メイドのライブに赤鬼現る

    作者:のらむ


     時刻は22時。とある地下にある小さなライブステージでの事である。
     色とりどりの光にライトアップされながら、1人のメイドが長い黒髪をなびかせながら、ステージ上で華麗なダンスを踊っていた。
     メイドでクールなアイドルを自称するラブリンスター派の淫魔。名をリンと言う。
     そしてリンの踊りを熱狂的に見守る、多くの観客たち。
     その華やかな動きとは裏腹にリンの表情は無表情にも見えたが、これでも本人は相当楽しんでいるらしい。
     そして一連のショーが終わるとリンは深々と観客たちに一礼し、マイクを手に取る。
    「どうも皆さん、こんばんは。リンです。今日は私のステージの為に集まって下さり、誠にありがとうございます。ここからは恒例の『リンの手作り料理食事会』となりますので、もうしばらくお付き合いを――」
     と、その時。
     ライブステージの大きな一枚扉が勢いよく開け放たれ、そこから巨大な人影が姿を現す。
    「おお、ここか……探すのにずいぶん苦労したぜ、全く」
     巨大な棘だらけの棍棒を担ぎ、全身の肌は真っ赤。そして頭からは黒曜石の角を生やしているこの男は、どう見ても唯の観客には見えなかった。
    「あー……チケットは購入されましたかね? 羅刹さん」
     リンの問いかけに応えず、羅刹はそのままズカズカとステージに立つリンに近づいていく。
    「な、な、な、な、なんだお前はっ!! リンちゃんに何する気ブゲッ!」
    「邪魔だ。死にたくなけりゃあ道を開けろ」
     羅刹が振るった棍棒が観客の脳天をかち割り、邪魔になる一般人は見境なく殺しながら突き進む。
    「どうしたものでしょうかね、これは」
     リンは顎に手を添えながら、自らの得物のバベルブレイカーを取り出すが否か、思考を巡らせるのだった。


    「最近、ラブリンスター配下の淫魔がライブを行ってることは、皆もう知ってるかしら。ラブリンスターの仲間となった七不思議使い達が流した噂で、ある程度の集客が出始めたみたいなんだけど……今回はそのライブに関する事件よ」
     エクスブレインの鳴歌はサイコロをころころと振り占いながら、事件の説明を続ける。
    「ライブを開くのは、『リン』という名の淫魔よ。以前みんなとは、斬新コーポレーションの引き抜きを行う事件で対峙した事があるわね。そしてメイドでクールなアイドルを自称する彼女のライブに、1人の羅刹が現れる」
     その羅刹は会場に到着すると観客を蹴散らして殺し、そのままリンの元へと向かう。
    「その羅刹の目的は分からないのだけど、とにかく一般人が殺される事態は防がなくちゃならないわ。羅刹がライブ会場に入る前に、灼滅して頂戴」
     現場となるライブ会場は町外れの建物の地下にあるらしく、灼滅者達が訪れる時間帯、ライブ会場の外には数人の一般人しかいないと鳴歌は説明する。
    「外で待ち伏せて倒すには中々の好条件ね。ライブ会場は地下にあって音は聞こえ辛いし、入り口が1つしかないから羅刹の侵入も防ぎやすいわ」
     そして鳴歌は、訪れる羅刹について説明する。
    「全身の皮膚は真っ赤に染まってて、2メートルを超える巨躯。おまけにゴツイ棍棒を振るうっていうんだから、まさに『鬼』といった感じの見た目ね。棍棒を使ったパワフルな攻撃と、神薙使いの力を組み合わせて攻撃してくるわ」
     そこまでの説明を終え、鳴歌は占いの手を止めて灼滅者達に向き合う。
    「説明はこれで全部よ。羅刹を灼滅した後はライブに参加したりしても構わないわ。もちろんしなくても全然良いけどね。リンと前回対峙した時には意見が合わずに軽く戦闘になったみたいだけど、向こうは別に気にしてないみたいよ」
     ちなみに、と鳴歌は続ける。
    「羅刹を待ち伏せて灼滅する以外の方法に、ライブを解散させるという方法もあるわ。この場合ライブの邪魔をされたリンとの戦闘になるけど、一般人を避難させることは可能かもしれないわ」
     リンの戦闘能力はそこまで高くないが、戦闘途中に羅刹が乱入してくる可能性もあるので、難易度は相当上がる可能性があるだろうと鳴歌は説明した。
    「どっちを選ぶのも自由だけど、まあ何にしても頑張ってね。敵の戦闘能力はそこまで高くないみたいだけど、油断すれば怪我しちゃうかもしれないから」


    参加者
    日月・暦(イベントホライズン・d00399)
    羽柴・陽桜(はなこいうた・d01490)
    聖刀・凛凛虎(皆殺しの暴君・d02654)
    ナタリア・コルサコヴァ(スネグーラチカ・d13941)
    カリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)
    宍戸・源治(羅刹鬼・d23770)
    石神・鸞(仙人掌侍女・d24539)
    天月・静音(橙翼の盾纏いし妖精の歌姫・d24563)

    ■リプレイ


     ラブリンスター派の淫魔・リンのライブに、謎の羅刹が現れ一般人を虐殺する。
     その事件を未然に防ぐべく、8人の灼滅者達はライブハウスの前に集合していた。
     それらしい服装に着替えプラチナチケットを使用した羽柴・陽桜(はなこいうた・d01490)や、その他の灼滅者達の呼びかけもあり、周囲の人払いは万全に済ませてあった。
    「淫魔の目的がなんであれ、現状はアイドル活動に終始しています。羅刹の狼藉を許す訳にはいきません、事件を未然に防ぎましょう」
    「ただのごめいわくなファンさんなのでしょうか、それとも別の目的があるのか…どちらにせよ、放っておけない方なのですね!」
     改めて気合を入れたナタリア・コルサコヴァ(スネグーラチカ・d13941)とカリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)が、羅刹の到着を待ち続ける。
    「正直、ダークネス同士でケンカやるのも勝手にしろって感じだけどさ。一般人に被害が出るんじゃあ黙ってられないよね」
    「ダークネスとはいえ危害を加えるつもりのない……しかも同じメイドがいらっしゃるなら、影ながら彼女の力となりましょう」
     日月・暦(イベントホライズン・d00399)と石神・鸞(仙人掌侍女・d24539)がそう言うと、灼滅者達の耳に重い足音が入ってくる。
    「来ましたか……さて、妨害者の掃除(物理)をしましょうか」
    「やっとか、楽しい殴り合いの時間だぜ」
     天月・静音(橙翼の盾纏いし妖精の歌姫・d24563)と聖刀・凛凛虎(皆殺しの暴君・d02654)が殲術道具を構え、ライブハウスに向かってくる羅刹の前に進み出る。
    「……どけ。邪魔だ」
     赤鬼の羅刹は低い声でそう吐き捨て、灼滅者達を睨み付ける。
    「そいつは無理な相談だなぁ、ご同輩。ライブで人死に出すような赤鬼は懲らしめてやるよう」
    「ひお、ラブリンちゃんとこの淫魔さんは応援したいんだぁ、リンちゃんのライブが成功するように、赤尾にさんにはごたいじょー願うの!」
     宍戸・源治(羅刹鬼・d23770)は赤鬼の姿へと変じ、陽桜は桜色のオーラを纏って羅刹と対峙する。
    「そうかよ。邪魔するんならてめぇら全員殺すまでだ」
     そして戦いが始まった。


    「『未来を革命する力を!』」
     不幸な結末を拒否するという強い意思と共に、ナタリアはスレイヤーカードの解除コードを唱えた。
     そしてサウンドシャッターを展開すると、羅刹の前に立ち塞がる。
    「ここは通しません!」
    「威勢のいいこった。もうすぐお前は死ぬっていうのによ」
     羅刹は棍棒を構えながら、強い視線でナタリアを見下ろす。
    「あなたの攻撃は、私が受けきって見せます」
     ナタリアは片腕を獣化させると、羅刹の急所目がけて一気に振り下ろす。
     荒々しい爪撃は羅刹の首元を刈り、深い傷を負わせた。
    「チッ……生意気だぜ」
     羅刹は灼滅者達に突撃すると、巨大な棍棒から強烈な打撃を放つ。
    「――通さないと言いました!」
     ナタリアは仲間の前に躍り出ると、その刃を一身で受けきった。
    「続くよ。手早く終わらせよう」
     暦は羅刹の死角から一気に接近すると、羅刹の腕をナイフで斬りつけた。
    「『我、迅雷の守護を防ぎ未来へと導く、歌姫(ディーヴァ)なり!』
     スレイヤーカードを解放した静音は槍を構え、その先端に妖気を込めていく。
    「まずは一撃!」
     そして放たれた氷の刃が羅刹の胸元に突き刺さり、身体の内部を凍りつかせた。
    「……この程度、蚊にさされたようなもんだぜ」
    「そうですか、それは残念ですね。それでは……」
     羅刹な強気な発言を軽く流し、静音は足元を中心とした大気を纏う。
     更に両脚に炎を纏わせると、静音は舞うように跳び上がり、羅刹に狙いを定める。
    「これならどうです!」
     そして放たれた蹴撃が羅刹の頭部に突き刺さり、同時に放たれた業火が羅刹の全身を焦げ付かせる。
    「随分と熱そうじゃねぇか、今度は涼しくしてやろうか?」
     畳み掛けるように源治が放った光の砲弾が、羅刹の『業』ごと身体を凍りつかせる。
    「さて、次は私が参りましょう」
     メイド姿の鸞は殺人注射器を構えると、羅刹と相対する。
    「正直な所を申させてもらいますと……正直羅刹は脳筋と思っておりました。もしかすると貴方様は、元々ファンなのでございましょうか?」
    「見てもいないのにファンな訳あるかよ。というか誰が脳筋だ、本当の事をあっさり言うんじゃねえよ」
    「これは申し訳ございません」
     鸞はそう返すと羅刹の身体に針を突き刺し、そこから羅刹の生命力を奪い取った。
    「敵の動きはまだ封じ切れてはいない……であれば、他の方々の援護を致しましょう」
     鸞は続けて闘気を纏わせた手刀を構えると、羅刹の動きとその弱点を見定めていく。
    「……ここでございます」
     そして放たれた手刀が羅刹の脚を深く抉り、その動きを大きく封じた。
    「今でございます、どなた様か追撃を」
    「それでは僕が行きます!」
     鸞の呼びかけに応えたカリルが影の刃を放ち、羅刹の全身を切り裂いた。
    「隙が出来たー! ひお、回復するよ!」
     陽桜が手を広げると、灼滅者達の間を通り抜けるような優しい風が引き起こされ、灼滅者達の傷が瞬く間に癒えていった。
    「餓鬼共め……あまり調子に乗るなよ」
     灼滅者達を睨み付ける羅刹に向けて、凛凛虎がニヤリと笑みを浮かべる。
    「だったらもっと本気出せよ。図体デカいだけじゃあ、俺の身体を破壊しきれないぜ?」
     凛凛虎はそう言うと、荒々しい闘気から練り上げた雷を拳に纏わせる。
    「デカいだけの無能なら、俺には様はねぇ!!」
     そして放たれた一撃が羅刹の顎先を強く打ち、流し込まれた雷が全身を痺れあがらせる。
    「グ……舐めるな」
     凛凛虎に接近した羅刹は棍棒を振り降ろし、凛凛虎の身体に強烈な打撃を叩きこんだ。
    「ガッ! ……ハハハ、肉が裂ける感触、骨が砕ける響き、揺れる内臓、魂が蝋燭の火の様に揺れる……これが堪らない!!」
     コンクリートに叩きつけられた凛凛虎は楽しげな笑みを受かべると、深紅の大剣『Tyrant』を構える。
    「俺は、不死身の暴君だぁぁああああっ!!」
     そして凛凛虎が放った超重量の一撃が、羅刹の身体を斬り衝撃で骨を粉砕した。
    「グッ、馬鹿力め……ガキの癖に大したもんだ」
     羅刹は傷を抑えながら、灼滅者達を見回す。
    「だが、最後に勝つのはこの俺だ!!」


    「死に晒せ!」
     羅刹の攻撃は徐々に荒々しくなり、灼滅者達の体力を確実に削ってきた。
     しかし一方で羅刹の身には徐々にバッドステータスも蓄積してきており、その動きは鈍ってもいた。
    「この程度の攻撃、避けるのは簡単なのです! ヴァレン、行くですよ!」
     羅刹が放った衝撃波を軽く避けたカリルは霊犬の『ヴァレン』と共に、羅刹に向かって突撃する。
    「僕に続くのですよ!」
     カリルは霊力を込めた縛霊手を羅刹の胸に叩き付け、そこから放った網で羅刹の全身を縛り付ける。
     そこにヴァレンが一気に飛び出し、斬魔刀で羅刹の身体に深い傷を負わせた。
    「チッ……俺の邪魔をするな」
     手負いの羅刹はカリルに突撃し、一気に棍棒を突き出した。
     しかしカリルの前に跳び出したヴァレンが攻撃を受け止め、羅刹の動きが一瞬止まる。
    「助かったのですよ、ヴァレン……これで!!」
     そしてカリルがギターをかき鳴らすと、至近距離から放たれた膨大な音波が羅刹の全身を打ち、思いきり吹き飛ばした。
    「好機です……白銀の癒し手よ!」
     ナタリアのビハインド『ジェド・マロース』が霊力の弾丸で肩を撃ち、更にナタリアが放った銀のオーラがヴァ漣の傷を癒した。
    「流石にしぶといな、流石デカブツ」
     続いて飛び出した凛凛虎が鋼鉄の拳を顔面に叩き付け、羅刹を地面に叩きつけた。
    「ちょこまかと鬱陶しい……!!」
     立ち上がりながら呻く羅刹の動きを、暦は静かに見定めていた。
    「正直、あんたみたいな脳筋は、俺にとっちゃあやりやすい相手なんだよね。見せてやるよ、搦め手っていうものの怖さをね」
     暦は赤きオーラを纏わせたナイフを振るい、十字を切る。
     それと同時に羅刹の胸には紅き逆十字が刻み込まれ、精神を深く蝕まれた。
    「ガッ……!! くそ、言ってくれるな、ガキが……」
     そう語りながらも膝を付く羅刹を、暦はじっと見据える。
    「あんたの罪はその計画性のなさだ。そもそもあんたはその圧倒的な暴力とやらも持ち合わせていない。先を見通せない奴に生き残る術がある程世の中甘くないよ」
     暦はそう言ってクロスグレイブを構えると、開かれた銃口に光が集まって行く。
    「そろそろ終わりだ。こんな騒ぎを起こそうとしたこと、後悔しろ」
     そして放たれた光の砲弾が、羅刹の全身を吹き飛ばしその身を凍らせた。
    「敵の動きも相当鈍ってきました……あと少しですよ、皆さん」
     静音は槍を構えて霊犬の『クラージュ』と共に突撃し、槍と斬魔刀の二連の斬撃を放った。
     そして『クリムゾングレイブ』と冠されたクロスグレイブを構えた源二が、羅刹に接近する。
    「いよぉご同輩、メイドにラブコールしに来たのか何なのか知らねぇけど、随分と大変そうだな?」
    「ご同輩……確かに俺とお前は姿形は似通ってるが、その本質は全然違ぇぞ」
    「まあそんな固ぇ事言うなよ。折角だから楽しもうぜ!」
     源治は巨大な十字架を羅刹に振り降ろし、その一撃を羅刹は棍棒で受け止める。
    「オラ!!」
     そして一旦距離を取った羅刹は源二に向けて棍棒を振り降ろし、源治は十字架を振るってその一撃を相殺する。
     激しい殴り合いの度に轟音が響き、灼滅者達は肌でその衝撃をビリビリと感じ取っていた。 
    「楽しくて仕方がねえぜ! そっちはどうだ!」
    「まあ、それなりにな!」
     源治の問いかけに羅刹が応え、源二は不意に十字架の砲門を開く。
    「こいつを喰らいな!!」
     零距離から放たれた砲弾は羅刹の胸を打ち、凍える爆発が羅刹を蝕む。 
    「この殴り合いは、俺の勝ちだぜ!」
     源治は攻撃の手を緩めず十字架を振り上げると、羅刹の脳天に超重量の打撃を叩きこんだ。
    「あと少しでございますが、着実に、確実に削って参りましょう」
     鸞がオーラを纏った片腕を突き出すと、そこから放たれた無数の棘の様なオーラが羅刹に襲い掛かり、次々と身体に突き刺さっていった。
    「痛ぇなおオイ……まさかこんな事になるとは思ってなかったぜ」
     相当のダメージを受けている羅刹だったが、それでも尚戦意を失わず灼滅者達を見回す。
    「赤鬼さん、どーしてライブの邪魔するの? 赤鬼さんの意思? それとも誰かに頼まれたの?」
     陽桜は羅刹の眼をまっすぐと見、頬を膨らませて続ける。
    「どっちにしても、ライブの邪魔はさせないの!」
    「…………邪魔? 俺は……まあいいか、いいぜ。さっさと決着をつけるぞ」
     棍棒を構え立つ羅刹の正面に進み出て、陽桜は大きく息を吸い込む。
    「ひおの歌、ちゃんと聞いてね!」
     そして陽桜が紡ぎ出す神秘的な歌声が、羅刹の脳を直接揺さぶりその精神を蝕んだ。
    「うお……こいつはクラッと来たな」
     羅刹は何とか立ち続けようとするが、そのまま膝をついてしまう。
    「全く、この俺がここまでやられるとはな。正直驚きだぜ……だが、俺はタダで殺されねぇぞ! あの世への手土産に首の1つ位持ってかねぇとな!」
     羅刹は気合で立ち上がると棍棒を振り上げ、一気に地面に叩き付ける。
     そして放たれた衝撃波が灼滅者達を襲う。
     しかし灼滅者達はその攻撃を受け止め、あるいは回避し、羅刹に一斉攻撃を叩きこんだ。
     カリルが放った強烈な音波が羅刹を打ち上げ、
     源治が放った炎の蹴りが地面に叩き落とす。
     凛凛虎が放った重すぎる斬撃が胸を斬り、
     静音が放った氷の刃が全身を凍りつかせる。
     ナタリアが振り下ろした狼の銀爪が肩を抉り、
     暦が放った紅い斬撃が魔力と生命力を奪い取る。
     鸞が放った精確な斬撃が動きを鈍らせ、
     陽桜が桜色のオーラを腕に纏わせる。
    「これで、終わり……だよ!」
     陽桜が腕を突き出すと、そこから無数の桜色の花弁のオーラがが吹き荒れ、羅刹の身体を包み込む。
     その嵐の様な一撃に羅刹の身体は吹き飛ばされ、地面に倒れた。
     羅刹の棍棒が砕け散り、羅刹は天を仰ぐ。
    「俺の負けか。全く、最近のガキ共は末恐ろしいぜ……」
     そう呟くと羅刹の身体はサラサラと崩れ落ち、その全てが灰となって消えていった。


    「終わった、か。みんなライブ行くんでしょ? だったら、俺も一緒に行こうかなー」
     暦は殲術道具を封印すると、仲間たちにそう呼びかける。
    「ええ、そうですね。無事終わったようですし、折角だから楽しんでいきましょうか?」
     ナタリアはほっと息を吐くと、ペンライトを取り出し優しく微笑んだ。
     そんな訳で一同はチケットを購入すると、リンのライブを観に会場に向かった。
     時間的にも間に合った様で、リンはスポットライトに照らされたがら、舞台上でクールな踊りと歌を披露している最中であった。
    「わぁ、キレイ、かっこいい! ひお、こーゆー雰囲気大好き!」
     陽桜はノリノリでペンライトを振りながら他の客に混じり、一緒に掛け声しながら滅茶苦茶楽しんでいた。
    「ライブハウスってのは目こうも目がチカチカするもんか。だがまぁ、歌と踊りは悪くねぇな」
    「クールなメイドさんか。確かに悪くないね」
     源治と凛凛虎が感想を呟きつつ、各々ライブを鑑賞していた。
    「ここからは恒例の『リンの手作り料理食事会』となりますので、もうしばらくお付き合いをお願いいたします」
     そしてメインのイベントが終わると、どこからかリンが作ったと思われる料理が運ばれ、観客全員に振る舞われた。
    「ふむ、流石にメイドを名乗るだけの事はありますね。流石でございますね」
     すごく自然な感じでスタッフに混じり給仕の手伝いをした鸞が、リンの手料理を口にして正直な感想を述べた。
     そして平穏にライブは終わり、灼滅者達は舞台終わりのリンの楽屋に突撃した。
    「おや、楽屋にお客様とは珍しい……ああ、武蔵坂の灼滅者の皆さんでしたか」
    「ライブお疲れ様、凄く楽しかったです。これからも応援してます」
     友好的に出迎えたリンに静音は祝福の意が込められたサンダーソニアの花束を手渡した。
    「おや、これはありがとうございます。まだまだファンは少数ですが、これからも邁進していく心づもりです」
     深々と一礼したリンに、カリルが更に続ける。
    「ライブ、本当に素敵でした! 次のライブ予定があれば、ぜひ知りたいのです!」
    「ふむ、次のライブ予定ですか、そう言っていただけると素直に嬉しいですね、確か次は……」
     そしてリンから次のライブの予定日を聞いた灼滅者達は、リンに見送られつつ帰路についた。
     中々激しい闘いを繰り広げたが、ライブを無事に成功させる事が出来、一般人達の命も守る事が出来た。
     この戦果を手に、灼滅者達は学園に帰還するのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ