京都宇治抹茶城の陣地

    作者:天木一

    「おお! 素晴らしい! 素晴らしい城やな! これを我が居城に?」
     深い緑色の大きな湯呑みの顔を持つ怪人が小さな城へ足を踏み入れる。
    「さようでございます。安土城怪人様より、この城と我等ペナント怪人5名を宇治抹茶殿へ下賜されるとのことでございます」
     緑に染まったペナント顔の男達が膝をついて頭を下げる。
    「それだけにあらず。数日後には、北征入道様のお力で、この城は迷宮化され、難攻不落の名城となるのです」
    「そこまでしてもらえるんか! 至れり尽くせりやな」
     感嘆の声をあげ、怪人は何度も頷いた。
    「よきかなよきかな。ここまで用意してもらったんや、ありがたくいただいとくわ。これから我は安土城怪人様の傘下や。よろしゅう伝えといてや」
    「ははっ」
     にんまりと笑って怪人は口元を扇で隠す。
    「ほんまええ城やで、でも一つ気に入らんとこがあるんや」
    「それは?」
     怪人が城を見渡すと、頭から緑色の液体を噴出した。それはべったりと壁に広がり一面を緑に染める。
    「色や! 我の城ならば全てを抹茶色に染めるべきや! これから全面を抹茶色に染めるで! 手伝ってや!」
    「ははーっ!」
     怪人がどろりと抹茶の液体をバケツに入れて山積みにしていく。
    「城を塗り終わったら周囲も染めて陣地を広げていかんとな。最終的には世界中を宇治抹茶で塗りつぶし、全て我の領土にしたるわ!」
     
    「安土城怪人の東海、近畿地方への制圧作戦はまだ続いてるみたいだね」
     能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が溜息を吐く。
    「城を怪人に与えて配下を増やす行動をまだ続けているようなんだ」
     城という魅力的な贈り物に怪人はあっという間に懐柔されてしまうようだ。
    「みんなにはこの新たな城を居城にしようとしている抹茶怪人を退治してきて欲しい」
     放っておけば城から力を得た怪人が更に勢力を広げていくことになるだろう。
    「場所は京都の宇治。敵は抹茶のご当地怪人と、その配下となったペナント怪人5体だよ」
     かなり外れにある場所なので一般人を巻き込む心配はないだろう。
    「問題はご当地怪人だね。城の最上階にある旗の力でパワーアップしてるみたいなんだ」
     力尽くでどうにかなる相手ではあるが、旗を外してパワーアップ効果を無くせば優位な戦いとなる。
    「敵は全員で城の色塗りをしているみたいだから、上手く作戦を立てれば各個撃破できるんじゃないかな」
     皆はばらばらになって塗装している。内部に抹茶怪人とペナント怪人2名。外部にペナント怪人3名が作業している。塗っていない場所や汚れた場所を塗ろうと集まってくるようだ。
    「また怪人の城の攻略だけど、今回は放っておくと迷宮化によって攻略が難しくなってしまうんだ。そんな事になったら後が大変だからね、今のうちに城を落として欲しいんだ。お願いするね」
     誠一郎の言葉に頷き、灼滅者達はどのように城を攻めるのかを相談するのだった。


    参加者
    灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)
    花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)
    三島・緒璃子(稚隼・d03321)
    御手洗・黒雛(気弱な臆病者・d06023)
    崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)
    高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857)
    大鷹・メロ(メロウビート・d21564)
    石神・鸞(仙人掌侍女・d24539)

    ■リプレイ

    ●宇治
     緑豊かな京都宇治。その中でも更に坂道を登った外れにある場所にそれは建っていた。
     炎天下の中、そこへ赤い塗料や塗る道具等の荷物を持って灼滅者達が到着した。
    「なかなかよか城じゃ」
     汗を拭いながら三島・緒璃子(稚隼・d03321)が小ぶりの城を見上げる。
    「旗は内部にあるようですね」
     隠れて周囲から偵察していた灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)が仲間に振り向く。
     城の外壁では、ペナント顔をした男達がべったりと緑の塗料を塗っている様子が窺えた。
    「城の迷宮化かあ。ご当地ヒーローとして色々な人に迷惑をかけそうで、誰かの笑顔が失われそうな事を放っておけないし、全力で倒しにいかないとね!」
     隣で野球のユニフォームを着た崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)は、帽子のつばで日差しを避けるようにして城を見上げ気合を入れる。
    「抹茶は美味しいよねっ。だけど城を抹茶の色にしちゃうのはセンスを疑うけど……」
     漂う抹茶の香りと、塗りたくられた城のギャップに大鷹・メロ(メロウビート・d21564)は微妙な表情で首を傾げる。
    「抹茶は宇治だけじゃないですから! ……じゃなくて、迷宮化なんてほおっておけないですからね。頑張りましょう!」
     地元が抹茶の名産な花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)が握り拳を作って力説すると、隣のまっちゃのまっちゃが自分が呼ばれたのかと尻尾を振ってわんっと吠えた。
    「なんだか一生懸命綺麗にしてる所に汚すのってとっても申し訳ないです……。でも迷宮化するのは困るので……頑張ります」
     申し訳なさそうにしながらも、御手洗・黒雛(気弱な臆病者・d06023)は荷物を広げて塗料を使う用意をした。
    「一面グリーンになってるなー、これはイチゴ色に塗り直さないとな!」
     ニヤリと笑う高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857)が、両手に持つ二丁の水鉄砲に赤いインクを充填する。
    「これは掃除のしがいがありそうな城ですね。ですが今日は汚すのがお仕事ですけれど」
     サボテンのような石神・鸞(仙人掌侍女・d24539)がインクの詰めて水風船を膨らます。
     準備が整うと正門の反対側へと移動し、行動を開始する。

    ●ナワバリ
    「要塞に塗装をするならもっと自然に溶けこむようにしないと、爆撃機のいい的ですよ」
     フォルケは緑の塗装の上から、赤いペンキでターゲットマークを描く。
    「あ、そこに居たら汚れちゃうよ、こっちにおいでまっちゃ」
     桃香が赤くペイントした壁に近づくまっちゃを手招きする。するとぺたりと赤い足跡を残しながらまっちゃは駆け寄ってくる。
    「あっはは! 楽しかー!」
     緒璃子は楽しそうに笑いながら、はしゃぐように大口径の水鉄砲を撃ちまくる。釣られるように霊犬のプロキオンも駆け回り、咥えたケチャップの容器に入ったインクを塗りたくった。
    「ぬってぬって塗りまくれ!」
     メロは大きく跳躍してべったりと落下するままに水鉄砲を撃ち、大きな範囲を一度に赤く染めていく。
    「城汚し頑張るのよっ、フラムも沢山ぬるんだよっ!」
     霊犬のフラムに呼びかけながら、メロは夢中になって楽しそうに隅々まで塗っていく。
    「うう……やっぱり悪戯してるようで罪悪感が……。でもお母さんはフルスイングでペイントボールとか缶投げてて楽しそうです」
     対照的に恐る恐るペイントボールを投げる黒雛は、隣でフルスイングで缶を投げるビハインドのお母さんに見蕩れる。
    「お母さんカッコイイ……! でもペナント怪人さんごめんなさい……っ」
     謝罪しながら黒雛は次のボールを手に取った。
    「赤色万歳、ナワバリいただきー!」
     麦が颯爽と二丁拳銃で城壁を塗りたくる。
    「お前達! そこで何をやっている!」
    「我々が塗った抹茶を汚したのは貴様らか!」
    「ここを宇治抹茶城と知っての狼藉か!?」
     狼藉者を発見し、緑のペナントの顔をした怪人3名が水鉄砲や大きなローラーを手に駆け寄ってくる。
    「こっこまーでおーいでー☆」
     麦は挑発しながら駆け出す。そこには仲間達が待ち構えていた。
    「ペナント怪人達が来たね! それじゃあ予定通りに!」
     敵に気付き水鉄砲を下げた來鯉は音を封じる結界を張る。
    「その顔を真っ赤に染めてさしあげます」
     鸞が投げた水風船がペナント怪人の顔に命中し、中のインクが飛び散って顔を赤く染めた。
    「貴様! 抹茶色の顔になんてことをするか!」
    「フラム行くよっ」
     跳躍したメロが蹴りを浴びせ、そこへフラムが咥えた刀で斬りつけた。
    「弱っとぉのから集中攻撃ばして、各個撃破と洒落込もうかの」
     ペナント怪人がよろめくと、続いて踏み込んだ緒璃子が雷を帯びた拳を叩き込んだ。怪人は腹部を凹ませて吹き飛んだ。
    「ごめんなさい……倒させてもらいます……っ」
     横から黒雛が鋭く槍を突く。切っ先がペナント怪人の胴体を貫く。怪人は槍を抜こうと手をかけた。
    「隙ありだ!」
     更に背後から、黒の旧海軍の軍服に戦艦を模した甲冑を纏った來鯉が錨状の槍を突き入れた。体内で槍が交差しペナント怪人は崩れ落ちる。
    「タライもあるよ! 思いっきりひっくり返したら大惨事かも」
     にんまり邪悪に笑った麦がタライを怪人の頭から浴びせた。視界を塞がれ怪人の銃口が何もないところへ向いた。
    「よくも大切なペナントを! 緑に染め返してやる!」
     ペナント怪人が水鉄砲を乱射する。
    「こちらでございます」
     鸞が背後から拳から出した針を突き刺す。呻き声を上げながら怪人が顔を振り向き銃を向けようとすると、フォルケが正面から銃弾を頭部に撃ち込んだ。
     3体の怪人が消え去るのを確認し、灼滅者は正門から城の内部へと侵入する。
    「それでは旗奪取の為、隠密行動に移ります」
     フォルケが蛇の姿となり、周囲の抹茶の塗装を体に塗りつけると、しゅるりと最上階を目指して階段を上っていった。
    「こっちは派手に城内を汚して陽動をしましょう」
     そう言って桃香はペンキをまだ真新しい緑色の室内にぶちまけると、他の仲間も続いて水鉄砲で赤いインクを撒き散らす。

    ●城攻め
    「これは何事や! さっき塗ったばっかりの壁が赤く染まっとるやないか!」
     どたどたと上の階から深い緑色をした湯呑みの顔を持つ怪人が下りてきた。
    「うちの城でなにしとるんや! せっかく丹精籠めて宇治抹茶の緑にしたいうのに台無しにしくさりよって、許さへん!」
     周囲の赤いインクが塗られた惨状に怒りを沸騰させ、頭から抹茶が沸き立つ。
    「者共であえであえぃ! このけったくそ悪い色を塗り返したれ!」
     背後に控えていた2体のペナント怪人が水鉄砲を構え、抹茶ジュースを発射した。赤いインクの跡を上書きしながら灼滅者へと迫る。
    「そうはいきません!」
     桃香が帯を伸ばし壁のように編み上げてジュースをブロックした。
    「遠慮するな、宇治抹茶はうーまいぞー!」
     抹茶怪人は頭からジュースを噴出し、桃香にシャワーのように降り注ぐ。それを駆け寄り跳躍したまっちゃが代わりに浴びる。怪人はそのまま頭を横に振って抹茶のシャワーを降らせる。
    「うわっ」
     それを麦が頭から浴びて顔を緑に染める。
    「っそーい!!」
     勢い良く緒璃子が手に持っていたインクの残ったバケツを投げつけ、プロキオンもチューブを放り投げた。
    「うぉっ! 何て危ない真似を!」
     慌てて避けた怪人の攻撃が止まる。
    「あ……なんか俺これからは『とちのきグリーン』で活動していこーかなって気持ちー」
     ふらりと麦が赤い水鉄砲を捨てて、抹茶の入った水鉄砲を拾って仲間へ銃口を向ける。
    「抹茶を食らっちゃってるね、ミッキー!」
     來鯉が呼びかけると、霊犬のミッキーが瞳輝かせ麦の意識を覚醒させた。
    「そうれそうれ、全員を抹茶に染めて我が陣営に加えてやるわ!」
     抹茶怪人がもう一度抹茶シャワーを吹き出すと、來鯉は槍を振るって氷柱を飛ばし液体を凍結させる。
    「あの抹茶を防がないと……」
     落ちてくる飛沫をお母さんが吹き飛ばすと、黒雛は黄色い標識を突き立てた。すると仲間達に力が漲る。
    「撃て撃て! 視界全てを抹茶で染めろ!」
     続いてペナント怪人達が水鉄砲で撃ち込んでくる。
    「まずは守りを固めないとねっ!」
     メロが光輪を投げると、小さく分裂した光輪が周囲に漂って抹茶ジュースを弾く。
    「全身を赤く染めさせていただきます」
     鸞が水風船を投げ、飛沫から抹茶怪人が避けている間に間合いを詰めた。そして針を脇腹に突き立てようとすると、その腕を抹茶怪人が抑える。
    「お前! 見事な抹茶色をしているくせに何故こちらを攻撃する! こちらの陣営だろう!」
    「これはサボテン色です」
     針が伸びて脇腹を貫き、緑の液体が漏れ出てくる。
    「あーやっぱりイチゴが一番だな! イチゴの国栃木からやってきた! 栃木のイチゴをよろしく!」
     頭を振って麦は拾い上げた水鉄砲から赤い光線を撃ち込む。
    「栃木なんて田舎知るかいな! その品の無い赤はやめや!」
     それに対して抹茶ジュースを飛ばして怪人は相殺する。だが急に抹茶ジュースの勢いが弱まった。そのまま赤が押し切って怪人の体を撃ち抜く。
    「な、なんやこれは! 急に力が抜けたで!?」
     先ほどまでとは抹茶の勢いが目に見えて衰えていた。
    「宇治抹茶怪人様!?」
     慌てて駆け寄るペナント怪人の頭部が撃ち抜かれた。緑の液体を撒き散らして爆散する。
    「ターゲットの奪取を完了。これより合流します」
     階段の上にはライフルを構えたフォルケが膝を突いて見下ろしていた。

    ●城主
    「上に敵やと!? 旗を奪われたんか! 奪い返せ!」
     体ほどの大きなローラーを手にしたペナント怪人が、地面を緑に塗りながらフォルケに向かって駆け出す。その前にまっちゃとお母さんとミッキーが立ち塞がり、代わりにローラーでべったりと抹茶を塗りつけられた。
    「抹茶をそんな風に使うなんて、もったいないです!」
     桃香がギターを弾くと楽しげな曲が活力を与え、抹茶の魔力を打ち消す。
    「……ペナントって染めがいあるよね……インクに沈めてたっぷり吸い込んでもらって……」
     悪巧みしている顔で麦がペナント怪人の顔にバケツのインクを掛けると、腰に腕を回して持ち上げる。そして跳躍すると頭から緑の床へと叩き付けた。
    「うん! 前衛アートだね!」
     満足そうに麦が頷くと、その体に抹茶の団子が張り付いた。
    「せっかくいただいた部下になんちゅうことを! 抹茶は色んなもんに使えるんや、こうやって塗るのも有効利用ってやつや!」
     憤怒の顔で抹茶怪人が動けぬ麦の元へ迫る。
    「抹茶は塗料に使うようなもんじゃないし、そんな農家の人に失礼な真似許す訳にはいかない!」
     横から突っ込んだ來鯉が縛霊手で殴りつける。怪人はバランスを崩して地面を転がる。起き上がろうとした体には霊糸が巻き付いていた。そこへ踏み込んだ緒璃子が拳を胸に当てた。だが同時に抹茶怪人もジュースを噴出し、両者が吹き飛ぶ。
    「あー、ぞっぷい濡れたが」
     緒璃子は抹茶ジュースでびしょびしょになった胴着をはだけると、すると中に着込んでいたビキニの水着が見える。その様子に男子達の視線が集まった。
    「ん? いけんした?」
     無頓着に緒璃子はそのまま身丈程もある大太刀を引き抜く。
    「くっ、そんなもんで我を惑わそうなんて十年早いで。勝手に人ん城にあがって好き放題、許さへん!」
     思わず同じように胸を注視していた怪人も、抹茶アイスに抹茶ゼリーと抹茶尽くしのパフェを食べて起き上がる。そして団子を投げつけた。
    「ご、ごめんなさい……!」
     相手の剣幕に黒雛は咄嗟に謝りながらも帯を操る。それは緒璃子の胸に巻きつき、飛んでくる団子を弾いた。
    「謝るくらいなら入るな! 入った以上はここで朽ち果てるか、我の軍勢となってもらう!」
     抹茶怪人がジュースを収束して砲弾のように発射してくる。
    「全部抹茶色にしちゃうようなセンスの軍勢には入りたくないよっ!」
     ローラーダッシュしたメロが射線上に入り、炎を纏った足で蹴り上げる。ジュースが蒸発し消し飛んだ。
    「これ以上抹茶の染みが付いては取れないかもしれませんので、このあたりで終わりにしましょう」
     背後に忍び寄った鸞が怪人の首筋に針を突き刺す。ドロリとした緑の液体が流し込まれ、怪人の湯呑み顔がどす黒く変色していく。
    「な、なんやこれは! 顔が、抹茶の色からまるでほうじ茶色みたいになっとる!?」
     怪人は顔に抹茶を塗ってなんとか元に戻そうとする。
    「顔塗るの1人じゃ大変っしょ?」
    「僕達が手伝うよ!」
     麦と來鯉が赤いペンキで塗られた床を踏み、跳躍して怪人の顔に飛び蹴りを放った。
    「ぐぁっ赤いペンキがぁ!」
    「狙ってくれといわんばかりのターゲットマークですね……」
     フォルケが照準を定め、息を止めて引き金を引いた。放たれる弾丸が真っ赤なペンキの足跡を貫き、怪人の顔に穴が開く。
    「こ、こぼれる! 抹茶が溢れ出てしまう!」
     団子で穴を埋めようと怪人がもがく。
    「そんで終わいけ?」
     間合いに入った緒璃子が大太刀を上段に構える。怪人は見上げて静止すると、一気に動いて至近距離から抹茶ジュースを撃ち出す。同時に緒璃子が刃を振り下ろし、ジュースごと怪人の体を両断した。
    「我が陣地で負けるんか……だが宇治にはまだまだ抹茶怪人がおる。覚えておけ!」
     怪人は爆発する。その体から大量の抹茶ジュースを撒き散らしながら。

    ●緑と赤
     戦いは終わり、抹茶ジュースを全身に浴びた灼滅者達が立っていた。
    「迷彩せずとも、迷彩カラーになりましたね」
     フォルケは自分と仲間を見渡して緑の斑模様がついた服の感想を述べる。
    「こほっこほっ、……うぇっ口の中が苦いです……」
     黒雛は口に入った抹茶の濃い味に顔をしかめた。
    「すごい抹茶の匂いが……」
     桃香が服を引っ張って匂いを嗅ぐ。すると呼ばれたと勘違いしたまっちゃが駆けて跳躍した。
    「ち、ちが……」
     思わず抱きとめたその体に赤と緑の足跡がぺったりとスタンプされた。
    (「抹茶で芋羊羹食べたか……」)
     その隣で緒璃子は汚れも気にせず、お腹が減ったなとぼんやり抹茶に合いそうな和菓子を想像していた。
    「ナワバリは緑の方が多くなったけど、戦いは俺らの勝ちだなっ!」
    「甲冑まで緑にされちゃったけど、抹茶なら落ちるよね」
     頭まで緑に染まった麦が來鯉と一緒にガッツポーズを作り、赤から緑へと染められた甲冑とミッキーを見下ろした。
    「うわーべとべと……だけど楽しかったねっ」
     メロは頬についた抹茶を拭い、フラムを撫でながら笑みを浮かべる。
    「あまり変わらない気もしますが、皆様こちらへ。ここを出る前に皆様の服をクリーニングいたします」
     鸞は自分の緑の肌を見ながら首を捻り、仲間の服を綺麗にしていく。
     緑と赤に染まった城に背を向け、汚れの無い綺麗な服で暑い日差しの中、灼滅者達は抹茶のデザートでも食べて帰ろうかと歩き始めるのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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