反撃してくるスイカ

    作者:ライ麦

     その日、東雲・菜々乃(ごく普通の中学生・d18427)はとある浜辺を歩いていた。不意にはしゃぐ声が聞こえてきて見ると、小学生ぐらいの兄弟がスイカ割りに興じている。
    「兄ちゃんもうちょっと右、右! ああ寄り過ぎ! もっと左!」
    「左……よーしこの辺だな分かった! とりゃー!」
     大きく振りかぶった木の棒は大きく逸れて、砂浜を叩く。
    「あーあ、兄ちゃん外したー」
    「う……うっせーな外したんじゃねーし!」
     目隠しを外して、真っ赤な顔で弁解する兄。なんだか微笑ましい光景だ。見てる方もつい笑みが零れる……が、次に聞こえてきた言葉にははっとして耳をそばだてた。
    「え、えーっと、その、あれだな、噂を思い出したんだよ。スイカ割りのスイカが反撃してくる事があるらしいって噂。もしかしてこのスイカも反撃してくるんじゃないか!? って思ってわざと外したんだよ、うん」
    「えー、それほんとー? 外したからって言い訳してるだけじゃない~?」
    「ち、ちげーよほんとにそーいう噂あんだって! ほらスイカ反撃してくるかもしれないから帰るぞ!」
    「えー、スイカ割れてないのに?」
    「家で切って食えばいいだろ!」
     そんな話をしながら帰っていく兄弟。しかし菜々乃としてはその噂、気になる。こういった噂が都市伝説として出現する例はよく聞くから。
    「学園に……相談、してみましょうか」
     菜々乃はポツリ呟くと、足を学園の方に向けた。

    「結論から言えば……やはり、都市伝説ですね」
     西園寺・アベル(高校生エクスブレイン・dn0191)が教室に集まった灼滅者達にスイカのシャーベットを配りながら言う。菜々乃の話を聞いてスイカのシャーベットを作ってみたところ、シャーベットがアベルに語りかけてきたらしい。
    「とある浜辺……菜々乃さんが噂を聞いた浜辺ですが、そこでスイカ割りをすると、スイカが反撃して襲い掛かってくるそうです」
     尤も、棒が当たらなければ反撃もしてこないらしい。菜々乃が見た兄弟はそれで難を逃れていたようだ。逆にいえば、反撃させる……都市伝説を確実に出現させるためには、スイカ割りで確実にスイカをカチ割らねばならない。だからといって目隠しをしないで挑むのはダメ。ちゃんと目隠ししてやらないと出てこないらしい。
    「周りがどう上手く誘導するのかがカギになりますね」
     無事に(?)スイカが割れれば、スイカは割れた部分を口として、手足のような蔦を生やし、どこからか出した棍棒を手に襲い掛かってくる。
    「攻撃方法としては、棍棒で殴りかかってきたり、種を嵐のように撃ち出してばらまいてきたり……ですね。シャウトも使うようです。スイカの攻撃をくらうと、なんとなくプレッシャーを感じて攻撃が当てづらくなるようなので、注意してください」
     尤も、そこにさえ気をつければたいした敵ではない。終われば浜辺で遊ぶのもいいだろう。
    「何分小さなビーチなので、普段からそんなに人も来ないようです。のんびりできそうですね。ただ、それでも戦闘前の人払いは確実にお願いします。他にスイカ割りやろうって人が来ないとも限りませんしね」
     無事にスイカ割りが楽しめる浜辺に戻すために。
    「皆さん、スイカ割りを……もとい、都市伝説の討伐を、よろしくお願い致します」
     そう言うと、アベルは灼滅者達に丁寧に頭を下げた。


    参加者
    高瀬・薙(星屑は金平糖・d04403)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)
    東雲・菜々乃(ごく普通の中学生・d18427)
    綾辻・刻音(ビートリッパー・d22478)
    イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065)
    羽刈・サナ(アアルの天秤・d32059)
    赤松・あずさ(武蔵坂の暴れん坊ガール・d34365)

    ■リプレイ

    ●スイカ割り
    「うーーーーみーーーーーー!」
     イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065)は腕をめいっぱい伸ばして叫んだ。目の前に広がる青い海。砂浜。そしてスイカ。いかにもな夏の風景。水着も用意してきて、準備は万端! ……仕事の。
    「……あ、うん、お仕事だよね。だいじょぶ、だいじょうぶ、ちゃんとするよ!」
     イルミアは誰に言うとでもなく弁明する。そう、これは遊びじゃない。都市伝説、スイカ割りで反撃してくるスイカの討伐だ。
    「うにゅ、スイカ割りは生まれて初めてなの。というか、本当にスイカ割りやってる人達っているんだって驚いたなの」
     羽刈・サナ(アアルの天秤・d32059)がしげしげと用意してきたスイカを眺めて言う。スイカ割りは夏の風物詩ではあるが、実際にやってる人はあまり見ない気がする。スイカ一玉買うとけっこうなお値段するし。
    「スイカ割り……それは海における真剣勝負のスポーツなのです。今回は割ったら危険なのですが、でも普通にやれば楽しいですよね」
     まんまる眼鏡を押し上げ、東雲・菜々乃(ごく普通の中学生・d18427)は言った。一般人を巻き込まぬよう、立ち入り禁止の看板を立てながら。そう、こんな都市伝説がいなければ、スイカ割りは楽しいレジャーのはず……だけど。
    「そりゃ、スイカも殴られっぱなしじゃいられないよ、ね。自己主張、反骨精神、大事だよ、ね」
     長く伸ばした一房の前髪をいじりながら、 綾辻・刻音(ビートリッパー・d22478)は呟いた。まさかのスイカ視点からの発言は、独特の感性を持つ彼女らしい……のかもしれない。
    「いや、でもスイカ割りくらい安全に行わせなさいよ……ま、楽しそうな都市伝説みたいだけど?」
     テンガロンハットのような形のウィザードハットを押し上げ、赤松・あずさ(武蔵坂の暴れん坊ガール・d34365)はにっと口角を上げる。なんだかんだでけっこう楽しみにしてるのだ、スイカ割り。そのためにも浜辺に出る道には立入禁止の看板を設置済みだし、いざとなれば王者の風で近づいてきた一般人を追い払えるように準備してある。竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)も一般人対策に殺気を放った。
    「なんかこんな話を漫画で見た事あるような……。その辺りから広まったのかな?」
     なんて呟きながら。
    「果物屋さんにある『触ったら噛み付かれるよ!』の張り紙みたいな感じで、このスイカ動くんでしょうかねえ」
     砂浜に入る道に立入禁止の看板を設置しながら、高瀬・薙(星屑は金平糖・d04403)はスイカに目を向ける。今は普通の大玉スイカそのもの。コレが反撃してくるとはにわかに信じがたいが、そう思わせておいて豹変するのがこの都市伝説の厄介なところだ。
    「意外と危険な都市伝説ですね。一般の方が安全にスイカ割りができるように、きちんと灼滅しないと」
     仲間が設置した看板の周りにタイガーロープを張りながら、富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)は言う。その言葉には、親友にしてサーヴァントの中君や、クラスメイトの東雲さんや竹尾君の前で無様な事は出来ないから頑張ろう、という彼の決意も込められていた。
     人払いは完了。いよいよ都市伝説を出すためのスイカ割りのターンに移行する。一番手は登。目隠しをつけて、棒を持ってスイカの前に立つ!
    「うにゅ、そのまままっすぐ進んでなの」
    「あと5歩ぐらいですね」
     サナが真面目に誘導の声をかければ、薙もその指示を遮らないように、登の歩幅を見ておいて、歩数で距離を教える。都市伝説を出現させるためには目隠しをした状態で確実に当てる必要がある。スイカ割りは割る側より見てる側の方が楽しいものだが、この場合は周囲の誘導が何より重要。誘導する側にも力が入る。とはいえ、目隠しした状態ではなかなか思うように進めないもの。しっかり声をかけていても、次第に登はスイカから逸れていく。
    「ああっ、そっちじゃなくてこっち……いやあっち……いや……そっちかな……?」
    「いや、なんで自信なさげなの!?」
     イルミアの指示に思わずあずさが突っ込む。
    「えーっと、もうちょっと右、です」
     様子を見ながら、菜々乃も一生懸命声をかける。
    「そう、あと2歩右だね」
     良太もそれに合わせ、的確に指示を出す。しかし、中々上手く行かない。何故なら。
    「えっと右ってどっちだっけ?」
     登がうろうろしながらそう言い出したから。周囲の声なき視線を感じて、
    「……右と左ってどっちかすぐに分からなくなるよね!」
     登は弁解する。なんだか雲行きがあやしくなってきた。それでも冷静に、
    「箸を持つ手だよ」
     と良太が返せば、
    「オレ両手利きだからどっちでも使えるよ」
     まさかのボケ回答。違うそうじゃない。
    「……盾を持つ反対の手」
     こめかみを押さえながら良太は言い換え、
    「えーっと、登君から見て2時の方向ですね」
     と薙は角度で伝える。
    「あ、なるほど」
    「あ、足元にカニいるので気をつけ――」
     ちょきん。
    「うわぁぁああああああ正体不明の敵に攻撃されたー!」
     薙の声が届く前にカニに足を挟まれ、驚いた登が目隠しも棒も投げ出して叫ぶ。カオスイカ割り。若干阿鼻叫喚な状況になってる中、刻音は一人パラソルの下でヘッドフォンつけて音楽流しながら涼んで……休んで、いや人が来ないよう警戒していた。騒がしいのは苦手だし、ぶっちゃけコート着てるから暑いの苦手で。
     ともあれ、スイカ割り班は気を取り直して代打の薙にバトンタッチ。
    (「しかし僕スイカ割りに挑戦しても正直……まあ微力は尽くす事にします」)
     何か思いかけ、薙は一人頭を振って打ち消した。目隠しをして、改めてスイカ割りに挑む。誘導する者も「こっちこっち!」「もっと右」「もうちょっと左」「半歩左」などと真剣に声をかけた。それらの共通点がどの辺りになるかうろうろしながら……。いざ目星をつけ棒を振り下ろしてぼふんっ! 砂埃が舞う。一発目は盛大に外してしまった。霊犬のシフォンがなんかジト目で見ている。少しばかり主人に手厳しいような気が。だが2度3度と繰り返しているうちにコツを掴み、何回目かのトライでついに小気味良い音を立ててスイカにヒット。皮にめりめりとヒビが入り……同時にしゅるしゅると蔦が四方に伸びてきた。都市伝説のお出ましだ。薙はすぐに目隠しを外し、菜々乃は息を凝らしてじーっとその様子を見つめる。変化はほぼ一瞬だった。手足のように蔦が生えたかと思うと、次の瞬間には立ち上がり、本当にどこから出したのか。棍棒を手に、割れた部分を口のように動かして、けたけたと笑い出した。不揃いの断面がまるで牙のようだ。
    「うわあ、予想はしてたけどやっぱりこう凄い外見だね……」
     イルミアは思わず顔をしかめる。が、
    「うにゅ、見様によっては可愛い、かもなの?」
     油断なく身構えつつも、サナはそう言って軽く首を傾げた。イルミアはちょっと目を剥く。
    「まぁ危害加えてくる都市伝説に可愛いとか言ってられないから、きっちり灼滅するなの!」
     サナはきゅっと軽く両拳を握って気合を入れた。良太も
    「中君、出番だよ」
     と親友をカードから呼び出す。同時にサウンドシャッターを展開。スイカ割り第2ラウンドが、今、始まる――!

    ●さらに割る
     スイカはなおも笑いながら、薙に向かって勢いよく棍棒を振り下ろす。
    「仲間はやらせないよ!」
     すかさず登が間に入り、棍棒を受け止めた。そのまま雷を宿した拳でアッパーカットを繰り出す。続けてライドキャリバーのダルマ仮面も必要以上に大きな音を立ててスイカにタックルをかます。
    「あなたが居ると、安心して皆さんが遊べないです」
     良太が螺旋の如き捻りを加えた槍を突き出し、スイカを穿つ。続く中君が霊撃を浴びせる中、菜々乃も螺穿槍で穴を開けに行った。
    「さぁ、この腕でさらに割ってやるから覚悟しなさい!」
     あずさがいきいきとラリアットのように縛霊撃を打ち込む。赤いツインテールがぴょこんと跳ね、幼く見えて主張している胸もぽよんと揺れた。
    「じゃぁ僕切れ目入れますね」
     薙は涼しい顔で影の先端を鋭い刃に変え、斬り裂く。シフォンが浄霊眼で登の傷を癒し、刻音のウイングキャットが猫魔法で絡めとる。一瞬動きを止めたスイカの死角に、刻音は高速で回りこんだ。
    「スイカ、叩いた音で甘いか調べたりするんだよ、ね? 貴方の音、聞かせて……」
     無表情のままに大きく斬り裂き、音を『刻む』。血のようにスイカの果汁が飛び散った。イルミアも流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りをかまし、
    「マールート、突撃っ♪」
     と元気よくスイカを指差す。主人の命に従い、ライドキャリバー「マールート」は真っ直ぐにスイカに突っ込んだ。タイヤがジグザグと蹂躙し、さらに傷を増やす。そこにサナは漆黒の弾丸を撃ち込んだ。じわり、と毒がスイカの中に浸透していいく。サナは思わず呟いた。
    「……スイカの姿だけになんか嫌なの。食べ物粗末にしてる感が」
     食中毒的な。尤も、既に傷だらけで食べられるような状態ではないが。
     あずさのウイングキャット、バッドボーイが肉球パンチで飛び掛る。それをいなし、スイカは後衛に向かって雨あられと種を飛ばしてきた。
    「マールート、皆を守って!」
     すかさずイルミアがマールートに庇わせ、中君も前に飛び出して種を受け止め、他のディフェンダーの面々も盾となって仲間達を守る。
    「中君、ナイスカバー!」
     ぐっと親指を立て、良太が親友の働きを讃えた。
    「スイカなんかにやられないってば!」
     あずさも勢いよくジャンプして両足を揃え、足裏で蹴りを入れて機動力を奪う。バッドボーイがリングを光らせ、
    「回復は任せて!」
     イルミアも剣に刻まれた「祝福の言葉」を風に変換し開放。仲間達の傷を癒し、プレッシャーを弾き飛ばす。マールートがフルスロットルで自らを回復させている間に登が影でスイカを飲み込み、ダルマ仮面が機銃掃射で蜂の巣に。さらに良太が炎の蹴りを叩き込む。中君の霊障波を間に挟み、菜々乃もローラーダッシュでスイカに迫った。
    「ちょっと温まったスイカとかおいしくなさそうですが、食べるわけではないのでその辺は気にしないようにしましょう」
     言いつつ、やっぱり炎を纏った蹴りでスイカを燃やす。
    「でも冷やしときますか?」
     今度は薙が冷気のつららを放って冷やしスイカに。それにシフォンは齧り付きに……否、斬魔刀。
    「あっためて、冷やして……どんな味、するの、かな?」
     刻音は首を傾げつつ、死角からの一撃で蔦を絶つ。ウイングキャットが肉球パンチで動きを阻害し、サナはワニの形をした影を飛ばした。
    「ワニがスイカの都市伝説を食べちゃえなの!」
     ワニの影が大きく口を開くように、ばくんとスイカを飲み込む。発現するスイカのトラウマ……
    「……うにゅ、そういえばこの都市伝説、どんなトラウマを見るだろうなの……あ、普通に割られるトラウマかもなの?」
     サナは頬に指を当てて小首を傾げる。その推測が当たっているのかは定かではないが、スイカは苦悶するように砂浜をごろごろ転げまわっていた。たまらずスイカが絶叫する。いくつかの傷が癒え、気を取り直すようにスイカは再び立ち上がった。
    「それならもっかい割ってやる!」
     登が超硬度の拳で撃ち抜く。さらに
    「ダルマ仮面、弾き飛ばせ!」
     と指示を出せば、ダルマ仮面は唸りを上げて突撃した。
    「植物に感情があるなんて、人間の押し付けですよ。あなたは不自然な存在です」
     良太が雨あられと拳を浴びせ、中君がコンビネーションで霊撃を放つ。さっき回復したとはいえ、今までに蓄積したダメージもあり、スイカはふらついた。そこを見逃さず、灼滅者達は次々に畳み掛ける。薙が緋色のオーラを宿した武器でさっくりスイカ割りし、シフォンが六文銭射撃。そこにあずさが炎を纏ったソバットを喰らわせる。やけっぱちのスイカは棍棒を菜々乃に振り下ろすが、そこはイルミアが指先に集めた霊力を撃ち出し、浄化した。プレッシャーから開放された菜々乃は
    「それじゃ、いきますね」
     とぼんやりした雰囲気にそぐわない強烈な連打を浴びせる。もうスイカは息絶え絶え。さらに、
    「もうこれ以上暴れさせないの!」
     とサナが影で縛り上げる。そこに刻音の一撃が閃き……完全に消滅した。

    ●あのスイカ割りをもう一度
    「貴方の音、聞こえなくなっちゃった、ね」
     刻音がポツリ呟く。一方、イルミアはワクワクを押さえきれない様子で
    「で、お仕事終わった後は遊んで帰って良いんだよね??」
     ときらきらした瞳で仲間達に問う。
    「そうね、ちょっと荒れちゃったし片付け……の、前に、私もスイカ割りしたいから、もう1回やりましょ? せっかくだし夏の海は楽しまないとね!」
     あずさもウキウキと返す。
    「それじゃやりましょうか、スイカもう一個用意してきたので……」
     薙が安全な物陰に置いておいたクーラーボックスを持ってくる。中はもちろん良く熟れたスイカ一玉。
    「よーし、今度こそ当ててやる!」
     登が腕まくりの動作をする。一方で、菜々乃は
    「スイカ割り……もう一度楽しむのもいいですが、また襲ってこないか心配になってしまいますね。一体とは限らない……とかありませんように」
     とじーっとクーラーボックスの中のスイカを眺めた。さすがにもうないと信じたいが。とはいえ折角海に来たんだし、遊びたいのは彼女も一緒。海の家……は元々小さなビーチゆえなかったが。ゴスロリ水着に身を包んだイルミアと一緒に暫し海で遊ぶことにする。泳ぐのはちょっと苦手だけど頑張ろう。ちなみに刻音も水着にはなっていたが、やっぱり騒がしいのは苦手と、パラソルの下に置いたビーチチェアで、ウイングキャットをお腹に乗せて寝そべっている。
    「そこそこ、いや、反対! ……なんてね、嘘だよ」
    「くそー、騙された!」
     再びのスイカ割りでは、良太の嘘の指示で盛大に空ぶった登が悔しそうに目隠しを投げ捨てている。けれど、とても楽しそうだ。
    「次は私! 私よ!」
     あずさが待ちきれない様子で棒を手に取る。きゃあきゃあ言いながらスイカ割りを楽しんで、割れたら皆で食べる。もちろん今度は反撃してきたりなんてしない。
    「ふふーん、これは役得だね♪」
     イルミアが笑顔でスイカを頬張る。
    「うにゅ、でも……やっぱりスイカ割りは砂まみれになって食べられる部分減っちゃうなの、包丁で切るのと違って均等に分けることも出来ないしなの」
     サナはややしょんぼりしていたが、それでもスイカ割りには包丁で切るのにはない醍醐味がある。
     いかにも夏という雰囲気ですよねえ、と薙は空を仰ぎながらゆっくりとスイカを口に運ぶ。一仕事終えた後のスイカは爽やかな、甘い味がした。

    作者:ライ麦 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年7月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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