魔人生徒会~夏だ! 水着だ! プールだ!

    作者:望月あさと


     魔人生徒会のメンバーが集まって何かを話し合っている。
     その中で、夜叉の仮面で顔を隠したメイド服の人物が手を挙げた。
    「暑い日が続くと、水が恋しくなります。この企画は、プール遊びでいかがでしょうか?」
     それはいい。と、周りがささやいた。
     桃色のストレートへア以外、特徴をうかがい知るものがないメイド服の人物は、さらに開催決定打となる言葉を放つ。
    「ですが、ただプールで遊ぶというだけでは面白味がありません。冷たい物を食べられる露店を設置したら、よろしいのではないかと考えております」


    「夏のプール遊び……」
     鞠花は、掲示板に貼られた魔人生徒会からのポスターを見てつぶやいた。
     内容は、暑いからプールで遊ぼう! しかも、お祭りみたいに露店も出しちゃうよ! と、いうものだった。
     鞠花は、プールという涼しそうな言葉に惹かれた。

     このイベントでは、プールで水泳や水遊びなどができる他、かき氷とトロピカルなジュースの露店が並べられる。
     ただし、プールの施設を汚すのは厳禁。
     ゴミは、設置されているゴミ箱にきちんと捨てることが義務付けられている。

     毎日の暑さで体がだるくなってきた頃だ。
     行こう、女子の水着だ! と、友達を誘う生徒の言葉を聞き逃した鞠花は、イベント開催日時を確認した。


    ■リプレイ


     絶好の、プール遊び日和。
     千歳(d32840)は、自身と同じ大きさほどあるイルカの浮き具を持ってプールサイドに立った。
     水着はスクール水着しかなかったが、学園内なので気にしない。
    「よーし、泳ごう!」
     イルカを抱えた千歳は、思い切り水の中へ飛び込んだ。
     一度、深く潜ってから水面に浮きあがると、愛梨(d34160)が、水鉄砲戦の参加者を集っている。
    「プールの決闘! 水鉄砲を持ってきたから、水かけ勝負を皆でやらない? あっ、鞠花ちゃんも、こっちに来て一緒に遊ぼうよ!」
    「楽しそうです。水鉄砲、貸してくれるんですか?」
    「ボクもやるー!」
     千歳は、愛梨が鞠花(dn0154)に水鉄砲を渡す間に飛び込んできた。
     水鉄砲を配り終えた愛梨は、にっこりと笑って、自身の水鉄砲を構える。
    「勝利条件は――あ、どうするか考えてなかった。集まった方々と話し合いで決めましょうか」

     アリス(d33962)は雪花(d00014)に泳ぎを教えてもらっていた。
     今まで浮き輪で遊んでいたせいか、体育の授業でうまく泳げなかったのだ。
     手が離れる事に不安を抱いていたアリスの手を、雪花はしっかりと握り、水に顔をつけてバタ足の練習をさせている。
     アリスは、雪花の言うことをよく聞き、フォームを直しながら足を動かした。
    「えっと、その……バタ足、出来てました、です……?」
    「うん、バタ足はちゃんと出来るようになったね。がんばったね」
    「ありがとうございます」
     雪花に撫でられたアリスは、顔をほころばせた。
    「深い所でもちゃんと泳げるようになったみたいだし、練習はこれくらいにして、後は遊ぼうか。楽しむことが泳げるようになる一番の近道だしね」
     雪花は、教育学部生として、アリスに水の楽しみを教えることも忘れていなかった。
     藍花(d04699)も、自称、泳ぎの達人という黒虎(d01977)からレッスンを受けていた。
    「そーそー、バタ足をしっかり! もーちょっと、フォームを真っ直ぐにした方がいいな」
     真面目に指導をしていた黒虎だったが、つい調子に乗って藍花の胸やお尻に手をのばしてきた。
     藍花は、短い悲鳴を上げる。
     そして、持っていたビート板で黒虎の顔面を殴り、すかさず体のラインをビート板で隠した。
     色々成長するお年頃だ。
     泳ぐ前にも、黒虎からガン見されたこともあり、黒を基調とした露出の少ないワンピース水着でも恥ずかしい。
    「っいでー。何怒ってんだよ。レッスンだよ、レッスン?」
     黒虎は、てへぺろと笑い、ビート版を小突く。
    「似合ってるんだから、水着隠すなって! ほら、泳ぐぞー!」
    「……次に触ったら、指の間に鉛筆を挟んでぎゅっとするの刑です」

     未晴(d23089)とビーチボールをしていた蓮杖(d32124)は、ふと、パラソルのかかったベンチに座って、こっちを眺めている雅耶(d23207)を見つけた。
     のんびりと、いちご練乳のかき氷を食べている。
     バレた? と、眉を下げて笑う雅耶に蓮杖は、
    「みはねぇ、かけちゃおうか」
    「……うん、かけちゃおっか!」
     目配せで全てをいわずとも察した未晴は楽しく頷き、二人でタイミングを合わせて雅耶に水しぶきをかけた。
     びしょ濡れになった相手を前に、未晴は蓮杖と大成功のハイタッチをし、雅耶へふりむいて、小さく首を傾げる。
    「ふふ、驚きました?」
    「ビックリしなかったけど察してた……。はぁ、満足したー? これ食べたら、行こうと思ってた所なのにー」
    「一人で悠々とかき氷とかずるい。俺のはー?」
     食べ物への執着があった蓮杖が、わずかに目を細めると、雅耶は、頭をかく。
    「二人の分は無いけど……あーんならしてあげようか?」
    「みはねぇ、あーんだって」
    「えっ。た、食べたいのは蓮くんの方で……! マサ?!」
     蓮杖にぐいぐいと背中を押された未晴は、雅耶のちょっとした反撃にたじろぐしかなかった。

     なゆた(d14249)は鞠花に先取りで習っていない泳ぎを教えていた。
     その光景を、神羅(d14965)は感慨深く眺める。
     あれから、2年。神羅もなゆたも月日の流れを感じている。
     神羅は休憩に入ったなゆたの隣に腰を下ろした。
    「戦いや勉学は大切であるが、こういう時間も大切にしたい。……それでなゆた殿との思い出が増えれば、拙者としても非常に嬉しい……あ」
     神羅が咳払いをすると、なゆたは微笑む。
    「私も。それから、……えへへ、神羅君とデートも少ししたいし、ね。来年は高校生だし、少し冒険しても……あ、なんでもないよ!」
     なゆたは、顔を真っ赤して両手を大きく振り、話をはぐらかそうと、慌てて水泳勝負を申し込んだ。
     神羅は受けて立つ。
     審判を頼むなゆたに、鞠花は笑顔でうなずいた。

     柩(d27049)は、苦手な直射日光を避けた日陰で、周りの楽しそうな声をBGMにしながら、のんびりとジュースを飲んでいた。
     ダークネスとの戦いがある以上、次の夏を迎えられる保障はどこにもないのだから、今を楽しんでおくに越したことはないだろう。
     たまには悪くないと思えば、臨海学校の存在を思い出す。
    「もうすぐだったっけ。今年は何事もなく終わると良いけれど」

     デートを楽しんでいた悠(d21071)と晴香(d00450)は、本気の水泳勝負となった遠泳を終えて、息を荒らしていた。
    「露店で休憩しましょうか。奢りますよ」
    「ハルくんが奢ってくれるの? ……折角だから、ご馳走になるわね」
     子供の癖に一丁前の男ぶっちゃって。と、晴香は凹凸のある体を見せつけるようにプールから出た。
     両脇腹を紐でとめ、背中と腹や胸の南半球辺りが大きいメッシュでシースルーな大胆な赤い水着。
     若くて血の気の多い悠にはどう映っているか、ちらりと見れば、悠は水から上がるなり、露店へ早足に向かった。
     黒と赤の長いトランクスタイプの水着が似合う細マッチョ系な悠は、どぎまぎする心を隠しながら、ジュースを頼む。
     選んだのは、一度はしてみたかったもの。
     ハート形のストローで一つのカップを飲むカップルジュースだ。
     そんな悠の横を、ひんやりとしたかき氷を満喫した聖也(d27159)と飛鳥(d30408)が、通り過ぎて、プールに向かった。
     飛鳥が、聖也の手をとって一緒に飛び込む。
     まだ、底に足の着かない聖也が飛鳥の後を追いかけるように泳ぐと、飛鳥は聖也を導きながら、二頭のイルカが戯れるように水中を巡る。
     ふと、聖也の目に、飛鳥のおへそが写った。
     白い基調に青のポイントがはいったモノキニ姿がセクシーだと思ったこともあり、つい、じっと見てしまえば、飛鳥が目で、どこを見ているのかと尋ねてくる。
     しばらく泳いだ後、2人で水面に上げれば、聖也は笑顔で、
    「飛鳥さんの泳ぎ、綺麗でした……。とっても楽しいのです!」
     飛鳥は聖也の笑顔を見ながら、彼がLIKEとLOVEを区別するのはいつなのだろうかと、密かに思う。
    「ありがとう。私もとっても楽しいよ」
     そんな2人の様子を、蛍姫(d27171)と流龍(d30266)が、遠くから温かい目で見守っていた。
    「聖也お兄ちゃんが、大好きって言ってる飛鳥さんって、綺麗な人だねー! スタイルもいいし! お兄ちゃん、緊張してるね!」
    「あはは、照れてて可愛いな! 聖也のやつ、あんな綺麗な人と付き合ってたんだな」
     その2人に誘われて来たクラリス(d29571)は遠慮がちに、
    「聖也、緊張してるけど凄く楽しそう……。でも、邪魔しちゃ悪いから……私達は私達でもう行かない?」
    「そうだね。邪魔しちゃ悪いし、泳ぎに行くか! クラリスも、ビキニに慣れただろうしね」
    「ビキニ……あっ!」
     流龍の言葉に、クラリスは、ほぼ強制的に選ばれたビキニをとっさに隠した。
    「まだ、恥ずかしい? 皆同じ格好なんだから、ほら」
    「恥ずかしがらなくていいよ! 早く、泳ごう!」
    「うぅ……いいか……」
     蛍姫に手を取られたクラリスは、とうとう諦めてプールに浸かる。
     ピンクの水玉が入ったビキニのクラリス。
     黒の水玉が入ったビキニの蛍姫。
     緑と黄の横縞ビキニの流龍。
     それぞれが思うまま、プールで涼をとった。

     何度か摩利矢と出かけたことのある紅緋(d01389)は、初めて一緒する鞠花に、生贄候補ということで囚われていた自身の境遇を語っていた。
     篭っていた館周辺では多少の自由があったため、割と緩めだったらしい。
     しかし、海水浴ができる環境ではなかった。
    「何が言いたいかというと、他の方に比べると泳ぐのが下手なんですよ」
    「そうなのですか?」
    「だから、ここで一緒に水遊びして過ごしましょう。水の湿った音は好きなんですよ」

     人生二度目のプールに来ていた千鳥(d29636)は、しずしずと歩きながら、恋人である春虎さんに、うちの和風ビキニを見せたら、どんな感想を聞かせてくれるんやろか。友達のシルフィちゃんは、ジュースとかき氷のどっちを選ぶんやろか。と考えていた。
     泳ぎはうまくないけれど、水遊びも3人で楽しく過ごせたらと嬉しい。
     2人の姿を見つけた千鳥は、思わず笑みをこぼして駆け寄った。

     ジヴェア(d19052)は、かき氷の店で気になったエメラルドパインを初めて食した後、浮き輪でぷかぷかと浮かんでいた。
     皆の楽しむ光景を眺めていたが、時々、周りの影響で動く水流に乗って、楽しそうにくるくる回りながら、「きゃー」と声を上げる。
    「楽しいー! 鞠花ちゃん! よかったら一緒に遊ばないかな?」
     近くで泳いでいた鞠花が、笑顔で近づいてくる。
     ビキニ姿のジヴェアは、浮き輪を使って泳ぎながら、何して遊ぼうかと心を弾ませた。

     水から顔を出した瑠璃花(d32366)は、プールサイドで足をじゃぶじゃぶさせているめると(d27060)へ駆け寄った。
     めるとは、泳いだ経験の少なさもあって水が苦手だった。
     瑠璃花は、泳ぎを教える約束をすると、めるとと手を繋ぎながら、かき氷のお店へ向かう。
     たくさんある種類で迷う中、めるとはみぞれ、瑠璃花はブルーハワイを選び、二人仲良く座ってかき氷を食べ始めた。
    「しゃりしゃり甘々♪ 美味しーですー♪ べー。めるとちゃん、るりのした真っ青になってるです?」
    「瑠璃花ちゃん、舌が真っ青ですよっ!! めるとの食べてちょっと薄くします? はい! 食べていいですよ!」
    「ありがとうー。るりのもあげるよー♪ はい、どーぞ」
     2人は、笑顔でお互いのかき氷を交換する。
     カーリー(d34266)は、山盛りになったかき氷を食べて、思い切り眉根を寄せていた。
    「あー! このキーン! とするのが良いよね♪ そう思わない? 鞠花さん」
    「頭が痛くなるので、キーンは、ちょっと苦手なんです」
    「そうなんだ」
     カーリーは、ゆっくりかき氷を食べる鞠花を気にすることなく、一気に食べた。
    「プールが終わったら、帰る前にどこか食べて行く人、募集しようかな」 満腹にはほど遠いカーリーは、浮き輪を腕にかけて体を伸ばした。
     奏とは知らず、お腹を空かしやすい夜野(d35200)は、浮き輪に乗ってぷかぷかと浮きながら、グゥ……と、腹の音を出した。
     辺りを見回しても肉はないため、夜野は、水に落ちないように気をつけながら、しぶしぶプールからあがった。
     露店でパイナップルジュース頼み、プール端のすみっこに腰を掛ける。
     水に足だけを入れてジュースを飲めば、うまうま。と、顔がほころばせるが、やっぱり足りない。
     夜野は、肉を求めて辺りをうろつき始めた。

    「ちゃんと、準備体操してー!」
     ショートパンツのタンキニ姿の玲音(d32293)は、プールに入ろうとした虚空(d34045)と、たま(d32660)を制止させた。
    「そういうところ、レオナは、たまに年上っての実感する」
    「じゅんびたいそうは大事じゃな!! いっちにーさんしっっと!」
     準備体操を終えた3人は、水中バレーを身長の低いたまでも大丈夫な深さですることに決めた。
     自分の名前が刺繍されたスクール水着のたまは、得意げに深い所でも泳げると胸を張ったが、少し心配な虚空と玲音は、安全な方を選んだのだ。
     しかし、人数が足りない。
     紺をベースに白い露芝模様のトランクス水着の虚空は、鞠花に声をかけて人数を合わせた。
    「ゲームのペアはじゃんけんで適当に。勝負で負けたらジュース奢りなー!」
    「勝負、いいよ! わたしも負けないんだからねー!」
     虚空の提案に玲音がはりきると、鞠花と戯れていたたまが、目を大きくして二人へ振り返る。
    「負けたほうが、じゅーすのおごりとなっ!? これは負けられんのじゃー!!」
    「え……、私、お金……」
     手持ちのない鞠花の訴えは、勝負に燃えている3人の耳に届かない。
     そんな騒ぎを耳にしつつ、流希(d10975)は、かき氷をつつきながら、暑い日差しに夏を実感していた。
     冷たい物が美味しいと感じれば、改めていい季節が来たと思う。
     「いやはや、夏ですねぇ……」
     流希は、もう一度、かき氷を口に運んで口に笑みを浮かべる。

     まだ、時間は長い。
     灼滅者たちの夏の一時は、もう少し続いていた――。

    作者:望月あさと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月2日
    難度:簡単
    参加:31人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 6
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