臨海学校2015~真夏の佐渡ヶ島でキャンプを

    作者:天木一

     海に囲まれた佐渡ヶ島に真夏の日が照りつける。焼け付くような日差しの中、人々は逃げるように影を歩いていた。
    「最近異様に暑いねぇ」
    「ああ、これじゃあ仕事にならん、堪ったもんじゃないよ」
     道端で日陰に入り腰をかけ、農作業をしていた2人が帽子を取り首に巻いていたタオルで汗を拭う。
    「何でも40度越えが連続してるらしいじゃないか」
    「近所のじいも倒れたって話だ。これ以上続いたら洒落にならん」
     水筒から水を飲み、頭から浴びる。垂れた液体がぽたりぽたりと地面を濡らしていく。
    「そういや聞いたか?」
    「なにが?」
    「廃坑でな見た事もない植物がいっぱい繁殖しとるんだと!
    「ふーん、暑さで変になったか」
     そんな噂話をしながら水を飲み干す。
    「さて、それじゃあ仕事の続きに戻るか」
    「倒れんようにな」
     2人は立ち上がり仕事に戻る。むっとする空気が立ち込める。既に地面を濡らしていた水は乾き蒸し暑い熱気へと変わっていた。
     
    「やあ、夏休みなのにわざわざ悪いね。実は北陸の佐渡ヶ島で異常な熱波が発生しているみたいでね、佐渡金銀山の廃坑がアガルタの口と化そうとしているみたいなんだよ」
     教室に集まった灼滅者に向け、能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が早速事件の説明を始めた。
    「事件を解決する為に、学園の臨海学校が佐渡ヶ島で行われる事に決まったんだよ」
     ダークネスの移動拠点となった軍艦島が、佐渡ヶ島に近づいている可能性もある。
    「だからみんなには廃坑を探索して、アガルタの口を作ろうとしている敵を倒してもらいたいんだ。その後は軍艦島の襲来に備えて、佐渡ヶ島の海岸でキャンプをしてきて欲しい」
     敵は作戦の失敗を悟り、多くの灼滅者が集まっている事をしれば諦めて撤退するだろう。
    「敵を倒しても24時間ほどは熱波が続くみたいだからね、海水浴を楽しむには絶好の天気だと思うよ」
     住んでる人には迷惑かもしれないけどねと、誠一郎は笑う。
    「みんなには各地にある炭坑の一つに行ってもらうよ。敵はスイカ型の植物形眷属。炭坑の奥にはスイカが自然繁殖してるみたいでね、その成長したものがスイカ型眷属となるみたいなんだ」
     眷属はスイカに目と口が付いた形状をしている。
    「それとスイカは眷属になる前は普通のスイカだから食べられるよ、持って帰ってキャンプで食べるのもいいかもしれないね」
     戦いが終われば存分に臨海学校を楽しむ事ができる。
    「40度なんて気温、僕には耐えられる気がしないけど、みんなには暑さに気をつけて頑張ってきて欲しい。眷属を倒したら存分に海水浴を楽しんでくるといいよ」
     そういって誠一郎が窓から外を見上げると、夏の太陽が眩しいほどに大地を照らしていた。


    参加者
    比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)
    神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)
    廿楽・燈(花謡の旋律・d08173)
    千凪・志命(灰に帰す紅焔・d09306)
    エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)
    葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)
    内山・弥太郎(覇山への道・d15775)
    アレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526)

    ■リプレイ

    ●廃坑
     焼けるような夏の日差しが直撃する。海が近いというのに涼しさなど無く、辺りには熱風が立ち込めていた。
     そんな猛暑の佐渡ヶ島にある、もう使われなくなって久しい炭坑に灼滅者達は足を踏み入れていた。
    「……」
     蝉が鳴きしきる中、無言のまま先頭を歩く千凪・志命(灰に帰す紅焔・d09306)は、邪魔になりそうな生え放題の雑草を刈り取って皆が進みやすくする。
    「軍艦島よりも熱波がある分暑くて辛いですね……。苦手なんですよ、暑いの」
     むっとする暑さに顔をしかめながら、地図を見ていた比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)は流れる汗を拭った。
    「軍艦島もここも鉱山業ではありましたね、なにか関係があるのでしょうか」
     そんな疑問を抱きながら、足場の悪い道を間違わぬよう進む。
    「……水着でも、暑いくらいに、晴天です……」
     猫耳パーカーの耳を揺らしながら、神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)は光を遮る雲も殆どない青い空を見上げる。
    「えへへ。臨海学校楽しみだなぁ」
     何をして遊ぼうかと想像して廿楽・燈(花謡の旋律・d08173)は笑みを浮かべる。
    「もちろん油断なんてしないもん。だけど早く終わらせられるようにがんばろーっと!」
     遊ぶ為にもまずは依頼を片付けようと、意識を戻して気合を入れ草木の生い茂った周囲を見やる。そこには何の変哲も無い小ぶりのスイカがところどころに成っていた。
    「サイゾーちょっと調べてきてくれますか」
     白狼の耳尻尾を生やして人狼の姿をした内山・弥太郎(覇山への道・d15775)が霊犬のサイゾーに呼びかけるが、だらりと舌を出したサイゾーは暑さに参ったように動かない。
    「しょうがないですね……」
     そんなサイゾーに弥太郎が水筒の水を差し出すと、嬉しそうにサイゾーは水を舐めて元気を取り戻す。
    「リアン! えあんさんの事、しっかり守ってね!」
     葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)がウイングキャットのリアンの頭を撫でると、リアンは任せろとばかりに尻尾を振った。
    「ん、心強いね」
     そんなやり取りを見たエアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)は自然と微笑む。
    「ももも、怪我をしないよう気を付けてくれよ」
     任せてと胸を張る百花の頭をエアンが撫でた。
    「スイカがターゲットってのは張り合いがないが、まあ引き受けた以上はきっちりこなさないとな」
     真夏だというのに黒スーツを着込んだアレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526)が、日光を避けるようにサングラスを押し上げる。平気な顔をしているがびっしりと汗がシャツを濡らしていた。
     わんっと少し前を歩くサイゾーが吠える。その声に皆が視線を向けた。
    「……あそこか」
     志命が足を止めると仲間達も立ち止まった。炭坑の奥、視界の開けた場所、そこには誰が手を加えたわけでもない、自然のスイカ畑が広がっていた。売り物のように丸々と成長した大きなスイカが実っている。

    ●スイカ割り
    「わわっ。ホントにスイカ畑があるー! ……そう言えば、今年はまだスイカ食べれてないんだよなぁ」
     じぃーっと物欲しそうに燈がスイカを眺める。
    「食べられるのかな」
     立派なスイカ達は店にならんでいる物のように瑞々しい姿をしていた。
    「畑を荒らすのは忍びないですが……」
     アレクセイはスイカを視界に収める。すると一気に気温が下がり、近くのスイカが凍りつく。
     パキパキと割れる音と共に、氷を砕きいくつものスイカがぐるりと回転する。そのスイカ達には目と口が人の顔のようにあり、じろりと侵入者を見た。
    『ギャギャッ』
     口から奇怪な甲高い声を漏らすと、目が円から釣りあがった三日月に変わり、スイカ達は浮かび上がると一斉に灼滅者へと襲い掛かってきた。
    「……浮いてるスイカ、ですか。……なんだか、不思議な光景、ですね。……とりあえず、美味しく、頂く為にも、倒さないと、ですね」
     そんな光景を目を丸くして眺めた蒼は気を取り直すと、縛霊手を展開して結界を張りスイカ達を囲むようにして動きを止める。
    「本当にスイカだな……まんまだ」
     そのほのぼのした様子に戦意を削がれながらも、アレックスが殺気を放って近づくスイカを撃ち落とす。
    『ギィャッ』
     攻撃されたスイカ達が大きく口を開けて一斉に飛んでくる目前に、志命は盾を拡大し壁のようにしてスイカ達の突進を防いだ。
    「……フォローは任せろ」
     後方から志命は仲間に視線をやって、いつでも手助けできるように位置取る。
    「これが終わったらキャンプですから、がんばりましょうサイゾー!」
     弥太郎の言葉にサイゾーが吠えて応え、動きの止まったスイカに向かって駆け出す。サイゾーが咥えた刀で斬りつけ、弥太郎が槍で貫く。スイカは赤い果汁を垂らして落ちていった。
    「それじゃあ始めようか、怪我はしないようにね」
     エアンがどす黒い殺気を放って周囲のスイカ達を包み込む。殺意に押されスイカの動きが鈍った。
    「はーい、行くよリアン!」
     百花が帯を飛ばすと正確にスイカの中心を貫いた。ふらりと落ちてきたスイカに駆け寄ったリアンが肉球パンチを当てて砕く。
    「まずはこれで! ……あれ?」
     腕を鬼のように変化させた燈が勢い良くスイカを殴る。するとぽかっとスイカが割れて地面に落ちた。
    「思ったより柔らかいかも!?」
     本当のスイカ割りのように次々と飛んでくるスイカをぽかぽかと殴って砕いていく。
    『ギョッ』
    「まったく、随分とスリリングなスイカ割りですね!」
     アレクセイは頭上から襲ってくるスイカにロッドを向ける。放たれた雷がスイカを撃ち抜き、赤い果実が破裂した。
    「……まるでスイカわりみたい、ですね。飛んでるスイカをわるのは、初めて、です……」
     正面から飛んでくるスイカに蒼が拳を打ち込み、砕けた後ろから続けて飛んでくるスイカ達にも拳の連打を浴びせて叩き割っていく。
    「えあんさん後ろっ!」
     百花の声が鋭く届く。エアンの背後から頭をすっぽり食べられるほど口を開いたスイカが迫っていた。
     その間に割り込むようにリアンが飛び、光を放ってスイカを縛った。
    「助かるよ、ありがとう」
     エアンはそのスイカの口に槍を突き刺し、放り捨てるように地面に叩き付けた。
    「リアンえらいえらいっ」
     百花がよくやったとリアンの頭を撫でると、嬉しそうにリアンは目を細めた。
    『ギョァッ』
    「……飛び道具か」
     スイカ達が口から水鉄砲のように赤い果汁を飛ばしてくると、その前に志命が光輪を投げ込む。すると小さく分裂した光輪がジュースを弾き飛ばした。
    「一気に数を減らしましょう」
     その群れの中へ弥太郎が槍を旋回させながら飛び込み、手近なスイカを次々と割っていく。打ち漏らしたスイカにサイゾーが銭を撃ち込むと、スイカは散開して攻撃から逃れようと動いた。
    「逃がすか、穴だらけにしてやるぜ」
     アレックスが機関銃を構え、銃口から弾丸が次々と発射される。無数の穴を開けられたスイカは液体を撒き散らしながら吹き飛んだ。
    「よっと! そんなところを飛んでたら捕まえちゃうよ!」
     燈がスイカのジュースを躱すと、左右から翼のように帯を伸ばして広げ、包み込むように数体のスイカを絡めて纏め上げた。
    「スイカで的当てですか、これだけ大きいと外す気がしませんね」
     アレクセイは捕まっているスイカ目掛けてオーラの塊を撃ち出した。吹き飛ばされるスイカにぶつかった衝撃でスイカが連鎖して幾つも砕ける。
    「神薙刃を使って一足早くスイカ割り……、できるのかな?」
     燈が風の刃を飛ばす。真っ直ぐに飛んだ刃が飛んでいるスイカを真っ二つに両断する。だが落下したスイカは地面にぶつかった衝撃でびちゃっと砕けた。
    「あー惜しい!」
     悔しそうに燈は次のスイカを狙う。
    「中身は、普通のスイカみたいに、見えます」
     蒼は腕を獣のように異形化させて振り抜く。拳は突っ込んできたスイカの顔を打ち抜き、更に勢い余って後ろに居たスイカも木っ端微塵に砕いた。
    「まとめて仕留めてやる」
     アレックスが機関銃から薙ぎ払うように無数の弾丸を撃ち出す。射線に入ったスイカは一掃されるように砕かれていく。
     銃弾から逃れるスイカに、志命はガンナイフの突き刺して引き金を引くと、スイカの顔に穴が開き、後部から弾丸が貫通してスイカの果実が溢れ飛んだ。
    「そろそろ打ち止めかな?」
     数の減ってきたスイカを見渡したエアンは、低空を這って足に噛み付こうとするスイカを蹴り上げ槍で叩き割った。
    「終わったら楽しいキャンプだね!」
     百花が帯を広げて飛ばしスイカを一斉に絡め取る。そこへリアンが飛び乗りパンチを打ち込む。
    「これで終わりです!」
     最後の動くスイカを、弥太郎が炎を纏った足で蹴り飛ばす。サッカーボールのように飛んだスイカは、待ち構えていたサイゾーの刀に両断され砕け散った。

    ●海水浴
     スイカは倒してもすぐに変化が起きるわけでもなく、まだまだ暑さは続く。そんな暑さを凌ごうと灼滅者達は水着姿で海辺で遊び始めた。
    「うふふー。戦利品のスイカがたくさんだね!」
     もって帰ってきたスイカを皆が並べ置くと、嬉しそうにコンコンとスイカを軽く叩く燈が後で食べるためにスイカを冷やしておく。
    「ここからが臨海学校本番だな」
     暑いスーツを脱ぎ捨てたアレックスが中に着ていた水着姿となる。サングラスを掛け直しビーチパラソルの下で海を満喫するように寝そべった。
    「せっかく凍らせたんです、このまま天然のシャーベットにしましょうか」
     アレクセイは凍ったスイカを切り、シャリシャリに凍った果実で天然のシャーベットを作り始めた。
    「……水が、気持ちいい、です……」
     パーカーを外した蒼が足を海に漬けて、ぱしゃりと水を蹴って無邪気に微笑む。
    「ね、ビーチバレーやろうよ!」
    「わ……あ……」
     燈がスイカ模様のビーチボールを投げると、突然のことにあわあわと蒼が転びながら頭でレシーブした。
    「……いい眺めだ」
     海で楽しそうに遊ぶ仲間達を見ながら志命はキャンプの用意をしていく。表情には出さないがどこかわくわくしたように足取りは軽かった。
    「サイゾーはそっちのロープを持ってきてください」
     その隣に並んだ弥太郎も協力して一緒にテントを張り始める。せーのと2人で力を合わせ手馴れた様子で2つのテントを設営してしまう。
    「えあんさんv今回はももの番、ね?」
    「あー……覚えていたか、以前の約束を」
     満面の笑みを浮かべてスコップを持つ百花に、苦笑を返しながら仕方ないとエアンは砂の上で横になる。その上にスコップで掘り起こした暖かい砂をせっせと載せていく。
    「うふっv」
     顔と足の先以外を埋めると、悪戯っぽく笑って砂から飛び出た足の裏をこちょこちょとくすぐった。
    「……っ!」
     息を呑むエアンを見下ろし、百花は一層楽しそうに笑うのだった。
    「シャーベットできました、皆さんもどうですか?」
    「お、いいね。ちょうど冷たいものが欲しいと思ってたんだ」
     早速アレックスが受け取り、他の仲間達も集まってくる。頭をキーンとする冷たさを楽しみ、熱くなった体を冷ます。
    「うぅ……」
    「キーンときたよっ!」
     運動して喉をカラカラにしていた蒼と燈は、一気に食べてしまい頭を抑える。
    「スイカのシャーベットというのも良いですね」
     弥太郎は暑そうに寝そべっているサイゾーにも一口あげながら、冷たいスイカの味わいを楽しむ。
    「……ふむ」
     志命は一口食べると頷き、大きく口を開けて食べるスピードを上げた。
    「はい、あーんv」
     百花は埋もれたままのエアンの口元へと餌付けでもしているようにシャーベットを運び、食べる様子を眺めながらそっとおでこに顔を近づけた。
    「みんなで遊ぼーっ!」
     食べ終えると元気一杯の燈の言葉に皆も腰を上げ、ビーチバレーをして遊び始めるのだった。

    ●キャンプ
     日が沈み始めると、赤く輝くように夕日が海に反射する。
     遊び終えたお腹が鳴るようなスパイシーな香りが浜辺に漂う。
     大きな鍋に出来上がったのはカレー。皆で協力して作ったそれは不恰好ながらも美味しそうな匂いを発していた。皿に飯盒で炊いたご飯と一緒によそい、まだかまだかと待っていた全員の手に配られる。
    『いただきまーす!』
     手を合わせると早速口に運ぶ。
    「やっぱりキャンプにはカレーですね」
     アレクセイが美味しそうにカレーを頬張った。
    「少し小さすぎたか?」
     自分でカットしたジャガイモを口に運びながら、アレックスは首を傾げる。
    「……ん、みんなで作ったカレー、美味しいです……」
     蒼は小さな口をめいっぱい開いてカレーを口にした。
    「うん、ホント美味しいっ! ちょっと皮が残っちゃってるけど、食べたら一緒だよねっ」
     皮むきを担当していた燈が誤魔化すように笑って人参を口に放り込む。
    「サイゾーも美味しいですか?」
     食べながら弥太郎が足元を見やると、サイゾーも美味しそうにご飯を食べていた。
    「……お代わりをもらうか」
     いち早く食べ終え、更に山盛りにしたカレーを志命はカレーに集中して黙々とお腹へ収めていく。
    「えあんさん、カレー美味しいね♪」
     本当に美味しそうに食べる百花の口元の汚れを、微笑んだエアンが拭ってやる。
     空腹と美しい景色、そして一緒に食べる仲間達が最高のスパイスとなってカレーの味をいつもより美味しくしていた。多めに作っていたカレーもあっという間に空になり、皆のお中に収まった。
    「日本の夏といえばスイカですね」
     食後のデザートには持ち帰り冷やしておいたスイカが用意される。
    「……ッ」
     ブルーシートの上に置いた大きなスイカを、真剣な表情の志命が上段に真っ直ぐ構えた刃を振り下ろし、兜割りで見事に切り裂いた。その出来に満足そうに志命は口元を緩める。
    「もも、少し浜辺を散歩しないか?」
     切り分けられたスイカを食べていた百花にエアンが呼びかける。2人は手を繋ぎ、沈む夕日に照らされながら砂浜を歩き出した。
    「……美味しいですね、スイカ」
    「いくつでも食べられちゃうよー」
     蒼と燈が口元を汚すのも気にせずに、スイカにかじりつく。
    「海にスイカと、夏らしい組み合わせだな」
    「そうですね。しかし夏とはいえ本当に暑かったですね。日が沈んできたら少しは涼しくなりましたが」
     涼をとるようにアレックスとアレクセイもスイカを食べながら海へと視線を向ける。海の彼方に日が沈み夜の帳が下りていく。
     満腹にのんびり一息ついて波打つ海の音に耳を澄ます。波の音と共に虫達の合唱がそこらかしこで聴こえていた。
     そして寝る前の締めくくりにと、皆で持ち寄った花火に火を点けた。都会よりも深い闇に色鮮やかな炎が灯る。虫達の合唱に混じるように、楽しい笑い声が響く。
     臨海学校一日目が終わろうとしている。明日もきっと暑く楽しい一日になると、皆の屈託の無い笑顔が物語っていた。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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