそっぽ向く師宣の耳に、健の腹の音が響いた。
「腹減ったー! マジ名物食いに行きたいぞ!」
照れ笑いしながら頭を掻く健に、笑い声が響く。
「いいですね。串焼き、食べたいです」
智秋の声に頷いた灼滅者達は、名物料理の話をしながら城を後にした。
作者:三ノ木咲紀 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年7月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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