死のこもる書架

    作者:六堂ぱるな

    ●死のものがたり
     その図書館は絵本や紙芝居がたくさんで、いつもは子供の声が絶えない。けれど絵本のイベントの日に親子連れで賑わって以来、閉館していることに誰も気づかなかった。
     暗い室内に人々が身を寄せ合っている。その前に立つ女が呟いた。
    「……貴方、この絵本のおじさんに似てるわね」
    「えっ!」
     何かを言おうとした男はしかし、次の瞬間矢に貫かれ息絶えた。周囲で悲鳴があがる。
     構わず女は息絶えた男の足を掴んで、書架を端にどけた広いスペースへ引きずって行った。
     そこには不自然に両手を広げて倒れた死体が一つ、その向こうに別のポーズで倒れる死体、死体、死体。絵本を見ながら男の死体を放り出し、ポーズをとらせる。
     絵本はすてき。人で作ったらもっとすてき。
     明日は小さい動物が出てくる絵本にしようかな。子供たちを閉じ込めた五階へ、女の視線が彷徨った。

    ●『密室』をめぐる思惑
     アツシによる『密室』はエクスブレインの予知には引っかからない。教室に集まった灼滅者を前に、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)が唸る。
    「極めて不愉快な現実だ。よって諸兄らの調査だけが頼りであり、星陵院先輩の調査を元に『密室』を発見した。先輩、感謝する」
    「調査は探偵の基本ですからね」
     遅れて教室へ入ってきた星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)が笑う。しかし笑い返すことが、玄乃にはできなかった。
    「手早く撃破し人々を解放して貰いたい、と言いたいところだが、一つ難題がある――ハレルヤ・シオン、だ」
     さっと教室に緊張が走った。
     灼滅者がバベルの鎖をかいくぐることを知っているハレルヤは、松戸市周辺で灼滅者に対する警戒体勢を敷いている。『密室』を守ることでMAD六六六での地位を得ることこそ、目的へ近づくための彼女の方法なのだろう。
    「『密室』事件を解決するなら、彼女の配下に見つかってはならん。注意してくれ」
     玄乃は難しい顔で念を押した。

     『密室』は松戸市市立図書館。
     支配しているのは六六六人衆、星河・絵理。黒いゴスロリ衣装を身につけ、殺人鬼と天星弓のサイキックを使う。
    「ふざけた女だ。既に十人以上が殺され、図書室の床にポーズをとって転がされている。気に入った絵本の一幕を死体で再現したいらしい」
    「被害者たちは大人たちが二階の図書室に隣接した階段ホールに集められ、子供たちは五階の休憩コーナーに押し込まれています」
     綾が調査結果について口を添えた。
     市立図書館は五階建て、一階入口から五階まで階段で繋がっている。
     流架はたとえ爆音がしようとも『密室』の外のことに全く興味がなく、二階の図書室をほとんど出ない。戦闘は高確率で図書室で行われることになるだろう。

     重要なのはこの『密室』を攻略する前に、ハレルヤの配下である六六六人衆に見つからない工夫が必要だということ。
     市立図書館周辺の担当はスーツにシルクハットの初老の男。名も、武器も、戦い方も不明だが、見つかれば当然戦闘になる。彼を素早く片づけて撤退しなければ、灼滅者の侵入を察知したハレルヤによって増援が送り込まれてくる。そうなれば脱出は不可能だ。
    「『密室』事件を解決すればハレルヤのMAD六六六での評価は下がり、解決できなければ評価は上がるだろう」
     ある程度評価が上がれば、恐らく彼女は己の目的の為に動きだす。逆に評価が下がっていれば挽回の為に動くだろう。どちらにせよ武蔵坂学園の影響が、彼女を動かす。
    「皆で無事に戻り、彼女との再会に備えて貰いたい」
    「まるっと解決してみせますよ。だって私は探偵ですから!」
     玄乃の言葉に綾が不敵に微笑んで頷いた。


    参加者
    桜倉・南守(忘却の鞘苦楽・d02146)
    犬塚・沙雪(黒炎の道化師・d02462)
    阿剛・桜花(年中無休でブッ飛ばす系お嬢様・d07132)
    ナハトムジーク・フィルツェーン(黎明の道化師・d12478)
    星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)
    榊・拳虎(未完成の拳・d20228)
    神桜木・理(空白に穿つ黒点・d25050)
    ロベリア・エカルラート(御伽噺の囚人・d34124)

    ■リプレイ

    ●街に潜む『密室』
     榊・拳虎(未完成の拳・d20228)は携帯をいじりながら、目的の建物の隣のビルを出て歩いてくる男を盗み見た。別の建物の陰から犬塚・沙雪(黒炎の道化師・d02462)も倣う。
     住宅地のど真ん中、シルクハットにスーツという黒尽くめの初老の男が歩いていれば浮きそうなものだが、誰も彼を注視しない。その鋭い眼光がこちらを撫でるより早く、二人は物陰へ移動する。
     白昼学生が図書館の近くにいて怪しまれる道理は普通ないが、少なくとも今回の敵たちには、ハレルヤ・シオンという情報源がある。学生となれば武蔵坂学園を疑って『その気』で見られる可能性はあり、そうすれば見破られてしまう。
     二人が来るのを確認し、神桜木・理(空白に穿つ黒点・d25050)は初老の男の目に付かないよう注意して建物の屋上を移動した。キルフラッシュ付きの双眼鏡を手に、阿剛・桜花(年中無休でブッ飛ばす系お嬢様・d07132)も身を屈めて隣のビルから図書館の屋上へ跳び移る。
    (「六六六人集の密室に入るのは初めて、気を引き締めて行かないと……!」)
     初老の男が定期的に付近のビルを出入りしては周辺哨戒へ戻ることを、離れたビルの屋上で確認していた。これから彼はしばらく図書館には近づかない。
     拳虎と沙雪が追いついてくると、屋上の扉の前で桜花が鞄を下ろしジッパーを開けた。四匹の蛇が顔を出す。目立つ大人数で動き回らないため、一部が蛇変身して運ばれるという手をとったわけだ。
    「星陵院。扉の鍵は破壊できると思うが、破壊音を抑えるなら換気口がある」
     理が扉の斜め上にある拳大ほどの換気口を指した。すぐさま一匹の蛇――星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)が理の手を借りて這い込む。壁の内側へ出ると、扉は狭い踏み面の階段にわずかな踊り場で接していた。万一破壊した破片でも落ちたものなら、五階で結構な音がしただろう。
    (「何だか泥棒みたいですかね、っと余計なことは考えず手早く済ませちゃいましょう」)
     人の姿を取り戻し、綾は鍵の破壊にとりかかった。
     ピンク色の目の蛇、桜倉・南守(忘却の鞘苦楽・d02146)が安全を確認してから変身を解いてため息をついた。人生初の動物変身が六六六人衆の『密室』への侵入とは、スリリングに過ぎる。
     綾が可能な限り音を殺して屋上の扉を開けると、変身を解いたロベリア・エカルラート(御伽噺の囚人・d34124)が素早く下りていった。音もなく続いたナハトムジーク・フィルツェーン(黎明の道化師・d12478)が彼女のフォローに回る。幸い屋上への階段は職員専用らしく、壁で仕切られた狭いスペースが見えるだけだ。
    「子供の泣き声が聞こえるよ」
     扉の向こうの様子を探るため耳を当てていたロベリアの言葉に、一行が頷いた。
    「まったくもって趣味が悪い。人を殺して絵本の再現とか……」
     苦々しげな沙雪の呟きにロベリアも同意せざるを得ない。
    「うん、趣味が悪いね、六六六人衆ってのは。コレ以上の被害は出したくないかな」
    「ハレルヤさん、密室に閉じ込められた人達を助ける為にも、必ず星河の所まで行き着かねーとな」
    「状況は少し難易度が上がりましたが、ハレルヤさんの、引いてはこの事件全体の解決の糸口を掴むまたと無いチャンスですかね。先ずは、目の前の事件から一歩ずつ解決して行きましょう」
     決意をこめた南守に首肯しつつ、綾が微笑みながら事態をまとめる。
    「ここはスマートに解決して、大きな企みを頓挫させる蟻の一穴を開けてやるっすよ」
     フットワークを確かめるようにぽんぽんと跳んで、拳虎は不敵な笑みを浮かべた。

    ●死をかたどる
     五階の机や椅子を端に寄せた学習室に放り込まれていた子供たちが、理が吹かせた魂鎮めの風で折り重なるように倒れて眠りにつく。カーテンを引いていたとはいえ、窓を閉じられていた室内はかなり蒸した。手分けして窓を開けて換気をすると先を急ぐ。
     ロベリアが今度は階段を下りていって耳を澄ませ、一行を導いた。四階から三階へすばやく移動し、二階への折り返しまで来ると、たくさんの引き攣るような乱れた呼吸音が聞こえてきた。
     様子を窺うと、かなりの数の人々が身を寄せ合ってパニック寸前の様相だった。
     まず籠っている熱気がひどい。そして分厚いカーテンを引いているのか、暗い。
     特に厄介な事態に一行は気がついた。
     階段ホールと二階図書室を隔てる大きな扉が開いている。これは一般人を眠らせることで奇襲に気付かれるだろう。けれど猶予はない。
     理が涼やかな風を吹かせると同時、灼滅者たちはホールに飛び込んだ。眠りに落ちて行く一般人たちの向こう、開け放たれた扉の奥で、黒いゴシックロリータの衣装の女が気だるげに顔を上げる。
    「……なに? 誰?」
     死体の足を掴んで引き摺っている彼女から熱気と共に噴きつける殺気と、狂気と、死臭。拳虎が表情を歪ませた。
    「血の匂い……並の人間どころか、俺らでも気が狂うっすよ、こんな所に長々押し込まれたら」
     無言のままカードの封印を解いた沙雪が、駆けながら懐から取り出した白い仮面を顔につける。それは戦士のペルソナ、歴戦の戦士に変わる儀式。
     絵理を図書室から逃がさないよう、全員で駆け込み、最後に理が扉を閉めた。
    「見つけましたよ、星河・絵理さん! 犯人は貴方です!」
     綾にびしりと指を突き付けられ、女――絵理は嬉しそうな笑みを浮かべた。
    「ええ、そうよ。素敵に出来てるでしょう?」
     繰り広げられる死体の戯画は、有名な絵本から何の一場面かわからないようなものまで多岐に渡ったが、確かなことはひとつ。
    「現実と架空の区別がつかない……いや、区別をつけない奴ってのは困りもんっすな」
     吐き捨てた拳虎が潜入用のスェット上下から、青基調のボクサースタイルへ封印を解いた。ナハトムジークと南守が全方位ランタンのスイッチを入れる。これでやっと互いの顔がはっきりしたほどの暗さの中、南守が怒りを爆発させた。
    「絵本には悲しい話だってある。けど、こんな真似をする為にあるんじゃない! お前の描く物語は、ここで終らせてもらうぜ」
    「私はここで好きにしていい権利を与えられたのよ!」
     拗ねた表情で絵理が向き直る。桜花が戦場の外へ音が漏れないよう遮断した瞬間、どす黒い殺気が図書室内に立ち込めた。

     仲間の庇い手である桜花は、初撃が思ったほど深手でないことに安堵していた。
    「本ばかり読んでいて不健康そうですわね? もっとお外に出た方が良いんじゃないかしら?」
     シールドで殴りつけて挑発するが、絵理はそっぽを向く。正義感が強いわけではないが、それでも彼女は気に入らない相手だと思っているロベリアの足元で、影がイバラの形をとって蠢いた。
    「絵本はアタシも好きだね。とりあえず、悪いオオカミはお腹開いて石を詰めてあげるよ」
     おとぎ話で城を呑みこんだイバラのように、からみあう影が伸びて絵理を刺で引き裂く。傍らを飛び出したアルルカンの霊力の籠った打撃の追い討ちを受け、絵理が舌打ちした。
    「私の推理が正しければ、彼女のポジションはスナイパーです!」
     扉を背にしながらオーラの法陣を展開した綾が仲間に癒しと、敵を打破する加護を与える。逃れようとする絵理に追いすがり、南守が『通行止め』の赤い輝きを宿す標識で打ちのめした。
    「……貫く!」
     絵理の足が止まった一瞬、壁を蹴った沙雪がコートを翻し宙を舞う。一回転しながら南守の頭上を飛び越えた『紅蜂』の刺突が彼女の脇腹をしたたか抉り、槍と同じ鮮やかな紅の糸をひいた。

    ●死とまみえる
     トラウマを呼びさます影を宿した拳虎のフックに絵理が絶叫した。
    「やめて! 私のほうが本当は強いのよ、二流のくせに!」
     よろけた絵理へ、闇に溶け込んだナハトムジークの指輪から魔力弾が撃ちこまれる。
    「芸術は感性によるとは言うが、これは他人の作ったものを『手近な材料で』模造しているだけだよなぁ」
     首を捻るナハトムジークに、我に返った絵理がまなじりを吊り上げた。
    「なにを!」
    「……どっちを見ている」
     理の意志のままに宙を疾ったダイダロスベルトが絵理を引き裂いて戻る。鎌首をもたげてじわりと狙いを補正する帯を横目に、拳虎は己の裡の闇へと魂を傾けて力を増した。
     激昂した絵理が矢を番えるように左腕を伸ばし右腕を曲げると、黒い衣装のフリルやレースから立ち上る黒い気が凝って漆黒の弓矢となった。
    「あなたたちで絵本の見開きを作ろうかしら!」
     回避を許さぬ流星群のような矢の雨が降る。

     仲間を積極的に庇い、攻撃を引きつけている桜花の怪我はみるみる深くなっていった。五分でアルルカンも打ち倒される。
    「阿剛ちゃん、回復は任せて!」
     緑色の宝石がついた杖を手に、ロベリアが回復を繰り返した。飛び出した綾の踵が床との摩擦で炎をあげ、足を折らんばかりのローキックで絵理がたたらを踏む。すかさず同じ足に踵落としを見舞って、ナハトムジークが笑った。
    「そうカッカしなさんなって。独創性がないってことは内緒にしといてやるよ。で、結局何がしたいんだ?」
    「バカにしてるわ!」
     別に絵本を読むことをバカにしているつもりはなかった。ただ、彼女の『作品』は芸術と言うには陳腐だし、童心と言うには単調過ぎてつまらない。
    「いけませんわナハトムジークさん、気にしているかもしれませんわ!」
     素で挑発になっている桜花に笑いながら、ランタンに手をかけて追いすがる絵理から大きく跳び退る。
     拳虎はなんとなく本性に気付いていた。己が決めた役を割り振り、思ったような形にしようとする――まるで人形遊びのように。
    「手前らにとっちゃ人間なんて虫に等しいもんな……であれば、こちとら知恵と勇気で猛獣狩りだっ!!」
     軽いフットワークで幻惑しながら、絵理の細い身体に拳虎がボディブローを捩じこむ。氷の粒を撒いて拳虎を振り返った絵理を追い、南守が声をあげた。
    「いいぞ、榊!」
     三七式歩兵銃『桜火』のボルトハンドルを戻すと同時、狙いをつけた南守が引鉄を引き絞る。素早くサイドへ回った拳虎を見失った絵理の膝を、闇の中を鮮やかに光条が撃ち抜いた。ボルトハンドルを引くと闇の中で薬莢がはじけ飛ぶ。
    「あ……っ!」
     一瞬膝をついた絵理が、次の瞬間猛然と南守めがけ床を蹴った。幾度となく重ねられた仲間の攻撃で彼女は炎に包まれ、足元は覚束ない。次弾を装填してボルトハンドルを戻し、傍らでちんと薬莢が跳ねる音を合図に跳び退く。
     紙一重で南守のカバーに入った桜花が繰り出すのは、鋼も砕く拳の一撃。絵理もあえて骨が軋む一撃を受け、至近距離から桜花の死角へ回り込んだ。鈍く光るのは矢の鋭い鏃。
    「くうっ!」
     首筋を深々と切り裂かれた桜花が思わずよろけた。ロベリアの足元から伸びた影のイバラが、絵理に絡みついて血をしぶかせる。咳こむ彼女に同時に仕掛けた理と沙雪の視線が交錯した。攻撃は理が一瞬早く絵理のサイドをとる。
    「これで終わりだ!」
     紅い輝きを灯す標識に側頭部を直撃され、がくんと絵理の膝が落ちた瞬間、沙雪は書架を蹴って跳びかかった。炎をまとった『紅蜂』が一層紅く輝く。
    「炎一閃! 我が槍に貫けぬもの無し!」
     穂先は絵理の身体を貫き、刺突の勢いで図書室の壁に激突し突き刺さる。
    「……う……っそ……!」
     己を貫いた槍を、身を焼く炎を、衝撃で傷口を中心に音をたてて浸食する氷を。
     茫然と見下ろした絵理が喘いだ。手から弓が滑り落ちて、床で粉々に砕け散る。
    「う……そ、よ……」
     力なく漏れるのは、どこまでも否定ばかりで。
     がくん、と頭を垂れると、身体は小さなたくさんの黒い星の粒のようになってばらばらと床に落ちた。それも落ちた衝撃で砕け、小さな塵となり、消えていった。

    ●光輝く外へ
     仲間の傷の治療を終えると、一行はまず外の様子を窺ってみた。初老の男は姿を消したようだ。早くも絵理の撃破を勘付かれたのだろう。つまり増援の心配もない。
    「なんとか上手くいきましたわね!」
    「もちろんです!」
     弾けるような笑顔の桜花と、綾の一言が仲間の緊張を解いた。
     大人たちには理とナハトムジークが、子供たちのところには拳虎とロベリアが向かい、彼らを起こして避難誘導を始める。
     南守は十数ある遺体の状態を確かめてみた。死体を絵本再現に使う都合上、酷い破損状態の遺体はないようだ。これなら走馬灯使いを施せる。
    「手分けしましょうか」
     意図を察した綾も一緒に、死者たちに仮初めの生命を与えていく。
     一時的に死から蘇った死者たちは、もう自由だと知ると安堵のあまり泣き出したり解放の喜びを噛みしめていた。
    「ありがとう、助かったよ!」
     最後の死者らしき男性に両手を掴んで握手をされて、南守はなんとか笑顔をつくりながらも、居たたまれない気持ちを抑えられなかった。
     彼らは数日のうちに死を迎える。恐怖だけを脳裏に焼きつけて逝くよりは、はるかに穏やかな最期に変わるだけだ。
     堪らなくなってハンチングの鍔に手をかけ顔を伏せる南守に、綾がそっと囁いた。
    「私も残念です。けれど、彼らを助けられたのですから」
     促す二人の目の前で、階段を駆け下りてきた子供と母親が無事を喜び合う。何組も、そんな姿が見られた。
    「……ああ、そうだよ、な」
     やっとのことで頷く南守にちらりと視線を投げて、沙雪が歩きだした。
     最良を目指し、全力を尽くした。もはや出来ることはない。
     明るい外へ全ての人々を連れ出して、死のこもる闇の中に別れを告げなければ。

     一つ積み上がる『密室』の解決。
     ハレルヤ・シオンに辿りつくための大切な布石。
     そればかりでなく、明らかにならなければ幾多の死を撒いたであろう六六六人衆を仕留める戦功をあげ、灼滅者たちは学園へと戻っていった。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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