粘り過ぎ! 秋田納豆怪人の脱衣

    作者:森下映

    「キャーーーーッ!!!」
    「ウオオオオオオオッ!!」
     狭い場内が老若男女の嬌声で包まれる中、ステージに登場したのは鍛え上げた身体をこれから惜しまず披露しようという男性ストリッパー、総勢5人。
     のはずだったのだが。
    「な、なんだ君たちは!」
    「う、ウワッ!!!!」
     男性ストリッパーたちを押しのけて、あらたにトレンチコートに蝶ネクタイの別の男たちが出てきた。
    「なんだといわれて名乗らないわけにはいかないな!」
    「僕たちは、納豆の真の発祥の地『秋田』をアピールするためにやってきた……」
    「「「秋田納豆怪人さ!」」」
     バッ!!! と脱ぎ捨てられるコート!
     ビキニパンツに光り輝く股間の『秋田』!
     身体中には粘る納豆!
    「納豆の発祥の地は秋田! 秋田だよオオオオオオ!」
    「どんどん粘っていこううオオオオオオ!!」
    「さあ、みんなも恥ずかしがらずに!!」
     脱衣した怪人たちは客席におり、  
    「キャーーーーーーッ!!!」
    「な、納豆くさっ!!!!!」
    「ね、粘るううううううう!!!!」
     逃げ惑う観客たちで会場は大パニック。
    「おっと」
     なんとか会場から走り出てきた女性が、長い銀髪をなびかせた男性――三日尻・ローランド(尻・d04391)とぶつかった。
    「夜道をレディがそんな勢いで走っては危ないよ、ねえ、えくすかりばー? と、」
     ローランドは自分の身体の異変に気づいた。ネバついている。
    「これはもしかして……納豆かな?」
     事件の予感にローランドは、粘りを警戒してあからさまに離れて浮かぶナノナノのえくすかりばーとともに、学園へ急いだ。

    「というわけで、ローランドさんの報告のおかげでご当地怪人の事件が発覚したよ。ローランドさんにえくすかりばー、ありがとう!」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)はローランドにぺこりと頭を下げると、説明を続けた。
    「今回迷惑行為を働いているのがわかったのは、秋田からやってきた納豆怪人3人組だよ。秋田出身らしい色白ボディを納豆で粘らせながら、納豆は秋田が発祥の地なんだぜアピールをしているんだけど、そのやり方がね……」
     秋田納豆怪人たちは会員制の男性ストリップクラブに目をつけ、乱入を繰り返している。今は乱入して脱衣、納豆を撒き散らす程度で済んでいるが、放っておけば今後行為がエスカレートしていく可能性も高い。
    「だから、これ以上被害が広がらないように今のうちに灼滅してほしいんだ」
     灼滅者たちが事件に介入できるのは、怪人たちがクラブに乱入して脱衣した直後。
    「みんなには、次に秋田納豆怪人たちが乱入して脱ぎ始める会員制男性ストリップクラブのチケットを渡しておくね。裏営業なのか年齢不問みたいだから、これさえあれば年齢とか関係なく会場には入れるみたい。ちなみに最前列をキープしておいたよ!」
     今回の会場は路地裏の小さなビルの地下にあり、広さは20坪程度の狭めのスペース。地下へ階段で降りる。
     客とパフォーマーの近さが売りらしく、客席1列目の目の前がほぼ段差のないステージとなっていて、出入口が一箇所しかないため、納豆怪人たちは、入り口にいるスタッフの静止を振りきって、観客席の真ん中に開けられた花道スペースをやってくる。
    「彼らは粘る、踊る、脱ぐ、迫る程度で一般人に怪我をさせるようなことはないけど、戦闘や飛び散る納豆のことを考えたら速やかに避難させる必要があるかもね」
     会場にいる一般人は、ステージ上のパフォーマー5名、客が灼滅者たちの他に10名、スタッフが1名。秋田納豆怪人たちは、それぞれポジションと髪型が違い、ベリーショートがクラッシャー、スキンヘッドがディフェンダー、ローテールがスナイパーで、とにかく納豆で粘っている。
    「1人1人は力の弱いダークネスだけど、なにしろ3人いるし、タイプがタイプだから油断はしないようにね。じゃあ、よろしくね!」


    参加者
    花凪・颯音(花葬ラメント・d02106)
    三日尻・ローランド(尻・d04391)
    玖律・千架(エトワールの謳・d14098)
    嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)
    有栖川・萌(オルタナティヴヒロイン・d16747)
    ルチノーイ・プラチヴァタミヨト(トライエレメンタルドラグーン・d28514)
    伊符夜・詠海(倶利伽羅の娘・d31570)
    紅月・春虎(翼侯・d32299)

    ■リプレイ


    「最前列でストリップを堪能できるなんて幸せだねえ、えくすかりばー」
     えくすかりばーの椅子となりつつ、三日尻・ローランド(尻・d04391)は会場の熱気にわくわくムラムラ。
    「嫌がらせなんじゃないかってくらいの……真ん前っすね」
     背もたれにどっかりと寄りかかりながら、嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)言った。
    「これは予知してくれやがった感謝を込めて、まりんさんもどこかのストリップ劇場に連れてかなきゃっすねぇ。もちろん同じ最前列で」
    「こんな形でストリップ劇場に足を踏み入れるなんて思わなかったよ……」
     越えちゃいけない一線を越えてしまったような気がする伊符夜・詠海(倶利伽羅の娘・d31570)。花凪・颯音(花葬ラメント・d02106)も、
    「いつも良くしてくれる先輩の助けになれたらとついてきたら、ストリップでねばねば祭りな会場だった……身の危険を感じるの、気のせいかな!」
     口角だけで笑う。
    「納豆ですか……ねばねばしてて僕は、苦手なのですよねぇ……」
     蒼を基調の束帯を身につけた、紅月・春虎(翼侯・d32299)は溜息をつき、
    「皆さんはお好きなのでしょうか?」
    「ボクはストリップも納豆も大好物さ! ねえ、えくすかりばー」
     パフォーマーを見ながらうっとり中のローランド。
    「納豆ご飯は美味しいけど、今回のコレはちょっとマジ勘弁」
     と、何かを諦めたような顔をしているのは玖律・千架(エトワールの謳・d14098)。隣、青い髪をリボンでトライテールにしたルチノーイ・プラチヴァタミヨト(トライエレメンタルドラグーン・d28514)は、
    「何故、このやり方でご当地アピールできると思ったのか謎過ぎるのです」
     プンと頬をふくらませ、
    「というか、食べ物を粗末にするのはめっ、なのですよ」
    「そうだよねぇ」
     有栖川・萌(オルタナティヴヒロイン・d16747)は、同意しつつも内心そわそわ。実はその過去ゆえに、納豆フェチなのである。
    (「ね、ネバネバも臭いも大好き……でも、ここで怪人に屈したら、茨城県水戸市のご当地ヒロインとしての矜恃に関わるし」)
    「秋田納豆怪人なんかに絶対に負けない!」
     萌、フラグ立てた。
    「自分を解放したり、技巧を尽くしたり、しっぽり粘ついたり……どれも素敵だねえ」
     いまだローランドは夢心地。
    「混ぜ込んでねっちりハイブリッドストリップもボクはウェルカムだけれど、ストリップはストリップ、納豆は納豆、ムチンはムチンとして楽しみたい層も少なくないからね」
    (「ムチンはムチン?」)
     それをきいた颯音の頭に『?』が浮かぶ。
    「ストリップと秋田納豆の繁栄の為に今日はがんばろうねえ、颯音くん!」
    「は、はい! ハイ……?」
     と、その時。入り口が騒がしくなった。
    「おいっ! 勝手に入るなっ!」
    「みんな、お待たせだよオオオオ!」
     トレンチコートに蝶ネクタイ。怪人達は呆気に取られる観客たちの前でポーズを決めると、脱衣に備えコートの前を握った。が、その前に長身男子2人が立ちはだかる。
    「よーし、ボクらも自分を解き放とうか!」
    「えっ、ボクら?! く、お、俺の肉体美が役に立つ時がくるとは……ははは」
    「きゃーーっ!」
    「ウオオオッ!」
     ローランドと颯音がスレイヤーカードを解放。=脱衣。途端嬌声が巻き起こった。色黒ボディに長い銀髪をなびかせ、うっとりクネクネ、サバンナの野鳥かと見紛う腰蓑水着を身につけたローランド。そして客に警戒されないだろうと自ら選んだもののはいている意味はあるのか?! いくら『大胆な水着』とはいえ生地の面積が少なすぎるのではないか?! な脇から見えるか?! いや見えない! な水着を着用のホソ・マッチョ・颯音。
    「これは、僕たちもグズグズしてはいられないッ!」
     対抗し、怪人も脱衣。白いボディに光り輝く股間の秋田。脱いだコートが宙を舞い、粘る納豆飛んで散る!
    (「納豆の広め方間違ってませんかねぇ!?」)
    「逃げろ! さもないと、納豆で死ぬぞ!!」
     呆れながらも絹代が叫んだ。
    「納豆好きだけど! い、今口にしたらダメな気がするよ!?」
     納豆から観客を守るもドン引く颯音。
    「そもそもアピールの方向間違っていないですか! どうして味で勝負しなかったの……って尻先輩、あんまり激しくクネると納豆飛ぶ! こっち飛んでる!」
    「みんな、出口まで慌てず、騒がず、しっぽり行くんだよ?」
     ローランドは花道を退場するかのように観客を出口へ誘導していく。
    「出口はこっちだよー! あっ、大丈夫?」
     呼びかけていた千架が座り込んでしまった人を助け起こした。千架の霊犬の栄養食と、詠海の霊犬の白夜は、パイプ椅子を押して通り道を広げるお手伝い。
    (「う、うわぁ……ご当地怪人ってこんなのばっかりなのかな……」)
     こちらも引きまくる詠海。と、
    「君たち、僕らの粘るバディをもっと堪能したまえ!」
    「きゃ!」
     怪人が出口に向かう客に迫る。
    (「って引いてる場合じゃないよね。ねばねばは嫌だけれど、頑張る!」)
     詠海は全身から炎を噴出、
    「すごく、迷惑です! 容赦はしないよ?」
     高温度の青い炎の如き瞳が呼応するように煌きを深め、銀糸の髪がぶわり舞い上がった。
    「燃えろっ! 納豆はみんな僕が燃やしてあげるよ!」
     詠海はソードに炎を宿すと、思いきり叩きつける。
    「アチッ!」
     ベリーショートの怪人が燃え上がった。炎に包まれる股間の秋田!
    「僕のバディになんてことをっ」
    「怪人さん!」
     華やかなコスチュームに身を包んだ萌が駆け寄る。
    (「白い肌に茶褐色の納豆が映えてすごくセクシー……というか、ニッチな方向だけど……エロい? でも迷惑だからやめさせないと」)
    「君、僕と一緒に粘りたいのかい?」
     ポーズを決める怪人。同時、ふっと香った納豆の臭いに萌の頬は紅潮し、目は潤み。が、ここは茨城県水戸市のご当地ヒロインとしての頑張りどころ。
    「納豆発祥の地って秋田以外にも色々あるよねぇ?」
    「まあそうともいえなくもなくもないが、これからは秋田を、」
    「たとえ発祥が秋田でも」
     萌はにじり寄ると、
    「産地として有名なのは茨城だよぉ?」
     そう言った萌の顔を怪人はじっと見つめ、
    「む? もしや君……」
    「そうだよ☆ メイは茨城県水戸市のご当地、」
    「納豆フェチだねッ!」
    「え」
     驚いた萌の、艶っぽく濡れた唇が開いた。
    「な、なんでそれをっ」
    「君のその顔を見れば一目瞭然さ! さあ、僕達ともっと高みへ、」
    「コラ、怪人」
     萌が高みに連れ去られる前に絹代が割り込む。
    「納豆の発祥が秋田なのはわかった」
    「おお! では君も僕達と、」
    「だから服を着てください」
    「? これは僕達が考えに考え、粘りだしたアピール方法だよオ?」
    「そんなことしてちゃ、お客さんが納豆から離れてしまうっす。これ以上続けるなら」
     絹代はおもむろに視線を下げ、
    「枝切りハサミで切るぞ? ん?」
    「!」
     思わず縮こまる股間の秋田。怯む怪人。そこへ、
    「うぅ、納豆は、納豆だけはほんと無理なんですけどぉ……!」
     翻る束帯の裾。禍々しい気を放つ春虎の『退魔槍 紅』が、怪人の裸体を激しく穿ちぬいた。
    「あ、納豆がついてしまいました……うぅ」
     槍を手に着地した春虎の顔が曇る。一方、避難はほぼ済んだものの、いまだ騒がしい一団が。
    「だから此処は俺の言う事聞いて逃げて……危ないから……あっ、隙間にお金突っ込まなくて良いから!」
    「颯音くんモテモテだねえ」
     ローランド、にっこり。
    「そんなこと言ってないで助けてくださいよ先輩……ってなに首に札束飾りかけてんですか! えくすかりばーも煽って商売しないで!」
     慌てる颯音の背後に不審な影が忍び寄る!
    「! や、ちょ、どこ触って……っ、やぁ……!」
     さらに颯音の肉体を弄ぶ一般人の後ろには、ドサクサ紛れに連結抱擁を狙う怪人が!
    「全く……変質者が変質者に襲われるのは自業自得な気がしますが」
     戦闘形態の半闇堕ちモード。トライテールがブレスを吐く蒼龍となったルチノーイは、
    「早くしないと逃げ遅れるですよ!」
     颯音に絡みついている一般人をつかまえると、出口方向へ投げ飛ばした。
    「これでみんな避難完了!」
     確認して、千架が言う。
    「くっ! 僕達のアピールの場をめちゃめちゃねちゃねちゃにしてくれちゃって!」
    「こうなったら、君たちに」
    「全力でアピールさせてもらうよオ?!」
     怪人が一斉に激しく踊り始めた。当然納豆が飛び散る。
    「こんなに納豆だらけになっちゃって……後でちゃんと洗ってあげるからね」
     皆を庇って白いふさふさの毛並が納豆だらけになってしまった白夜に駆け寄り、詠海が言った。
    「粘りは嫌かもしれないけれど、僕も嫌だけれど………頑張って」
     励ます主人に白夜もわんと返事をする。ちなみにえくすかりばーはローランドを盾にして無事だった模様。千架は出口への道を塞ぐよう陣取り、
    「回復任せろ、じゃんじゃん攻撃してってください! っと、あーっ、えいくんも!」
     もふもふポメラニアンの栄養食も納豆まみれ。
    「納豆ご飯は美味しいけど、これは絶対美味しくないね!!」
     そう言った千架に一声応えると、やんちゃな栄養食はすぐに付呪を得た怪人に飛びかかり、刀で一閃。続き千架も、手にしたギターで光の色のような旋律を奏で、仲間の力を回復、できるだけの納豆も取り除く。そして、
    「ひとつだけ言わせてもらう! 納豆に謝れコノヤロウ!」
     ギターをぐっと前に出し、
    「需要と供給を考えろ! 納豆にあうのは白米だって相場がきまてっんですよ!」
     怪人達は顔を見合わせ、
    「確かに白米にも合うけどオ、僕達のバディにも似合ってるよねエ?」
    「なんかこの人達にはアピールしても無駄みたいだよオ?」
    「じゃあ、ここはひとまず」
    「おっと、終演にはまだ早くないかな?」
     逃げようとする怪人は、札束の首飾りをひらめかせたローランドが迎え撃つ。
    「危なイ!」
     ローランドの振り下ろしたソードは、庇いに飛び込んだスキンヘッドの魂と付呪を断ち切った。さらに絹代の髪の毛を編み込んだ真っ赤なスカーフ『マッド・デイモン』、獰猛なる海の狩り人を冠する颯音の牙剣Orcinus orcaが2匹の蛇のように唸り飛び、怪人達を斬り刻む。
    「う、ぐぐ……」
     マッド・デイモンの切れ味の悪さのせいで余計に痛そうである。
     そして空中。風を纏ったリングがロッドの先端の両側につき、ピコピコハンマーのようにみえる武器を手に、流星の煌きを足元に散らせたルチノーイが飛び上がっていた。
    「うぎゃああああああ!!」
    「納豆も一緒に食べ尽くしてやるのです」
     ルチノーイのシューズがベリーショートを蹴り潰すと同時、蒼龍達も一斉に噛み付き、怪人が振り解こうとしても離さない。萌は出口に走るローテールに狙いをつけ、
    「メイならネバネバも臭いのも平気だから、狙われてもへっちゃらだよ!」
    (「むしろイイ匂いだし……」)」
     ビームが命中。ローテールは足を止め、怒りに燃えた目で萌を振り返った。
    「こうなったらア!」
    「秋田のためにも戦うよオ!?」
     怪人達に粘りが戻った。


    「うぇえ、髪の毛がネバネバになったのです」
     続く戦闘。何度か噛み付いたせいで、ルチノーイのトライテールも納豆まみれに。そこで、
    「ネバネバは酢で取れるらしいのです」 
     どばぁとお酢をかぶってみるルチノーイ。
    「なんとなくマシになった気がするのです」
     お酢の匂いに、蒼龍達はツーンときている様子ではある。
    (「うぅ……納豆が飛んでくるよー」)
     と心中嘆きながらも、狙撃手らしく狙いは正確。詠海が放った矢が眩しい尾を引き、彗星の如き威力で強烈に怪人を撃ち抜く。
    「納豆が怖くて灼滅者やれるかバカヤロー!!」
     続き、飛んでくる納豆の中を、回復の合間をみて千架は褪せた灰桜の髪をなびかせて駆け抜けた。そして頭上に祭壇を展開すると、怪人達を結界の中へ捕らえる。
    「み、みんな……後を……頼む……」
     ベリショが粘り悶えながら力尽きた。残る2人は消滅した仲間の残した言葉に頷き合い、もう脱ぐものはあるのかという状態からさらに脱ぎだしす。
    「ど、どこまで脱ぐの、すっごい恥ずかしいんだけど!?」
     目の前で脱衣された颯音は顔を覆い、
    「この羞恥……堪らないねえ……!」
     空気を読んで庇い、しっぽりと堪能中のローランドはとりあえずよいとして、ルチノーイが浄化の霊力を颯音に撃ち出した。
     その間に春虎は紅月流の呪いがかけられているという由来通り禍々しい形をした『退魔杖 紅』を高く掲げ、絹代は身も心も蝕む黒い瘴気、メランコリアを走らせる。そしてなんとか立ち直った颯音は、Farfallaと溜まり溜まった思いを拳へ集束させ、スキンヘッドへ連打を食らわせた。
    「ぐえエ!」
     宙を飛ぶスキンヘッドへ、春虎が魔術で引き起こした雷が落ち、地面から刃となって立ち上がったメランコリアがその身体を斬り裂く。
    「も、もう、僕も……粘れ……なイ」
     スキンヘッドは地面に落ちる前に、霧散した。
    「えいっ☆」
     萌が鋼糸を放ち、再び逃走をはかったローテールを縛り上げる。そこで、何となく『待て』になっていた栄養食と白夜がローランドを回復。
    「緊縛ぷれいまでとはうらやましいけれど、ボクたちは帰ってからのお楽しみしようねえ、えくすかりば〜〜♪♪?」
     ローランドが朗々と歌い上げるにつれ、脱衣のまま目を回す怪人。ここまで攻撃をまともに受けることがなかったローテールだが、1人残されればそうはいかない。抱きつけば千架が縛霊手の指先から撃ちだした浄化の光に弾き飛ばされ、踊ればルチノーイの炎の蹴りに付呪を打ち破られ、脱衣すればローランドに堪能され。悶えてはみてもすぐに胸に詠海の放った帯が突き刺さったかと思えば、自慢のバディを隅から隅まで絹代に斬り裂かれる。
     這いつくばって逃げようとする怪人を容赦なく叩きのめすのは3本の鬼の腕。萌、颯音、春虎の強烈な打撃に霞む怪人の目に最後に映ったのは、聖剣から白光を纏うローランドの姿だった。
    「ぼ、僕達が倒れても、秋田は納豆の発祥の地……!」
     斬撃に怪人は吹き飛び、塵と消えた。
    「納豆はもうしばらく見たくも食べたくないなー……」
     ぐったり崩れおちそうになった詠海を白夜が支える。
    「こ、これならもっと変な都市伝説とかを相手にしてたほうが精神的にはよっぽどましなのですぅ……」
     納豆が苦手なのに頑張った春虎も、
    「ぁ、身体も洗わないと……うぅ……」
     心の傷はいかほどか。
    「ひええ暫く納豆ヤダ! 早くシャワー浴びさせろください!」
     と言った千架には、栄養食も同意の返事。颯音は改めて自分の身体を見下ろし、
    「うう、どろどろのねちゃねちゃだよう……」
    「今日はぷれいの幅が広がった気がするねえ、えくすかりばー?」
     最後まで幸せそうなローランドであった。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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