妖艶なる美女チア軍団!

    作者:飛翔優

     ショッピングセンターのベンチで休んでいた久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)は、男子学生たちの会話を耳にした。

    ●美女チア軍団
     なあなあ、知ってるか? あの空き地の噂。
     そうそれ! 運動部の連中がたまに自主練に使ってるっていう、空き地の噂!
     先輩も利用してた場所らしいんだが……なんでも、練習してるとすっげぇチアリーダーがたちが応援してくれるらしいな。
     もちろんそりゃ嬉しいんだが、そのチアリーダーがスタイル抜群格好も際どくて……どうも集中できんらしい。が、文句を言った奴は戻ってこないらしくて……。

    「……戻ってこれない、との言葉は気になりますね」
     撫子は手早くうわさ話をまとめ、立ち上がった。
    「知らせましょう、なにか起きてからでは大変です」
     エクスブレインに知らせるため。真実ならば解決策を導かなくてはならないのだから……。

    ●夕暮れ時の教室にて
    「それでは葉月ちゃん、後をよろしくお願いします」
    「はい、撫子さんありがとうございました! それでは早速、説明を始めさせていただきますね」
     倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は撫子に頭を下げたあと、灼滅者たちへと向き直った。
    「とある郊外の空き地を舞台に、次のような噂がまことしやかにささやかれています」
     ――美女チア軍団。
     まとめるなら、その空き地でスポーツの練習をしていると、どこからとも無く美女チア軍団がやってくる。
     何らかの理由で文句をつけに行ったものは、何故か戻ってこなくなるという……。
    「はい、都市伝説ですね。退治してきて下さい」
     地図を広げ、現場となる空き地を指し示した。
    「三方が塀に、一方が小さな柵に囲まれているこの場所でスポーツの練習を行えば、都市伝説は出現します。後は退治すれば良い、という流れですね」
     美女チア軍団の人数は七体。姿はシャツもスカートも丈が際どい、スタイルの良い美女。七体合わせて、灼滅者八人ならば倒せる程度の力量。
     総員妨害能力に特化しており、応援による魅了、チアダンスによって攻撃力を削ぐ、抱きしめることにより拘束する……といった技を使い分けてくる。
    「以上で説明を終了します」
     地図などを手渡し、締めくくりへと移行した。
    「何故このような噂が生まれてしまったのかは分かりません。ただ、件の空き地は伝統的にスポーツの自主練場所として使われてきた……とも聞いています。ですので、これから先に生まれてくるアスリートたちのためにも討伐を。何よりも無事に返って来てくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)
    神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)
    卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)
    紫藤・武(瞬撃断迅・d04340)
    今井・来留(藁縋る・d19529)
    天目・宗国(生太刀の刀匠・d24544)
    月影・瑠羽奈(蒼炎照らす月明かり・d29011)
    夕霧・絢莉彩(遊び呆ける化け物・d34941)

    ■リプレイ

    ●頑張る者へ届ける言葉
     燦々と輝く太陽、きらめく世界!
     どことなく踏み固められている雑草が艶やかに生の証を示している空き地の中、夕霧・絢莉彩(遊び呆ける化け物・d34941)は一人かく語る。
    「これは、ひと気のない暗がりには人を食べちゃう幽霊が出てくるんだよ? っていうお話で……」
     今はまだ灼滅者たちしかいない空き地に、誰かが足を踏み入れることがないように。
     誰かの命が危機にさらされることのないように。
     風が、車が遠ざかっていく音を運んできた。
     問題ないだろうと、神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)は仲間たちに視線を送りつつ口を開いた。
    「チアといえば、アメリカなどが有名でございますね。近年ではスポーツ化が進んでチアリーディングの大会も盛んになっていると聞きます」
     今回の敵……美女チア軍団の都市伝説を思い浮かべながら。
    「ともあれ、元々は応援団がやはりその礎でございます。やや刺激的な衣装もその一環なのでございましょう。その意味では男性が見惚れてしまうのも止む無い部分があるのかも知れませんね」
     落ち着いた声音で、口元を隠していた扇子を閉ざし。
    「しかし、都市伝説である以上は危険な存在。被害が拡大する前に対処すると致しましょう」
     呼び出すため、バレエの練習を始めていく。
     呼応するかのように、月影・瑠羽奈(蒼炎照らす月明かり・d29011)はテニスラケットとボールを構えた。
    「テニス……テレビとか、学校で練習している人を見ましたし、きっと大丈夫でしょう。えっと、こんな感じでしょうか!」
     壁当て練習をしようとして、なれないのか空振ったりぶつかったり。されど、すぐにコツを掴んだのか、徐々に俊敏な壁打ちへと変わっていく。
     一方、体中に包帯を巻いている卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)は腕をしならせた。
     下から放られたボールが、右下の方角へと沈んでいく。
     喜ぶでもなく、ただ淡々と新たなボールを取り出し、シンカー練習を継続していく。
     少し離れた場所では、紫藤・武(瞬撃断迅・d04340)がリフティングを重ねていた。
    「ほいっ、とっと……」
     軽く数回蹴った後、大きく上に蹴り上げる。胸でトラップした後、膝で弾き、回転して後ろ足で打ち上げた。
     概ね問題なく練習を重ねていく仲間たちを、久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)は応援する。
    「良い感じですよ~、もうちょっと頑張って~」
    「フレーフレー、ガンバーレ!!」
     重ねるように、複数人の女性の声が聞こえてきた。
     表情を変えた撫子が視線を向ければ、公園の片隅に七名のチアリーダー。
     総員、シャツは胸下辺りまでな上にひらひらしていて、スカートも太ももも顕なほど短い……そんな格好。
     彼女たちは灼滅者たちが向け始めた視線など意に介さず、黄色いぽんぽんを軽妙に振るっていく……。

    ●対決! 美女チア軍団!!
     撫子は瞳を細め、着物の袖からカードを取り出し軽くくちづけした。
    「殺戮・兵装」
     定められたワードを唱え、身長よりも長い十文字鎌槍を召喚し構えていく。
    「応援してくれるのは嬉しいのですが、もうちょっと静にお願いします」
    「な、中々過激な服装なさいますのね……。わたくしはあそこまで思い切れませんわ……」
     一方、瑠羽奈は風が吹けばスカートどころかシャツもめくれてしまいそうなチアリーダーたちの姿を前にたじろいだ。
    「貴女がたのせいで集中できないと苦情が出ておりますわ、即刻ご退場頂きましょう? 応援とは、応援されるメインの方より目立ってはなりませんし、応援される方の迷惑をしてもなりませんのよ!」
     されどすぐさま我を取り戻し、負けず劣らずきわどいミニスカートを翻しながら殺気を放つ。
     殺気は、特に先頭に位置するチアリーダーを揺さぶった。
     最初に狙うべき相手は彼女だと、撫子は桜の花弁のように儚い炎の残滓を散らしながら踏み込んでいく。
     踊り続ける先頭に位置するチアリーダーに、炎盛る十文字鎌槍を振り下ろしていく。
     掲げられたポンポンに受け止められながらも、蝕む炎を与えることには成功した。
    「服装が際どければ良いと言う物でも無いんですよ。男性が気になってしまうのもわかりますが」
     静かな言葉を告げると共に十文字鎌槍を引き、後方へと一旦引いた。
     代わりに、慧瑠の放つ帯がそのチアリーダーへと向かっていく。
     左腕をかすめていくさまを眺めながら、慧瑠は告げた。
    「近年ではここまで露骨な衣装というのは早々ございませんよ。スパッツを着用することすら珍しくございません」
     もっとも、彼女たちの履いているものはまだ見えていない。だが、性質を考えれば、スパッツでなくともスコートのたぐいであろうか?
     もっとも、シャツの下は怪しいところ。それこそ、先ほどの動きを見るに何もつけていない可能性すら存在している。
    「確かに、チアリーダーは可愛ければそれでよい、という言葉を残した方もいらっしゃいますが。女性としての慎みに欠ける者は下品でもございますよ」
     静かに、落ち着いた調子で叱りつけ、帯を手元に引き戻した。
     が、チアリーダーたちに変化はない。
     呼吸を重ね、声を合わせ……四人が足を上げるなど激しいチアダンスを踊り、三人が撫子を慧瑠を、瑠羽奈を応援し始めた。
     治療と内包されている力に抗う力を与えるため、武は警告を表す交通標識を掲げていく。
    「じっくり攻めていこう。油断しなけりゃ問題ないはずだ」
    「心奮わす熱視線、されど都市伝説の物ならば、凍てつき露散る氷の中へと沈めよう」
     包帯を解き細マッチョのイケメン姿を披露している泰孝はチアリーダーたちの中心に魔力を送り込み、静かな調子で氷結させた。
     ポンポンが軽く凍りついていくさまを眺めながら、天目・宗国(生太刀の刀匠・d24544)は刀を横にかまえていく。
    「間合いが離れても、こっちは斬れるのよ」
     言葉とともに、虚空を横一閃。
     刃の軌跡は風刃を作り出し、炎に抱かれているチアリーダーを斜めに裂く。
     直後、瑠羽奈が大地を蹴る。
     スカートを翻しながら……されど見せることはなく炎に抱かれているチアリーダーの横を抜け――。
    「……一体目、ですわ」
     ――振り上げていた巨大な十字架を構え直し、消滅していくチアリーダーを横目に元いた場所へと戻っていく。
     すかさず、今井・来留(藁縋る・d19529)は右端にいたチアリーダーへと視線を向けた。
    「あはは♪ 次はあなただよお……あはは♪」
     笑いながら、刃渡り二尺五寸超えの鞘付きまぐろ切包丁を掲げ走りだす。
     来留のナノナノがハートを飛ばす中、次の対象は右端であると示された。
     すかさず、絢莉彩はッ巨大な十字架をつきたて右端を中心に光線をばらまいていく。
    「この調子で、どんどん行っちゃおー」
     秘められし制止の力に抗うかのように、五人のチアリーダーが応援を始めた。
     ただ一人、右端の個体だけは、軽やか無し撮りで撫子に近づいていく。
     離脱しようとバックステップを踏む撫子に手を伸ばし、優しく抱きしめようと引き止めて……。

    ●頑張る者を応援するチアリーダーの物語
    「まあしかし美人でスタイル良くてきわどい格好のチアっていうけど、うちの学校そういう人割と多いからなあ。正直、だから? って感じだな」
     静かに呟く武が操る、影刃。
     戦場を舞い踊り、敵を、衣装を切切り裂いていく。
     まばゆい程に白いスコートはおろか肌の色をした膨らみすらわずかに覗かせる状態へと追い込んでしまった光景を前に、武は頬をかいた。
    「あー、きわどい格好がよりきわどく……狙ってた訳じゃないんだがなあ」
     その横を、絢莉彩の放つ触手のような影が駆け抜けた。
     影は衣装を切り裂かれたチアリーダーに巻き付くなり、もぞもぞと蠢き始めていく。
     苦しげな声が聞こえてきた。
     どことなく頬が紅潮していくようにも思えた。
    「……都市伝説の美女軍団にはちょっと怖いかもね……っと」
     ぼんやりと感想を述べた時、衣装を切り裂かれていたチアリーダーは影に抱かれるようにして消滅。
     残るチアリーダーのうち、四体は前衛を応援し始める。
     一体は瑠羽奈との距離を詰め……。
    「させませんわ」
     抱き寄せようと伸びてきた手を弾き、踏み込み、炎の膝蹴りをかましていく。
    「次はこの方、ですわ」
    「あははははは♪」
     呼応し、来留が踏み込んだ。
     ナノナノのハートが瑠羽奈へと飛んで行く中、自身は刃を鞘に収め……一閃!
     重ねてきた力が、対象と定めていなかったチアリーダー以外も蝕んでいたのだろう。驚くほど簡単に、そのチアリーダーは両断され……。
    「……あは♪ あはははははは♪」
     来留は更にテンションを上げ、残る四体のうち右前に位置する個体に向かって駆け出した。
     軽快に、されど力強く刀を振り下ろしたなら、宗国がロケットハンマーを点火。
    「せえ……のっ!!」
     勢いのままに振り回し、示されたチアリーダーの胸部を強打。
    「自慢のスタイルがぺちゃんこなのよ」
     勢いのままにかっ飛ばし、空き地の塀へと叩きつけていく。
     チアリーダーは力なく崩れ落ち、消え去った。
     残る三名はポンポンを振り回し、チアダンスを披露していく。
     あいかわらずきわどい、けれど見せないダンスを前に、泰孝は静かに言い放った。
    「色香にて惑わす蛮行、若人未来、奪い去りし狼藉許さぬ」
     言葉とともに、宗国を光で照らしていく。
     誰一人として倒れさせたりはしないと、武の回復補助を行っていく。
     治療を厚く重ねたからだろう。誰かが惑わされ、致命的な行動を取ることはなかった。
     攻撃の勢いが減じられたこともなかった。
     反撃も、数が減れば弱々しい。
     応援の言葉を耳にしながら、今、このタイミングは攻撃に回れると泰孝は魔力を送り込む。
     大気を凍てつかせ、左前に位置するチアリーダーを氷の柱の中に閉じ込め、粉砕した。
    「はい、お次はこっちなのよ」
     即座に、宗国は左側のチアリーダーににじり寄る。
     ロケットハンマーを振り回し、側頭部を強打。
    「鉄塊の気合注入、往復でどうぞーなのよ」
     チアリーダーを追いやった先、慧瑠が拳に影を宿していた。
    「さあ、終わらせてしまいましょう」
     真っ直ぐに拳を放ち、向かわせたのは、絢莉彩が一人佇む場所。
     絢莉彩は放つ、妖怪たちの幻影を、人形たちを。
     抱かれるようにして、左側のチアリーダーは消滅した。
     残る一体も満身創痍。
     たおやかな足取りで、撫子が近づいていく。
    「そろそろ終わりの時間ですね」
     穂先に走る炎の残滓を桜の花弁のように散らしながら、すがるように手を伸ばしてきたチアリーダーに向けて突き出した。
     貫かれたチアリーダーは足元をふらつかせ、ゆっくりと両腕の力を抜いていく。
     消滅の気配を感じ、絢莉彩が静かに歩み寄った。
     穂先を引きぬかれ膝を突くチアリーダーと目線を合わせ、語りかけた。
    「良かったら、僕の所に来ない? 皆で一緒にあそぼうよ!」
     チアリーダーは頷き、光に代わる。
     光は七つに分裂し、虚空で輪を描きながら舞い踊りながら絢莉彩を抱き――。
     ――それは、頑張る者を応援するチアリーダーたちの物語。
     吸い込まれるようにして、絢莉彩が語る物語へと変貌した。

     治療などの事後処理が行われていく中、宗国がひとりごちていく。
    「なんというか残念なほど場違いだったし、今度は迷わずスタジアムにでも出るようにするのよ。その方がきっと誰も文句なんか言わなかっただろうから。適材適所って大事なのよ」
     もしもスタジアムなどといった場所ならば、あるいは受け入れられていたのだろうか?
     そんなことを話したり泰孝が弁明を行ったりする中、治療は終わる。
     帰還の時がやって来る。
     一足早く道路に出ていた来留は、駅の方角へと視線を向けた。
    「それじゃ、帰ろっか。あはははは♪」
     もう、この空き地が都市伝説の脅威にさらされる事はない。これからは今までどおり……アスリートを育てていく場所として、人々に愛され続けていくことだろう。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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