佐藤・優子のアイドル道は、決して平坦ではなかった。
不死王戦争で灼滅されかけ、キモいソロモンの悪魔に襲われ、HKT666とのアイドルバトル、そして見習い卒業ライブでの痛ロードローラー乱入。
だが彼女はめげず、ついに「カルマクィーン見習い」から「カルマクィーン」となって。
迷走し、辿り着いたアイドル境地は――そう、初心忘れるべからず。
アイドルを志す前の優子は、真面目そうだからと委員長を押し付けられるような、冴えない眼鏡と地味なおさげが特徴の女の子であった。
そこで!
「メガネが本体じゃありませんっ。あなたのハートに生活指導☆ ふわりんスターこと委員長系アイドル・佐藤・優子、本日デビューです♪」
地味な委員長は実はスタイル抜群、超絶美少女だった! 的な路線を見出したのだ。
そして。
「わぁっ、こーんなにたくさんのみんなの生活指導、嬉し大変ですっ☆」
集まった観客に、笑顔をみせる。
いや……バベルの鎖の効果で、売れないのは相変わらずだが。毎回一桁の集客しかなかった以前に比べれば、デビューライブの観客20人は、優子にとって嬉しい数である。
「1時間目は音楽の授業ですっ、みなさんも優子と歌ってくださいねっ☆ あ、今日は特別に、休み時間の着ぐるみダンスタイムや、優子のお絵描きオムライスが食べられる給食タイムもありますよ♪」
優子の声に、おおっ! と盛り上がる20人の観客達。
そして、ライブが始まろうとした――その時だった。
「!? 後から遅れてきたのに、何割り込みしてるんだ!」
「ちょっとおぬし、マナーを守れぬとはドルオタ失格……ぶほおっ!?」
突然会場に現れた男が、観客を殴り倒したのだ。
その筋肉隆々な外見は一見、地下アイドルのデビューライブには不似合いにみえたが。
「拙者の邪魔をする輩は、容赦なくぶん殴るですぞ、フヒッ!」
筋肉男の口調も、キモヲタ風。
そして男は観客を蹂躙しながら、ずんずん歩みを進めて。
「あ、貴方は!?」
ついに……優子の目の前まで、やってきたのだった。
●
「みんな、ふわりんスターこと「カルマクィーン見習い」佐藤・優子って覚えてる? あ、もう今は見習いじゃないけどねー。それで、その優子のデビューライブが決まったらしいんだよ」
「俺も赴いた卒業ライブは、いいライブだったからな。優子のデビューライブ、ぜひ同席したいところだぜ」
そう返したファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)に頷きつつ、飛鳥井・遥河(高校生エクスブレイン・dn0040)は察知した未来予測を語る。
「最近ね、ラブリンスター配下の淫魔が頻繁にライブをしてるらしいんだ。バベルの鎖があるから、今まではお客さんが集まる事は無かったんだけどさ……ここ最近は、仲間になった七不思議使い達に噂を流してもらうとかして、集客に成功してるみたい。まぁでも、売れない地下アイドルくらいの人数だけどね」
だが――ただ客が増えただけならば、さほど問題はないが。
「それがね……この噂を聞いてか、ふわりんのデビューライブにやってくるアンブレイカブルが予知されたんだ。ダークネスの目的は分からないけど……このアンブレイカブルは会場に着いたら、観客を蹴散らして殺して、そのまま優子の元へと向かうみたいなんだ」
「被害が出るのは見逃せないな」
ファルケの言う通り、一般人が殺されるのは、避けるべき事態。
なので、被害が出る前に対処して欲しい。
「やって来るアンブレイカブルは、見た目は筋肉隆々な屈強の武人って外見なんだけど。喋ると、ちょっとキモヲタ風な男だよ。わかりやすく、ヲタマッチョって呼ぶねー。ヲタマッチョは戦闘になると、アンブレイカブルのサイキックとバトルオーラのサイキック、あと情熱的なオタ芸っぽいダンスで攻撃してくるよ。バベルの鎖の予知を掻い潜れるタイミングは、20人目の客が会場に入った後。最後の客が会場に入ったのを確認した後、会場の外で待ってれば、ヲタマッチョと接触できるよ」
マニアックな場所な上、観客も全員会場に入った後なので、ダークネスと接触の際は、会場入口付近に一般人はいないという。時間も日が落ちる前で視界も良く、障害物もないようだ。
それから遥河は、こうも続ける。
「あと事件を未然に防ぐ方法として、優子のライブを事前に解散させる手もあるよ。ただ、そうなると、これまで武蔵坂学園に友好的だった優子に裏切られたと思われて、彼女と戦闘になっちゃうかもしれない。それにヲタマッチョ乱入の可能性もあるかも」
「なんてったって、デビューライブだからなぁ。優子が怒るのも無理ないだろーけど、一般人に被害がでない方法を色々考えてみる必要はあるかもな」
それから遥河は、改めてファルケや皆を見回してから。
「もしライブを解散させてなければ、ヲタマッチョ灼滅後は、優子のデビューライブを楽しんだり、楽屋に顔を出すのもいいかもね」
そう、灼滅者達を見送るのだった。
参加者 | |
---|---|
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954) |
黛・藍花(藍の半身・d04699) |
桐淵・荒蓮(殺闇鬼・d10261) |
契葉・刹那(響震者・d15537) |
東雲・菜々乃(ごく普通の中学生・d18427) |
イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065) |
樋口・玲音(騙る小悪魔・d32293) |
藤花・アリス(淡花の守護・d33962) |
●発掘、噂のアイドル!
アイドルがキラキラ輝ける時期は、ごく僅か。
そんな女の子の旬を見逃さず、夢を追う彼女達を精一杯応援してあげたい。
それこそ、アイドルオタク――ドルオタの使命なのだから!
20人目の観客がライブ会場へと入場したのを見届けてから。
周囲に潜む灼滅者達は、ふと時間を確認する。
もうすぐ、佐藤・優子のライブ開演時間。
そして……『ヲタマッチョ』が現われる時間である。
今回選んだのは、優子のライブは解散させず、ダークネスを待ち伏せし灼滅する作戦。
会場には、綺月・紗矢(中学生シャドウハンター・dn0017)やサポートの仲間が既に入場している。
優子や観客はそんな仲間達に任せ、集中してアンブレイカブルを迎え撃てる状態だ。
(「出来れば戦闘に適したところに誘き寄せたいですね……」)
契葉・刹那(響震者・d15537)は、敵の予知に引っかからぬよう身を潜めつつ。
優子のライブを無事に成功させられるようにと、周囲をそっと窺う。
そして、同じくひっそり隠れながらも。
ドルオタというものが実際どういう感じなのか、まんまる眼鏡の奥の瞳で観察してみる東雲・菜々乃(ごく普通の中学生・d18427)。
今まで入場したドルオタ達は、違う意味で気合の入った装いで。醸し出す雰囲気は、独特なものを感じる。
情報伝達がし難いバベルの鎖がある中、アイドル淫魔のライブ情報を得る程だから、彼等はきっと精鋭ドルオタなのだろう。
いや、訪れるドルオタが彼等だけならば、そう問題ではないのだが。
「ぬふ、ふわりんライブに参上であります!」
一般人に危害を及ぼす、アンブレイカブルまで呼び寄せてしまったのである。
未来予測通り、ムキムキマッチョなドルオタ『ヲタマッチョ』が、その姿を現す。
その目的は定かではないが、被害が出るならば放っておけない。
だが……現れたダークネスを討つ前に。
「ややや! その装束、貴殿もふわりんスターの生活指導を受けに来たのですな!?」
そう彼に声を掛けたのは、新たなるドルオタ2人!?
いや、ドルオタに扮した、桐淵・荒蓮(殺闇鬼・d10261)とファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)だ。
バンダナに長袖チェックシャツ、リュックサックにチノパン。口調もそれらしく、ドルオタを演じる荒蓮。
そして、優子命と書かれた鉢巻やハッピを着てメガホン握るファルケを、じろじろ見たヲタマッチョは。
「ふわりん推しの古参でありますか? 当方、噂を聞きつけた新入生であります、ぐふふ」
二人が自分と同じドルオタであると、疑うことなく笑む。
そんな状況を物陰から見守りながらも。
(「……世の中、色々な人が居ますが、色々なダークネスも居るものですね」)
冷たい視線をヲタマッチョに向けるのは、黛・藍花(藍の半身・d04699)。
気色悪く笑う眼前のヲタマッチョは、アンブレイカブル。
(「まあ、キモかろうが、イケていようが、ダークネスなら分け隔てなく灼滅するだけですが」)
ダークネスを灼滅すべくタイミングを窺う藍花。
そして、イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065)は。
(「悪い事以外で頑張ってる人の邪魔するのはあんまり良くないよね。それがダークネスでも灼滅者でもそこは変わらないと思うんだよ」)
だから、懲らしめちゃわないとね、と。優子のライブを邪魔するヲタマッチョを見遣って。
藤花・アリス(淡花の守護・d33962)もすぐに動けるようにと、いつも一緒のうさぎさんをぎゅっと抱き締めつつ、近くに潜んでいる。
そんな仲間達が見守る中で。
「頑張るアイドル達を支えるのは、拙者等の使命ですからな。お互い精進しましょうぞ」
「同志として一緒に優子を応援しようぜ! 優子に好かれる声援を一緒に送らないか」
「ぐふふ、ナイスなアイディアですな。アイドルに認知してもらえるチャンスになりますぞ」
荒蓮とファルケの友好的な言葉に笑む、ヲタマッチョ。
そして荒蓮は、こう訊ねてみるのだった。
「それにしても……このふわりんスターライブ、貴殿は誰から聞いたのです?」
ドルオタを装いヲタマッチョと接触した目的は、何か情報を聞き出せないかという意図からである。
樋口・玲音(騙る小悪魔・d32293)も敵に見つからぬよう注意を払いながら、そんな会話に興味を示し耳を傾けている。
そして荒蓮の問いに、ふと首を傾げたヲタマッチョは。
「ん? はて……誰からであったですかな」
「その人に聞けば更なるアイドルが発掘できるかもと思いましてな」
「誰からかはともかく、拙者も噂を耳にして参上したのですぞ」
アイドル淫魔の噂を流し集客に一役買っているのは、未来予測でエクスブレインが語ったように、ラブリンスターの仲間の七不思議使い達だという。
都市伝説が誰から伝わったか分からないように、今回のアイドル話も同じように、『噂』として耳に入った程度らしい。
なので噂の発信元は、噂を流してもらったラブリンスター達ということになるだろう。
そして、そんな答えを聞いた荒蓮は、これ以上有益な情報は得られないと判断して。
「OK、ありがとう。……みんな、今だ!!」
すかさずファルケと共に、潜んでいる皆へと、襲撃開始の合図を口にすれば。
「! ぬおっ、なんですと!?」
「……なんというか鬱陶しいことこの上ないので、……さっさと灼滅されてください」
「よし、いっくよー♪」
潜伏場所から飛び出した灼滅者達は、ヲタマッチョへと、一気に奇襲を仕掛ける。
●ドルオタの鑑!?
灼滅者達の仕掛けた先制攻撃に、虚をつかれたヲタマッチョであったが。
「ムハッ! 拙者を襲うとは、自分だけアイドルに認知されようという、けしからん魂胆ですな!」
何だか勘違いしたまま、これぞドルオタ! と言わんばかりに。サイリウムを握り披露するのは、パッショネイトなオタ芸!
そんなキレッキレな動きで攻撃を返すアンブレイカブルに負けじと、白のギターを携え迎え撃つファルケ。
「そっちが情熱的な踊りなら、こっちは情熱的な歌を披露してやるぜ!」
但し、死ぬほど音痴です。
男性は、まだ少し苦手だけれど。一緒に歌えば、分かり合える気がするから。同じ歌を愛する者同士、ファルケと動きを合わせた刹那が、敵へと殴打を振るえば。まるで五線譜を成すかの如く、網状の霊力が射出される。そして主と一緒に踊るように、皆の前へと躍り出るラプソディ。
「実際見てみると、すごいキレッキレな踊りですね」
オタ芸を目の当たりにし、その独特な踊りを観察ながらも。会場入口に敵を近づけぬよう進路を塞ぎつつ、菜々乃は戦場に帯を躍らせ、ヲタマッチョへとより狙いを正確に定めて。
「あれはもはやアンブレイカブルではなく、別のダークネスっぽい何かに堕ちている気がしますね」
指先に集めた癒しの霊力をファルケへと撃ち出す藍花と共に。彼女とそっくりなビハインドも首を傾けつつ、霊撃を敵へとお見舞いする。
そして戦場に轟くのは、大きなエンジン音。
「マールート、突撃っ♪」
マールートが筋肉マッチョへと突っ込むと同時に。ツインテールとゴスロリレースを靡かせ、地を蹴ったイルミアが、霊力迸る拳で狙い撃ち!
さらに続いた荒蓮も、オタ芸に勤しむ敵を捕縛するべく、ヲタマッチョを殴りつけて。
「ネットは好きだが、地下アイドルには詳しくなくてな」
実はドルオタではないことをカミングアウト!?
だが、ヲタマッチョはその拳を受け止めながらも。
「なんと、にわかであったか! しかしその装い……なかなか貴殿はセンスがありますぞ」
荒蓮のオタ風ファッションに、妙に共感を覚えたようだ。
そんな、グフグフ笑う敵を見遣って。
(「佐藤さんとは、面識は……ありません、です。でも、あの人は、一生懸命頑張って……今日、舞台に立っています、です」)
サウンドシャッターを展開し、りぼんを喚び出したアリスは天へと盾を掲げて。
(「だから……邪魔はさせません、です!」)
りぼんの背にある翼のようにシールドを広げ、仲間達を護る力を生み出す。
そして玲音の指輪から撃ち出されるのは、ヲタマッチョの動きを制約する魔法弾。もふもふ尻尾を躍らせる桜音も、主と同じタイミングで、にゃーっと猫魔法を繰り出して。
「今までいろんなことで助けてくれたラブリンスターの友達って言うだけじゃなくて、いっぱいがんばった優子ちゃんがデビューするんだもん。絶対にライブを成功させてみせる! それで生で見て応援しなくちゃ!」
この日、デビューライブをする優子と同じように。こうやって戦うのが初めてな玲音にとっても、今日が実戦のデビュー日だ。
優子のデビューの為にも、灼滅者として被害を出さない為にも、絶対に負けられない。
だが相手は、言動がキモいとはいえ、強敵のダークネス。
「アイドルライブ通いしてる拙者の体力は、ダテじゃないでありますぞ!」
オタ芸を打ち、拳という物理でアイドル愛をアピールし、灼滅者達の猛攻を受けても尚、倒れない。
さすがは、アイドルライブ通いの常連ヲタなだけある!?
しかし……その身勝手な情熱で、優子のデビューライブや一般人の命を脅かすなど、もってのほか。
それに何より。
「……正直、気色悪いですし共感も全くできませんから、早いところ倒れてください」
そう、バサリと切り捨てる藍花。
そんな藍花が傷ついた仲間を癒す間、口元の柔らかい微笑みを絶やさず、皆の盾となり動くビハインドが霊障波を繰り出す。
だがそんな辛辣な言葉にもめげず、むしろご褒美だと言わんばかりに。
「またあの踊りがきそうですよ」
敵がおかしな動きをみせないか注意していた菜々乃の言葉通り、再び強烈なオタ芸を打つヲタマッチョ。
だが、オタ芸を打ちまくり蓄積した術アップも。大きなリボンを靡かせ繰り出された、菜々乃の異形巨大化した腕からの殴打がすかさず解除して。
「回復に回りますね」
戦場を満たす歌声は、立ち上がる力をもたらす響き。
思いがこめられた刹那の歌声に癒しの熱が宿り、最前線に立つ仲間達の傷を癒して。
アリス目掛け飛んできた敵の硬い拳を、身を呈して肩代わりするラプソディ。
「護ってくれて、ありがとう御座います、です……!」
片時も離れないうさぎのぬいぐるみをしっかりと抱き、刹那やラプソディへと礼を言った後。アリスも、集つめた気を傷ついた仲間へと施して。主と同じ青き瞳の色をしたりぼんも、一生懸命しっぽのリングを光らせる。
そんな仲間の回復を一身に受けて。
「いっくよー、マールート!」
とりあえず殴る!!
捕縛を兼ねた殴打を再びイルミアが叩き込んだ刹那、マールートが再びヲタマッチョに突撃して。
「ぐぬぅっ、アイドルに認知されるまでは、倒れられないですぞ……!」
「その情熱は、ある意味すごいとは思うが」
「ライブを楽しむためにも、さっさと倒さなくちゃね!」
何とか集めた気で傷を癒し、倒れまいと粘るヲタマッチョへと、容赦なく攻撃を向ける灼滅者達。
死角から放たれた荒蓮の斬撃が素早く急所を絶って。玲音が繰り出したのは、蛇の如き絡み咬みつく帯の衝撃。桜音も、頑張って再び猫魔法を!
そして、そんな猛攻を食らい、呻いて足を止めたヲタマッチョへと。
「聴かせても魂に響かないのならば、直接叩きこんで響かせるのみっ」
ファルケがお見舞いするのは、強烈な歌声とともに放たれる一撃!
「刻み込め、魂のビートっ。堪能しな? これが俺の魂の旋律、サウンドフォースブレイクだぜっ」
全力で叩き込まれた衝撃が、筋肉マッチョな肉体の内部で大きく爆ぜて。
「がはあっ!! 推しのあの子を、理想のアイドルに育てる、前に……無念なり……ッ」
最後までドルオタ精神を貫きつつも、ヲタマッチョは地に倒れたのだった。
●ふわりんデビューライブ!
無事にダークネスを撃破した灼滅者達は、いざ優子のデビューライブへ!
『皆さん! 一緒に歌ってくれないと、生活指導ですよっ☆』
「盛り上げなら任せろっす!」
卒業ライブにも参戦したレミが、優子の歌に合いの手を入れて。
レミを覚えていた優子に手招きされて、演奏にも乱入!
歌が好きなら、それだけで心も繋がれる気がするから。
刹那も生き生きとした表情で、優子のその歌声に耳を傾ける。
菜々乃も最初こそ、楽しんで見ていていいのかなーっと思ったものの。折角だから、楽しまなくちゃ損です!
一般人客と一緒に、いっぱい楽しむ玲音。イルミアも、持ち前のノリと勢いで、盛り上がります!
そんな、賑やかな会場の中。
「あの淫魔の元の人が、あれで良いと思えるなら良いのでしょうが……」
平和的だなと、ライブを覗きつつ呟く藍花。
そして、音楽の授業の次は、お楽しみの休み時間!
「着ぐるみダンスは難しいが、歌って踊るのも楽しいな」
「私も、好きだから、歌や踊り、やるの、好きに、なってくれたら、うれし、なーって」
綾に誘われ、着ぐるみ姿な紗矢は、優子に倣ってもふもふダンスを踊って。
綾はそんな紗矢と一緒に、くるりと、ふわもこターン!
そして、着ぐるみといえばお任せあれ!
「ふわりんすたー、デビューライブおめでとう!」
『ありがとうございます! クロネコさんもまた一緒に踊りましょうっ☆』
懐かしのひよこぐるみな優子は、クロネコさんこと直哉をステージに上げて。
レミの演奏に合わせ、着ぐるみステップをピヨーッと披露!
そんなキレッキレで磨きのかかった優子のダンスや歌を見て、いっぱいいっぱい練習したんだろうなぁ、と直哉は改めて思いながらも。
「頑張れ優子! 頑張れふわりんスター! 歌とダンスと着ぐるみで、皆の心を繋ぐんだ!」
ダークネスと一般人と灼滅者……相容れない筈の三者が一つになっているように、感じるのだった。
そして休み時間が終われば、給食タイム!
アリス・クインハートとミルフィも、優子へと歩み寄って。
「優子さん……カルマクィーンデビュー、おめでとうございます……♪」
「まあ……見習いから正式デビューするにまでなったその努力は、認めますけども」
「ありがとうございます! はい、オムライスどうぞ☆」
「あ♪ 優子さんが作ったオムライスなんですか……? わあ♪ ……とってもかわいい似顔絵です♪」
そう、優子のオムライスを食べるアリス・クインハートの隣で。
「お絵かきオムライスですか……ならば、わたくしも一筆……!」
ミルフィがいざ書いたのは、血文字の如き『斬鉄』の二文字!
そんなミルフィに、わぁっ、お上手です! と優子も拍手!
そして佐藤・優子のデビューライブは――無事、大成功で幕を閉じる。
その後、優子の楽屋で。
「優子ちゃん、お疲れ様でした! すっごいかわいかったよう。よかったら、サインもらっていいかな?」
「その、お疲れ様でした、です。よければ、わたしも……手帳に、サインをもらっても、いいです、か?」
「はいっ、喜んで!」
玲音と藤花・アリスの申し出に、嬉しそうな笑顔をみせる優子。
さらに、菜々乃もサインを貰った後。
「写真とか、一緒に撮ってもらったりしてもいいでしょうか」
「はい、みなさんで撮りましょうっ」
こういうのも一応資料にはなるでしょうし、と、優子と記念撮影をパシャリ!
「サイン、ありがとう御座います、です……!」
「こちらこそ、ありがとうございます、です!」
サインを貰って礼を言ったアリスと一緒に、ぺこりと頭を下げる優子。
そんな優子に刹那が差し出したのは、一枚の案内。
「私も実は定期的にライブをさせてもらっているので、その案内を持って来てみました。もし良ければ、私の歌も聞きに来てください……なんて不躾すぎるでしょうか」
「わぁっ、スケジュールが合えば、是非貴女の歌も聴かせてくださいっ。私ももっと色々な方の歌を聴いて、勉強したいですから!」
優子は快く、刹那の案内を受け取って。
「本当に、佐藤さんのライブは素敵でした……! 歌は良いなって改めて思ったんです」
「私も、たくさん大好きな歌を歌えたら嬉しいですっ」
いつかアスタリスク先生に歌詞を書いて貰えるくらいに、と目標を口にする。
そして。
「生活指導アイドルってのはまた斬新な方向性だよな、良く思いついた」
荒蓮は優子に、スタッフも喜ぶビール券の差し入れをしつつ、デビューライブの感想を伝えた後。
「そういえば仲間にロード・ビスマスっていたよな、あの四角い模様のデモノイドロード。あいつも宣伝活動したりしてるのか?」
ふと、ロード・ビスマスの事を尋ねてみる。
そんな意外な名前に、優子は一瞬ぱちくりと瞳をさせるも。
「あ、ビスマスさん、ご存知なんですね! 私も、とても美味しいなめろうの差し入れをいただきましたっ。ビスマスさん、アイドルレスラーの団体を立ち上げるためにご熱心ですよね」
そう、荒蓮へと答えを返す。
そして優子差し出されたのは、花束。
「デビューおめでとう。いいライブだったぜ」
ファルケから花束を受け取り、ありがとうございます! と笑顔で返した優子は、彼にもサインを書いた後。
「いつか一緒に歌える日が来るといいな」
「はいっ、私ももっともっと、アイドル活動頑張ります!」
向けられた応援メッセージに、力強く大きく、こくりと頷いたのだった。
作者:志稲愛海 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年7月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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