暑い時こそ太鼓を鳴らせ!!

    作者:のらむ


    「あっちー……なんか最近暑くね?」
    「全くもって同意見だ。暑すぎる……汗が止まらないな」
     石川県輪島市のとある食堂で、工事の作業員おっさん2人が昼食をとっていた。
    「なんでこんなあっちーんだろうな……つーか俺らの蕎麦まだ来ねぇのかよ」
    「いつか来るだろ」
     ドンドコドンドコドンドコドントコ。
    「つーかこんな日に外で一日作業するとか、本当正気の沙汰とは思えねぇよ」
    「まさに狂気だな」
     ドコドコドン! ドコドコドコドコドットコドン!
    「あーあ、さっさと家に帰ってクーラーを全身に浴びてー……俺、無事に家に帰ったら全裸でクーラー浴びてアイス食うんだ……」
    「なんだ死ぬのか? どうせ死ぬんだったら俺に財布寄越してから死んでくれ」
    「ひでぇなお前」
     ドコドコドン!! ドコドコドン!! ドンドコドコドコドコドコドン!!
    「「………………」」
     ドドッドドン!!! ドコドコドン!!! ドコドコドカドカドンドコドカン!!!
    「るっせーよさっきから!! 何なんだ!!」
     外から聞こえてくる騒音にキレたおっさんが、扉を開けて外の様子を伺う。
    「ヘイヘーイ!! この太鼓とダンスこそが我らの魂!! 暑さなんか気にせずはっちゃけろ! ヒャッホー!!」
     そこには腰に酒瓶をぶら下げたワニ頭の男が、太鼓を鳴らしながらはっちゃけていた。
     ワニ頭は多くの一般人を引き連れて、なんかアフリカっぽい衣装を着てアフリカっぽい太鼓を鳴らしてアフリカっぽい踊りをしながら、派手に道を縦断していたのだ。
    「うわ、なんだあいつ。2つの意味で頭がやべえ」
    「む、おいそこのお前!! お前も俺と一緒に太鼓をならすのだ!! ダンスの方でもいいぞ!! とにかくとても楽しいぞ本当に!! さあ!! さあ!! やれ!!」
    「いや、ちょっ、待……うわああ!!」
    「ハッハッハ!! 共に魂の響きを奏でようではないか!!」
     目をつけられたおっさんはワニ頭に引きずり込まれ、アフリカっぽい太鼓を持たされ道を歩かされる。
    「おろし蕎麦美味い」
     そして食堂に残されたもう1人のおっさんは、ようやく届いた2人前の蕎麦をしっかり平らげたという。
     

    「サイコロの女神が教えてくれたわ。アフリカンご当地怪人となったご当地怪人たちが、人々にアフリカっぽい踊りと太鼓を無理矢理広める事件を起こしてるってね」
     遥神・鳴歌(中学生エクスブレイン・dn0221)は、サイコロ占いによって得たという情報を、灼滅者たちに伝えていく。
    「どうやらここ最近、日本海側の海岸近くの町の気温がアフリカ並に上昇しているみたいなの。その影響なのかなんなのか知らないけど、アフリカンご当地怪人となったご当地怪人達が、ご当地のアフリカ化を目指してるみたい」
     この事件に、ご当地幹部アフリカンパンサーの直接関与は無さそうなのだが、このままアフリカ化が進めば恐らく何か良くない事が起きるだろう。
    「そうなる前に、皆にはこのご当地怪人を灼滅してほしいのよ」
     そして鳴歌は、今回相手取るご当地怪人について説明する。
    「正直、見ただけでは何の怪人かさっぱり分からなかったわ。ほとんど原型留めてないもの。だけど腰に酒瓶みたいのをぶら下げていたから、恐らく元は地酒のご当地怪人だったと思うわ」
     それにアフリカンの要素が加わりワニの頭部となったそのご当地怪人は、ワニ地酒怪人とでも呼べばいいだろう。
     灼滅者たちはワニ地酒怪人達が往来で騒ぎ立てているところに、真正面から接触する形となる。
    「ワニ地酒怪人はご当地ヒーローのサイキックとか、ご当地に迷惑がかからない様ラベルを外した酒瓶とかで攻撃するわ。あと首にぶら下げた太鼓で、配下の強化一般人を鼓舞するようなサイキックも使うみたい」
     ワニご当地怪人は多数の一般人を引き連れて街中を歩き回っているが、戦闘能力がある配下はその中の4人のみであり、他の一般人たちは戦闘が始まればさっさとその場から逃げ去るだろうと鳴歌は説明した。
    「配下の強化一般人は、アフリカっぽい踊りで攻撃して来たり、アフリカっぽい木の槍で攻撃してきたりするわ。そしてKOすれば、全員正気に戻る」
     そこまでの説明を終え、鳴歌は改めて灼滅者たちと向き合う。
    「これで、占いの情報は全部よ。ふざけた相手に見えるけど、それでもダークネスよ。暑い中外を無理矢理歩かされて熱中症になった人も沢山いるみたいだし、これ以上の被害が出る前に確実に灼滅して頂戴。気をつけてね」


    参加者
    旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)
    天咲・初季(火竜の娘・d03543)
    嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)
    アンジェリカ・トライアングル(天使の楽器・d17143)
    北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)
    雪峰・響(雪風に潜む白兎・d19919)
    高嶺・楠乃葉(餃菓のダンプリンフィア・d29674)
    琴音・魅羅(もふりんちょす・d34561)

    ■リプレイ


     ジリジリと照り付ける陽射しが、肌を焼く。
     アフリカ並の気温にコンクリートの照り返しも相まって、輪島市は信じられないくらいの熱気に晒されていた。
    「なにこれぇ…ここ結構地元近いのに…こんな暑いとこ知らないよ……ばあちゃん大丈夫かな……」
     天咲・初季(火竜の娘・d03543)は早くも暑さに気圧された様子で、スポーツドリンクをがぶ飲みしながら街中を歩いていた。
    「暑い……ところでこの事件って予兆でコンドルが言ってた様にザ・グレート定礎が大地と文明を繋ぐんだとかが関係してたりするんですかねぇ暑い……」
    「それと直接関与してなくても、ご当地名乗っちゃいけないパンサーが裏で糸いてそうだよね暑い……このままじゃ……たれチョコ餃子になっちゃうの……」
     嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)と高嶺・楠乃葉(餃菓のダンプリンフィア・d29674)が色々と自身の見解を述べていたが、とにかく暑いらしかった。
     ドンドコドコドコドンドコドン!!
     と、その時。灼滅者達の耳に例の喧しいアフリカンな太鼓の音色が聞えてきた。
    「さあさあ皆、俺達のアフリカン魂を轟かせろ!! ヒャッフー!!」
     ワニ地酒怪人達のどんちゃん騒ぎを、灼滅者達は遠目で眺める。
    「唯でさえ暑いのに謎の気温上昇にアフリカン怪人、おまけに暑苦しい太鼓と踊りか……精神的につらいな」
    「本当に暑苦しいな、あいつら。気温だけじゃなくって、こう熱気が……今からあれに近づくと思うだけで嫌気が差すぜ」
     雪峰・響(雪風に潜む白兎・d19919)と北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)が心底嫌そうに言いつつ、こちらに近づいてくるアフリカン一行を待ち構える。
    「ドンドコドン! 楽しそうな雰囲気で良い感じなのにネ! ご当地怪人さんってこういうノリ多いのカナ? でも楽しそうでも、アフリカ化の進行は止めなきゃダメだよネ! 皆、ガンバローね!」
     多くの灼滅者達が暑さにやられていたが、琴音・魅羅(もふりんちょす・d34561)だけは何故かやたらと元気だった。
    「……む? おいそこのお前ら!! お前らも一緒に太鼓やら踊りやらに参加するのだ!!」
     と、ようやく灼滅者達の存在に気づいた怪人と配下達が、灼滅者達の方に爆走してくる。
    「……奏でよ、天使の調べ」
     アンジェリカ・トライアングル(天使の楽器・d17143)が静かにトライアングルを鳴らしスレイヤーカードを解放すると、瞬く間にドレス姿へと変わった。
    「何だお前ら、武器など構えて……まさか俺達の邪魔をする気では無いだろうな!」
    「俺達……? 太鼓を鳴らしたがってるのはアンタだけに見えるがな。まあ何にせよ……ここで灼滅させてもらうぞ」
     旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)が巨大な十字架を構え、怪人に告げる。
    「舐めた口を……配下共、かかれ!! 今こそ俺達のアフリカン魂を見せる時だ!!」
     怪人が命令を出し、太鼓を構えて灼滅者達と対峙する。
     そして戦いが始まった。


    「Are you ready?」
     葉月はスレイヤーカードを解放すると同時に杖を構え、大きく振るった。
     そして放たれた巨大な竜巻が、先制攻撃として強化一般人達を吹き飛ばした。
    「なんかよく分かんないけど、今がチャンスだ! みんな逃げろ!!」
     怪人に従わされていた一般人達は状況を理解出来ていないながらも、怪人から逃れようと必死に走り出した。
    「さて、まずはお前たちの動きを封じさせて貰うとするか……」
     砂蔵は怪人の前に立ち塞がる配下達にそう言いながら十字架を構えると、聖碑文の詠唱と共に十字架の全砲門を開放する。
    「灼き尽くせ」
     そして放たれた無数の光線が、縦横無尽に戦場を駆け廻り配下共を貫いた。
    「グ……アフリカ最高!!」
    「無駄だ」
     砂蔵は配下が放った突きをすれすれの所で避けると、強化一般人の身体にトン、と手を押し当てる。
     次の瞬間、配下の胸元に逆十字が刻まれ、精神を負傷すると同時に地面に倒れ気絶した。
    「この怪人をアフリカナイズさせたのが熱波なら、この猛烈な暑さがアフリカンパンサーの力なのだろうか……まあいい。今は目の前のこいつを灼滅するのが先か」
    「さっきから何の事を言ってるのか分からないぞお前!! それより配下達!! もっとアフリカンな衝動に身を任せ攻撃するのだ!!」
     怪人が滅茶苦茶に太鼓を鳴らしながら叫ぶと、強化一般人達の傷が癒え力が高められる。
    「暑苦しすぎる……頭を冷やしな!」
     すぐさま初季が魔術を詠唱すると、配下達の全身の熱が一気に奪われ、身体が凍り付いた。
    「オマエさっきから何だその演奏は! テキトーに太鼓叩いてテキトーに動き回ってるだけじゃねぇか馬鹿野郎!」
     絹代は『ベルデライン教授』と名づけられた蒼い指輪に魔力を込め、魔の弾丸を怪人に撃ちまくる。
    「そういうのってステレオタイプなんじゃないかって自分は思います馬鹿野郎!」
    「馬鹿馬鹿うるさいわこの馬鹿が! アフリカン魂を享受できない馬鹿は馬鹿のまま馬鹿面で死んで行け!」
     挑発にイラッときた怪人は、絹代に向けて必殺ビームを撃つ。
    「イッテ! オマエの方が馬鹿連発してんじゃねぇか馬鹿野郎! つーか何が魂だ馬鹿野郎! オマエがやってる事全部ただの近所迷惑だ馬鹿野郎!」
     ビームが掠った肩を抑え、絹代は真っ赤なスカーフ『マッド・デイモン』を放つ。
     放たれたスカーフは怪人の足元に巻きつき、そのまま鈍く切り裂いた。
    「怪人さんはお馬鹿さんかもしれないケド、ご当地に迷惑がかからない様ラベルを外すトカ気を遣ってるのは偉いノネ!」
    「感心するのはいいがまず馬鹿を撤回しろ!」
     魅羅は怪人の言葉を華麗にスルーするとダイダロスベルトで配下の1人の足を貫き、動きを一瞬鈍らせた。
    「続くよ魅羅ちゃん! 今がチャンス……バニラキャノンなの!」
     楠乃葉はバニラアイス型の気弾を機銃の様に撃ちまくり、隙が出来た配下を一気に気絶させた。
    「原形を辛うじて留めているとはいえ、やはりアフリカン怪人のやり口は品が有りませんね……物事を押しつけるばかりでは、上手くいかないという事を教えて差し上げます」
     アンジェリカがそう言ってトライアングルを構えると、怪人も負けじと太鼓を構える。
    「俺の邪魔をするな! さあ行け配下共よ!」
     喧しい怪人の演奏を聞き流し、アンジェリカは静かにトライアングルを鳴らす。
    「第ニ楽章『黒影のしらべ』【呪縛】」
     美しい音色と共に放たれた影が、配下の全身を縛り上げ動きを封じる。
    「第三楽章『業輪のしらべ』【光陣】」
     優しい響きに共鳴するかの様に現れたオーラの法陣が、灼滅者達の傷を癒し天魔を宿らせた。
    「アフリカンビート・ドラムなどには、わたくしのトライアングル道は負けません」
     アンジェリカは怪人にそう告げ、再びトライアングルを奏でる。
    「第一楽章『霊壇のしらべ』【霊撃】」
     アンジェリカの霊力によって創られた網が配下の全身を覆い締め付け、そのまま気絶させた。
    「残る強化一般人は唯1人……さっさと仕留めさせてもらうぞ」
     響はそう言って最後の配下を見据え、再び口を開く。
    「暑いときには怪談話で涼むのがお約束だよな」
     響が語った怨霊系の怪談が配下に執着し、精神をジワジワと蝕んでいく。
    「まだ終わりじゃない。魔力充填、照準はよしと……」
     自らの魔力を変換して生み出した魔法の矢を響は一斉に放ち、配下の全身を射る。
    「グ……ウオオオオ!!」
     瀕死の配下が響に突撃するが、響は冷静にサイキックソードを構える。
    「この刃は全てを切り裂く……終わりだ」
     響は二連の斬撃を放つ。
     1つの斬撃は敵の振り降ろした槍を弾き返し、もう1つの斬撃は身体を真っ直ぐと斬り、配下を斬り伏せた。
    「クソ、俺の配下が全員やられた……だがそれがどうした!! たとえ俺1人でも貴様らを倒す事など造作もない! ハッハッハ!」


    「俺の酒瓶を喰らえぇ!!」
     怪人は酒瓶をぶん回しながら凄い勢いで突進する。
    「クルル、皆を守ってネ!」
     魅羅の呼びかけに応えたウイングキャットの『枢』が怪人の一撃を受け止め、そのまま至近距離から肉球パンチを顔面に放つ。
     その一撃に怪人の動きが止まり、その隙に魅羅が動く。
    「怪人さんも本気みたいだケド、ミラ達の本気も負けてないヨ!」
     魅羅が指輪に魔力を込め、怪人に向けて突き出すと、放たれた眩い光が怪人の身体を蝕み一部を石化させた。
    「ヌグオオ……身体が動かぬ……!!」
    「第一楽章『業輪のしらべ』【九呪】」
     怪人の耳がアンジェリカの演奏を捉えた直後、怪人の身体が爆発し空高く打ち上げられた。
    「ナイスアシストダヨ、アンジェリカちゃん!! ……行くヨーッ!!」
     打ち上げられた怪人の全身にダイダロスベルトを突き刺したかと思うと、魅羅はそのまま怪人を地面に叩き付けた。
    「追撃する……少し気温を下げるとしよう」
     怪人の前に進み出た響が魔術を詠唱し、怪人の全身を凍りつかせた。
    「私も続くよ……早く終わらせないと、そこに倒れてる元配下さん達も大変な事になっちゃいそうだしね」
     初季は魔術で創り上げた無数の魔法の矢を展開し、怪人に向けて降り注がせる。
    「クソ、面倒な……俺のアフリカンな野望の邪魔をするな!!」
     矢を受けた怪人は高く跳び上がり、初季目がけて急降下する。
    「アフリカンキーック!!」
    「本当にふわっとした怪人だなぁ……まあいいや、とりあえずその野望とやらは阻ませてもらいますよ!」
     初季は腰のリボンを翼の様に前方に展開させ、怪人のキックをふわりと受け止めた。
    「一時の異常気象で出て来るんじゃないですよ!」
     そして初季は光の剣を力強く振るうと、放たれた光の刃が怪人を切り裂いた。
    「お前の元のご当地怪人名は最早知る由もないが……元の怪人であっても相見えぬ存在だっただろうな。なにせ俺達は未成年ばかり、だからな」
     砂蔵はクロスグレイブの砲門から巨大な砲弾を撃ち放ち、怪人の業を凍りつかせた。
    「ウゴゴゴ……まだまだ!! アフリカン魂は不滅だ!!」
     怪人は太鼓をドンドコ鳴らし、自らを鼓舞する。
    「滅茶苦茶な演奏だが、こんな真昼間の往来とかじゃなく、祭りとか盆踊りの会場なら歓迎され……いや、こいつらなら和太鼓を全部破壊して水を全部酒に変える位はやりかねえな」
     葉月は額に流れる汗を拭い、マテリアルロッド『Cassiopeia』に魔力を流し込む。
     杖に刻まれた五連星が魔力によって輝くと、葉月は杖を振るう。
    「踊るのが好きなんだろ? だったら好きなだけ踊らせてやるぜ」
     葉月が放った竜巻が怪人を巻き込み、超高速回転させながら地面に叩き落とす。
    「オーライ、オーライ……はいキャッチ!!」
     落下してくる怪人を待ち構えていた絹代はタイミングよく黒い瘴気を放ち、怪人を飲みこむと同時に肉体と精神を蝕んだ。
    「ゲフォ……」
     そして瘴気から吐き出された怪人が地面を頃がり。葉月は『Gladiolus』と冠されたクルセイドソードに紅いオーラを纏わせる。
    「この事件がご当地幹部の影響力によって引き起こされたものかは知らないが、とにかくお前の悪行を見過ごす訳にはいかないぜ……ここで確実に灼滅する」
     一閃。
     葉月が振るった刃が赤い軌跡を描き、怪人の身体を深く斬りつけた。
    「グホォ……おのれ、我等アフリカン怪人がそう簡単に敗れる訳が……」
    「アフリカンに無理やり染められた貴方には正直同情するけど……一般人が変な事させられてる状態も放置できないのよ」
     楠乃葉は怪人にそう告げ、『ダンプリングドラグーン』と名づけたご当地聖剣を右手に構える。
    「だから……ゴメンね」
     楠乃葉はそう言うと駆け出し、左手に苺大福餃子型のオーラを纏う。
    「苺大福餃子ダイナミック!!」
     怪人の身体を掴み上げた楠乃葉は全身の力を振り絞り、そのまま怪人を背負い投げする。
     そして怪人が地面に叩きつけられた次の瞬間、楠乃葉が放ったご当地パワーが怪人を大爆発させた。
    「グオォォ……俺は太鼓と踊りを広めてこの地をアフリカン化させるのだ……お前達みたいな連中に邪魔はさせないぞ!!」
     瀕死の怪人は高く跳びあげると、灼滅者達に向けて必殺のキックを放つ。
     灼滅者達はその一撃を受け止めると、一斉に攻撃を叩きこんだ。
     魅羅が構築した結界が怪人の身体を縛り、
     絹代が放った魔の弾丸が脳天を貫く。
     初季が放った死の魔法が全身を凍りつかせ、
     響が振るった光の刃が凍った身体を砕く。
     砂蔵が放った無数の光線が全身を灼き、
     葉月が杖から流し込んだ魔力で身体を吹き飛ばす。
     アンジェリカが放った霊力の網が全身をい縛り付け、
     楠乃葉がダンプリングドラグーンの緑色の刃を非物質化させ、怪人の正面から突撃する。
     楠乃葉の眼には強い光が宿り、必ず敵を灼滅するという意思が見て取れた。
    「吼えよ……龍鱗餃……神霊剣!」
     楠乃葉が放った聖なる斬撃が、怪人を斬る。
     その一太刀は怪人の肉体を一切傷つけなかったが、その魂を両断していた。
    「ク、ここまでか…………アフリカの地に栄光あれ!!」
     怪人は両腕を広げて叫び、勢いよく爆散していった。
     喧しい太鼓の音が再び響く事は無かったが、肌を焼く陽射しは相変わらず町に降り注いでいるのだった。


    「終わったか……これで少しでも、状況が良くなればいいんだけどな」
    「まあ今は起きた事件に対処する事しか出来ないっすけど、その内この現象の元凶と一戦交える事もあるんじゃないっすかね?」
     砂蔵と絹代がそう言いつつ、殲術道具を封印した。
    「そちらに倒れている方々、大丈夫でしょうか? 熱中症になっていなければいいのですけれど……」
    「ま、熱中症で悪い夢でも見たんでしょう……みたいな感じで納得してくれると嬉しいかな!」
     アンジェリカは怪人の元配下達を日陰まで運び、ヒールサイキックやスポーツドリンクで介抱していた。
    「元強化一般人さん達は大丈夫そうかな……それじゃあ皆、ボクが作ってきた苺大福餃子をよければ食べてね! そこの蕎麦屋のおじさん達もどうぞ!!」
     楠乃葉は持参してきたクーラーパックを開けて、仲間や周囲の一般人達に苺大福餃子を振舞っていた。
    「いいな。丁度冷たい物を食べたいと思ってた頃だ」
     甘い物好きの響は案外食いつき、苺大福餃子をクールな顔で頬張っていた。
    「初めて食ったが、これは美味いな。皮のもちもち感が半端じゃねぇ」
    「うーまーいぞーー!!」
     丁度良く冷えた苺大福餃子を葉月も美味しく頂き、魅羅もそのおいしさになんかテンション上がって叫んでいた。

     そんな感じで戦闘の疲れを癒し、元強化一般人達の介抱も終えた灼滅者達はこの町を後にする。
     アフリカン化した怪人の一体は灼滅されたが、未だに熱波は海岸沿いの町に降り注いでいる。
     灼滅者達はこの事件を解決するにはどうすればいいか考えつつも、とりあえず苺大福餃子を食べるのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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