●怒りし埠頭の影に叫び
『全く……歯応えの無い奴らだ』
手に付いた埃を振り払い、肩をコキコキと鳴らしながら、肩を竦める、粗暴な男。
その額には……普通の人にはない、黒い角のような物が浮き出ている。
そしてそんな彼の周りには、血だらけで死屍累々に倒れてしまっている、イカツイ男達。
そんなイカツイ男達は。
『な、何なんだよぉあいつらはよぉ……あんなの、反則じゃねぇかよぉ……勝てるわけねぇよぉ……』
『なんだよぉ……たくよぉ……あんなの、おかしいぜぇ……』
そんなあきらめの言葉を呟きながら、伸びている彼ら……そんな彼らに。
『……ったくよ。ちょっとは楽しませてくれるかと思ったが、とんだ期待外れだ。なぁ……?』
『へ、へい、そうっすね! 本当にここらを締めてるんスかね!』
……頷いたのは、普通の男。
その男は、見た限り頭に角も無く、どこにでも居る、調子良い男の様である。
そう、力を振るった男に付き従う事で、自分の命を維持しているのだ。
そして、そんな腰巾着の男に。
『なぁ、もっと強ぇ奴らの居るところにつれてけ。こんなんじゃ、腕がなまって仕方ねぇんだよ』
『へ?わ、判りましたッス!!』
頷いた男は、自分にその矛先が向かぬよう……次のゴロツキの集まる場所へと、彼を連れて行くのであった。
「よし、皆集まってくれた様だな? それじゃ早速だが、説明を始めるぜ!」
神崎・ヤマトは、集まった灼滅者にニッ、と笑顔を向けると、早速説明を始める。
「今回、皆に倒してきて貰いたいのはダークネスの一つ、羅刹だ。この羅刹は、大阪府郊外の埠頭や裏路地に現れては、強い奴と対峙し、倒して回っているらしい」
「まぁ、ゴロツキ達をぶっ倒しているのは、悪い事とは言い切れない所もあるが……でも、こいつをこのままのさばらせておくと、いつかは大きな被害が出ても可笑しくはないだろう。だから被害が少ない今のうちに、こいつを倒してきてほしいんだ」
「尚、この羅刹の周りには、彼から力を受けた強化一般人の腰巾着の男が1人いるらしい。この腰巾着の男は、殺戮ナイフを手に、ひたすら皆を攻撃してくる」
「つまり、この羅刹の男と、腰巾着の男、併せて二人を倒してきてほしいというのが、今回の依頼になる訳だ」
そして、ヤマトは詳しい情報の説明を始める。
「まず羅刹だが……羅刹が主に仕掛けてくる攻撃手段はやはり、その丸太のような太い腕から繰り出される殴打が一番強力だ。この一撃、真っ正面から直撃を喰らえば重傷も免れないだろう。更に体力もかなり高く、しぶとい相手と言える」
「また、この羅刹の配下である腰巾着の男だが、攻撃力はそこまで高くない。その代わりにとても動きが素早いので、前線に出て攻撃を受け流すようにしながら、羅刹を守る……といった具合だ」
「幸い羅刹とこの腰巾着の二人だけではあるが……結構厄介な相手二人がそろっている故に、時間はかかるだろうな」
「とは言え羅刹を放置しておく訳にはならない。皆の力を合わせて、この力を振るいまくっている羅刹と、その腰巾着を確実に倒してきてくれ。宜しく頼むな」
と、軽く頭を下げて、皆を送り出すのであった。
参加者 | |
---|---|
鏡・エール(カラミティダンス・d10774) |
クリミネル・イェーガー(肉体言語で語るオンナ・d14977) |
上土棚・美玖(高校生ファイアブラッド・d17317) |
加賀・琴(凶薙・d25034) |
斎宮・飛鳥(灰色の祓魔師・d30408) |
七那原・エクル(虹雷の継承者・d31527) |
久保・孝行(トライアライド・d32517) |
新堂・柚葉(深緑の魔法使い・d33727) |
●粗暴
大阪府郊外の埠頭。
遠くに船が見える海の畔に集まりし灼滅者達……しかし、最初に出るのは。
「全く。やれやれやな……」
深い溜息と共に、肩を竦めるクリミネル・イェーガー(肉体言語で語るオンナ・d14977)。
と、そんなクリミネルの言葉に、鏡・エール(カラミティダンス・d10774)、上土棚・美玖(高校生ファイアブラッド・d17317)も。
「まぁ……羅刹らしいと言えば羅刹らしい相手、なのかな?」
「そうね。でもなんだかストリートファイターみたいな羅刹よね」
と、同じく苦笑する。
確かにやってる事自体は、ストリートファイターに似ているかもしれない……と、それに久保・孝行(トライアライド・d32517)と美玖、新堂・柚葉(深緑の魔法使い・d33727)が。
「ゴロツキをぶっ飛ばして町をきれいにしてくれるのは、まぁありがたいんだけどな……何事も限度って言うものもあるしな」
「力量差がはっきりしているのに、いくらゴロツキとはいえ、一般人を手に掛けるなんて許せないわ。そんなに戦いたいのなら、ダークネス同士で潰し合えばいいのよ」
「そうですね。羅刹がどんな考えでゴロツキを狙っているのか……その辺はわかりかねますね。強化一般人の方は、明らかに利用してきてますけど」
そう。羅刹だけを倒すなら、まだ楽かもしれない。
でも、今回はそんな羅刹に金魚の糞……もとい、腰巾着の、強化一般人がついてきているから、それはそれでやっかいなのだ。
加賀・琴(凶薙・d25034)、新堂・柚葉(深緑の魔法使い・d33727)に、斎宮・飛鳥(灰色の祓魔師・d30408)が。
「羅刹と、その腰巾着の強化一般人ですか。宿敵ですが、羅刹をブレイズゲート以外で相手するのは久しぶりです。腰巾着の強化一般人は、倒せば助けられるんですかね? 手遅れな気がしないでもないですが」
「ええ……何にせよ、事情とかは解りませんし、私達は警察でもないので、罪とか更正とかもわかりませんが、ダークネスは灼滅していきましょう。そして羅刹は灼滅……ゴロツキを探している様ですので、ゴロツキっぽい演技……はうまく出来るか解りませんので、ゴロツキに襲われる人の演技でもしてみますかね? いずれにしても、人気の少ない所で、羅刹と強化一般人を抑えたい所です」
「……そうですね。今の私に出来る最善は……どちらも倒す事ですから」
そして、七那原・エクル(虹雷の継承者・d31527)が。
「良し、皆! さっさとダークネスの所に行って、さっさと倒すよ!」
と力強い言葉を上げると、琴、孝行、エールも。
「羅刹らしい羅刹の様ですし、速やかな灼滅を目指しましょうか」
「そうだな。悪いが倒させて貰う」
「うん、サクッと倒しちゃおう」
そして、灼滅者達は……羅刹の居る所へと向かうのであった。
●我こそ一番の男
そして、羅刹の居る埠頭へと向かう灼滅者達。
「さて……どこに居るのだろうな」
と、孝行がDSKノーズを使い、敵の居場所を捜索する。
ある程度の方角がわかり、そちらの方向へと向かう……そして埠頭の一角にさしかかると。
『てめぇ、ふざけてんじゃねぇぞ!!』
と、大きな声が響き渡る。
そんな騒動の声の方角を確認次第、その声の方へ……。
……因縁を付けているゴロツキ……に対し。
『ヘッ、粋がってるんじゃねーんすよ! てめぇらみてぇな奴らはさっさと死んじまえって言ってるんすよ!!』
……おそらくゴロツキ達を挑発しているのが、ゴロツキの手下の強化一般人だろう。
口だけは達者……そして実際に手を下すのは、後ろに居る、太い腕の羅刹。
とはいえ強化一般人の挑発に、みるみるうちに頭に血が上っているのが解る……顔も真っ赤になってきていて。
「全く……仕方ないやっちゃな」
とクリミネルの言葉に頷きつつ……灼滅者達はその場へ接近。
エクルがサウンドシャッターを使用し、その場からの人払い。
そして……。
「さぁ、頼りにしているわよ、相棒」
と美玖がライドキャリバーのボディを軽く撫で、そして……一気に灼滅者達は突撃。
ゴロツキと羅刹達の間に割り込むように、灼滅者達が割り込む。
『おぃ、あぶねぇだろうが!!』
怒りの声を上げるゴロツキ、それにエールが殺界形成を発動。
その殺気を鋭く感じ取ったゴロツキは、足をがくがくさせながら。
『ち、畜生! 憶えてやがれ!!』
と捨て台詞を上げて、その場から逃げ去っていく……そして、残るは羅刹と、強化一般人。
「羅刹と腰巾着という、わかりやすい組み合わせですし、それぞれの性格も典型的で……まぁ、ともあれ、さぁ鬼退治の時間ですよ」
「その慢心と暴虐、今日までと知りなさい」
鏡と美玖の言葉……それに強化一般人が。
『おうおうおう、なんだよてめぇらはよぉ!! 邪魔すんじゃねーぞこらぁ!!』
威勢良い言葉を叫ぶのは……やはり強化一般人。そして羅刹もすっ、と目を開き。
「お前らは、灼滅者か?」
その言葉に、灼滅者達は。
「……遊びたいんやったら、遊んだるで?」
ニヤリと笑みを浮かべるクリミネル……そして琴、飛鳥が。
「そんな小者の太鼓持ちを腰巾着にする程度ですか……貴方もそう大したものではなさそうですね。一般人を相手にしてつまらないと嘆くような情けない鬼には、半端物の灼滅者で十分ですよ」
「ええ。私は馬鹿で強い男は好きですが、強いだけの男は好きません……ね」
そんな二人の言葉に、ゴロツキはぐぬぬぬ、と怒りに震える……そして羅刹は。
「ほぅ……そうまで言うのならば、お前達は強いって事だよな?」
「少なくとも、あのゴロツキ立ち寄りは強い筈だ。いい死合いが出来るといいよな」
「そうだね! 行くよ、頑張ろうね、芝丸!」
孝行がアルティメットモードで、クリミネル含めて、自分達がワルの様に見せかけ、興味を惹く。
そして羅刹は、はっはっは、と笑い。
「面白えじゃねぇか、ぶっころしてやるよ!」
と力を解放……それに赤いマフラーをたなびかせながら、エクル、エールが。
「さぁ、開幕だ」
「メイキョウシスイ」
と宣戦布告し、スレイヤーカードを解放。
ずらり並んだ灼滅者たちに、腰巾着の男は。
『……』
羅刹に目配せするが……羅刹は獲物を見つけた様な、嬉しそうな表情で。
「オラ、行けよ!」
と、一喝。それに。
『ひ、わ、わかりましたぁ!!』
と悲鳴にも近い言葉を上げて、殺戮ナイフを構え、振りかぶって、攻撃。
後門の羅刹、前門の灼滅者に挟まれて、腰巾着はもう、死に物狂いで攻撃をするしかない。
しかしそんな強化一般人の攻撃は、紫の鋼鉄の車体が跳ね飛ばす。
『っ、ずりーぞ、バイクなんか乗るんじゃねぇ!!』
やけくそに叫ぶ腰巾着。それにったく、と舌打ちしながら。
「ずりーもなにもねーだろうが! 男だったら何もかも壊せばいいんだよ!」
と羅刹も前に出てきて、丸太の様な腕で攻撃してくる。
しかしその攻撃は、美玖がカバーリング。その攻撃を、斜め上に受け流すようにする。
「単調な脳筋の羅刹の動きなんか読み切ってみせるわ。私たちのチームワーク、見せて上げるんだから」
と美玖の言葉に、唸りを上げる紫。
紫が機銃掃射で羅刹と腰巾着の足元を掃射すると、続けて美玖がレーヴァテインで炎を一般人に付与。
あちちち、と逃げ回る彼へ、更にエールが雲櫂剣、クラッシャーのクリミネルがくらいついての畏れ斬り。
……流石に組み付かれて、至近距離から攻撃されれば、避ける術は無い。強化一般人は、かなりのダメージ。
その一方、エクルや孝行は、預言者の瞳やラビリンスアーマーで自己強化に動く。
そして、スナイパーの琴、飛鳥も、容赦なく攻撃。
「さぁ……腰巾着さん。貴女の実力は、どの程度でしょうね?」
「悪しきを滅し、善なるを救済する慈愛の光にひれ伏しなさい」
琴の縛霊撃、飛鳥の改心の光。
既に、そこでもうボロボロの強化一般人に哀れみを憶えつつも……柚葉は、エールの霊犬、芝丸と共に、ダメージを受けた紫に。
「癒しの言の葉を、あなたに……」『ワゥゥ』
と、ラビリンスアーマーと、浄霊眼で回復していく。
……そして2ターン目。
強化一般人は、震える手で。
『あ、あにきぃ……こいつら、今までのに比べて格段に強いっすよぉ……』
と、泣き言を言い始める。しかし羅刹は。
「願ったり適ったりじゃねぇか。オラア、こっちはまだまだ行くぜぇえ!」
完全に、戦闘狂の血が沸き踊っている羅刹。
無論、配下の彼は、それに従うしか出来ず、殺戮ナイフを振り回す。
「全く……弱みでも握られているのかしら? ちゃんとしたお灸を据えてあげるわね」
と、今度は彼の攻撃に対し、打ち合う様にエールが雲櫂剣で攻撃。
その武器を持つ手を狙い、痛みに武器を落としたら……美玖、紫の騎乗コンビが彼の周囲をドリフト気味に回り、左から、右からのグラインドファイアと機銃掃射。
……流石に本気のその攻撃を受けてしまえば、なす術もない腰巾着。
その場に崩れ落ちた彼……それを。
「ったく、ここで寝られても邪魔や」
とクリミネルが持ち上げ、ひょいっと邪魔にならないところへ放り投げる。
そして残るは、目の前の羅刹のみ。
「さぁ、本気で行こうぜぇ!!」
笑顔で攻撃してくる羅刹は、一撃一撃がとても重い。
しかしそれら攻撃を、エール、孝行が交互に分散していなし、柚葉に即座に回復してもらう事で、戦線は維持し続ける。
そして維持した戦線から、残る仲間達が。
「ほら、こっちががら空きだよ~」
「強き力の強き者。それはそれで素敵ですけれど、本当の強さは強き心に宿るものです。強いだけの罪、私の断罪輪で断ち切ってあげましょう」
エクルのマジックミサイルや、飛鳥の断罪転輪斬が、彼に着実なバッドステータスを蓄積していく。
そして……戦闘開始から、7ターン。
羅刹の猛攻で服はボロボロだが、優位に進める灼滅者たち。
そして8ターン目、クリミネルの。
「これでも喰らえや!』
渾身の幻狼銀爪撃が羅刹にジャストヒットし、深い傷を抉ると共に……ガクリ、片膝を落とす羅刹。
滴り落ちる血潮に、荒い息……かなり、瀕死に近い。
だが、すぐに彼は立ち上がり。
『おもしれぇ、ここまで血沸き肉踊る戦いは久しぶりだぜ!!』
笑う彼。その顔には、戦闘を心から楽しむ笑顔。
「さぁ……そろそろフィナーレだ」
とエクルが宣言し、マジックミサイルの一斉掃射で一気に畳み掛けていく。
そして、柚葉も。
「大いなる魔力よ、今ここに集え!」
と攻撃へシフトし、灼滅者達総攻撃。
羅刹も、手負いの体で反撃を続けるのだが……流石にその差を今からひっくり返す事は難しく。
「さぁ。逝っちまいな」
と飛鳥の抗雷撃が、羅刹に一直線に放たれる。
『ウ、ウガアアアアアア!!』
羅刹は雷鳴に打たれるが如く、断末魔の咆哮を上げて……そして崩れ落ちるのであった。
●悪の華、散る
「……ほんと、やれやれやな」
そして、無事羅刹を倒し、また肩を竦めて息を吐くクリミネル。
そして倒れた羅刹にエクルが。
「ほらね、言った通り……ボクの占い、当たったでしょ?」
と笑う中、羅刹は次第に姿が消失していく。
「ばいばい、羅刹。強さを追い求める姿勢だけは、悪くないけどね」
と消えゆく姿にエールが告げる。そして。
そして残るのは、完全に伸びている強化一般人。
「……これ、どうする?」
と飛鳥が指さす。
……本来であれば、余り助けたくない所ではある。所ではあるが……。
「……仕方在りませんね。最低限の介抱だけはしてあげましょうか」
と柚葉の言葉にエールも頷き、怪我を包帯でぐるぐる巻きにして、頭も、足もぐるぐる巻きにして……。
一応怪我の治療という琴で、魂鎮めの風で傷は治療しておくが、ぞんざいなのは……まぁ、仕方ないだろう。
そして一通り、対応完了したら、埠頭の壁際に強化一般人を転がしておき、対応完了。
「さて、と……ま、終わったし、さっさと帰ろうや」
とクリミネルに頷き、帰路へ。
そんな帰路の中、仲間を見回す飛鳥……それに気付いたエクルが。
「ん? 何か顔についてる?」
きょとんとする彼に、ふふっと微笑み。
「いえいえ……私なんか、まだまだですよね」
と、ぽつり呟きながら、仲間達の後をついて行くのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年7月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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