7月19日と20日の2日間にわたって開催された学園祭。
多数のクラブ企画や水着コンテストなどで盛り上がった学園祭も、とうとう終わり。
だが、それは学園祭の終りであり、後夜祭の始まり。祭の夜はこれからだ!
さあ、最後にみなで楽しく打ち上げをしよう!
●打ち上げは屋台通りで
そこは校舎の傍に用意されたクラブ企画の出店場所として利用されて場所。
――通称グルメストリート。
企画も終わりさっさと後片付けをする生徒もいる中、残った材料で料理を作り、ジュース類も持ち寄る生徒達。
屋台の撤去は明日に行うので今晩は気にせず騒げそうだ。
「いやー、材料を残すのはもったいないもんな! 打ち上げで食べきろうぜ!」
「それは良いですけど……なんで鍋持ってるんですか」
荒木・琢磨(大学生ご当地ヒーロー・dn0018)に鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)がつっこむも「麺類を茹でるのに必要だろ?」と話が通じない。
とりあえず珠希は、この気温だしと大量の氷だけは用意しているのだが……。
周りを見ればお残しは許しまへんとばかりに食べ続ける学生や、
ジュースが勿体ないと一気飲みしている輩もいる。
もちろん、料理をつまみつつ楽しく歓談するクラブの人たちもいて、
こんな自由奔放な空気こそ学生時代の良い想い出になるのかも……と思わなくもない。
同じ企画をやった者同士で集まるも良し。
当日出会った友達と料理を貰いつつ楽しむも良し。
喧噪を外れ1人終わっていく祭の余韻に浸るも良し。
食べ物と飲み物はきっと誰かが持って来てくれる。
余った材料や料理はきっと誰かが食べてくれる。
深い事は気にせず、さあ、みんなで後夜祭を楽しもう!
●
「連覇ならずも3年連続入賞は果たした! 何より皆が楽しんでくれたのが嬉しい。という事で、せーの!」
『ぅどぉ~ん!』
直哉のかけ声に皆が一斉に乾杯し、ワイワイと2日間を思い出しつつ話が弾む。
「あ、珠希。ご来場ありがとーございましたーっ♪」
珠希を見つけたミカエラが声をかけると、珠希も「誘拐事件は」とか「ボイラー室は解ったわ」と話が弾む。
一方、屋台の方では灰色狼の着ぐるみを着た七波と、ライオン獣人姿のロジオンがうどんを作り続けていた。
「鍋焼きキツネと汁無しタヌキのリクエストがありました」
「学園祭で協力できなかった分お作りいたしますよー」
「二人とも、こっちは後1分で茹であがるぜ?」
七波達に違和感無く混じってマフラーを巻いた琢磨がおり。
「あの、マフラー暑くありません?」
「そんなモフモフでぶっ倒れないのか?」
「着ぐるみは熱中症に注意した方が良いですよ?」
三角に各自が注意しハモる3人。一瞬の間、そして思わず笑い合うのだった。
「真珠もうどん食うか?」
笑顔の咲哉に奨められ、食べたうどんはとても美味しく笑みが漏れ。
「学内行事位は好きに楽しんでいいさ。何かしたい事あるか?」
「えっと――」と咲哉に真珠は遠慮がちに希望を伝えるのだった。
「っていうか、何でこんなにうどん作るのが上手なんすかこの集団」
うどんを啜りつつレミが歩いていると、直哉と話す珠希達を見つける。そこにはヒマワリ姿のミカエラもぽよよんぽよよんと混じっており。
「日常に溶け込んでいる着ぐるみ、これこそが実はミステリー……」
「暑そうではありますよね」
レミの言葉に珠希が言うと。
「暑いのか? なら冷やしうどんでも作るか。氷水で〆てっと……ほら、学園祭の〆なだけに!」
どや顔の直哉。
「お後(味)がよろしいようでっ!」
間髪入れずにツッこむレミ。
素早い。
「まあ、私としてはかき氷の方が……」
珠希が普通に希望を言うと、今度は新がやってきて。
「うどんは美味しいけど……確かに、そろそろかき氷の準備をしようか」
サボテン着ぐるみの新がかき氷を作り出す。
うどんばかり食べていた皆も嬉しそうにかき氷へ手を伸ばし……そんな中、かき氷片手に輪を外れていくイフリートの着ぐるみは毬衣。
うどん、着ぐるみ、ミステリー、3つのキーワードが示すもの。【文月探偵倶楽部】の騒がしい後夜祭はまだまだ終わらない。
3台のリアカーが展開し淼の掛け声で営業を開始するは【炎血部】だ。
「後夜祭はゆっくり? 違うだろう! 鉄板焼き『もふリート』出張臨時営業開始だっ!」
「今年も入賞おめでとうだよー!」
さっそくやってきた毬衣がお祝いしつつ招き猫ポーズで横に鎮座。
それを確認し淼は再度叫ぶ。
「グルメストリート2連覇のお祝いだ! 食いたい奴はかかって来いッ!」
半額の後夜祭価格で飛ぶように売れていく中、裏方に徹していた優夜は熱気と忙しさで大事な氷が――。
「溶けそうなのにゃ(注:今回着ぐるみなので優夜は語尾が違います)」
「メイニー、このかき氷は……」
恋人のメイニーヒルトに誘われて学園祭中に入部した武流が燃えるかき氷を指差すと。
「これは世にも不思議な火を噴くかき氷。その実態はブランデーを染み込ませたメレンゲを天辺に乗せ、火をつけて焦げをも香料とした、その名も『燃えるこおリート』!」
聞いていた他の客と一緒にへぇーと感心する。
連覇の理由は、味はもちろん丁寧な接客もあったのだろう。
来年も、頑張れ!
「それでは皆さん、学園祭お疲れ様でした!」
心太のかけ声で乾杯するは【粱山泊】の面々。
料理担当は主に2人、甘い金時豆を具にした豆玉焼きに呉焼き、ラムネを配る來鯉と、学園祭でも好評だった謎の肉の中華饅頭を作り続ける倭。
一方で、他の模擬店を周りジャンクな食べ物を大量に貰って来て並べるは夏樹だ。自分の分を確保しつつ椅子につけば、サッとリコが隣に座り夏樹のポテトに手を伸ばす。
「リコの分はこっちに取ってあったのに」
と夏樹が笑えば、リコは「こっちが食べたかったの」と。
「そんな事より、謎肉面白そうじゃない? 謎肉祭りだし!」
「その通りだ」
リコの言葉に倭が多種多様な試作品を並べると、來鯉からふわふわのお好み焼きを貰い食べていた春陽が、1つ食べてからうーんと唸り。
「もう少しパンチがあっても良いんじゃないの?」
と赤い調味料をぶっ込んだ中華饅頭を。
「はい、月人さんあーん♪」
「待て春陽! その適当に味付けしたものを置――(もぐ」
「美味しい?」
「………………」
青い(赤い?)顔で無言のまま同じ中華饅頭を春陽に差し出す月人。
春陽がその後、めっちゃムセてました。まる。
そんな恋人達を流石だなぁと眺めていた心太だが、スッと目の前に中華饅頭が差し出される。
「しんちゃんもどうぞ?」
邪気の無い笑顔。
躊躇、葛藤……そして心太の心が決まる。
「……頂きます」
と、ここで春陽が気がつく。
「何か暑くない?……って、ちょっと火力強すぎるわよ軍師!」
皆が声に反応し見て見れば、勝手にミニキャンプファイヤーを始めている小次郎がいた。
「火はええのう! 火計じゃ火計! はっはっはっは!」
何やら手に持つ液体を注ぐと、さらに火が燃え上がる。きっとやばい液体だ。
「か、火事ですよ! しんちゃん、どうしま――」
静菜が慌てて心太に声をかけるも、見れば心太がばったりと地面に倒れている。
「えええええ!?」
「たぶん、痺れ薬を全部入れた奴が当たったんだな」
と冷静に倭。
「結島さん、ここは心臓マッサージよ!」
「は、はい!」
瓶を振り上げ勢い良く振り下ろそうとする静菜。
慌てて月人が止めに入る。
どうしたものかと困りつつ、リコと一緒に小次郎キャンプファイアーに見とれる夏樹。暑くなったのでラムネを配る來鯉。
粱山泊の後夜祭は、いつもの通り激しく楽しく騒がしく夜更けまで続くのだった。
●
「琢磨―! 部長の本体入りUDONの差し入れー!」
琢磨に見た目美味そうなのを持って来たのは【陰影】の翼。
「って、何が俺の本体だ!」
「何だよ響、俺変な事言ってないだろ?」
ツッコミを入れた響に不満顔な翼(奏哉「いつから部長の本体は魚になったのかな」)。
「それより、俺からも差し入れだ。今度はちゃんとしたUDON、冷てえっ!?」
首筋に当てられた氷に驚く響が振り向けば、そこにはコケシ――京一がいた。
「なぜ止める京一!」
響の持つ魚類+ケチャップ+揚げ玉のYAKISOBA(奏哉「最早UDONベースの影も形も無い気がする」)に一度視線を落とし、京一は自分の持っていたラザニア風YAKISOBAを琢磨へ。明らかにこちらの方が美味しい匂いがする(奏哉「でもラザニア風の時点でこれもUDONから遠ざかっていると思う……」)。
「おいおい、琢磨はうどんのご当地ヒーローなんだ。ほら、俺のシンプルなYAKISOBAを食え」
そう割って入って来た奏一郎が差し出すは醤油味の焼きUDON。琢磨的には嬉しいが焼きそばではない。
「ちょっと待ったー! 俺のもやるぜ!」
そこに差し出されるは優希の野菜そぼろたっぷり明太マヨ焼きUDON。
結局何を食べさせたいのかさっぱり解らないが、全てうどんベースなのは理解した琢磨が――。
「おうっ! なんか知らねーが、気持ちは伝わったぜ! あんがとな! でも、せっかくなら皆で食おうぜ!」
「おお、それいいな! 乗った!」
喜びさっそくラザニアに手を伸ばす優希と我慢していた翼。
「あ、響さんは自分のを食べて下さいね」
「なん……だと……!?」
驚愕の響。ちなみに琢磨は奏哉のぶっかけを完食しました。
「期待してください、ね」
との言葉通り、手際よくたこ焼きを完成させていくのは乙羽。ここでは【匣庭物語】の各々が屋台を2つ貸し切り料理中であり、見事な腕前の乙羽に見とれていた木乃葉が。
「先輩、たこ焼きを回転させるコツを教えてください」
と頼み込めば「そこはこう……」と丁寧に教えてくれた。
一方、もう片方の屋台ではお好み焼きに挑戦中。
「って、ふわりちゃん!?」
ハシャいでいたふわりが鉄板の熱にやられて倒れそうになるのを海が慌てて抱き留める。
「乃々嶋さん大丈夫?」
零奈もやってきて皆で扇げば「ありがとです」とふわりも復活。
そして零奈を先生として慣れないメンバーがお好み焼きの返しのコツを聞き、いざ、挑戦!
くるん、パタン。
九白が綺麗にひっくり返せた。
「う、うまくいきました。くるんって、くるんって!」
珍しく感情豊かにはしゃぐ九白。
「ほわ、すごいね」
「すごーい」
零奈が手を合わせて喜び、ふわりも目を輝かせる。
そして次はふわりの番……。
「……うぅ、だ、誰かーっ!?」
手をぷるぷるさせ中空で停止し助けを呼ぶふわり。
そこに手を添え手伝うは紅緒。一緒にくるりとひっくり返す。
「救世主ですっ!」
喜ぶふわりに、紅緒は内心安堵しつつ「気にするな」と微笑む。
やがて料理も完成し机へ。
わいわい作ったお好み焼きに、乙羽のたこ焼きと、木乃葉のたこ無し(たこが苦手な木乃葉は竹輪や蒟蒻を入れました)、それに紅緒がそっと鉄板の端で作った焼きそばも。
「全部美味しい!」
「うち、とっても幸せやねぇ」
「デザートの駄菓子もあるからね!」
ふわりと零奈が幸せそうに言い、海が別腹のお菓子も取り出す。料理を誉められた木乃葉は照れ、紅緒も頬を緩ませ、「皆で食べるのが一番だ」と乙羽が言えば皆が頷く。
「……おかわり、作りませんか?」
皆が浸る中、九白の呟いた言葉が響き、目を合わせた皆はもちろん笑顔で――。
まだ騒ぎ足りない雰囲気で鍋や鉄板に火を入れるのは【古ノルド語研究会】の面々。
「本番は殆ど手伝えなかったし、下準備はしてきたよ」
「残り物を安く譲ってもらえたのよ」
そう言って材料やお菓子を広げるロベリアと琥珀。
さっそく鍋料理を作り出すロベリアと、たこ焼きロールやフライドポテト団子などリメイク料理に勤しむ琥珀。
さらに焼きそばを作っていた悠仁が通りかかった琢磨を呼び止め交渉、うどんをGETし、代りに琢磨もご相伴に預かる事に。
そして料理が完成し――。
「あ……私達は、ここで食べる理由も特になかったりするんだけど……楽しい、学園祭だったね」
いつもの調子で言う透流に、アルディマが「とりあえず、二日間お疲れ様だ」とねぎらい、食事が始まる。
無言で食べ続ける琥珀や、「なんか麺が凄い長いんだけど!?」と驚く琢磨を見つつ悠仁が言う。
「……たまにはこうして騒ぐのも、いいですよね」
「ああ、終わってみればあっと言う間だったな」
アルディマも感慨にふけるように。
「お客様はあまり来てくれなかったけど……」
「そうなのか? 面白かったぞ?」
透流の言葉に素直に琢磨が言う。
「えっと……でも、来年は、喫茶店とかやってみたいな」
「いいんじゃない? 皆でがんばろうね」
ロベリアが笑顔で、皆も一様に頷いてくれた。
気が早いかもしれないけれど、来年もまた良い学園祭になりますように……。
●
「今年の学園祭、お疲れ様です……さて、余った材料で饂飩を打ちましょう」
そう言ってどこで習ったか本格的に饂飩を打つは【TG研】の流希。
「材料的には焼き饂飩でしょうか」
「オレは広島風お好み焼きを作るかな」
流希のフォローに良太が回り、登は別の料理を作り始める。
「それじゃあ私達はデザートを作りましょうか?」
「そうね。プリン辺りが無難かしら」
清美に誘われ珠希も一緒にプリンを作る事に。
そして……。
「毎年私の我儘に付き合っていただいておりますからねぇ……皆さん、ご苦労様でした」
感謝の言葉と共に乾杯する流希に、我儘ではありませんよ? と笑う良太。
「そういえば鈴懸さん、クラブに来てくれてありがとね! それと、お茶もありがと……なぜか、飲んだ後の記憶が無いけど……」
と言う登だが、珠希は流希から渡されたお茶が変な匂いだったので、隣の登との間に置いており、結果――。
あ、ちなみに珠希と清美のプリンは美味しかったです。
さて、珠希がそんなこんなの中、琢磨の方はと言うと。
「あら? 荒木さんはいらっしゃらないのね?」
琢磨がいると言う屋台にやって来た桜花は、そこに目的の人物がいない事に首を傾げつつ。
「それで、あなたは誰かしら?」
桜花が琢磨に代わって屋台でカレーうどんを作る竜姫に聞くと、他のクラブに呼ばれたからとココを任されたと説明する竜姫。
「そ、では戻ってくるまでうどん鍋でも頂きますわね!」
「希望があればチーズやみそ、生姜で味も変えられ――」
「おかわりですわ!」
さっそくおわりの桜花、だが、そこに小さな手がピョンピョンと振られ、空の丼を差し出してくる。
竜姫がなんだろうと覗き込むと、小学1年生の人狼っ子・夜野がいた。
たどたどしい言葉で「……肉、たべたい」と話し、あとはジェスチャーでがんばっている。なかなか可愛い。
とりあえずカレーうどんを肉たっぷりにし夜野に与えつつ、時々やってくる客を捌いていると。
「悪ぃな霧島、任せちゃってさ」
帰ってくる琢磨、だがその後ろに少女の姿。
「ああ、なんか煮込みうどんが食べたいっていうからさ」
少女――愛梨が「学園祭は忙しくてほとんど食べられなかったんだもん」と可哀想な感じに。
「霧島も何か食べたかったら言えよ? こっからは俺が作ってやる!」
琢磨が腕まくりし、愛梨と桜花が喜び、なんとなく夜野もはしゃぐ。
だが、竜姫は琢磨の横に並んで「手伝うから」と。
「そっか、あんがとな! じゃ、どんどん作るぜ!」
そんなこんなで琢磨の後夜祭うどん屋も大繁盛、すると。
「琢磨先輩ちっす! クラスメイトと食いに来たぜ!」
「うどん先輩、逢いたかったようどん先輩!」
「うどん先輩! 僕にもうどん、くださいな♪」
やって来たのは【井の頭2-9】の太一や澪、蒼月たち。
「おう! とはいえ他の所のも食べ歩くんだろ? 小鉢でいいよな」
「ア、始めてだから薬味とか無しで、徐々に自分流でちょい足ししてイキたいし」
小鉢に入ったぶっかけを作っていた琢磨が、波琉那の注文を受け「薬味は入れてないから好きにやってくれ!」と笑顔でぶっかけうどんを皆に渡す。
本場の味に感動する皆を見つつ、琢磨は太一に「皆が俺の名前を呼ばないのはお前のせいだな?」と聞けば、太一は「尊称だよね?」と笑い、琢磨はサムズアップ。
と、そこにラーメンを持って到着するは珠緒。
「はーいみんな、桜花ら~めんだよー♪」
今度は琢磨も含めて皆でラーメン。蒼月は念入りにふーふーしながら、澪は「美味しい、じゃすてぃす」と、波琉那はさっきうどんに入れてアフアフしてた激辛キムチを入れるか迷いつつ、そして太一は。
「おっとぉ、太一さんはこっち、漢方風元気の出るら~めんね」
珠緒がいつの間にか持ってた太一のタコヤキを奪いつつ、太一にだけ不発だったメニューを渡す。
「くっはー! 何だか熱くなってきた!」
それでも食べた太一が燃えあがり、それを見て皆が笑う。
うるさいぐらいに面白く、来年もきっとこのクラスなら……。
太一達が去ったと、琢磨の所を訪れたのは紋次郎と流零だった。
「先日は世話になったな荒木、饂飩、俺らも頂いていいか?」
紋次郎の言葉に「もちろんだ!」と琢磨が流零の分と2つのうどんを作る。
「いただきまーす」
手を合わせつるつると流零が食べ始め、紋次郎はふーふーと冷ましつつ、仲良くお互いどう学園祭を過ごしたか語り合う。
「……、猫舌さんに熱々うどんは酷でしたねー」
「いや、苦手だが猫舌ではない」
言い切る紋次郎だが、流零は気にしない。
「2日間、すぐに終了してしまった気分ですよー、青春とは眩しいものでしたー」
「何ぞ其の年寄発言……」
しみじみいう流零に思わず紋次郎はそう呟くのだった。
夜のグルメストリート。
どこか縁日の延長を感じさせるそこをエリヤと楓華が並んで歩いていた。
「お陰で、楽しかったです……学園祭。ねこ、可愛かったですし」
「……その言葉が聞ければ、俺は満足だ」
エリヤがタコヤキの舟を間に置き、お茶を手渡しつつ楓華の言葉に、見る人が見れば笑みにも見える表情で頷く。
ふと、楓華が食べている物にエリヤの目が行く。りんご飴だった。
「……あ、食べます?」
スッと食べかけのりんご飴が差し出され「なっ……」と狼狽えるエリヤ。
「……? 美味しいですよ?」
「いや、いいか、その行動は――」
その後、楓華が理解できるようエリヤが説明を試みようとするのだが……さてはて。
夏を先取りしたような夜店と屋台の連なりを、峻とナタリアが静かに歩いていた。
峻の横では髪を後ろに結い上げたナタリアが涼しげな浴衣姿で、イカ焼きを静かに味わいながら歩いていた。
同じクラブだった頃のナタリアはあまり食べているイメージもなく、けれど今、横に視線を向ければどこか安心するような……。
「あ、俺も買ってくる」
イカ焼き屋を見つけ峻が走っていく。
改めて見ると峻の背中は大きかった、イカを食べるのも忘れ思わず視線で追ってしまう。
そして峻が戻ってくると。
「うーん、素敵です……」
ナタリアの独白に、顔も赤いし暑いみたいだからカキ氷でも食べないか? と峻。
もう少し、幸せな時間は続きそうだった。
●
「諸君、緊急任務だ! これより『KJJ48☆素敵アイドルうどん』の開発コンペを行う!」
大文字の無茶振りに【駅番】の皆が一斉に独創的なうどん作りを開始する。
皆はどんなのを作るのかとメンバーの1人である夏蓮がふらふら見て回っていると「麺に集中したいから話しかけないでくれ」と熾に言われたり、一方で、目を瞑り両手を突き出し揉み揉みと小麦粉を揉み続ける恭太朗なんかもいる。星詠閃光百裂拳ちゃんをイメージしつつ、やがて2つの大きな丸をおっぱい型に整える。ちなみに柔らかさも完璧だ。彼はきっと青春真っ盛りなのだろう。
さて、作成時間は刻々と過ぎ……。
「よし! 出揃ったようだな!」
大文字が終了を告げ、頼まれた琢磨が大文字と共に試食と審査を開始する。
「卵を囲むように個性ある具達を配置、その上から七味唐辛子を大量にかけた、見た目は普通(赤いけど)味わうと刺激(死撃?)的というKJJをイメージして作ったの!」
舞依が得意げに説明し、試食し火を吹く大文字。
次に2人が向かったのは善四郎の所だ。
「推しアイドルのマダムグランドピアノに見立てたっす!」
それは大量のうどんと異様に黒いつゆ、そしてうどんの上に山盛りに積み上げられたクッキー。
「うぐっ」
大文字が食べました。
「私はうーちゃんイメージで作りました!」
そう言って実季が出すは苺の乗ったうどん。
「あざとさを苺で、出汁には抹茶ココアも入ってます」
さっきも食べたが甘いうどんはキツイ、が。
「これもか」
大文字が食べました。
「お、次のは俺が食うぜ!」
「おれだってうまそうなのだけ食いたいんだぞ!?」
蓮次の作るうどんを前に争う琢磨と大文字だが、目の前で蓮次がデリバリーしたピザの上にうどんを流し込み。
「デリバリーピザちゃんイメージ! デリピザうどん完成!」
目が点になる2人。
まずくも無いけどうまくも無い味でした。
やがて2人が辿り着くは至って普通の明太カルボうどんが完成している奏の所だった。
「香川明太子ペスタちゃんイメージで作りました!」
「優勝」
食べもせず琢磨が宣言。推し麺だし。
まぁ、その後実食し大文字も納得の美味さでしたとさ。
さて、後夜祭も三々五々皆が帰る中、1人叫ぶは熾。
超こだわりの麺をイチから作りやっと完成したのだが。
「……あれ? みんなは?」
祭りの後は夢の後、一陣の寂しげな風が熾の前を吹き抜けたのだった。
作者:相原あきと |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年8月4日
難度:簡単
参加:67人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 3
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