暑い時には焼き鳥……じゃなくてムシカキを食え!!

    作者:のらむ


    「な……これは一体どういう事じゃ!!」
     焼き鳥屋の屋台を開いているじじいは、驚愕していた。
     じじいが用を足しに行っていた一瞬の間に、長年大切にしていた屋台が何者かの手によって乗っ取られていたのだ。
    「クカカカカ! 残念だったなじじいよ! この屋台はこれより、この俺様アフリカンムシカキ怪人の物だ! じじいは大人しく家に帰って茶でも啜っているのだな!! カッカッカ!」
     アフリカっぽい衣装を着、頭部が串焼きと化した怪人は、じじいの屋台を乗っ取り何かを焼いていた。
    「なんじゃと……? その屋台はワシが焼き鳥を焼くためのものじゃ!! そんな訳の解らぬ物を焼くためのものではない!!」
     じじいは果敢にも怪人に殴りかかるが、手が痛いだけだった。
    「ふ、馬鹿め。この俺様に刃向うなど7億年早いわ!!」
     そして怪人はじじいの焼き鳥臭い服を引き裂くと、瞬く間にアフリカっぽい衣装を無理やり着せた。
    「そしてこれは訳の分からぬモノではない、ムシカキだ!! このアフリカの串焼きとアフリカの衣装を広めることで、俺様はこの地をアフリカ化するのだ! カカカカカ!!」
     肉を焼きまくった怪人は高笑いを響かせながら、後ろに控えていた強化一般人達と共に、屋台を引いてどこかへ走り去っていく。
    「お、おのれ……ワシの屋台を返せ……!! というか、ムシカキって……なんじゃ……!!」
     怪人を追っていたじじいにも直ぐに体力の限界が訪れ、地面に倒れ込む。
     そして長年時を共にしてきた屋台を奪われた事による悲しみに襲われ、静かに男泣きするのだった。


    「ムシカキとは、東アフリカの代表的料理の1つです。レモン汁やしょうが、カレー粉などに漬けた牛肉を串に刺して焼いた料理で、味がはっきりしている為日本人の舌にもあった味付けとなっていますね。作ってきたので、よければ食べてみて下さい」
     西園寺・アベル(高校生エクスブレイン・dn0191)は灼滅者達にムシカキの乗った皿を差し出すと、そのまま話を続ける。
    「実は宮守・優子(猫を被る猫・d14114)さんから、ムシカキに纏わるアフリカン怪人が事件を起こすかもしれないとの情報を頂き、試しに作ってみたのですが……正解でした。このムシカキは、私にとある事件の情報を伝えてくれました」
     ムシカキが教えてくれた情報によると、現在日本海側の海岸近くの町の気温がアフリカ並に上昇しており、その熱波を受けたご当地怪人がアフリカン化して事件を起こしているらしい。
    「この事件にアフリカンパンサーの直接関与は無いようなのですが……このままでは恐らくあまり良くない事態となってしまうでしょう。そうなる前に、皆さんにはこのアフリカンご当地怪人を灼滅して頂きたいのです」
     事件を起こすのは、アフリカンムシカキ怪人という名のアフリカンご当地怪人である。
     恐らく元は焼き鳥のご当地怪人であったのだろうが、熱波の影響でムシカキの怪人になってしまった様だ。
    「この怪人はとあるおじいさんから奪った屋台を引いて、アフリカっぽい衣装とムシカキを無理やり広めています。その強引なやり方に、既に怪我をしてしまった一般人さん達も大勢います」
     灼滅者達はこの怪人が屋台を引いて練り歩いている所に、襲撃をしかける事となる。
    「怪人はアフリカっぽい強化一般人4人と共に、戦闘を行います。怪人はご当地ヒーローのサイキックに加え、熱々のムシカキを飛ばして攻撃するサイキック、鋭い串を何度も突き刺すサイキックを使用します」
     次にアベルは、強化一般人達の戦闘能力について説明する。
    「強化一般人達は皆、アフリカっぽい盾とアフリカっぽい斧を持ち、怪人の盾になるような戦闘を行います。まだ改造されてから日も浅いようで、KOされれば皆正気に戻ります」
     そこまでの説明を終え、アベルは灼滅者達に向き合う。
    「これで、ムシカキからの情報は全部です。料理の道を志す私としても、今回の事件を許す訳にはいきません。ここで確実に灼滅し、怪人の悪行をここで終わらせて下さい」


    参加者
    メルフェス・シンジリム(魔の王を名乗る者・d09004)
    黎明寺・空凛(此花咲耶・d12208)
    ティート・ヴェルディ(九番目の剣は盾を貫く・d12718)
    宮守・優子(猫を被る猫・d14114)
    伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)
    草壁・夜雲(中学生サウンドソルジャー・d22308)
    リリィ・プラネット(その信念は鋼の如く・d33874)
    霊界堂・壁虎(ロストとラストとそれでエンド・d34869)

    ■リプレイ


     町に訪れた灼滅者達は、激しい熱気をどうにかやり過ごしながら、屋台と怪人を探していた。
    「食べ物系のご当地怪人ってなんでこう、人に押し付けるが好きなのかしらねぇ……好き嫌いなんて人間いくらでもあるし、長年愛着がわいた物を簡単に手放す訳もなし……」
    「うむ……それに加えて、かなりの半端者だな。確かに己の力で無理やり広めるのはよく見られるが、屋台まで奪って自分の物とするとは……ウムム」
     メルフェス・シンジリム(魔の王を名乗る者・d09004)とリリィ・プラネット(その信念は鋼の如く・d33874)そう言って呆れつつ、周囲を見渡す。
    「全く、ただでさえ暑いのに暑苦しい奴の相手しなきゃなんねーのかよめんどくせぇ……さっさと出て来いよ」
    「確かに物凄い陽射しですが、伝統ある屋台を奪う悪行を許す訳にはいきません…………いました。あそこです」
     ティート・ヴェルディ(九番目の剣は盾を貫く・d12718)が軽く愚痴り汗を拭った直後、黎明寺・空凛(此花咲耶・d12208)がアフリカンムシカキ怪人を発見する。
    「これがアフリカ料理ムシカキだ! さあ早く食え今すぐ!! さあ!!」
     怪人は屋台を引きながら、結構な勢いでムシカキを押し売りしていた。
    「お、いたっすね……ムシカキひとつくださいなーっ」
    「俺もひとついいか?」
     屋台に真正面から接近した宮守・優子(猫を被る猫・d14114)と伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)がそう告げると、怪人は若干驚いていた。
    「……自分から来た正式な客は貴様らが初めてだ。誇るが良い」
     そう言って怪人が2人に渡したムシカキはやたらと熱かったが、味は中々だった。
    「ムシカキ、ムシカキね。蒸し牡蠣の仲間か何かか? ……いやまあ、重要なのはそこじゃないんだ。重要なのは僕は牛派では無く鶏派で、しかも君を灼滅しにきた灼滅者だって事なんだ」
     若干緩んだ空気の中、霊界堂・壁虎(ロストとラストとそれでエンド・d34869)があっさりそう言い放つと、怪人の眼が驚愕に見開かれる。
    「な、なんだと……貴様らは、俺様が憎むべき鶏派だというのか!?」
    「あ、そっちに怒るんだ」
     怪人は早速巨大な串を構え、灼滅者達に向ける。
    「俺様の邪魔をするつもりの様だがそうはさせんぞ! 覚悟するがいい、灼滅者!! クカカカカ!」
    「あ、ちょっとその前に」
    「……なんだ」
     恰好良さげなポーズを決めた怪人に、草壁・夜雲(中学生サウンドソルジャー・d22308)が声をかける。
    「ボク達は、この屋台を壊したくない。君達もムシカキを広める為に、屋台を壊したくないだろ。だから別の場所で戦おう」
    「まあ確かに……じゃあ近くにいい感じの河川敷があるからそこで」
    「うん」
     いい具合に話はまとまり、灼滅者達と怪人とひっそりと控えていた強化一般人達は、ぞろぞろと河川敷まで歩いていった。
     戦場にするには申し分ない広さがあるその場所に一同は向かい合うように整列し、怪人は再びビシッとポーズを決める。
    「俺たちの邪魔を中略……そうはさせんぞ! 覚悟するがいい、灼滅者!! クカカカカ!」
     そんな感じで戦いは始まった。


     戦闘が始まるや否や、怪人は超熱々のムシカキを灼滅者達に向けて何本もぶん投げた。
    「いきなり食べ物で遊んでんじゃないわよ」
     メルフェスは放たれた串の軌道を見切ると軽く身体を反らして避け、ムシカキを掴み取る。
    「ふぅん……ま、確かに味は悪くないわね」
     メルフェスは一瞬でムシカキを平らげると軽く息を吐き、尊大な態度で語り始める。
    「『飛翔する剣』の怪談……しっかりと聞きなさい。私の語りを聴ける機会なんて二度とないわよ」
     メルフェスが語り始めると、メルフェスの周囲に数えきれない程多くの剣が弾幕の様に浮かび上がり、それらが一斉に怪人たちを斬り裂いた。
    「私が続こう……戦闘形態(バトルモード)【覚】」
     メルフェスに続いて飛び出したリリィは巨大な十字架を振り上げ、配下の1人に勢いよく叩き付けた。
    「さて、もう一撃喰らわせましょうか」
     メルフェスは更に魔道書を開くと、そこに描かれた魔術を素早く詠唱していく。
    「終わりよ」
     そして生み出された爆発が敵陣を飲みこみ、配下の1人を気絶させた。
    「ムシカキ怪人様の邪魔をするな!」
    「ごめんだけど、邪魔させてもらうね……ボクも、ムシカキより焼き鳥の方が好きなんだよね」
     盾を持って突撃する配下の前に立ち塞がった夜雲は攻撃を受け止め、直後放った鋭い蹴りで反撃した。
    「……全くよ、好きなモン広めたいなら人様の屋台盗るなんてズルやってないで、自分で屋台用意しろって話だよな」
     ティートはそう言いながら魔道書を開くと、配下達を見回しながら魔術を詠唱する。
    「まずは雑魚から……っと。お前らせいぜい賑やかしにしかなんないんだから、もっと頑張れよ」
     そしてティートが放った魔術によって敵の肉体に原罪の紋章が刻み込まれ、その精神を負傷させた。
    「小癪な……ムシカキをもう一度喰らえ!!」
    「アンタさっきからどんだけ食ベモン粗末にしてやがるんだ!」
     放たれたムシカキを縛霊手で弾き返し、ティートはダイダロスベルトに炎を纏わせる。
    「串焼きにしてやるよ!」
     ティートが放ったダイダロスベルトは怪人に向けて弧を描くが、そこに跳びだした配下の全身に突き刺さった。
    「身を挺して庇うほどの上司か? こいつ……まあいい。誰だろうと燃やし尽くす!!」
     そしてティートはダイダロスベルトに纏った炎の威力を一気に高めると、配下は全身焦がされながら気絶した。
    「残る強化一般人はあと2人……早く終わらせよう」
     壁虎が放った鋭い打撃が配下の脳天を打ち、流し込まれた魔力が爆発を引き起こした。
    「さて、と……どんなに美味い物でも、無理やり広めたら良いことないって事を教えてやるぜ」
     順花は縛霊手に己の霊力を込め、敵陣の中央に突撃する。
    「人に自分の考えを押しつける悪い奴は退治しなきゃだな」
    「合わせるっすよ、おかーさん!」
     順花と、順花に続き飛び出した優子が、ほぼ同時に縛霊手を地面に叩き付ける。
     放たれた2つの霊力の網は怪人達を包み込み、動きを封じた。
    「隙が出来たな……このまま仕留めきる」
     順花は『白狼』と冠された白き刀に紅いオーラを纏わせ、更に攻撃を仕掛ける。
    「ちょいと貰うぜ?」
     放たれた紅き斬撃は配下の胸元を深く斬り裂き、生命力を奪い去られた配下はそのまま地に倒れ伏した。
    「おのれ……必殺鉄串百連突!!」
     怪人は高速の刺突の連打を放ち、灼滅者達の身体を抉る。
    「中々に強力な攻撃……ですが、すぐに回復します」
     空凛は白雪の様な美しさを持つ聖剣を構え、刀身に刻まれた祝福の言葉を読み上げる。
     聖なる祝福は優しき風へ変換され、空凛は仲間たちの傷を癒した。
    「ムシカキを宣伝するのなら、他の手段にするべきでしたね。自分の好みを強引な手段で押しつけては、かえってムシカキの悪評が広がるだけでしょう」
     空凛はそう言って、『天の絹織』と名づけられた眩い帯を展開させる。
    「悪いのはムシカキの存在すら知らぬ貴様らの方だ!!」
    「……人を傷つけ、他人に迷惑をかけ続ける所業。ここで終わらせましょう」
     そして空凛が放った帯は流星の如き輝きを放ち、最後に残った配下を貫いて気絶させた。
     怪人の顔には、僅かな焦りが浮かんでいた。


    「……ところで、さっき俺は鶏派と言ったが、別に牛も嫌いな訳じゃあないんだ。肉がつきすぎているわけでもなく、若干胃にもたれそうかな、と言ったあたりの具合のね」
     壁虎は唐突に話を滅茶苦茶戻しながら、無数の螺旋が付きささった無骨な十字架の様な武器を構える。
    「ならば素直に牛派に鞍替えする事だな」
    「断る。それでも僕は断然鶏派なんだよ……! 細身のラインかつ適度な肉がついている鳥の、ね。さっぱりとしていて低カロリーなね……だからここは譲れないんだ。分かった?」
     壁虎の言葉に、怪人は心底呆れた様子で串で出来た頭を振る。
    「貴様の戯言にはもううんざりだ……牛こそ至高の肉。そんな事も理解できぬ奴と交わす言葉は無い」
    「ただまあそれはそれとして豚は無いと思う」
    「それは俺様も思う」
    「だよね」
    「だろうな」
    「ところで何でこんな話してるんだっけ」
    「知らん」
    「だよね」
     実に有意義な会話を終え、壁虎は勢いよく十字架を真横に振るう。
     その一撃は怪人の身体に突き刺さり、思いきり吹き飛ばした。
    「おっと、こっちに来たか……だったら蹴り返すだけだ」
     吹き飛んだ先にいたティートは炎を纏わせた蹴りを放ち、怪人を思いきり地面に叩きつけて燃やした。
    「グ……俺様の邪魔をするな!」
     立ち上がった怪人は再び攻撃を仕掛けようと鉄串を振り上げるが、その直後に空凛が動く。
    「その動き、封じさせてもらいます」
     空凛の縛霊手『六合』から放たれた霊的結界は、怪人の全身を一気に痺れ上がらせた。
    「チャンス到来……ごめんね。焼き鳥の屋台を護るためにも、君の行動を見過ごす訳は出来ないんだよ」
     夜雲は構えた杖に己の魔力を流し込み、動きが止まった怪人に急接近する。
    「まずは一撃……多分まともに当たったら痛いよ」
     放たれた打撃は怪人の頭の串にヒビを入れ、流し込まれた魔力が怪人の全身を爆発させた。
    「ヌグオオ……!」
     苦しげに呻く怪人に、夜雲はクロスグレイブを構えて追撃を仕掛ける。
     怪人の懐まで潜り込んだ夜雲は、全身の力を集束させる。
    「人の屋台を乗っ取らずに普通に広めてくれれば、応援できたかもしれないのに」
     夜雲はそう呟くとクロスグレイブを全力で振り降ろし、怪人を一気に叩き伏せた。
    「最後に……もう一撃」
     倒れ込んだ怪人に上に跳び上がった夜雲は更に渾身の跳び蹴りを放ち、怪人の頭を地面に埋め込んだ。
    「グホォ……おのれ……!!」
     怪人はよろよろと立ち上がりながら串を振るうと、相変わらず高温のムシカキが灼滅者達に降りかかる。
    「……何故かしら。今日は全力が発揮されないわ。やっぱり私の琴線に触れる娘がいなかったからかしら。もっと小さい娘がいればねぇ……」
     メルフェスは標識で怪人を殴り飛ばしながらなんか呟いていたが、その内容は謎である。
     年齢と背が低い女子とメルフェスに一体どんな関係性があるのだろうか。謎である。
    「っと……結構な所まで追い詰めたっすね。ところであんたホントにムシカキ怪人っす? シャシリック怪人とかケバブ怪人とかシュラスコ怪人とかじゃないっすよね?」
    「そんなゲテモノと俺様を一緒にするな。俺様の名はアフリカンムシカキ怪人だ!」
    「それが確認出来て良かったっす。ホントに」
     優子は過去の激戦を頭の片隅で思い出しつつ、エアシューズを駆動させる。
    「まあぶっちゃけ何怪人だろうと叩き潰すだけっすけどね! 行くっすよ、ガク!」
     優子はライドキャリバーのガクと共に、怪人に突撃する。
     ガクの体当たりが怪人の身体を大きく揺らし、優子の放った鋭い跳び蹴りが足を弾く。
    「助太刀返しするぜ、優子……影に縛られろ!」
     順子は、足を払われ身体が浮いた怪人に影の触手を放ち、地面に繋ぎとめた。
    「……そういえば前はお代払ってなくて怒られちゃったんすよねー」
     優子はそう言って百円玉を怪人の懐に投げ入れ、片腕にデモノイド寄生体の強酸を纏わせる。
    「これで心残りは無いっす。あとは全力で灼滅するのみっすよ!」
     そして優子が放った寄生体の塊が怪人の腹を打ち、身体を溶かしていった。
     酸の熱さに地面をのたうち回る怪人の前に、巨大な十字架を担いだリリィが進み出る。
    「ここで終わりだ、我が強敵(とも)よ……君のその果てしなき熱意は、もっと違う事にぶつけるべきだったな」
    「黙れ! ご当地を支配せずして何がご当地怪人か!」
     瀕死の怪人は跳び上がると、リリィに向けてジャンプキックを放つ。
    「……ハッ!」
     その動きを冷静に見定めるたリリィは、十字架の打撃でキックの威力と相殺した。
     そしてリリィは聖碑文の詠唱と共に十字架の砲門を全て開くと、そこに光を集めていく。
    「灼き尽くす!!」
     放たれた無数の光線は怪人に降りかかり、その全身を焼き焦がした。
     そしてリリィは武器をハンマーに持ち替え、怪人を真正面から見据える。
    「やはり、私達が理解し合うというのは難しい様だ……だが私は、ダークネスと人類がいつか理解しあえる日が来ると信じている……今まさに君を灼滅しようとしている私が言っても、信じて貰えないかもしれないが」
    「カカカカカ……そんな事は、無理だ。俺様でも分かる。人類同士、ダークネス同士ですら理解しあっていないというのに、俺様達とお前らが分かりあえる筈がない。カカカカカ!」
    「…………」
     怪人は大きく笑うと串を振るい、灼滅者達にムシカキを放つ。
     灼滅者達はその攻撃を避け、あるいは受け止めると、一斉に攻撃を放った。
     メルフェスが放った斬撃が脚を抉り、
     優子が放った回し蹴りがこめかみを打つ。
     ティートが構築した結界が全身を痺れ上がらせ、
     空凛が放った輝く帯が胸を貫く。
     順花が放った白い斬撃が急所を断ち、
     壁虎が放った無数の拳が全身を打つ。
     夜雲が放った跳び蹴りが動きを鈍らせ、
     リリィがライドキャリバー『ユニヴァース』と共に突撃する。
     ユニヴァースが放った無数の弾丸が怪人を撃ち抜き、リリィはロケットハンマーのエンジンをフル駆動させる。
    「終わりだ……戦闘形態【撃】!」
     リリィが放った重い一撃は怪人の身体を叩き潰し、一気にその体力を削り切った。
    「グガガ……これで終わりか……アフリカン魂に栄光あれー!!」
     怪人は天を仰ぎながらそう叫び、派手に爆散していくのだった。
     こうして戦いは終った。
    「終ったわね。最後まで暑苦しい怪人だったわ」
    「全くだ。さっさとこの事件も解決されればいいんだけどな」
     メルフェスとティートがそう言って、殲術道具を封印した。
    「今は解りあえずとも、いつかは必ず……」
    「……行きましょうか。屋台、おじいさんに返しに行くんですよね?」
     リリィと空凛は河川敷を後に、他の灼滅者達もそれに続いていった。


    「じ、じじぃーー!! だ、大丈夫かいじじい!? じ、じじぃ……! じじぃ!! じじいーーーー!!!」
    「誰がじじいじゃ!」
     壁虎は屋台を探し求めるじじいに出会った瞬間感極まった雰囲気を出していたが、すぐに怒鳴られていた。
     灼滅者達の手によって無事に屋台はじじいに返され、じじいは肉を焼きまくっていた。
    「屋台も無傷でしたし、成果は上々ですね」
     夜雲は焼き鳥を食べながら、ほっと息を吐く。
    「そういえば、優子とは久々の依頼だったな。焼き鳥おごってやるぜ」
    「ホントっすか!? いやー、やっぱ持つべきは優しいおかーさんすよね~」
     順花と優子は仲睦ましげに焼き鳥を食べていた。
     そしてやるべき事を全て終えた灼滅者達は、戦果を手に学園へ帰還するのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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