サーバーの予報は晴れのち破壊!?

    作者:高橋一希

     それはそれは静かな夜だった。
     とある気象予報関係会社のオフィス、そのサーバー管理室はもはやこの時間には流石に誰もおらず、時折エアコンがため息をつく以外、何の物音もしない。
     そんな中、無音のまま影から現れたものが四体。
     サーバー管理室のフロアに現れたソレは、ブエル兵。内の一体は不可解な色合いに揺らめくオーラを纏っている。
    「我、充分な叡智を主に送信せり。そして、叡智の持ち主はただ一人、我が主のみ。ゆえに、今より、この地の知識を破壊する」
     ブエル兵たちは周囲の機器へとその身から生えた羊の脚を振りかざし躍りかかる。
     機材立達はひしゃげ、火花を散らし、煙りを吐き、沢山の機材が轟音を立て崩壊。同時に火が付いたように顧客電話が鳴り響く。
     こうして静かな夜は一瞬にして破られたのだ!
     
    「ブエル兵たちが各地のサーバーから情報の取得を行っていました」
     その日、灼滅者達の前に立った五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)は少々うつむき加減だった。
    「事件らしい事件を起こさず、今までは静かに作戦を行っていたようで、気づく事ができませんでした……」
     彼女の声色にはらしからぬほどの苦々しさが混ざっている。
     しかし、気づいたからには止める事もできるはず。姫子は気を取り直したように顔を上げる。
    「情報を取得したブエル兵たちはサーバーを破壊し、帰還しようとしています。サーバーから多くの知識を得たブエル兵は、ダークネスに準じる程強力な力を手にしているため、早急な灼滅をお願いしたいのです」
     
     ブエル兵が現れるのはとある気象予報関係会社のサーバールーム。それも、人気の無くなった夜間だ。
     侵入方法はふたつ。
     なんらかの手段で屋上まで上り、そこにある扉をあけて室内に入る方法。
     屋上の扉の鍵は常に開けっぱなしらしく、屋上まで上がる手段さえあれば侵入自体はラクだろう。
     もう一つは、夕方頃にオフィスに入り、社員達が退社するまで身を隠し待つ方法だ。
     人の出入りも多いため、入り込む事自体は容易だがどう身を隠すかが焦点になる。
     どちらにせよサーバールームに到着できるのはブエル兵たちが動き出す直前。彼らは未だサーバーから情報を収集しきれていない。そのため彼らが戦闘中にサーバーを攻撃する事はない。
     現れるブエル兵は、全部で四体。そのうち一体は揺らめくオーラを纏っている。
     三体の普通のブエル兵たちは、その羊の如き爪で力任せに相手を踏み砕く攻撃を繰り出してくる。これは近接範囲に居る単体にしか効果はないが、追撃効果があるので油断できない。
     そして身体を高速回転させスピードを活かし相手を挽き潰す攻撃。こちらも近接範囲の単体相手にしか効果はないが、やはり追撃効果がある。
     残りの一つはこちらをあざけり笑う事で士気を上げ、仲間達の体力を回復する技だ。この技は妨アップの効果がある。
     揺らめくオーラを纏ったブエル兵はダークネスに準じる程の力を持っている個体で、通常のブエル兵の攻撃にくわえ、更に二つ攻撃手段があるという。
     一つは、今までため込んだ知識の一部を一時的に圧縮解放し、凄まじい情報量で相手を威圧する技。
     遠距離の列まで届く上、プレッシャーの効果がある。
     もう一つは上記と類似しているものの、天気に関する情報を展開し、ごく狭い範囲ながら気象を操り雹を思わせる氷弾をぶつけてくる。
     こちらも遠距離の列まで届く上に、氷の効果がある。
     ポジションはリーダー格がクラッシャー、普通のブエル兵のうち二体はディフェンダー。そして残り一体がジャマーだ。
    「ソロモンの悪魔・ブエルがサーバー上のデータを全て収集してしまったなら、その知識をどのように悪用するか、想像すらできません」
     姫子はそう語るが、ロクでもない事になるのは火を見るより明らかだ。
    「それに、サーバーが壊されたならば保存されていたデータのたぐいも全て消えてしまい、沢山の人が困ってしまいます」
     彼女は調べた手帳を捲る。今回狙われたサーバーは気象予報関係のサイトのもの。
     これが壊されたならば、今までの気象に関するデータが消える。
     それに、これからの季節、ゲリラ雷雨について知りたくても判らず、濡れ鼠になる人も出るかもしれない。
     同様に冠水により通れない道がある事に気づかず大混雑に陥る人もいるかもしれないし、雷が苦手な人は突如やってくるゲリラ雷雨に怯えながら暮らす事になるかもしれない。
    「ですから、どうかみなさん。そんな惨事を食い止めるためにもブエル兵たちを灼滅してください」
     姫子は険しい表情で灼滅者達へとそう述べたのだった。


    参加者
    比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)
    卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)
    銃沢・翼冷(深淵覗くアステルバイオレット・d10746)
    桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357)
    西園寺・めりる(フラワーマジシャン・d24319)
    セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)
    風峰・静(サイトハウンド・d28020)
    ルナ・リード(闇を照らす光となりて・d30075)

    ■リプレイ

    ●離陸前注意情報!
    「安全運転でいくですよー!」
     箒にまたがった西園寺・めりる(フラワーマジシャン・d24319)が宣言一声。
     彼女ににしがみつくようにして箒に乗った桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357)は。
    (「も、もう少しダイエットしてればよかったでしょうか……」)
     何やら申し訳なさげに身を竦めてみる。なお彼女は小柄で細身。複雑な乙女心である。
    「よーし、それじゃ空中散歩だね。よろしくアレクセイ!」
     風峰・静(サイトハウンド・d28020)へと比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)は快諾し、軽く地を蹴った。
     ビルの高さは大凡で見積もっても十二分に空飛ぶ箒でカバーできる範囲だった。
    「こいつは無駄になっちまったな……」
     一応、壁歩きや、メンバーが上れるよう縄ばしごなども準備した銃沢・翼冷(深淵覗くアステルバイオレット・d10746)だったが、簡単な方法で済むならそれが1番。
     あまり考えたくない話だが、帰りに同じ手段が使えるとは限らない。できれば必要にならない事を祈り彼もまた黒っぽい外套を纏ったセレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)の後ろに。
     仮に何者かに地上から見上げられるような事があっても視認されにくいよう気をつかった装いだ。
     さておき普段の半分の速度しか出せない空飛ぶ箒に、魔法使い達の気持ちははやる。
     早く建物に入ってブエル兵を……という考えにブレーキをかけ、安全運転を心がけ、一同はビルの屋上付近へと舞い上がる。
     夏の湿り気を帯びた熱気を掻き分けるように、空飛ぶ箒に乗った影がゆっくりと移動していく。
     屋上に無事たどり着き、足元が固いコンクリートである事をたしかめそれぞれに着地。鍵の開いた扉から侵入を開始。
    「人の気配は?」
    「大丈夫そうだよ」
     答えるセレスは闇纏いを行使。周囲に監視カメラが無いかを見渡し、先行しながら最短距離を選んでいく。
     一見ごくごく普通のオフィスだが、一応ここは気象関係の会社だという。
    「ブエル兵たちは気象予報士にでもなるつもりでしょうか……」
     萌愛は今まで不思議に思っていた事をぽろりと零した。
     彼らが狙っているサーバーはお天気情報からはじまって過去の気象に関するデータが詰まっている。
     それらから色々学んだならば、もしかしたら気象予報士相当の知識は得られちゃうかもしれない!
     ……資格試験は流石に受けないだろうけれど。
    「悪魔が送る天気予報! とかすごい当たりそうだよね、視聴率出そう!」
     陽気に告げる静に仲間達の視線が集中する。
    「……うん、冗談だよ。ここで止めようね絶対に」
     視線の痛みに彼は視線を逸らしながら少し早口で語る。でも仲間の視線は多分「それ、バベられて放送しても視聴率採れないんじゃね?」的感じのような気もする。
     愉快な小ネタも挟みつつ、明りもついていない廊下を灼滅者達は駆け抜ける。

    ●戦闘ナウキャスト!
     深夜、人気の無いはずのサーバールームに4体の異形が姿を現す。山羊のような顔を中心に獣の脚が放射状に生やしたその姿はどこか車輪を思わせる。
     彼らは互いに顔を見合わせると近くにあるサーバーラックへと接近。その爪先が触れるか否か、という瞬間、ドバン、とサーバールームの扉が叩きつけるように開けられた。途端にブエル兵たちもそちら注意を向ける。
    「ちょっとそこの下手物集団さんよ、僕と少し遊んでかない?」
     声とともに扉をあけて飛び込んできたのは翼冷。一瞬だがその姿にブエル兵達はたじろいだかのように見える。
     彼は不敵に微笑み続ける。
    「なァに、面白いもん教えてやるって話だよ!」
    「……どうせ倒される運命だというのに、懲りない方達」
     ルナ・リード(闇を照らす光となりて・d30075)の視線は冷たい。
    「きっちりと灼滅して差し上げます」
     ふたりともに武器を構えブエル兵に対峙する。
     開扉と同時に萌愛がサウンドシャッターを展開している。仮に警備員たちが居たとしてもこれで物音に気づかれる事はないはずだ。
     卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)と静は持ってきたライトを灯してバラ撒く。
     恐らく入り口付近には部屋の電気をつけるスイッチだってあるはずだ。だがそれを探して隙を作るくらいなら、こちらの方が早いと判断したらしい。
    「それにしてもやってくれるよなぁ……サーバーはアカンて、サーバーは」
     翼冷はため息吐きつつ懐を軽く撫でる。そのあたりに携帯などが入っているのかもしれない。
    「今日本がどれだけ電子機器にぞっこんなのかわかってないよなぁ。俺らの平穏なネット生活のため消えてもらいましょ」
    「ああ、天気情報が失われるのはとても厄介だし、ここできっちり灼滅しよう」
     セレスは自分の翼にちょっと触れてみる。
    「……濡れると萎むし」
     そこかよ的だが彼女とその羽毛にとってはゲリラ豪雨は敵以外の何ものでもない。
    「ちなみにさーばーってのはどれ。美味しいの?」
     きょろきょろと周囲を見渡す静。
     部屋の三分の一ほどを何やら沢山のパソコンの本体っぽいモノが占めている。
     この中のどれだろう? くらいの気持ちだったのかもしれないが。
    「其方に収納されし千万無量の機器也」
    「んー。もうちょっと簡単に言ってくれよ」
     泰孝が答えるが、静は難しそうな顔をした。
     途端に全身からじわっと汗が滲む。全身包帯ぐるっぐる巻きなのになんとなく傍目でも判る程に。
    「……あちらのラックに入っている機械全部がそれです……」
    「そっかー。じゃあ、アレに触らせたらいけないんだ。ありがとなー!」
     ニコニコしながら礼をいう静に、泰孝はアセアセと手を挙げる。どうもペースが乱されたらしい、が、それはブエル兵も同じかもしれない。
    「使命遂行における障害は排除する」
     気を取り直したように揺らめくオーラを纏ったリーダー格と思しきブエル兵が一声。
    「これが壊れると多数の人に影響が出る。絶対に阻止しなければなりません」
     アレクセイが身構えるとほぼ同時にリーダー格の周囲にホログラムを思わせる大量の文字がゆらりと浮かび上がる。日本語も、その他の言語も、それどころかプログラミング言語と思しき文節まである。
     それらが一斉に前衛の灼滅者を襲う。大量の情報により灼滅者達という目前の情報を消し去ろうとするかのように。
     情報の奔流は灼滅者達の身に押しつぶされるような痛みを与えてくる。
     そんな中、圧倒する情報の隙間を縫うようにして翼冷が敵の間をすり抜け、彼らの背後をとった。
     背後を取ったつもりか、とブエル兵があざ笑おうとした瞬間、彼は手にした漆黒の魔道書をパタン、と閉じた。
     同時に凄まじい衝撃が敵達を打ちつける。それが爆発だと敵が気づくには数秒だが遅れが生じた。爆発痕からは炎があがり敵の身を燃やしていく。
     炎に気を取られた敵に槍を手にした萌愛が接近。
    「サーバーデータに被害は出させません!」
     轟、と空気を切る音をたてて螺旋の如きうねりを加えた一撃が敵を穿つ。
     仲間達の思いを代弁し、ブエル兵の言葉への返礼とするかのように!

    ●記録的短時間戦闘情報
     極力サーバーの前を陣取り、敵の攻撃がサーバーに及ばないようにと灼滅者達は立ち回る。こいつを守るのも今回の仕事、壊されてはこまる。
     だがそれは敵も同じ。未だ情報を収集しきれていないため、今壊れてはこまるのだ。
    「随分蓄えたみたいだが持ち帰れなくて残念だな」
     魔術文字が刻まれた木槍を素早く横薙ぎに振るい、セレスがブエル兵の脚を切断する。
     そんな彼女に対しブエル兵がくぐもった笑い声をあげる。
     どう聞いても山羊の鳴き声。しかしながらあきらかな嘲笑が込められており酷く不快な気持ちになる。
     そこに――。
    「邪魔しないでです!!」
     手にした剣を振りかぶり、めりるが斬撃を繰り出す。
     華々しく赤い花に飾られた剣はブエル兵を切り刻む――と思われたが、敵の身には傷一つついていない。
     しかし攻撃を回避したわけでもなければ、攻撃が見当違いだったわけでもない。
     何故なら彼女の攻撃を受けたブエル兵は痛みにもだえ苦しんでいるのだ。
     非物質化した彼女の剣はブエル兵の魂レベルでダメージを与えていた。苦しみにのたうちながらも敵はその蹄を振り上げる。
    「きゃっ……!」
     小さく悲鳴をあげるめりる。
    「でも、これくらいで痛がってらんないですー!」
     サーバーを、そして戦う仲間達を守るのが今日のお仕事。このくらいで痛いなんていっていたらきっと守りきれない。だから、頑張らなきゃ――。
     そんな内心を読んだかのように白いリボンが舞い、彼女の身を保護するように、同時に労るように包みこんだ。
    「めりる様お一人で戦って頂いているわけではございません。私も微力ながらお手伝いさせていただきます」
     メディックのルナによるラビリンスアーマーだ。
     一方でめりるのナノナノ、もこもこも一生懸命仲間を癒している所らしい。
    「ルナさんありがとうです! そうですよねっ!」
     気持ちを新たにめりるは敵へと向き直る。
    「知の探求は素晴らしいことです!」 
     一声叫びアレクセイが薔薇十字のあしらわれた巨大な十字架を振りかぶる。
    「しかし、貴方達にそれをやらせるわけにはいきません!」
     繰り出される殴打にそのブエル兵は倒せた。しかし直ぐ傍の別の敵が、車輪の如く回転をはじめ僅かな助走とともに敵はアレクセイを挽き殺さん勢いで走り出す。
     この距離だ。回避は間に合わない――。
     だが二人の間合いに素早く、音もなく滑り込んだものがいた。
     その人物は脚を振り上げブエル兵の攻撃を防ぎきった。
    「させないよ、僕と大人しく踊っててもらおう!」
     敵の攻撃を相殺し、静は敵の脚を踏み台に天井すれすれまで飛び上がる。彼の唐突な行動にブエル兵があきらかに気を取られた。
     そこを泰孝は見のがさない。
    「注意一秒、怪我一生」
     縛霊手でブローをぶち込んだ。同時に放たれた霊力が蜘蛛の糸の如く敵を絡め取る。
     そして。
    「今日の予報は回復時々エアシューズだよー」
     黒を基調としたエアシューズに星のきらめきを宿し、静が敵の身がひしゃげる程の蹴りを叩きこみ灼滅した。
     体力の減った敵から着実に撃破し、敵の手数を減らしていく。オーソドックスだが確実な手だ。
     ジャマーとして中衛に居たブエル兵も、厄介な攻撃をバラ撒いてくれたものの、ディフェンダー達が極力攻撃を受け止め、時には相殺し、受けたダメージはルナやもこもこ、更には回復メインでやってきていたディフェンダーにより癒されていく。
     なんとか下して残る一体は例のリーダー格だ。
    「求める知識は選ばないのだな」
     セレスが静かに敵を見やる。リーダー格のブエル兵が周囲の気温を急激に下げるのに気づき彼女は仲間に注意を促す。
     途端にふわりと発生した雲から弾丸の如く氷の弾が放たれた。
     嵐のようなそれをセレスはナイフで弾道を反らせその攻撃を相殺。
    「とはいっても天気を知るだけで本当に降らせたりしてくる事ができるなら求めてもおかしくはない、か」
     実に馬鹿馬鹿しい話ではある。だが実際こうして見せつけられてはそれを認めないわけにもいかない。
    「そろそろ終わりにしましょう」
     冷静に、萌愛が大型の注射器を振りかざす。同時に泰孝が手にした光の剣を大きく振りかぶった。
    「英知集積、此れ人の業也。其れを受け継ぐ事こそ人の慧。また、受け継ぎ、それを更に高めるが『孝』の心」
     斬撃が、最後のブエル兵を捉える。ざくり、と敵の切り裂ける手応えがあり、途端に山羊の悲鳴が上がる。
    「繋ぐ意味亡きダークネスには判らぬであろうが、略奪し壊すには尊き過ぎるものよ」
     集められた知識から学び、意味を見いだし、思考し、新たな知識を織り上げ、そして次世代に託し、次世代が更に洗練されたものへとかえていく。
     だからこそ、尊く、大切なものなのだ。それをただ収奪し破壊するだけの存在など許されない。
     切り裂かれた敵へと萌愛は素早く注射針を突き刺し、ピストンを押し込み、シリンダー内部に現れた薬剤を注入。抗おうとする敵から素早く距離を取った。
     斬撃と、そして体内を巡る毒液にブエル兵がぶるりと震える。
     だが蓄積したダメージの前にはもはやその身は耐えきれなかった。
     ガランと音を立てその場へと倒れ込む。虫の息の敵へと翼冷は冷ややかに踏みつける。
    「二つ、勉強になったな。一つ目は、泰孝も言ってたけど知識は貯めるだけじゃダメ、使わないと意味がなく経験にしないと意味はないこと」
     彼の言葉に泰孝も安堵の吐息。良かった、伝わってた、的な。
    「もう一つは、……これが死ぬって経験だ」
     ぐっと力を込めた彼の足の下、ぐしゃり、とブエル兵が潰れ、そして消滅していく。
    「お疲れ様でした」
     戦いの終わりを確信し、ルナはスカートの端をつまみ、それはそれは優雅な礼をしたのだった。

    ●明日の天気は?
    「じゃあ、片付けてかえりま……」
     言いかけた萌愛だが早速置いてあった椅子の角に小指を痛打。
    「きゃう……す、すみません……とりあえず手早く片づけして早く帰りましょう」
     涙目になりながらも椅子を移動させていく。戦闘中は冷静に戦闘を繰り広げていたのだが一気に気が抜けたのかあちこちごっちんとぶつけている。
    「さーばー? ってやつ、無事かなぁ」
     見た所は大丈夫そうだけど、と静。
     流石に中身を確認する手段は厳しそうだが……。
    「そうです!」
     同じく周囲を見渡していたアレクセイが何かを思いついたように手を叩いた。

     帰り道、再びの空中散歩。
    「あーした天気になーぁれ」
    「明日の天気は晴れ、みたいですー!」
     元気に告げた静は天気をチェック。覗き込んだめりるが声を張り上げる。
     これがアレクセイの考えたサーバーの無事を確認する方法だったらしい。
     とりあえずサイトの無事だけでも確認できれば他の大丈夫な可能性が高い……と踏んだらしい。
    「それにしても聞き分けの悪い子たちでしたね」
     以前もこらしめて差し上げたというのに、とルナ。同様の以来でブエル兵を退治してきた事があるのだ。
     彼女の後ろで泰孝はそっと念仏をあげる。
     もしかしたら今倒したブエル兵も、元は人間かもしれないのだ。
     しかし、兵はあくまで兵。彼らを操る者が居る。
    「ブエル卿、御身何時までも隠れたままで居られると思いなされるな」
     口調こそいつも通りの穏やかで淡々としたものだが、そこには確固たる意志が込められていた。

     灼滅者達は無事サーバーを守りぬくことに成功した。
     だがこういった成功が積み重なっていけば、敵の行動に新たな意味を見いだす事もできるかもしれない。
     知識がそうであるように、成功を積み重ねていけばブエルを撃破する事にも繋がるに違いない。

    作者:高橋一希 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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