学園祭2015~もふり、もふれば、もふもふもふ♪

     学園祭終了の夜。
     佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)は、校舎の傍に用意された特設屋台通りの片隅で、打ち上げの準備を始めていた。
     他の生徒達によって屋台で残った料理が持ち寄られ、テーブルの上に並べられていく。
     料理の大半は冷めてしまっているものの、電子レンジを借りてきたため、チンをすれば問題がないだろう。
     そんな中、誠十郎は参加してくれた生徒達のために、幸運のもふ毛を用意するつもりでいたのだが、『抜け毛が促進するっ!』と生徒達に止められ、泣く泣く断念した。
     あくまで誠十郎は裏方。
     主役は学園祭を盛り上げた他の生徒達である。
     その事を忘れてしまうと、何のための打ち上げなのか分からない。
     誠十郎は頑張った生徒達を労うため、自腹でジュースを買うと、キンキンに冷やして、彼らが来るのを待つのであった。


    ■リプレイ

    ●屋台裏
    「誠十郎と一緒にご飯を食べれるって聞いて飛んできたよ! 学園祭、お疲れ様!」
     システィナ・バーンシュタイン(罪深き追風・d19975)は、佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)の招待を受け、打ち上げ会場にやってきた。
    「よぉ、久しぶりだなっ! あまりモノばかりだが、それで良かったら遠慮なく食ってくれ」
     誠十郎がシスティナ達に気づいて、元気よく手を振った。
     よく見れば誠十郎のまわりには、沢山の猫達が集まっており、『早く、御飯を頂戴~』と言わんばかりにミャアミャアと鳴いていた。
    「あ、いや、こいつらはバイト先のゴミ捨て場を根城にしている猫達でさ。いつも面倒を見てやっているんだから、礼をしろって言われて無理矢理な」
     誠十郎が恥ずかしそうにニコリと笑う。
     その間も猫達は『早く御飯を寄越せ!』とばかりに、鋭い爪で誠十郎の両足をガリガリとやっていた。
    「ああ、やっぱり人間形態でいるんだなぁ………」
     佐久間・嶺滋(罪背負う風・d03986)が、蓬栄・智優利(淫乱ピンクの申し子・d17615)と一緒に誠十郎をマジマジと見た。
    「何だか久しぶりだね、この姿……」
     智優利も物珍しそうに誠十郎を愛でる。
    「そういや、そうだな。ずっと、変な奴らに付き纏われていたからな。そのぶん、この数ヶ月の間は平穏無事に、のほほんとしていたがな」
     誠十郎が幸せそうな表情を浮かべた。
     ある意味、誠十郎にとってパラダイスタイム。
     今までで一番、人間らしい生活を送っていたようである。
    「それにしても、人間形態は相変わらず背が高くて、カッコいいね……羨ましいや……」
     システィナが誠十郎の顔を見上げた。
    「いや、そう言われると照れるな……って、イタッ! イタタタタッ! 分かったから、今すぐやるから、待っていろって!」
     誠十郎が猫達に両足をマジ噛みされ、涙を浮かべて猫缶を開ける。
     その間も猫達は『分かっているなら、早くしろ!』と言わんばかりに、後ろ足で蹴りまくり。
     誠十郎が涙目になりつつ、猫缶を地面に置く。
     それと同時に猫達が一斉に群がり、満足した様子で『うにゃん!』と鳴く。
    「学園祭、お疲れ様でした。そして佐藤さんはお誕生日おめでとうございました。……四ヶ月前のお祝いというのもあれですが……まぁ、細かいことは気にしない方向で」
     寺見・嘉月(星渡る清風・d01013)が【あかいくま】の仲間を引き連れ、苦笑いを浮かべた。
    「そ、そうだな。俺もウッカリしていたから。あは、あはははは……」
     佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)も、納得した様子で乾いた笑いを響かせる。
     一応、みんなに向けて招待状を書いたものの、それに満足して出し忘れていたとは口が裂けても言えなかった。
     それでも、すぐに気がつけば、色々な意味で間に合ったのかも知れないが、その事実に気づいたのは誕生日当日。
     その時には何もかもが手遅れになっていた。
    「そいや、和食好きっすよね? 和食と言えば刺身……ハイ!」
     煌星・紅虎(紅色もふりーとら・d23713)が、一匹丸々のでかいマグロ(尻尾に赤リボン)を渡す。
    「おお、こりゃ凄いな。いやー、助かる!」
     誠十郎が上機嫌な様子で、そのマグロを受け取った。
     これさえあれば、しばらくの間、食事に困る事はない。
     だが、そのマグロを狙って猫達がキュピィーンと両目を輝かせた。
    「こ、これは、やらねえぞ!」
     誠十郎が慌ててマグロを隠したが、猫達は既にロックオン!
     隙あらば、すぐにでも食いつこうとしているようである。
    「そうそう。折角だからケーキ持ってきたんで一緒に食べよ? 遅い誕生日祝いになっちゃうけど……誕生日おめでと! さぁ、特製の餡子ケーキをどうぞ?」
     システィナがどーんと、餡子ケーキを置く。
    「せっ、誠十郎お兄ちゃん。おっ、お誕生日、おめでとう」
     緒垣・翠(空の青夕日の赤・d15649)がりんごジュースで、誠十郎と乾杯。
    「……誠十郎ちゃんオレにも飲み物ーッ!」
     紅虎も誠十郎に飲み物を要求。
    「だったらスポーツドリンクでいいか? ……って、誰だっ! いま足を噛んだヤツは! お前らの分もあるから。猫用のケーキも買ってあるから! 無添加だから高いんだぞ……って、こらああああ!」
     猫用のケーキを箱ごと奪われ、誠十郎が猫達を追い掛け回す。
     それに気づいた猫達が次々と攻撃を仕掛け、誠十郎を返り討ち。
    「そう言えば抜け毛の方は、まだ続いてるのか? 何なら、誕生日プレゼント代わりにブラッシングでもしよう」
     九条・九十九(リブレッタブルクジョン・d30536)が苦笑いを浮かべて、誠十郎に手を貸した。
     すぐさま、誠十郎がもふりーと形態になると、そのまま地面に突っ伏した。
    「そいやさ、誠十郎は水着着ないの? いや、別にネタに走れって訳じゃないけどさ。褌とかビキニは、あれじゃん? お尻まっしぐらじゃん? 嫌じゃん? お尻にまっしぐるつもりなら止めないけど」
     井之原・雄一(怪物喰いの怪物・d23659)が、誠十郎を見つめて軽く冗談を言う。
    「わふっ(心の声:つーか、まっしぐるってなんだよ。怖ぇよっ! つーか、俺はそっち路線じゃねえから! 目指してもいねえから!)」
     誠十郎が思わずツッコミを入れる。
     その手のネタから脱却して、ほのぼのワンニャン路線に移行しようとしている誠十郎にとって、この路線は何としてでも避けたいらしく、話題を変えようと必死なようだった。
    「あ、あの……、誠十郎先輩。モフモフしても良いのですかっ?」
     月夜がわくわくした様子で、誠十郎に視線を送る。
     その問いに誠十郎が力強くコクンと頷いた。
    「も、もふも……おおっと、いけない、いけない。これ以上、負担をかけたら抜け毛が促進されてしまう……!」
     嶺滋も一緒になってもふもふしていたが、途中でハッとした表情を浮かべて、自分自身に言い聞かせる。
     それが分かっていても、つい無意識のうちに手が伸びてしまう。
     おそらく、誠十郎の身体から漂う、もふフェロモンが原因。
     それを嗅いでしまうと、もふもふせずにはいられなくなってしまうのである、多分。
    「佐藤さん……。誕生日プレゼントと言うわけではありませんが……。この、育毛剤(かなり強力)をどうぞ……。この日の時のために、秘薬製造のESPを駆使して、作ってきましたので……。一応、抜け毛も、病気の一種ですし、きっと生えるはず……です……?」
     紅羽・流希(挑戦者・d10975)が、誠十郎に育毛剤を渡す。
    「わふっ(訳:おお、ありがとなっ! つーか、最期にハテナマークが浮かんでいたが……大丈夫か? なんか妙な副作用がありそうで怖いんだが……)」
     誠十郎が心配した様子で育毛剤を睨む。
     一見すると、大丈夫……のように思えるのだが、だんだん心配になって来たようである。
     そんな中、狂舞・刑(暗き十二を背負うモノ・d18053)が部室に残っていた菓子をテーブルの上に置き、その場から姿を消した。
     それと入れ替わるようにして、腹に漢数字の『十二』と書かれたような模様のある兎がぴょんぴょんと飛び跳ね、誠十郎達の前に現われた。

    ●もふもふの中で
    「ま、さっきのは冗談として、そのうち水着でも買いに行くか。なんだかんだ学園の生活も長くなったし、そろそろ青春してもいいんじゃないかって思ったからさ。よかったら、今度一緒に買いに行く? 金の事なら心配しなくていいぞ、俺が出すし」
     雄一がその代わりと言わんばかりに誠十郎をもふる。
    「わふっ!?(訳:マ、マジかっ! だったら、行くぜ! 遠慮なくもふってくれ!)」
     途端に誠十郎が瞳をランランと輝かせ、雄一に思いっきりもふらせた。
     最近、バイトを始めたので、ある程度の金はあるものの、その大半が家賃と借金の返済に充てられるため、色々な意味で苦しいようである。
    「それにしても……いいなぁ、この毛並み……大きなブラシでブラッシングしたいですねぇ……」
     嘉月がワクワクした様子でブラシを構えた。
    「わふっ(訳:いや、別にかまわんが……。何だか目が怖いぞ、オイ!)」
     誠十郎が気まずい様子で汗を流す。
     別に嫌な訳ではないのだが、少し不安になってしまったようである。
    「これでも後輩なんだよなぁ……。並んだら先輩後輩逆転してるように見えるけれどさぁ……」
     嶺滋が乾いた笑いを響かせた。
    「そういえば佐藤は同い年だったな。大学は何学部に入るか決めているのか?」
     九十九もブラシを使って、誠十郎の身体を丁寧に、丹念に、大胆に、ブラッシング。
    『わふっ!(訳:……大学か。このまま、バイト先のペットショップで働くのもいいな)』
     誠十郎がどこか遠くを見つめる。
     何故か、動物達に好かれているため、ある意味で天職だと思っているのだが、猫達にたかられているので、色々な意味で悩んでいるようだ。
    『わふっ!(訳:それよりも、飯だ、飯! レンジでチンして温めようぜ!)』
     誠十郎が電子レンジに視線を送る。
    「そーんなコトしなくても! オレの尻尾の炎で温めてあげるっすよ!」
     それに気づいた紅虎が、ニヤリと笑って弁当を温めていく。
     だが、どれも少し焦げており、中には丸焦げの物があった。
    「わふっ!(ちょっと、待て、待て、待て! そこまでだっ! やめろっ! せっかくの飯が……)」
     これには誠十郎も焦った様子で、紅虎の首根っこをかぷっと噛む。
     その姿はまるでライオンの親子のようでもあった。
    「……にしても、温め直しただけでは、ちょっと味気ないですねぇ……」
     そう言って流希がこっそり調味料を足して、あれこれとアレンジをする。
    「せっかくなので、クラブで生えたキノコさんのお料理をお差し入れするのですよー! 味は……キノコさん達の個性が強いのでその都度違うお味かもですが、食べるのは大丈夫ですー!」
     月夜が上機嫌な様子で、キノコ料理をテーブルの上に置いていく。
    「マリネにシチューに炊き込みご飯、色々揃ってますよ」
     嘉月も一緒になって料理を並べ、楽しそうに鼻歌を歌う。
     その間も兎が野菜を摂らない相手のまわりをウロウロしたり、体当たりを食らわせたりと、まるで母親の如く走り回る。
    「ごっ、ごはん、美味しいね……。つっ、月夜お姉ちゃんの炊き込みご飯、とても、美味しい、やっ、優しい、お味……」
     翠がほんわかとした気持ちになった。
    (「……もふもふ……」)
     そんな中、兎が疲れた様子で誠十郎に倒れ込む。
     まるで高級ベッドの上で眠っているような心地良さ。
     そのまま、吸い込まれるようにして、スヤスヤと深い眠りについた。
    「最後はやっぱり誠十郎をもふもふして締めくくらないと終われないよね!? 誠十郎に幸あれ!」
     そう言ってシスティナが誠十郎に飛び掛かる。
    「愛でるよ! メーデー!!!」
     智優利も誠十郎にダイブすると、本能の赴くままにもふって、もふって、もふりまくった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月4日
    難度:簡単
    参加:11人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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