踏まれたいらしいです。

    作者:奏蛍

    ●コシを求めて
     水に塩を溶かしながら、少女は首を傾げた。初めて作るわけではなく、もう何度も作ったことがある。
     しかしどうもコシが足りない気がするのだ。
    「もうちょっとこう、コシが欲しくない?」
     一緒に料理していた兄に声をかけた。
    「コシ? もっと頑張って捏ねたらいいんじゃないか?」
    「いつもちゃんとやってるよ!」
    「じゃあ手じゃなく踏んでみたらどうだ?」
    「えー、なんかやだなぁ」
    「別に直接踏むわけじゃないだろ」
    「うーん、でもどうしようかなぁ」
     でももう少しコシが欲しいのは確かだ。いつもだが、初めてすることはものすごくどきどきして緊張する。
    「ふ、踏んでみようかな……」
     少女の性格なのだろう、今から生死に関わるようなことが起こるというくらいの勢いだ。でもどうしよう……踏み出そうか踏み出さまいか……。
     まさに究極の選択というほど悩んだ少女が息を飲んだ。隣にいた兄も息を飲んだ。
     白い壁がそこに立っていた。
    「オレもコシが欲しい……踏んでくれ!」
     中心がパカッと割れて口のように動く。そして床に横になる。
    「さぁ、踏んでくれ!」
     少女の瞳が見開かれる。
    「い、いやぁあー!」
     走って逃げようとした少女に白い塊が伸びて巻きついていく。
    「コシが出るまで逃がさない、さぁ踏んでくれ」
     白い塊は兄の体にも巻きついていく。拒否する二人の体が動かなくなるまで、そう時間はかからなかった。
     
    ●踏んでください
    「突然、出てきたら、逃げるよね」
     普通の人ならそうなると頷いた九重・木葉(蔓生・d10342)がマイペースに須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)からの情報を話し始める。ダークネスの持つバベルの鎖の力による予知をかいくぐるには、まりんたちエクスブレインの未来予測が必要になる。
     木葉の予感が的中して、手打ちうどんを作る際に足で踏んでもらいたがる都市伝説の存在が明らかになった。現れたうどんの塊が、コシが欲しいと迫って来るのだ。
     踏むことを拒否すると、その場にいた者を殺してしまうのだ。大人しく踏めば機嫌が良くなるらしいのだが、うどんが満足するまで踏み続けるために過労死してしまう可能性がある。
     みんなにはこの都市伝説の灼滅をお願いしたい。
    「まずは手打ちうどんを、途中まで、作る必要があるみたいだね」
     みんなで手打ちうどんを作ってもらって、コシを出すために踏んでみるという提案をしてもらいたい。ここで大事なのが、踏むか踏まないのか戸惑い悩んでもらうことだ。
     なかなか踏み出さないことに焦れた都市伝説が現れてるまで、頑張ってもらいたい。人数が多い方が早く出現してくれるため、複数で悩むことをおすすめする。
     そしてここからが大事だ。現れて踏むことを要求されたら、遠慮なく頑張って踏んでもらいたい。
     途中、うどんが気持ち悪い声を出すかもしれないがとある言葉が出てくるまで踏んでもらいたい。
    「コシ出すぎて死にそうです……って、言うらしいよ」
     なんかちょっと踏みたくなくなってくるが、これも都市伝説を灼滅するため。いろいろ我慢して頑張ってもらえたらと思う。
     この言葉が出てきたら灼滅の合図だ。遠慮なく感極まってるうどんを攻撃してもらいたい。
     とある言葉を言う前に攻撃すると、すぐに退散してしまうため最初からやり直しとなるので注意が必要だ。うどんはダイダロスベルトに類似したサイキックを使ってくる。
    「灼熱後は、途中で止めた料理を再開して、みんなでうどんもいいよね」
     趣味は食事という木葉から、表情があまり変わらないながらも嬉しそうな雰囲気が漂ってくるのだった。


    参加者
    仙道・司(オウルバロン・d00813)
    クラリーベル・ローゼン(青き血と薔薇・d02377)
    現世・戒那(紅天狼主三峰・d09099)
    ラシェリール・ハプスリンゲン(白虹孔雀の嬉遊曲・d09458)
    九重・木葉(蔓生・d10342)
    ヴォルペ・コーダ(宝物庫の番犬・d22289)
    笹川・瑠々(平坦系はいてない狂殲姫・d22921)
    イサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)

    ■リプレイ

    ●下準備
    「手打ちうどんなんて初めて作るよ!」
     楽しみだとラシェリール・ハプスリンゲン(白虹孔雀の嬉遊曲・d09458)がコバルト系の冴えた青色、孔雀青の瞳を輝かせる。そしてうっかり暗黒物質を作ってしまわないためにも、力を合わせてうどんを作ろうとみんなを見る。
     料理は好きだが、決して上手とは言えないラシェリールだった。
    「……えーと、ここからどうすれば」
     そんなラシェリールの隣で、並べた材料と持ってきたレシピの紙を交互に見ながら仙道・司(オウルバロン・d00813)が首を傾げた。うどん好きであり特にコシのあるものが大好きな司だけに、うってつけの依頼と言える。
    「ふーむ、うどんは好きじゃが作るのは初めてでのう……」
     隣から司の手元を覗き込んだ笹川・瑠々(平坦系はいてない狂殲姫・d22921)も同じように首を傾げた。とりあえず見様見真似でやってみようかと周りに視線を泳がせる。
    「楽しみだなー」
     軽そうでどこか不真面目に感じるヴォルペ・コーダ(宝物庫の番犬・d22289)の手元は、言動とは裏腹に準備も手際も何もかもきっちりしていた。分量もしっかりと用意したレシピ通りグラム単位で測っている。
     あまりにもきっちりしし過ぎてしまっているせいか、料理をしているというよりは工作に見えてくる。
    「何か楽しみがあるのか?」
     途中までうどんを作って、捏ねるところでストップしたクラリーベル・ローゼン(青き血と薔薇・d02377)が青い瞳を瞬かせる。凛とした立ち姿には気品が溢れ、さすが貴族と言ったところか。
    「わん、味見してきな」
     軽そうな笑みを浮かべているヴァルペの方を指差して、九重・木葉(蔓生・d10342)が霊犬のわんに声をかける。嬉しそうに飛びついていくわんと驚くヴォルペの声が響く。
     木葉とは気心してれているきがしないでもないヴァルペだけに、こういう扱いも許容範囲なのだろう。わんを放った木葉はと言うと、マイペースにうどんと向き合っている。
     手打ちうどんをわざわざ自分で作ったことがないからか、作るという過程も木葉は楽しく感じていた。表情があまり変化しない木葉だけに真顔なままだが、全力で楽しくうどんを作っていく。
    「しかしこんな都市伝説、誰が考えたのやら」
     料理を嗜むものとしては看過できないね~と呟いた現世・戒那(紅天狼主三峰・d09099)が慣れた手つきで調理していく。
    「コシを出すために踏む、という方法もあるらしいぞ」
     生地ができてきたところで、クラリーベルがみんなに話題を振った。
    「だがいくらコシが出るからとはいえ、脚で踏むのはな……」
     クラリーベル自身としては、足で踏むことに躊躇してしまうという様子を見せる。悩むような仕草に司が難色を示す。
    「足で踏むんですかっ……な、何か野蛮なかんじ」
     けれどそれで美味しくなると言うのならば、どうなのだろうと司も頭を捻る。
    「踏む? 食べ物を踏むだなんて俺にはできない……」
     少し困ったような表情を見せながら、ラシェリールがうーんと悩む声を上げた。
    「美味しくなるならばやぶさかでもないけれど……」
     足で踏むというイメージが、料理的にどうなのだろうと戒那が眉をひそめる。
    「でも踏んだ方が、コシ出るもんね」
     コシのあるうどんが好きだし踏みたいなと木葉は呟く。踏むのに乗り気な様子を見せる木葉にイサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)が鋭い眼光をさらに細めた。
    「踏む、のか? ブドウ踏みのようなものか……?」
     葡萄踏みなら何となく知識的にわかるイサだが、うどんを踏むというのは……。
    「初めて、だしな……」
     思わず二の足を踏んでしまうのだった。
    「悩むならとりあえずおにーさん踏んでみない?」
     真剣に悩む様子を見せる仲間にヴォルペが、予想外な言葉を発した。スーツとサングラスの姿で、ドキドキそわそわしながら正座している。
     何とも言えない間が空いた後、瑠々が不敵な笑みを見せた。
    「踏むのか? ふふふ、踏むと言うのなら妾は自信があるぞ」
     魅力的な赤い瞳で見られたヴォルペがぜひと言うようにその身を投げ出した。だがしかし決して踏まれたいとか、可愛い子に踏まれたいとか、そんな趣味はない……ないはずだ。

    ●踏むのは……うどんです。
    「人間も踏まれる度にコシがでるんでしょーか……」
     司がヴォルペをふみふみしながら呟いた。
    「コシでたらいいよなー」
     でるかなと満足そうな顔を見せるヴォルペに木葉が真顔で棒読みする。
    「そんなにコシが欲しけりゃ、うどんより可愛がってやるよー」
     躊躇など全くない踏み方だ。そんな木葉をヴォルペが見上げる。
    「木葉、もうちょい感情込めて言えよ……」
     さすがに棒読み過ぎると言われて、木葉が足に力を込めた。微かに息を飲んだヴォルペだったが、瑠々とイサの魅惑の足指使いに力を抜く。
     完全に満足しているヴォルペの周りで、みんなは真剣な表情を見せる。
    「うどんも躊躇なく踏めばいいのか……」
     容赦のない三人の踏みっぷりに、ラシェリールが呟いた時だった。
    「オレもコシが欲しい……踏んでくれ!」
     声とともに白い壁がそこに存在していた。そして勢いよく横になる。
    「さぁ、踏んでくれ!」
    「?????」
     明らかに困惑したイサではあったが、踏んでくれと言われたのでヴォルペから下りて足を踏み出す。
    「ふ、踏むのか……? こう、か?」
     素足は嫌なので、タイツでうどんを踏む。何とも言えないうどんの弾力で足指が埋まっていく。
     その隣で戒那が容赦なく、思いっきり踏み込んだ。料理じゃないから遠慮はいらないと、ものすごい笑顔でひたすらに踏んでいく。
    「あーー、そこそこぉ……」
     気持ちよさそうな声を出すうどんに、クラリーベルも足を伸ばす。飛び乗るようにしてクラリーベルの隣に滑り込んだ司が、力を込めてうどんを踏んだ。
    「ようし、おいしいうどんさんにしちゃるですっ」
     思い切りふみふみしながら、ぐりぐりと踏みつけていく。
    「ええのんかっ、ここがええのんかっ!」
     もう抉っちゃうくらいの勢いでぐりぐりと足の指をうどんに埋め込んだ。
    「踏まれたいなら好きなだけ踏んであげる」
     そう言って踏み始めたラシェリールの顔に自然と笑みが広がっていく。執事に協力してもらって踏む練習までしてきたラシェリールだ。
    「くぅー!」
     変な声をうどんが出そうが全く気にならないというか、愉快でしょうがない。本人は気づいていないようだが、ドSなラシェリールなのだった。
    「もっとか、もっと踏まれたいか。卑しい奴め!」
     そしてもうひとり、愉快になってきた瑠々の声が響き渡る。悦に入ったような瑠々が全力で踏み砕くと、うどんから気持ち悪い声が上がる。
    「さあもっと良い声で啼け!」
     瑠々が言うのと同時に、うどんからさらなる声が上がる。
    「おらおら、コシをだせよ。もっとだせよ」
     無表情のまま、木葉が容赦なく踏んだ。その横でヴォルペがリズミカルに踏んでいく。
     半端な鍛え方をしてるつもりはないヴォルペだが、これで筋肉痛になったら爆笑されそうだ。遠慮なく八人に踏まれることで、うどんの息が荒くなっていく。
    「まーでも、うどんだからいいですけど、人間ならどえむですよねこれ……」
     足の下で悶えているうどんを見て、司が呟いた。しかし腰痛の祖父が腰を踏んでと言っていたのと同じなのだろうかと司が首を傾げる。
    「そう考えると懐かしい、かも」
     亡くなった祖父を思って小さく司が囁いた。
    「あーーーー! コシ出すぎて死にそうです!」
     やはり一般人と灼滅者の踏み具合は違うのか、容赦なく踏まれたこともあってうどんが声を上げた。感極まったうどんが起き上がるのに合わせて、灼滅者たちも床に下りた。
     そして感極まっているうどんに向かって戒那と木葉が飛び出した。木葉的には黙って踏まれて食べられてくれれば、争わずに済んだのだが……。
     そういうわけにもいかず、炎を纏った蹴りで木葉がうどんを蹴り飛ばした。踏まれたことでコシが出たうどんの弾力は心なしか固くなているような気がする。
    「文字通り焼きうどんになるといいよ?」
     戒那も待ってましたとばかりに、飛ばされたうどんに炎を纏った蹴りを決める。転がったうどんが再び立ち上がるのをみながら、クラリーベルが魔力を宿した霧を展開していく。
    「では、始めよう」
     凛々しいクラリーベルの声が霧の中で響いた。

    ●行く末は焼きうどん?
    「さぁ、楽しもうじゃないか!」
     力を解放させながら駆け出したラシェリールも炎を足に纏っていく。再び迫った蹴りに身構えたうどんを、踏んでいた時のように容赦なくラシェリールは蹴飛ばした。
    「コシ出すぎて死にそう?」
     うどんの言葉を繰り返した瑠々がふふっと笑う。
    「なら、そのまま逝かせてやろう」
     ふわりと飛んだ瑠々が死の力を宿した断罪の刃を振り下ろす。綺麗に切られたうどんの白が非常に美味しそうだ。
    「せっかくコシが出たのに食われてたまるかー!」
     怒りの声を上げたうどんが一気に伸びて前にいた灼滅者たちを纏めて縛り上げていく。瞬時に駆けたラシェリールのウイングキャット、ロードが傷を回復させる。
     うどんから逃れたイサが少し考えるような表情を見せて跳躍する。そしてそのままうどん目掛けて降り立つ。
     踏むように蹴りを加えて、ふわりと着地する。
    「なるほど……こうすればいいのか」
     納得したようにイサが頷くのだった。さらに司が炎を纏った蹴りでうどんを追い詰める。
     その表情は、普段の天然うっかりな雰囲気が息を潜めている。真剣な表情のまま、蹴飛ばしたうどんを見据えて着地した。
     遅れてふわりと三つ編みが背に落ちていく。示し合わせたわけではないが、このままだと本当に戒那が言うように焼きうどんになりそうだ。
     その間にヴォルペが霊的因子を強制停止させる結界を構築していく。灼滅者たちの攻撃に、うどんがぎりりと歯軋りする。
    「いい気持ちにさせておいて踏みつけるとは!」
     踏めと言っていたはずのうどんが悔しそうに叫びながら、一部を伸ばす。真っ直ぐ一本の麺となったうどんがクラリーベルに迫る。
     咄嗟に身構えたクラリーベルだったが、予想した衝撃は襲ってこない。クラリーベルの代わりに攻撃を受けたヴォルペが微かに息を飲む。
    「わん、頼んだ」
     戦いで少しテンションが高くなった木葉の声に、わんが反応した。咥えた刀でうどんを斬る。
    「踏み抜く、いや。踏み穿つよ!」
     身を低くして一気に床を蹴った戒那が飛び上がる。そしてうどんの頭上から思い切り足を落とした。
     踏みつけられたうどんの前にクラリーベルが躍り出た。巨大な十字架型のクロスグレイブを巧みに操り、うどんを打ち、突き、叩き潰していく。
     そんなクラリーベルと入れ替わるように木葉が飛び出す。殴りつけるのと同時に網状の霊力を放射して、暴れるうどんを縛り上げた。

    ●灼滅後のうどん
    「なかなか、いいコシがでてるな!」
     オーラを宿した拳で遠慮なくうどんを殴りながら、ラシェリールが声を上げる。何だか殴られているというより、うどんとして鍛え上げられているような気もしてくるから不思議だ。
     最後の一発を打ち込まれてふらついたうどんに、戒那が炎を纏った蹴りを決める。同時にクラリーベルがクルセイドソードのEdel Blauを非物質化させて攻撃する。
     別の理由で息を荒くしたうどんをヴォルペが見据える。
    「そろそろ終わりってことでどうだろう」
     言いながら軽やかに床を蹴ったヴォルペの飛び蹴りがうどんを吹き飛ばした。壁にぶつかっても素敵な弾力で跳ねたうどんが、そのまま攻撃を仕掛ける。
     貫かれた司が痛みに微かに眉を寄せた。駆け寄ったロードに回復してもらうのと同時に飛び出す。
     オーラを宿した司の拳が容赦なくうどんに叩き込まれていく。
    「失礼するぞ!」
     後ろからかけられた瑠々の声に、司が身を翻す。入れ替わりに振り下ろされた瑠々の刃がうどんを斬り裂く。
     身を震わせたうどんの体をイサが放ったつららが貫いた。
    「踏んで、終わりだ」
     うどんが上を見たときには、すでに木葉が落下してきていた。踏みつけるように落とされた蹴りがうどんにとどめを刺した。
     白い壁の塊が麺に姿を変えて、そのまま空気に溶け込むように消えていく。
    「程よい運動もしてお腹が空いたな」
     消えたうどんのことなど気にした様子もなく、ラシェリールがうどん作りの続きを始める。
    「俺は掻揚げうどん食べたいな」
     うどんパーティーだ! と言うラシェリールのそばで、うどんが食べたいロードがウズウズしている。
    「熱い……熱いのはダメだ、融ける……」
     茹でたうどんから立ち上がる熱気にイサが首を降って冷水に入れた。
    「うどんは噛み切れ無いくらいにコシの強い方が好みじゃ」
     手打ちでうどんを完成させていく戒那に瑠々が瞳を輝かせる。
    「そんなにコシって出るのかい?」
     のんびりと答えた戒那が笑う。
    「グランドファイアとか使ってたから焼きうどんとかもいいかもね」
     ちょっと暑いけどと言いながら、戒那がうどんを一定間隔で切って茹でる。
    「私は窯玉うどんだな」
     クラリーベルが言いながら卵を用意する。それぞれの希望のうどんが机に並べられるのだった。
    「お腹ぺこぺこ」
     うどんを前に木葉が呟いたのを合図にみんながうどんを食べ始める。
    「一仕事の後のうどんは美味です~!」
     雰囲気が元に戻った司がもぐもぐとうどんを食べて頬を緩める。
    「いいぞ、たまにはこういうジャンクなのもいい」
     窯玉おいしいと声を上げるクラリーベルの隣で、ラシェリールがロードにうどんを食べさせている。
    「……ぶっかけ?」
     とろろをぶっかけたイサが合ってるよねというように首を少し傾げる。海外生まれのため箸と麺をすするということに慣れていないのか、かけたとろろが見事に跳ね飛ぶ。
     ちゅるちゅるとすするたびに、口の周りや服に白いとろろが飛び火する。そんな仲間をヴォルペが満足そうに給仕しながら見守っている。
    「囮なんて、面白い案だったね」
     あえて自分が踏まれることで囮になろうとしたヴォルペの案を思い出した木葉が口にした。しかし予想とは違う反応が返ってくる。
    「囮と言う気はないぞ!」
    「え。違うの?」
    「ちょっと踏まれたかっただけだし!」
     それはそれでどうなのか……。うどんの魂と友人を思い浮かべた木葉が呟く。
    「でもあんな……打た……いや、踏まれ強い人になりたい」
     そして神妙な顔をして頷きながら付け足す。
    「かは、微妙」
     そんな木葉の視界に、楽しそうにうどんを口にする仲間たちが映るのだった。

    作者:奏蛍 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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