学園祭2015~後夜祭は真夜中の教室で

    作者:御剣鋼

     7月19日と20日の2日間にわたって開催された、武蔵坂学園の学園祭。
     多数のクラブ企画や水着コンテストなどで賑わいを見せた学園祭も、とうとう終わりの時を迎えようとしている。
     楽しい時間はあっという間に過ぎていったけれど、学園祭の夜はこれからだ!
     ――その名は後夜祭。さあ、最後は楽しい打ち上げで盛り上がろう!
     
    ●後夜祭は真夜中の教室で
     何処か空いている教室に集まって、打ち上げパーティーをしよう!
     そう言ったのは、果たして誰だろうか。
    「いやっほぅ、夜だ徹夜だオールナイツだ騒ぐぜ、イエアアアアア!!」
    「フフフ昼の祭りは前夜祭ッ!! ……いえすみません、準備中に夏バテでぶっ倒れて2日間遊べなかったボクを、皆さん励ましてやってください……」
    「つまり、お客さんに出せなかったアレやコレな料理も、身内だったら大丈夫という免罪符なようなものか」
    「身内と書いて実験台ですね、違います分かりませんっ!」
    「そんなことより、サーヴァントとかモフっていいですかいいですよね! 癒し成分がまだまだ足りないんですッ!」
     とある教室の1つに何となく集まった学生達は、学園祭の最後の夜を楽しもうとしている者が多かったけれど、残念な方向に野望を秘めている者も、少なくない様子。
     いつもの教室も、学園祭だからと軽く飾り付け等がされており、一味違う雰囲気だ……。
    「ここで、どのような打ち上げパーティーをするのかは、皆様次第でございます」
     場合によっては、ワイワイとまったりと混沌が混在する、混ぜるな危険になる、かも?!
     そう、粛々と注意書きを読み上げる、里中・清政(高校生エクスブレイン・dn0122)。
     その様子を冷汗を隠せずに見守っていたワタル・ブレイド(中学生魔法使い・dn0008)が、念には念をと言わんばかりに、面倒くさそうに口を開いた。
    「いちおー、人畜無害な中学生と一般人もいるからな。羽目だけは外すなよ?」
     腹黒なワタルと変人執事の清政が人畜無害というのは、置いといて。
     クラブの仲間やクラスメイト、気心知れた友人と集まって騒ぐのも良しッ!
     一人で物思いに更けたり、二人だけの世界で想い出を語り合うのも大歓迎ッ!!
     ……まあ、少しの悪ノリは許されてしまう場所であることは、肝に銘じておくべきか。
    「そうだなあ、客に出せなくても、自分や身内で食べるなら許容範囲の料理を持ち寄ったり、興に乗って何かをカミングアウトしたり、皆でワイワイ楽しく騒げるモノなら、後夜祭としては大いにアリだな」
    「念のため、まともな飲み物と氷を格納したクーラーボックスも御用意しております。どうぞ心ゆくままに……」
     初対面でも大丈夫、サーヴァントの同伴も歓迎します。
     さあ、楽しい(?)打ち上げの始まり始まり……!


    ■リプレイ


    「凄く盛り上がってるっすね!」
     礼儀正しく教室の扉を開けたハリマは、思い思いに賑わう学生達に瞳を瞬いていて。
     霊犬の円とのんびり周りの熱気を楽しむように、屋台で買ったたこ焼きと飲み物を広げた時だった。
     ふと、給仕に専念していた清政を見つけたハリマは、手を振って彼を呼び止める。
    「センパイは去年もその前もここにいたんすよね」
    「わたくしは昨年からになりますが、その時も楽しゅうございました」
    「できたら、その熱気とかも色々語って欲しいっす!」
     武蔵坂の学園祭は初めてのハリマが、楽しそうに瞳を輝かせると、清政も円を優しく撫でながら話し始める。
     今年の暑さにも負けない、熱い夏の日のことを――。

    「やあやあ、何でもない日のお茶会の出張だよー」
    「僕らと何でもない日をお祝いしないかい?」
     クラブ企画『Cafe in Wonderland』の世界感で、空き教室の学生達を出迎えるのは、【windy song】の住人達。
     帽子屋の達人が飄々と声を張り上げると、チェシャ猫の來琉が不敵な笑みを浮かべ、のらりくらりと気まぐれな動きで声を掛けていく。
    「おやおや、これはこれはかわいらしいアリスたち」
    「お茶会だよ! お茶会! ねぇ、素敵なお茶会を始めようよ!」
     ハンプティダンプティの千草が普段とは違った尊大な口調で学生達を呼び止めると、始めは恥ずかしそうにしていた結も、元気いっぱい掛け回っていた。
    「もしよければ、どうだい一緒に?」
     達人に声を掛けられたワタルが足を止め、別の学生と話し込んでいた清政は無理に引き止めず、結が『EAT ME』と書かれたクッキーを握らせる。
    「そのクッキーは美味しいよ? ……ってヤマネはまた寝てるのかい?」
    「そうだよ? せっかくのお茶会! 寝ても覚めてもお茶会!」
     達人との掛け合いを楽しむように結がおどけて見せ、ヤマネの着ぐるみを着たナノナノのましゅまろも、結が両手に抱えた大きなポットから、恥ずかしそうに顔を覗かせていて。
    「帽子屋手作りのお菓子で不思議なお茶会、きっと楽しめるはずだよ」
     そう、怪しく微笑んだ來琉は、ワタルの方に静かに片手を差し出す。
     空いてる手でパチンと指を鳴らせば、差し出した手には、小さな花束が――!
    「おっ、粋な計らい感謝するぜ」
    「いやはや、チェシャの手品は相変わらずだね!」
     達人の一言に來琉は肩をすくめるけど、それも一瞬、ニンマリ笑ってワタルの手を取る。
    「猫は気まぐれだからね、驚かせるのはいつもの事さ。けれど、あくまで僕は案内役」
     あたかも、童話の世界に入り込んだ來琉に続けて、千草も誘うように声を掛けた。
    「帽子屋のお茶は格別なんだ。飲みすぎて割けた腹が戻らなくなるくらいね。卵の殻のように」
    「ほらほらハンプティ、あまり難しいことを言うと混乱しちゃうよ!」
     回りくどい言い回しで盛り上げようとする千草に、達人はケラケラ笑って見せて。
    「さてさて、それじゃあ何でもない日の後夜祭、盛り上げていこうか!」
    「おぅ、案内頼むぜ」
     達人が指を鳴らすと、來琉がワタルの手を取り、結も反対の手を握って、ご案内ー♪
     好奇心に惹かれて席に着いたワタルに、千草は弾むような言い回しを返す。
    「さあさ言葉を、感想を紡いでおくれ! 思わず塀の上から転げ落ちるようなとびきりのやつをね」
     今宵はみんなの「非」誕生日。
     一緒に摩訶不思議な国の御茶会で、お祝いしよう――!


     ワタルに軽く挨拶を交わしたギィは、最後の祭りを楽しむように、シヴィルを教室の片隅にエスコートする。
    「シヴィルさんは何がいいっすか? 冷たいドリンクとかで、落ち着きやしょうか」
    「ありがとう、ボクはラムネが飲みたいな。日本の祭りでは定番と聞くよ」
     腰を下ろして窓の外を眺めるシヴィルに、ギィは「ついでに何か軽食でも探してくるっす」と告げ、席を離れた。
    「一緒にケーキとかないっすかねぇ?」
     クラブ企画では接客に専念していたギィにとって、食事は事前に少し味見した程度……。
     幸い、周りには自慢のお菓子を振舞っているクラブが幾つかあり、飲食に飢えていたギィが持って来た皿には、幾つものケーキが盛られていて。
    「シヴィルさん、ケーキもいかがっすか?」
     ギィがシヴィルの口元にケーキを一口運ぶと、シヴィルは笑顔で「あーん」と口を開く。
     幸せのお裾分けを堪能したシヴィルは、ふとギィの皿に盛られたケーキに、柔和な笑みを零した。
    「食事を取り損ねるなんて、仕事熱心なのも少し抑えないと」
     お疲れさまとエスコートのお返しも兼ねて、シヴィルも自分のケーキを一口掬うと、ギィの口元へ運ぶ。
     互いに食べさせ合う2人は、恋人同士のようにも見えて。
     2人が恋人になれるかどうかは、これから次第――。

    「せっかくだし何か混ぜてみよっかな」
    「……さくら、『せっかくだし』何をするって?」
     数字が書かれた紙コップに飲み物を注いでいた【フィニクス】のさくらえの背後に、静かに立った勇弥のこめかみが、ピクリと動く。
    「ちゃんと飲むんだったらありだよね?」
     さくらえが食べ物のアレコレに厳しい幼馴染みをちらり見すると、後夜祭という場所を弁えた勇弥も、大量の説教を飲み込んだ。
    「ワタルはこう言うのやった事あるか?」
    「あー、オレは斬新とは無縁でな」
     ずらりと並んだ、ファミレスドリンクバー的ロシアンドリンクを前に、霊犬の加具土を撫でていた健の手が、興味津々でぴたりと止まっていて。
     好奇心旺盛な健と反対に、踵を返そうとしたワタルの肩をさくらえが掴み、傍らでは清政が十字を切っている、そんな光景♪
    「それじゃ、学園祭最後の運試しといこうか♪」
     最初に、さくらえがダイスを2つ転がし、示された番号の飲み物を混ぜて、口にする。
    「宴の席は無礼講って言うけど、勿体無い都市伝説が出ない様ちゃんと残さずになー?」
     これも世のため宴のため?
     用意された飲み物が、飲めるモノで安心した健も、嬉々とチャレンジする、けれど……。
    「ただ混ぜて美味いなら、バリスタもバーテンダーも要らねぇって」
     物凄く微妙そうな顔のさくらえと健に、勇弥もそれ見たことかと、眉間を抑えてしまう。
    「確かに組み合わせの相性は大事だな?」
    「違うぞ健、ダイスの神様が味方してくれなかったんだ」
     メロンコーラに、ティーソーダという素敵組み合わせを引き当てた健が渋い顔をし、どうにか全部飲み干したさくらえが、力無く呟いた時だった。
    「それ、口直ししたいだけだろ」
     無難に乳酸飲料とグレープを混ぜたもので、喉を潤していた勇弥が、深い溜息をつく。
     そして、さくらえの手元の紙コップと交換するように、エスプレッソを手渡した。
    「ありがととりさん! やっぱりもつべきものは気の利く幼なじみだよねぇ」
    「流石は勇弥兄ちゃん!」
     瞳を輝かせるさくらえを横目に、勇弥は健とワタルには『オルヅォ・ラテ』を、清政には『カフェ・マリアテレジア』を差し出す。
    「俺も甘いよな……」
    「ふふ、粋な計らいでございます」
     己のお節介さに遠い目をしていた勇弥に、清政は和やかな笑みを零していて。
     清政の銀盆にも、豆から挽いたブレンドが人数分乗せられており、更に歓声が沸いた。
    「じゃ、乾杯!」
     改めて乾杯の音頭をとる勇弥に合わせて、さくらえと健も楽しそうに紙コップを掲げたのだった。


    「ほんま、お疲れさまでした!」
     せめて、打ち上げだけでも張り切ろうと声を上げた【Chaser】の枢の横顔を、悟が温かい眼差しで見つめている、ような?
    「余った氷の屋敷が勿体無いさかい、皆でぱーっと食うてしまお!」
    「そうですね、綺麗に食べてあげたいですし」
     気を取り直した悟が、只食べるのは勿体ないと、大きな屋敷ピラミッドを作り始めると、想希も慎重に氷の屋敷を重ねていく。
    「アイス屋敷重ねるん? 大増築やね!」
     お菓子が好きな枢も一緒になって、屋根と屋敷本体をばらした時だった。
     落下しかけた氷の屋敷を想希が支え、咄嗟に体が動いた悟も、一緒に受け止めてみせて。
    「想希、大丈夫か?」
    「いやまだ活きのいいのがいて……」
     心配そうな眼差しの悟に、想希は思わず照れてしまう。
    「アイスも滴る、ええ男になってまうとこやったね」
     ほっと胸を撫で下ろした枢が土台を固め直し、想希がバランスを考えながら、屋敷ピラミッドに蝋燭を立てていく。
     想希の提案で手分けして蝋燭に火を灯すと、夜の教室にそびえる氷の城に、想希と枢が溜息に似た言葉を洩らす、けど……。
    「ん、幻想的で綺麗やね……でもって、ものすごく美味しそう!」
     のんびり瞳を細めつつ、枢はすっかり食べる気満々な様子♪
    「悟、仕上げをお願いします」
     想希と枢にお願いされた悟は、ソーダ水とシロップを混ぜたモノを、氷のピラミッドの上から豪快に垂らしていく。
     一緒に企画してくれた皆と、遊びに来てくれた皆に、感謝するようにーー。
    「お疲れ様っしたとおおきに!」
     食べる前に清政を呼んで来て、写真を撮って貰ってから、頂きますっ!
     枢に労いの言葉をそっと掛けた悟は、服の端を引っ張る想希の口に、氷のお裾分け♪
    「……ん、おいしい。色々混じってていいですね」
    「まさに皆様方のようでございます」
     悟と枢の間を行き交うように試食を楽しむ想希に清政は微笑み、渡された匙を嬉しそうに氷に伸ばしていた。


    「軽音部ライブマジ良かったぜ、俺あーいうの生でみんの初めてだったんで、ビビった」
    「楽しんで貰えたのなら嬉しいわ」
     喧噪から離れた席に腰を下ろした允と成海は、コーラで乾杯する。
     呑み込まれるような重低音が忘れられない允の瞳が、成海が肩に掛けていた、ギグバッグに留まった。
    「ちょっとベース俺にも弾かしてくんねー?」
    「いいわよ、弾いてみる?」
     ギグバッグから愛用のベースを取り出した成海は、允にどうぞと手渡す。
     それっぽくベースを構えて、ドヤ顔を決めてみせた允に、成海は毒付きながらも小さく笑みを零し、允の指先を丁寧にベースに添えてあげた。
    「フレットっていって、その銀の縦棒近く押さえて、右手で弦弾いて。ほら音出たでしょ」
    「……おーいい音。かっけーな」
     自分で弾き出した音色に允の口元が緩むけど、指先は惨めに震えていて。
    「既に指攣りそうなんスけど、ちょいお手本見してくれよ」
    「……下手な手本がお望みとあらば」
     ベースを返して貰った成海は深呼吸し、静かに重低音を響かせる。
     同時に。窓の外には大輪の花火が上がり、2人は揃って夜空を仰いだ。
    「夏休み何すっかなー」
    「……海で花火でもどうかしら」
     次々と花火が上がる中、允と成海は楽しそうに、呟きという音を織り交ぜていく――。

    「あ、そうそう。占いの結果、いただきました」
     教室の片隅では彩歌と樹が、樹の手製の飲み物を片手に、静かに語り合っていて。
    「結構、身に覚えのあることだったので……もう少し我侭に人を頼ろうかなって思います」
    「今年もお役に立てたみたいで、よかったわ」
     生真面目に背筋を伸ばした彩歌に、樹も良い方向に行くことを祈った時だった。
    「そういえば、仲睦まじくデートされてるのを見たのですが。どうでした?」
    「あ、うん……一緒に占いもできたしいくつかお店も回れたし、いちばん楽しめたかもしれない」
     彩歌の質問に答えた樹は、ミントティで軽く喉を潤すと、静かにティカップを置く。
    「彩歌ちゃんの様子も、もちろん知ってるわ」
    「……そうですね、お兄様かわいかったです」
     樹が冷静に言葉を付け加えると、彩歌も観念したように口を開く……が。
    「かっぷるじゅーす飲んだり、いろんなゲームをやったり……私が困ったら手を差し伸べてくれたり! 幸せでした」
     華やかに惚気始めた彩歌に、樹も自然な笑みが零れてしまう。
    「楽しめたことが何よりだけど、それって全部彩歌ちゃん主導でしょ?」
     ――占いの結果も、そう示していた筈だけど?
     来年はもう少しエスコートして貰いたいと思いつつ、樹はダックワーズに手を伸ばした。


    「今年のSF部のゲーム『PSW2』も無事完成し、それなりの客を向かえる事が出来た、とにかくこれを祝うのだ!」
     ――打ち上げだッ、打ち上げをせよッ!
     そう言わんばかりに【SF部】の美亜が乾杯の音頭をあげると、琥珀も眠そうに飲み物を掲げてみせて。
     メイドとして甲斐甲斐しく働いていた優奈も、美亜と琥珀にお菓子や紅茶を振舞っていたけれど、何か企んでいる様子……。
    「んん……、安定させるなら早めに小型機を落としたいのだけれども、そうすとコンボが繋げ難いのよね……」
     様々な思惑(?)が絡み合う中、学園祭に向けて開発した自作STGで遊んでいた琥珀は、打って変わって真剣な眼差しで画面を凝視する。
     ハイスコアを目指すためのパターン構築に余念がない琥珀に、嬉々とノートパソコンを持ち込んでいた美亜も、夜通し遊ぶ気満々で画面に釘付けになった時だった。
    「美亜お嬢様、お洋服に食べこぼしが!」
     隙あらば、スキンシップを画策していた優奈が食べこぼしを拭うフリをして、美亜にボディタッチ♪
     五感をフル動員して危険を感知した美亜も、殺気めいたオーラを纏った――!
    「返り討ちに合いたいようだな、この従者の屑が!」
    「ふふふ、屑は褒め言葉であります」
     無表情で両手を怪しくワキワキさせる優奈に対し、美亜も自信に満ちた眼差しを返すけれど、この手の者には焼け石に水であーる。 
    「ちなみに今日は勝負下着です。深い意味はありませんが。深い意味は――」
    「いつの間にか男なんぞ作りよって……ええい、今宵その生き血を我に捧げよ! まだ処女かどうか血の味で確かめてやる!」
     そんな優奈と美亜を生暖かく見守りつつ、琥珀は他の学生達の迷惑にならないように、ぼーっと周りを見回す。
    「奥が深いね……いろいろ」
     日付は既に変わっており、深夜も半ばを迎えている。
     それでも、優奈と美亜を始め、皆の後夜祭が明ける様子は、まだまだ感じられない。
    「これも一つの愛の形じゃないかな」
     琥珀の呟きに続くように、教育的指導を受けた優奈が床に沈んだのは、また別の話♪


    「んと、まずは乾杯なのですー♪」
     月夜が乾杯の音頭をあげると【メカぴ研】の皆が飲み物が入った、コップを掲げる。
     思い思いに屋台で買った食べ物を広げ、皆がのんびりだらだらと雑談を楽しむ中、沙雪が反省会を切り出した。
    「今年は例年と違う感じでやったから、皆も自由に動けてたみたいだけど、何やってたん?」
     沙雪自身は管理も兼ねて、時々クラブに立ち寄っていたものの、主に別のクラブの喫茶店で、ウェイターをしていたという。
    「うちも喫茶店の出し物で短時間やけど、ウェイトレスしてましたよ」
     沙雪に続けて智恵理がマイペースに口を開き、月夜とエリオに視線を移す、と……。
    「んと、今年は興味のある所に遊びに行ったり、デートしたりしたですよー♪」
    「ボクも……ごめんなさい。校舎裏とかで婚約者のお姉ちゃんと一緒に、ずっと一日おしゃべりして過ごしてました」
     ……何か手伝った方が良いか、思わなかったわけでもなかったけれど。
     そう、エリオが肩を落としたのも一瞬、元気いっぱいの笑顔で微笑んだ。
    「だって婚約したばっかりなんだもん。いちゃいちゃしててもしょうがないよね……?」
    「末永く爆発してください」
     敗北を覚えた感じの智恵理に、天真爛漫なエリオが水着コンテストの話題を持ち出した時だった。
    「しかし数が多くて、お土産コンプとまでは行かなかったなぁ」
     空いた時間は色々なクラブを見て回っていたと続けた沙雪が、来年はどういう感じにしようかと、軽く見回す。
    「初日は今一つパッとしなかったけど、夜から二日目にかけてはそれなりに人も来てくれて良かったよな」
    「うんうん、今年のゲーム特化はある意味良かった気もします」
     やや軽めだけど、見る所は見ている沙雪に智恵理が頷き、場所的には悪くなかったと思うと付け加える。
    「にゅ、企画の内容は良かったと思うのですが、ボク、あまり魅力的に宣伝できなかったかもですー……」
     そういえば、店番もあまりしていなかったようだと、月夜は思う。
     接客をすることも、学園祭の楽しみの一つだと思いながら、月夜が来年は宣伝も忘れないようにしたいと皆に告げると、智恵理とエリオも顔を見合わせた。
    「来年も参加するなら、過去に遊んだものもひっくるめてだしてええんとちゃうかぁ?」
    「ゲームやりながらも、カピバラのお世話体験とかやる?」
    「ふれあい体験をやるやらないは大きいかも、来年入れるなら全面に出して行く?」
    「カピバラさんの家族と触れ合いは、ボク賛成なのですー!」
     エリオの提案に智恵理が微笑み、大きな瞳を瞬いていた月夜も、楽しそうに手を挙げたのだった。


    「あぁ……。今年も、無事に学園際も終わりましたねぇ……」
     クラブの仲間と反省会を楽しんだ流希は、窓辺から射し込む太陽の光と明けの空に、眩しそうに瞳を細める。
     視線を教室に戻した流希は、うたた寝をし始めた仲間の顔を見回すと、言葉を紡いだ。
    「来年はシンプルなものをやりたいですよ……。もちろん、皆さんと、一緒にです……」
     面と向かって言うのは、少し恥ずかしいものがある、けれど……。
     それでも、流希は皆と出会えたことに改めて感謝を告げ、心地良い眠りに身を委ねるように、静かに瞼を落としたのだった。

    作者:御剣鋼 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月4日
    難度:簡単
    参加:25人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 6
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