アフリカ衣装に魅せられて

    作者:緋月シン


     福井県坂井市。
     花火大会を目前に控え、例年以上にうだるような暑さの続く中を、不意に意味のよく分からない大声が響いた。
     しかしそれを耳にした者の顔に浮かぶのは、苦笑である。
     確かにあまりの暑さに叫びたくなる気持ちは分かるし、すぐそこに海があるとなれば浮かれた気持ちもなるのも当然だ。
     だがさすがに少し落ち着くべきだろうと、声のした方へと視線を向け――予想外の光景に目を見開いた。
    「はーっはっはー! このアフリカの如き熱気! やはりこんな時に着るのはアフリカの民族衣装に限るな! む? 貴様、何故そんなものを着ている!? 貴様もこれを着んか!」
    「え? きゃっ、いやー!」
     アフリカの民族衣装のようなものを着ているよく分からない者に女性が襲われ、衣服を切り裂かれるとアフリカの民族衣装のようなものを着せられている。
     正直に言って意味がよく分からないが、事実そのようなことが起こっているのだから仕方がないだろう。
     そう、意味がよく分からないのだから仕方がないのだ。
    「ふむふむ……なるほど」
     別に眼福だとか思って凝視しているわけではなく、これは意味がよく分からないから分かるために見ているのであって――。
    「む、貴様もか!? 貴様も着ろー!」
    「あ、しまっ、ぎゃー!」
     しかしそんなことをしていれば当然逃げられるわけもなく。
     襲ってきたそれに、やはり衣服を切り裂かれてしまうのであった。


    「勝手に切り裂かれていればいいとは思うけれど、さすがに事件そのものを放置するわけにはいかないわね……」
     四条・鏡華(中学生エクスブレイン・dn0110)はそう言って一つ息を吐き出すと、意識を切り替えた。
     そうしてその場に集まった者達の顔を眺めた後で、改めて口を開く。
    「さて、というわけで、既に話を聞いたことのある人も居るでしょうけれど、どうやら日本海側の海岸近くの町で、アフリカンご当地怪人が事件を起こしているらしいわ」
     現在その地域の気温がアフリカ並みに上昇しており、その影響なのか、アフリカンご当地怪人となったご当地怪人たちがご当地のアフリカ化を目指しているらしい。
    「一応この事件にアフリカンパンサーが直接関わっているわけではないようだけれど、このままご当地のアフリカ化が進めば、何か碌でもないことが起こるのは間違いないでしょうね」
     その前に、アフリカ化したご当地怪人を灼滅する必要がある。
    「それで今回相手をするダークネス……ご当地怪人なのだけれど、正直に言ってしまえば、何の怪人なのかが分からないのよね。何かのご当地怪人だったのは間違いがなく、それがアフリカン化したものではあるのだけれど……まあ、名前がないと不便でしょうし、暫定的にアフリカン怪人とでも呼んでおきましょうか」
     アフリカン怪人はご当地ヒーロー及びマテリアルロッド相応のサイキックを使用してくる。
     ポジションはジャマーだ。
    「アフリカン怪人が現れる場所はとある海辺よ。時間的にもそれほど人の姿が多いわけではないようだけれど、ある程度の対処はした方がいいでしょうね」
     ちなみにアフリカン怪人の姿に関してだが、これは特に説明する必要はないだろう。朝っぱらの海辺にアフリカの民族衣装のような格好をした変なのが居れば、どう考えても一目で分かる。
    「もっとも厳密にはアフリカの民族衣装そのものではなく、何となくそれっぽいものでしかないのだけれど……まあ、どうでもいいことね」
     鏡華はそう言って適当な補足を加えながら、手元の資料を畳む。
     そして。
    「それじゃあ、よろしく頼むわね」
     そう言って、灼滅者達を見送ったのであった。


    参加者
    月雲・悠一(紅焔・d02499)
    マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    夢代・炬燵(こたつ部員・d13671)
    ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)
    東雲・菜々乃(暑さに負ける中学生・d18427)
    ルナ・ノース(小さき月光・d23379)
    葵・さくら(ツンデレ系女子高生・d34645)

    ■リプレイ


     真夏の日差しに焼かれながら、ふと月雲・悠一(紅焔・d02499)は空を見上げた。未だ朝早い時間だというのに、太陽は全力で人々を殺しにかかってきている。
     そこに居るだけでも嫌になってくるというのに――。
    「民族衣装を強要する怪人、なぁ……。なんつーか、こう……しょうもねぇとしか言えねぇな、ったく」
     これから相手にする者のことを考えれば、溜息の一つや二つ出てこようというものだ。
     そしてその言葉に同意するように、呟く者が一人。
    「まったく……面倒な怪人ね」
     ルナ・ノース(小さき月光・d23379)である。
    「ファッションぐらい好きに選ばせなさいよ。あんまり押しつけがましいと、アフリカの民族衣装そのものの品位が落ちるわよ……」
     もっとも、ご当地怪人とはそんなものだと言ってしまえばそれまでだが、それも相手が普通のご当地怪人であればの話だ。
    「ご自身が何のご当地怪人か分からないような相手には負けません」
     夢代・炬燵(こたつ部員・d13671)は、日本の伝統衣装、半纏の素晴らしさを知っているが故にそう断言するのである。
    (「……てか、ご当地怪人って変化するものなんだ……」)
     そんな話を聞くともなしに聞きながら、マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)はそんな思考と共にあることを考えていた。
     アフリカン化とか、イマイチイメージがしにくい、と。
    「アフリカの民族衣装ってワンピみたいなやつだっけ……?」
     ふと零れた言葉に、悠一が視線を向けた。
     もっとも普段であれば、悠一もそれに答えることが出来たかは微妙だが――。
    「とりあえずあんな感じだって理解しておけばいいんじゃないか?」
     そう言って指差した先に居るのは、それに答えるような姿の三人。
     ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)とポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)、それに東雲・菜々乃(暑さに負ける中学生・d18427)である。
     皆今回のために、それぞれ衣装を用意してきたのだ。
     まあとはいえ、ポルターのはあくまでもそれっぽいものでしかない上に、ファルケに至っては何故かスフィンクスの被り物を頭に乗せてたりしてるのだが。
     しかしそんなファルケへと、マルティナの視線が注がれる。特にその被り物を注視していたが……やがて小さく首を傾げると視線を外す。
     そしてその視線はそのままポルターへと移動し、すぐ傍に寄り添うエンピレオにも移る。エンピレオもまた、ポルターと同じような衣装を着ており……ふと自身の傍らに居る権三郎さんを眺めると、小さく頷いた。
    「……いける」
     いや何がだよ!? みたいな声が権三郎さんから聞こえてきた気がするが、きっと気のせいだろう。
     だが自分の足にじゃれ付いてきている権三郎さんを構いながらも、マルティナは小さく首を傾げる。
     結局のところ、それらを見てもイメージが固まることはなかったのだ。
    (「マルティナがあんましアフリカのこと知らないからかもだけど、ご当地のこれだーっていう何かが見えてこないってか……。いや、日本のアレな怪人見すぎただけかもだけどね……」) 
     どうもインパクトが薄めに感じちゃう不思議、などとも思うが……ともあれ。
    (「そうはいっても好き放題やらせるわけにもいかないし、退治退治……。ぶっちゃけ暑いし、暑いし、暑いし……」)
     この照りつける太陽の前では、割とどうでもいいことであった。
     そしてそれは皆にとっても同じことだ。何を好き好んでこんなクソ暑い中でどうでもいいものの相手をせねばならんのか。
    「……ま、愚痴ってもしょうがない。無駄な被害が出る前に、サクッと片付けるとしようぜ」
     と、悠一が何気なく視線を向ければ、ちょうど葵・さくら(ツンデレ系女子高生・d34645)が海岸の入り口に看板を設置しているところであった。
     そしてそれが現れたのは、ちょうどそんな時。海岸清掃作業中につき立ち入り禁止! と書かれたそれの、向こう側からであった。
     


     見た瞬間に全員が気が付いた。
     あ、こいつだ、と。
     そしてそんな怪人へと物怖じせず近寄ったのは、ファルケだ。
     しかしそれは、攻撃の為ではない。時間稼ぎや油断を誘うためであり――。
    「よう、俺達の同志だな」
     早速とばかりに、手を挙げ笑みを浮かべながら話しかけた。この後のことを考え、勿論友好的に、だ。
     だが。
    「同士、だと……?」
     ファルケが見せ付けた被り物を眺め、その顔が強張る。
    「そんな被り物を頭に乗せ同士などと……貴様アフリカを馬鹿にしているのか……!?」
     ぐうの音も出ない正論だ。さすがにそれで友好的に接しようというのは無理があった。
     というかどう考えても被り物が余計である。それさえなければワンチャンあったかもしれない。
     しかしそうこうしている間に、ルナが殺界形成の展開を終えていた。それを確認したポルターがサウンドシャッターを使用し、その場の音を遮断する。
     元よりあまり期待していたことではないので、そのための時間が稼げただけでも十分だろう。
     名前とここに来た経緯を聞ければさらによかったが……それはもう言っても仕方のないことである。
    「ふん、貴様の服を切り裂き、本物のアフリカ衣装というものを着せてやろう!」
     何やらやる気に満ちた様子の怪人が声高に叫んでいるが、しょうもないことに変わりはない。
     思わず溜息が零れ落ちるが、放っておくわけにもいかず――悠一が手に持つのは、スレイヤーカード。
    「イグニッション!」
     解放の言葉と共に、各々が殲術道具を纏い、周囲を確認してみれば、巻き込まれそうな人の姿もない。
     となれば――。
    「フルボッコタイムなの……」
     ぼそりとマルティナが呟いたのと、皆が一斉に動き出したのはほぼ同時であり、図らずもそれが、戦闘開始の合図となった。


    「そこまで言うんなら、どちらの衣装がアフリカンか勝負といこうぜっ。さあ、好きなアフリカ系衣装を切り裂けるのかっ?」
    「ふん、そのような紛い物、切り裂くのに躊躇など存在しないわ!」
     言葉の通り、怪人に容赦は微塵もなかった。振るわれる腕はファルケの服を狙い、切り裂こうと襲ってくる。
     だが下に水着を着込んでいるとはいえ、それを受けてやる道理もない。
     ファルケの喉が震え、歌が紡がれていく。それはサイキックによる攻撃ではなかったが、故にその戦意を示している。
     射ち出された帯が、僅かに動きの鈍った怪人を貫いた。
    「くっ……怪音波とは珍妙な……!」
     ちなみにファルケは死ぬほど音痴である。
     しかし戦場で変な事が起こるのは、割とよくあることだ。特に気にすることもなく、菜々乃は意識を眼前の怪人へと向けた。
     確かに事前に聞いていた通り、元が何の怪人であったのかは分からない。それでも推測しようとするならば、この周辺の名物の可能性が高いが……生憎とそこまでの余裕はなかった。
     怪人は既に目の前であり、思考を打ち切る。
     踏み込みと同時、怪人が反応するのよりも先に槍を突き出す。螺旋の如き捻りを加えながら、その身体を貫いた。
     だが身体に穴が空こうが、怪人は構わずに動く。菜々乃のそれも怪人的には駄目なのか、その服を切り裂かんと腕を薙ぎ払い――しかしそれが叶う事はなかった。
     その前に躍り出た一人……一匹? の身体がそれを受け止めたのだ。
     権三郎さんである。
     と、その状況にふとマルティナは閃いた。脳裏を過ぎるのは、先ほど目にした光景だ。
    「権三郎さん、せっかくだからアフリカンにしてもらうとか……」
    『なんでだよ、嫌だよッ!?』
     ぼそりと呟かれた言葉に振り返った顔は、そんな顔をしているような気がしたが、まあ多分気のせいだろう。
     それに盾役で頑張っていればそんなこともあるあるなどと思いつつ、一歩を踏み出し、跳躍。
     流星の煌きと重力を宿した足を、顔面へとぶち込んだ。
     そのまま即座に後方へと下がり、入れ替わるようにして悠一が前に出る。
     その動きに淀みはなく、恐れもない。
     それは仲間の支援を信じているというのもあるが、戦闘用の服ならば破られても安心だというのも大きいだろう。
    「……ってのは、野郎の感覚かな?」
     そうも思うが、だがならばこそと、地を蹴る。その戦意に反応し、燃え立つ焔の如く闘気が輝く。
     戦槌【軻遇突智】を握る腕にも力が入り、振るわれた腕を掻い潜り、さらに一歩。
     ロケット噴射の勢いを利用し、そのままぶん殴った。
     だがさすがに怪人もやられ続けているわけではないらしい。
     殴られながらも、構わず周囲を薙ぎ払った。
     しかしそれは強引だったが故に、隙もまた大きい。
    「アフリカ衣装を着てる事をトラウマにしてさしあげますわ」
     そこを見逃さず、一気に近寄ったさくらが影を宿して殴り飛ばし、ほぼ同時に踏み込んでいたルナが、赤色標識にスタイルチェンジしたそれで殴り倒す。
     直後に飛び退き、怪人の足元に忍び寄ったのは影。炬燵の足元より伸びたそれが鋭い刃に変わり、その自慢の衣装ごと斬り裂いた。
     だがそれでも構わずに、怪人は服を着せようと襲い掛かってくる。
     その強引なところは、やはり怪人らしいが――。
    (「……服を斬り裂かれたら困るし、憂いは断たないと……」)
     だからこそ、いつまでも放っておくわけにはいかない。
    「……アフリカンな衣装、動きやすくて結構綺麗…。……でも服破って着せようとしたあなたは成敗よ……」
     エンピレオのリングが光り、仲間の傷を癒している間に、ポルターは強酸性の液体を作り出す。
     そして。
    「……蒼き寄生の強酸……対象溶解……。……あなたのアフリカン衣装溶かしちゃうわ……」
     炬燵へと怒りを向けているそれの服に向け、ぶちまけた。


    「元々が日本の伝統衣装のご当地怪人でしたら、その熱意が利用されて強敵だったでしょう。そして無念でもあったでしょうね」
     言外に、だからこその結末だと告げながら、炬燵はボロボロの怪人をその影で以って包み込んだ。
     それは即座に破られてしまうが、現れた怪人の目が虚ろであったのは、果たして何を見たのか。
     しかしそんな怪人の元へと休みなく繰り出されたのは、意志を持つ半透明の布――セレーニアンクロス。ルナの切り裂かれた胸元を隠しながらも、全方位に広がった翼の如きそれが怪人の身体を絡め取る。
     もっとも捕縛していられたのは一瞬だが、されど一瞬。
    「……エンピレオ、一気に行くわよ…………」
     自身の腕を巨大な砲台に変えたポルターが、そこを狙い打つ。
    「……蒼き寄生の猛毒……対象侵食……」
     エンピレオが飛び掛かり、同時に撃ち放った。
     だが怪人も咄嗟に身体を動かし――その視界に映ったのは、赤色。悠一の身体より噴き上がるそれに、刹那意識と視線を奪われ――気付いた時には既に遅い。
     直後に死の光線と肉球パンチが叩き込まれ、さらに一撃。
    「暑さ程度でコロッと影響されやがって……何のご当地怪人だか知らねぇけど、誇りってモンはねぇのかよ!」
     弧を描く戦槌が、叩き込まれた。
    「つか、アフリカン化とかってアレだよね……。本当に怪人としての誇りがないってか、ダメダメってか……」
     そして二重の意味での追撃。
     ふらつく怪人へと、マルティナが言葉と共に炎を纏った蹴りを叩き込み、重ねて権三郎さんが斬魔刀で斬り裂く。
     さらには――。
    「ご自慢の衣装もぼろぼろのようですし、代わりにこれを差し上げましょう。きっと似合うのですよ?」
     そう言って菜々乃が投げつけたのは、女の子の着るような可愛い衣装だ。
     しかしお礼は必要ない。それは、これから貰うからである。
     振り上げるのは、異形巨大化させた腕。叩き込んだ。
     その衝撃に、怪人の身体が倒れかけ――だが堪えたところに、駆ける影が一つ。
    「歌エネルギー、チャージ完了」
     マイク代わりにしていたマテリアルロッドをくるりと回し、ファルケが地を蹴る。
     聴かせても心に響かないのならば、直接叩きこんで響かせるのみと、腕を振り上げ――。
    「刻み込め、魂のビートっ。しっかりと聞き入るといい、そしてカンドーの涙を流せっ。殺虫剤を浴びて激しくもだえるGのようにのたうち回りながらっ」
     ツッコミどころ満載の言葉を叫びながら――。
    「これが魂のサウンドフォースブレイクだっ」
     殴りつけると同時、魔力を流し込み――直後に爆ぜた。
     その衝撃によって、襤褸切れと化していた怪人の衣装がはらりと地面に落ち……その後を追うように、怪人もまた地面に倒れこんだ。
     そのままもう動くことはなく――それを確認すると、さくらは息を吐き出しながら、眼鏡を取ると汚れを拭く。
     意外と童顔で可愛らしい顔が覗いたが、本人はそれを気にするでもなく――。
    「ふ~片付きましたわね、早くシャワーを浴びたいものですわ」
     そしてもう一度息を吐き出すと、そんな決めゼリフを口にしたのであった。

     私服を切り裂かれてしまう者はいなかったが、さすがにアフリカっぽい衣装とかは目立つ。
     というわけで何人かは着替えたのだが……ところで炬燵は何故半纏に着替えたのだろうか。まあ多分大した意味はないだろう。
     ちなみにその間、悠一は一応不心得者を警戒していたものの、そもそもこの場に居る男は悠一とファルケだけである。
     そしてそのファルケはというと、せっかく海辺に来たんだし、泳いでいこーぜー、と服を脱ぎ捨て水着になるや否や海に向かって駆け出していたのだから、無用の心配だったと言えた。
     ついでに言うならば、海を相手に歌を聴かせてカンドーの波を起こすとか言ってなんか歌ってるが、アレはもう放っておいていいだろう。
     そんなことをしている間に、女子連中も着替え終わったらしく――ただ、遊ぶ気であったのはファルケだけではなかったらしい。
    「せっかくの海、皆さんで海水浴しましょうか!」
     そう言うさくらもまた、水着に着替えていた。先週の休みに購入したらしい、ビキニタイプのフリフリの水着を身に付け、少しだけ恥ずかしそうにしている。
     しかしそれだけではなく、その手には日焼け止めクリームやらスイカやらを持っているあたり、用意のいいことだと感心するやら苦笑が浮かぶやら、だ。
     そしてその近くでは、菜々乃が今日着た民族衣装を大事そうに持っていた。楽しげに口元には笑みが浮かんでおり、きっと今日はそれなりに楽しかったのだろう。あの衣装も、大切に仕舞われるに違いない。
     まあ、何はともあれ、皆特に問題になるような負傷は負っていないようだ。
     そのことに安堵を覚えつつ――ふと、悠一は海側へと視線を向けた。
     その先に何が見えるわけでもない。そこに広がっているのは、何の変哲もない海だ。
     ただ。
    「……軍艦島か。さっさと出処を叩かないと、また面倒になりそうだな……」
     その先の何処かにあるのだろうものを思い、考え、溜息交じりに呟くのであった。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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