リア充バスターズ参上!

    作者:邦見健吾

    「楽しいねー」
    「うん」
     一組の男女が腕を組んで遊園地を歩く。どこからどう見てもカップル。
    「ねえねえ次あれ乗うよ」
    「どれどれ?」
    「ちょっと待ったー!」
     彼女がジェットコースターを指差した瞬間、特撮風のスーツを着た5人組がその前に立ちふさがった(ただし全員男)。
    「貴様らリア充だな、爆発しろ!」
     ドカーン!
     男達が一斉に爆弾を投げ、爆発がカップルを呑み込んだ。

    「とある遊園地に、リア充を爆発させる5人組が現れるという噂があるのですが、それが都市伝説として出現します。皆さんの手で撃破してください」
     冬間・蕗子(高校生エクスブレインdn0104)は湯呑の茶を飲み、灼滅者達に説明を始める。
    「5人組はリア充ブレイカーズと名乗っているようです。説明しなくても分かるかもしれませんが、カップルがいるところに現れて爆発させようとするので、そこを攻撃してください」
     なお先に人払いをし、周りに人がいないところで灼滅者がカップルのふりをしておびき寄せる手もある。その場合は一般人を巻き込む可能性をかなり低くできるだろう。
    「都市伝説に賛同して裏切ったりしないでくださいね、ヒビワレさん」
    「しねーよ! 俺のことどう思ってんだよお前!」
     蕗子が真顔で言うと、すかさず天下井・響我(クラックサウンド・dn0142)が突っ込んだ。いくらリア充が憎くても襲っちゃダメです、うん。
    「リア充ブレイカーズは、赤・青・緑・黄・黒の5人おり、同じ能力と技を持っています」
     使ってくるのはビームと手投げ爆弾。また5人が揃っている場合、一度だけ合体攻撃を使うことができる。非常に強力で、灼滅者でもおそらく持ちこたえることはでない。
    「また、ブレイカーズはリア充っぽい言動をする相手を優先して攻撃します。注意してください」
     つまりリア充っぽい言動をすると合体攻撃を受ける可能性が高くなる。いざという時は誰かが犠牲にならないといけない……かもしれない。
    「戦いが終われば遊園地で遊んできてもいいかもしれません。それでは、よろしくお願いします」
     蕗子はもう一度茶を飲み、灼滅者達を送り出した。


    参加者
    斑鳩・夏枝(紅演武・d00713)
    旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)
    烏丸・織絵(黒曜の識者・d03318)
    天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)
    月光降・リケ(月虹・d20001)
    ヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)
    五十鈴・乙彦(和し晨風・d27294)
    寸多・豆虎(マメマメタイガー・d31639)

    ■リプレイ

    ●イチャイチャラブラブ作戦!
     まずヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)が殺界形成で周囲の人間を遠ざけ、天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)とともにカップルを演じる。
    「ねえねえヴィンくん、あそこ座ろーよ?」
    「そうだね、少し休憩しようか」
     ぴったりくっついて腕を組み、並んでベンチに座るヴィンツェンツとゆいな。2人を知らない人間が見れば、仲の良いカップルにしか見えないだろう。
    (「エスツェットは恥ずかしがってあまり反応してくれないけど、こういうのもいいよね。……こういうのも、いいよね」)
     ヴィンツェンツは普段からリア充なので、こんなデートも慣れっこ。他の誰がどう言おうと、ヴィンツェンツ的にはそうなのだ。ちなみにエスツェットとは彼のビハインドの名である。
    (「いいなぁ。私も……」)
     斑鳩・夏枝(紅演武・d00713)は一般客を装い、少し離れたところで待機する。自分もいずれは……とは思うが、残念ながら今はその相手はいない。
    (「リア充バスターズねえ。どうせなら巨大ロボでも出せばいいんだ」)
     近くの茂みに隠れ、様子を窺う烏丸・織絵(黒曜の識者・d03318)。紅色のコートが枝葉の間からわずかに覗く。
    (「リア充って単語に過剰反応する奴多すぎねェ? 逆に自分がリア充になったらどーすんだろうなァ……まぢ謎」)
     寸多・豆虎(マメマメタイガー・d31639)は不思議に思うが、非リア充を自称する連中は、自分がリア充になるなんて(表向きは)考えていないのだ。もちろん本音では「俺もリア充になりたい!」とか思っているけど。何にせよ本格的な夏も近いので、迷惑な奴らは倒しておかねば。
    「ふふっ、私、サンドイッチ作ってきたんですよっ! ヴィンくん、はいっ、あーん♪」
    「あ~んっ♪」
     ゆいなが持参した四角いバスケットの中には、色々な具材を挟んだサンドイッチが敷き詰められていた。1つ摘んで差し出すと、ヴィンツェンツは笑顔で口を開け、サンドイッチを噛みしめる。
    「どう? おいしい?」
    「うん、とってもおいしいよ。でも、こうやってゆいなと一緒にいられるのがいちばんの幸せかな」
    「もうっ、ヴィンくんったら」
     ヴィンツェンツの甘い言葉に、ゆいなが照れたように頬を染める。傍目から見れば、もはや2人だけの世界に旅立ってしまったかのようである。
    「おいこらリア充ども! 爆発させてやる!」
     しかしそこに、赤・青・緑・黄・黒の5色のスーツを着た男達が登場。何というべきか、華のない連中である。
    「はにびゃまひてくへへんでふか、びゅっとばひまひゅひょっ!!!」
    「何言ってるか分かんねーよ!」
     都市伝説が出現したのに反応し、サンドイッチを慌てて口に詰め込むゆいな。隠れていた天下井・響我(クラックサウンド・dn0142)が飛び出し、すかさずツッコミを入れたのだった。

    ●リア充ブレイク!
    「「我ら、リア充ブレイカーズ!」」
     声を揃えて名を叫び、襲いかかる男達。しかし灼滅者は動じることなく、連携して迎撃していく。
    (「リア充ブレイカーズ……凄く分かり易いネーミングだな。爆発させたい気持ちは分からなくも無いが、物理的に爆発させるのは……如何なものだろうか」)
     五十鈴・乙彦(和し晨風・d27294)は槍を携えて踏み込み、螺旋描く一撃で赤色のスーツを着た男を貫く。妬む気持ちも分からないではないが、やることがあまりにも直接的だと思う。
    (「カップルの幸せを邪魔するのは許せません。……でもバカップルだったらちょっと助けるのを躊躇うかも知れませんね……」)
     夏枝は縛霊手を振りかぶり、叩き付けるとともに霊力の網を放った。まずはレッドを撃破し、合体攻撃を防ぐ算段だ。
    「あきれたものですね」
     はあ、と溜め息をつき、月光降・リケ(月虹・d20001)が駆ける。知り合いにもRB団と称して似たような活動をしている者がいるが、実際に攻撃するのは紛れもない悪。至近距離から容赦なく槍を突き立てる
    (「リア充めいた言動……今一思いつかないな」)
     旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)は新しく入手したクロスグレイブを早速使用。グレイブを構えると大小の砲門が開き、罪を焼却する光線がリア充ブレイカーズに降り注いだ。詠唱とともに放たれる光は、敵を焼き尽くさんと嵐のように敵を呑み込んでいく。
    「さて、色被りには早々にご退場願おうか」
    「被っているのはそちらの方だ!」
     バベルブレイカーを構え、織絵が接近。バベルブレイカーを密着させて杭を撃ち出し、高速回転する杭が赤いスーツを貫いて肉体を抉った。
    「これからリア充の季節だし、邪魔するのは頂けねえなァ」
     豆虎は体に巻き付いたダイダロスベルトをほどき、意思持つ帯を矢に変えて放つ。矢がレッドに突き刺さり、同時に敵の動きと環境を学習して次弾の精度を上昇させた。
    「こうなったら……合体技だ!」
    「「おおっ!」」
     連携攻撃を封じようとした灼滅者達だったが、敵の動きの方が早かった。赤色の号令でリア充ブレイカーズは合体攻撃の態勢に移っていく。
    「ブルー!」
     レッドが爆弾を蹴り、サッカーのようにブルーにパスを渡した。ブルーも同様に、グリーン、イエロー、ブラックと素早く爆弾を回していく。
     狙いはカップルのふりをしていたヴィンツェンツ。ブラックが足を振りかぶると、その前を遮るように、背後に控えていたエスツェットがブラックとの間に割って入った。
    「エスツェ――」
    「レッド、パス!」
    「え?」
     しかしブラックはそれをスルーし、いつの間にかヴィンツェンツの背後に回っていたレッドに爆弾を蹴り渡す。
    「爆発しろ、リア充うううううっ!!」
    「おああああああっ!?」
     そしてヴィンツェンツの背中目掛け、レッドが爆弾をキック。赤・青・緑・黄・黒……瞬く間に5連続の爆炎に巻き込まれ、ヴィンツェンツはきりもみしながら飛ばされていった。
    「ヴィンくーん! だいじょうぶーっ?」
     ゆいなの叫びも虚しく、大丈夫ではなかった。力尽きては回復のしようがないので、クロスグレイブから敵に光弾を撃ち込む。
    (「ありがとう、ヴィンツェンツ……」)
     乙彦はコンクリートの地面に倒れ伏すヴィンツェンツを視界の端に見やり、彼の犠牲を無駄にすまいと、眠りに誘う符を投げた。

    ●ブレイカーブレイカー
    「とりあえず消えてください」
    「ぐっ、我が非リア充生に悔いなし……!」
     リケのマテリアルロッドがレッドを叩き、注ぎ込まれた魔力が炸裂してレッドが倒れた。立派なリア充であるヴィンツェンツと刺し違えられたと思えば彼も本望であろうか、うん。
    「恋人がいるいないはともかく、自分以外の人間の幸福そうな姿を見れば微笑みこそすれ、妬む理由になっていないと思うのだがな……」
    「リア充はそれだけで悪なのだ!」
    「理由になってない」
     今まで喋っていたレッドの代わりにブルーが反応するが、砂蔵はばっさりと切って捨てた。縛霊手から祭壇を展開し、リア充ブレイカーズを結界に封じ込める。
    「君らは実に馬鹿だな。考えてみろ、リア充のうち何割が最後までリア充だと思う?」
    「知るか! 今リア充ならば敵だ!」
     織絵の言葉も聞く耳持たず、ブレイカーズは爆弾を投げ続けた。嫉妬の爆炎が灼滅者を襲うが、それしきで倒れる灼滅者達ではない。
    「はあ。いずれ消え行くリア充をわざわざ労力をかけてバスターするなど……暇人か君らは」
     呆れながら息を吐き、纏うオーラを拳に集める織絵。目にも留まらぬ速さで連撃を打ち込むとブルーも力尽きた。
    「んじゃ、俺の出番だな」
     仲間の火傷を癒すべく、ヴィンツェンツに代わって前衛に立った響我がギターをかき鳴らす。主を倒されたエスツェットだが、何事もなかったかのように攻撃に参加し、剣を振るって一太刀見舞った。
    「なんでリア充爆発させようとすンだよ?」
    「リア充が憎いからだ!」
    「とか言って、リア充に憧れてンだろ?」
    「な、何を言う!? 我々はリア充になど……」
     豆虎の問いに、一様に動揺した様子を見せるリア充ブレイカーズ。豆虎がグリーンを地面に叩き付けると、ずんだ色の爆発に包まれる。ライドキャリバーの牛タンも猛牛のように唸りを上げて突進し、衝撃でグリーンが消滅した。
    「そんなことばっかりしてるからモテないんですよね。そんな暇があるならもっと自分を磨いて欲しいものです」
    「なっ……!?」
     至極真っ当なこと言われ、ブレイカーズが言葉を失う。夏枝はエアシューズで加速して跳躍、容赦なく跳び蹴りを見舞い、星の瞬きが弾けた。
    「リア充は、リア充はとにかく悪なのだ!」
    「問答無用だ。お前たちは、理由になってない」
     滅茶苦茶なことを言うイエローに、砂蔵が十字架先端の銃口から光弾を発射。聖歌が響き、氷結したイエローが砕け散る。
    「節度は守ってもらいましょうか」
     リケが拳にオーラを集め、残されたブラックに迫る。光とともに高速の打撃が次々とブラックを打ち、強烈な衝撃にブラックが吹き飛ばされた。
    「くそおっ! リア充はいつもいつもこうやって非リア充を苦しめるんだ!」
    「いや意味分からないから!」
     追い詰められたブラックのこじつけに、思わず声を荒げてツッコミを入れる乙彦。ついでに腕を鬼のそれに変え、鬼神の拳で殴り付ける。
    「次は巨大ロボでも連れてくるんだな!」
     織絵はエアシューズで疾走しながらローラーに点火。懐に飛び込んで烈火を纏うシューズで蹴り上げた。
    「人の恋路を邪魔する奴はァー……後なんでしたっけ?」
    「何でもいいから攻撃しろ!」
    「じゃあ……とにかっく地獄に落ちろおぉォォおっっ!!!」
    「おおおおおおおおおっ!!!」
     首を傾げるゆいなに、響我がツッコむ。ゆいなはブラックに向き直り、絶叫しながら力任せに鬼の拳を叩きつけた。こうして、リア充ブレイカーズは憎きリア充の手で葬り去られたのであった。

    ●戦いの後で
    (「……それにしても、ネーミングはもう少しなんとかならなかったのか。学園にも似たような連中がいると聞くが、そちらのほうがまだセンスがよかった気がする……ぞ?」)
     とはいえ、どちらも似たり寄ったりだとは口が裂けても言えないが。とりあえず忘れるに越したことはないと、砂蔵は思った。
    「よっしゃァ! ジェットコースターから行こうぜ!」
    「じゃあ、私は観覧車でまったりと」
     豆虎が絶叫マシンに突撃し、その後ろを織絵がシャボン玉をぷかぷかと吹きながらついていく。夏枝は観覧車の方に足を向け、乙彦もそちらに向かった。たくさんのアトラクションがある遊園地なのだ、それぞれの趣向に合ったものに乗るのもいいだろう。
    (「誰かを誘って遊びたかった気はしますね」)
     せっかくの遊園地、どうしようかと思案するリケ。どうせなら知人と来たかったところではあるが。
    「さ、みんなで遊ぶとしましょうか!」
     しかしその腕をゆいなが取り、逃がさないと言わんばかりにリケを捕まえた。満面の笑みを浮かべ、全力で遊ぶ気満々である。
    「じゃあ俺はこの辺で……」
    「もちろん響我さんもねっ!」
    「うおっ!?」
     帰ろうとした響我も捕まり、半ば強制的に腕を組まされる。
    「あれあれー? もしかして照れてます?」
    「なわけねーだろ! おい、放せ!」
     ゆいながいたずらっぽく笑い、響我が慌てて腕を振りほどこうともがく。だががっちりとホールドされ、逃れられそうになかった。
    「……」
     一方、名誉の負傷となったヴィンツェンツは遊園地の隅にある休憩コーナーで体を休めていた。人目もないため、エスツェットも一緒である。
    「寂しくなんかないよ。僕にはエスツェットがいるからね」
     ニコッ。
     つーん。
     ヴィンツェンツが柔らかく笑いかけても、エスツェットは微塵も反応を返さない。
    「エスツェット? 聞こえてる? ねえ、ねえってば……」
     そうしてヴィンツェンツは、1人だか2人だか分からない時間を過ごした。

    作者:邦見健吾 重傷:ヴィンツェンツ・アルファー(機能不全・d21004) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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