臨海学校2015~割と真面目にスイカ割り

    作者:陵かなめ

    「本当に暑いねえ」
     噴出す汗を拭いながら、佐渡の住民が挨拶を交わす。それもそのはずで、この佐渡ヶ島は40度を超す熱波に覆われているのだ。
    「そう言えば聞いたかい? 金山銀山の廃坑で、謎の植物がいっぱい育っているって言う噂」
    「ええ? この暑さの所為で、どこもかしこもおかしくなってしまったのかねえ」
     聞いていた一人が大きくため息を吐いた。
     うだるような暑さの中では、噂話をするのにも相当の体力を消耗する。
     佐渡の住民達は、恐い、奇妙だと口々に言い合いながら、首を傾げるのだった。
     
    ●臨海学校開催のお知らせ
    「実は、北陸の佐渡ヶ島で異常な熱波が発生しているんだ。それで、佐渡金銀山の廃坑が、アガルタの口と化そうとしている事件が起こっているみたいなんだよ」
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)の言葉に、集まった生徒達ははっと顔を上げた。
     アガルタの口、それは軍艦島攻略戦で軍艦島の地下に現れた謎の密林洞窟の事だったはずだ。
    「それで、この事件を解決するため、急遽佐渡ヶ島で臨海学校を行う事になったんだ」
     太郎は、事のあらましを説明した。
     ダークネスの移動拠点となった軍艦島が、佐渡ヶ島に近づいてきているかもしれないと言う事。
     これを放っておくと、佐渡ヶ島全体が第二の軍艦島になってしまうかもしれないという事。
     そこで皆には、佐渡ヶ島の廃坑を探索し、アガルタの口を作り出している敵を撃破。その後、軍艦島の襲来に備えて、佐渡ヶ島の海岸でキャンプを行って欲しいとの事だ。
     佐渡ヶ島のアガルタの口が撃破され、佐渡ヶ島に多くの灼滅者が集まっている事を知れば、軍艦島のダークネス達も計画の失敗を悟り撤退していくだろう。
    「アガルタの口を作り出している敵を撃破しても、24時間の間は、佐渡ヶ島は40度以上の熱波が続くんだ。海水浴にはもってこいだよね」
     太郎は皆の顔をぐるりと見回した。
    「というわけで、まずはアガルタの口を制圧して、その後は臨海学校を楽しみながら軍艦島の接近に備えて欲しいんだ」
     さて、佐渡ヶ島の廃坑は無数にあり、探索を行う灼滅者はそれぞれ別々の廃坑を探索する事になる。この教室に集まった皆が探索するのは、その中でも比較的海に近い場所の廃坑になるという。
     それを踏まえてと、太郎は更に説明を続けた。
    「廃坑の奥でアガルタの口を作り出している敵は、スイカ型の植物形眷属だよ」
    「え、スイカって、あのスイカ?」
     話を聞いていた空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が驚いたような声を上げる。
    「うん。あの食べるスイカだよ。廃坑跡地の最奥にスイカ畑が広がっていて、そこで成長したスイカから『スイカ型の眷属』が生まれ続けているようなんだ」
     スイカ型の眷属は、スイカの果実に目と口をつけ、浮遊しながら噛み付いてくるようだ。強くは無いけれど、数が多い。
    「へー。スイカ畑か。眷族になる前のスイカってどうなんだろう?」
    「あ、眷属になる前のスイカは普通に食べられるようだよ。あの、食べてもオッケーだって」
     紺子はそれを聞いて目を輝かせた。
     それなら、眷属を始末したあとの臨海学校で楽しくスイカ割りができるだろうなあ。スイカ畑のスイカがあれば、満足のいくまでスイカを味わえるだろうなあ。
     ともあれ、無事佐渡ヶ島のアフリカ化を阻止し、普通の夏の気温に戻れば臨海学校は終了となる。
     楽しい臨海学校がダークネスの陰謀に邪魔されてしまったのは悔しいけれど、アガルタの口を制圧した後、出来る限り臨海学校も楽しんで欲しい。
     太郎はそう言って、くまのぬいぐるみを握り締めた。
    「気温の上昇は急だったから、海水の温度はそこまで上昇していないんだ。海水浴にはうってつけだと思うよ。浜辺でスイカ割りをして楽しむのも良さそうだね」
    「うんうん。スイカ畑で沢山スイカを取って、スイカ割りするんだー♪」
     いざ行かん佐渡ヶ島。
     暑い臨海学校の幕開けである。


    参加者
    椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)
    ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)
    羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)
    志水・小鳥(静炎紀行・d29532)
    鴻上・廉也(高校生ダンピール・d29780)
    晞足・稀星(夜天煌・d30948)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    九重・朔楽(花と在る・d34203)

    ■リプレイ

    ●戦うスイカ割りの会場はこちらです
     滴る汗を拭いながら、灼滅者達は廃坑を進む。
     暗い廃坑に侵入してから随分時間が経っていた。
    「いい加減暑いのは勘弁ですね……」
     椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)がライトで周辺を照らした。今年の夏は暑かったけれど、ここ佐渡は別格の暑さを感じる。40度を超す熱波は凄まじいものだ。
     廃坑内部は言うまでもない。
     風も無く、熱が篭り、ただただ暑いだけ。
     そんな中、ジジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)はきょろきょろと辺りを見回した。
    「なんか金になりそうなものがあるといいんだけどなー」
     何かお宝でもあればやる気が出ると思うのだが、今のところ特に良いものは見つかっていない。
    「この分だと、迷わず進めそうだな」
     地図を確認しながら平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)が言った。
     いくつか枝分かれした道もあったが、慎重にマッピングしながら進んできたので、特に道に迷う事もなさそうだ。
    「そうですね。良かった」
     九重・朔楽(花と在る・d34203)が頷く。
     足元には、首から提げる懐中電灯を装着した霊犬、伊勢の姿があった。
     朔楽と伊勢の明かりが足元を照らす。
     他の仲間達の光源もあって、探索はすんなりと進んだと言って良いだろう。
    「スイカに目と口か……。元々のカラーリングと相まって中々凶悪に見えそうだな」
     鴻上・廉也(高校生ダンピール・d29780)は周囲を警戒しながら呟いた。浮遊しているとの事なので、きっと足音が無いのだろう。その他の音に気を配りながらの探索だ。
    「スイカの姿をした眷属かぁ。お仕事とはいえ、気分はスイカ割りって感じかな」
     羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)が首を傾げた。
     瞬間、何かが風を切る音が響く。
    「来たようだな」
     弱い相手とは言え、先手を取らせるわけにはいかない。廉也が皆に合図を送り、自らも武器を構えた。
    「ぱっぱと倒して、臨海学校しようぜ」
     晞足・稀星(夜天煌・d30948)が腕に傷を作り、炎を出す。
     炎は一瞬揺らめき、天井スレスレに浮遊する丸い物体を照らした。
     聞いていた通りの、スイカの果実に目と口をつけた眷族の姿が見えた。その奥からも、次々にスイカが飛んでくるのが分かる。
    「さくっと割って……畑ごと燃やす勢いで行こうか」
     志水・小鳥(静炎紀行・d29532)が霊犬の黒耀を呼んだ。
     皆もすぐに戦いの体勢を整える。
     小鳥が縛霊手の祭壇を展開させ、大きく結界を張った。
     結界に絡め取られたスイカ型眷属達がガチガチと口を鳴らす。
     もがく敵の奥からさらに沢山のスイカが襲ってきた。
    「気持ちよくパリンパリン割っていきましょ」
    「そうですね。行きましょう」
     結衣菜と紗里亜は、タイミングを合わせて奥から溢れてきた敵を凍りつかせる。
     廃坑の最奥部一歩手前で、スイカ割り……ではなくて、スイカとの戦いが始まった。

    ●飛び散るスイカ、砕けるスイカです
    「ふっ、近所のやきう好きのおっさんに10年に1人の逸材と言われた私のスイングを見せてあげよう」
     飛び掛ってくるスイカを見て、ジュラルがおもむろにクロスグレイブを構えた。
     スイカは口を大きく開け勢い良く迫ってくる。
     そこを目掛けてフルスウィイイイイング。
     豪快に砕ける音が響き、スイカがまた一つ崩れ去った。
     ジュラルのナノナノの軍師殿は仲間の傷を癒して飛び回っている。
    「お前たちにとっては理不尽に感じるかもしれないが、俺たちはスイカを食べても、スイカに食われるつもりはない」
     仲間の攻撃で凍り付いているスイカや動きの鈍いスイカを狙い廉也は槍を振るう。
    「消えてもらう」
     槍で抉り、確実に止めを刺した。
     一つ、また一つとスイカ型眷族が消えていく。
    「オラァ! ダイナミックスイカ割りだぜ!」
     近くで足止めを喰らっているスイカを見つけ、稀星が距離を詰めた。
     めいっぱいマテリアルロッドを振り上げ、これでもかと言うくらいの勢いでスイカを叩き割る。
     灼滅者達の足元には、飛び散ったスイカの汁や残骸が積み上がっていった。
    「九重、そっちに飛んだ。行けるか?」
     爆炎の魔力を込めた弾丸を撃ち出した和守が朔楽に声をかける。
    「大丈夫」
     クルセイドスラッシュでスイカを斬り捨て、朔楽は和守を見返した。
    「そちらは?」
    「大丈夫だ」
     和守は頷き返し、炎上したスイカを砕いた。続いて逃げたスイカに照準を合わせる。
     こうして、次々とスイカは破壊されていった。
    「……え、食べられないですと」
     ナイフで一つ二つとスイカを解体しながら結衣菜が呟く。
    「食べられませんね、これは」
     紗里亜が苦笑いを浮かべながら、凍ったスイカを魔法の弾丸で打ち崩した。
     スイカの汁が緑のビキニに飛び散ってくる。
     こんな事もあろうかと、紗里亜は水着で戦っていた。これが終わればすぐに海で泳げば大丈夫。スイカだって、奥の畑に山ほどあるに違いない。
     敵の数が目に見えて減ってきた。
    「さあ、あと少し、頑張ろうか」
     小鳥は皆の様子を見ながら声をかけ、残ったスイカ目掛けて飛び蹴りを放つ。
     残り五つ、三つ……、一つ。
     特に大きな被害も出さず、灼滅者達はスイカ型眷属を撃破して行った。
    「ラスいちー」
     最後の一つをジュラルがクロスグレイブで殴り飛ばし、無事この廃坑のスイカ型眷属を一掃した。

     スイカ型眷属の群れを越えたその先に、灼滅者達はスイカ畑を見つけた。
     早速スイカ割用のスイカを収穫し、灼滅者達は臨海学校の会場へと急ぐのだった。

    ●楽しい臨海学校です
     夕食にカレーを食べ、キャンプ泊を楽しみ、臨海学校二日目を迎えた。
    「麦藁帽子、ありがとうございます……。暑さ対策ですねっ」
     朔楽と一緒に麦藁帽子を被った花音がほわりと笑顔を浮かべた。これで日焼けは大丈夫だろうか? 日焼け止めはどうしよう? 花音は手にした日焼け止めに視線を落とし、次に朔楽を見上げた。
    「そ、そそそ、それは、その」
     朔楽が視線に気付き、慌てたようにぱたぱたと両手を振る。
     塗る?! 日焼け止めを塗ってあげる?!
     しかし、やはりそれはかなりハードルが高い、ような気がする。
    「いえ、あの、自分で塗りますね……」
     慌てた様子の朔楽を見て、花音もその意図に気付いた。
     少しだけ離れ、赤い顔を隠すように俯きながら日焼け止めを急いで塗りこむ。
     それから2人は、海辺で貝殻を探して遊んだ。
    「巻き貝、二枚貝沢山見付けましたっ。思い出に持ち帰ってもいいかな……?」
    「いいと思いますよ。綺麗な貝殻ですね」
     見つけた貝殻を見て、朔楽が微笑む。
     2人は見つけた貝殻を並べ眺めた。
     綺麗な形、気に入った色合いの貝殻をいくつか2人で選び、記念にと持ち帰る。
     ちょうど波が寄せてきて、二人の足を冷たく濡らした。
     休憩したくなったらスイカを食べよう。
     2人は笑いあい、引いていく波を眺めた。

     さて、昼食のバーベキュー用の素材集めのため、ジュラル、廉也、和守の3名は海に来ていた。
    「平は竹やりを銛のように使って魚を取るのか……?」
    「まあ、食前の良い運動だな」
     廉也にそう言い、和守は素潜りで一突き、果敢に魚を狙う。
    「海水浴もいいけど海といえば釣りですわ」
     一方、ジュラルは少し離れた場所に釣り糸を垂らした。バーベキュー用の魚の調達はまっかせたまえ。ハッハッハとか言いながら、静かに当たりを待つ。
    「女子ばかりでは、どうもどこにいて良いのかわからなくなるからな。食材獲りの方が気が楽だ」
     そう言って、廉也も食材を求め辺りを彷徨った。

    「クーラーボックスはここに置いておくぜ」
     ファルケが【星空芸能館】のメンバーに声をかける。
     集まってきた食材は、メンバーが着々と下準備をしていた。
    「魚は塩焼き、ホイル焼き♪ サザエはグツグツ壺焼きに♪」
     紗里亜の歌声が弾む。
    「ここでクッキングミュージカルですか……。では、私は、歌とダンスメインで♪」
     間違えないようにと作業をしていたえりなも、紗里亜の歌に合わせてステップを踏み踊り出した。
    「……歌うの、知っている人なら聞かれても恥ずかしくないけど、知らない人の前で歌うのは苦手……」
     塩焼き用の魚に串を刺していた智恵理は、戸惑いながら鼻歌で良いかと聞いてみる。
     踊ったり、少し身体の線が出る服装は恥ずかしくないのだけれど。
    「踊るのはOKなら、思い切ってこうやって歌って調理すればOKですよ♪」
    「それも照れるけどな」
     えりなが智恵理を誘うように促し、2人は楽しく踊り出す。
    「じゃあ、俺はギターで伴奏でーってことで」
     ギターを担ぎ、ファルケが伴奏を始める。
    「えっと、これはこうするのね。うん。みんなが居るから何とかなるはず!」
     あまり料理に自信は無いけれど、結衣菜も仲間に助けられながら食材を処理して行く。
    「元々バーベキューならばあまり変わらないのではと思っていたが、楽しそうだな」
    「ああ、もっと豪快な感じになるかと思っていたが、なかなかどうして」
     廉也と和守は、華やかで楽しげで、そしてとても美味しそうに出来上がっていく料理を眺めた。
    「さあ、完成です。美味しく焼いていただきます! ですよ」
     焼き上がった海鮮メニューを前に、紗里亜が皆を呼ぶ。
     豪勢な料理の山に、思わず和守の頬が緩んだ。
     皆揃っていただきます。
     昼食のバーベキューをみんなで美味しく味わった。

    ●そして、本当のスイカ割りです
     昼食も終わり、いよいよスイカ割りが始まった。
    「あっ、もう少し右、右です……そうそっち」
     目隠ししてスイカに向かう紺子を、嘉月が誘導する。廃坑で収穫したスイカの他、クラブで栽培した大きなスイカを嘉月が持ってきてくれたのだ。シートに包丁、まな板と準備もバッチリだ。
    「少し右、いや左! 今だ、そこですー!」
    「はあー! ここかー!!」
     紗里亜の声を聞いて、紺子が勢い良く棒を振り下ろした。
     バゴンと砂を叩く音が響く。あと少しのところを外し、砂が勢い良く舞い上がった。
    「あー、外したー!」
     紺子が悔しそうに顔を顰め、結衣菜に棒を手渡す。
    「はい、次♪ 頑張ってね!!」
    「頑張って叩き割って、デザートにするわ!!」
     眷属は叩き割っても食べる事ができなかったし、今こそ臨海学校の本番とも言えるだろう。
     結衣菜がきりりと表情を引き締め、目隠しをした。
    「ここで、昨日の鬱憤を晴らさせて貰うわよ」
    「右右、あっ、もう少し左で」
     見ている皆で誘導し、応援する。
    「1,2,3……それ!!」
     結衣菜が勢い良く棒を振り下ろすと、砂浜に鎮座して居たスイカに見事命中した。
     若干形を崩しながらも、スイカが割れる。
     すぐに切り分け、甘いスイカにかぶりついた。
    「ふふ、真夏の酷暑に冷たいスイカ」
    「ただで食うスイカの美味な事よ。うまうま」
     結衣菜とジュラルがスイカを味わい舌鼓を打つ。
    「私はフローズンスムージーを作りますね」
     紗里亜は割ったスイカと昨日凍らせたスイカをジューサーへ放り込んだ。
    「俺はデザートでも作るとすっか」
     ファルケはスイカと手持ちのアイスを組み合わせてスイカアイスを作り始めた。
     どちらも暑い夏の日にはもってこいのデザートになりそうだ。
    「ええと、もし余力があるなら、これに挑戦しませんか?」
     次に嘉月が取り出したのは、それは大きなスイカだった。今まで叩き割ってきたスイカの二倍以上に感じる。
    「よし、折角だからサイキックスイカ割りだ」
     和守が立ち上がり、マテリアルロッドを構えた。
    「行くかい? 行きますか? それじゃあ、目隠しをしてもらって」
     スイカを食べ終わった紺子が和守に目隠しの布を巻きつける。
    「大丈夫だ、問題ない……そこだな!」
     和守は武器を思い切り振り上げた。
     仲間の誘導に従い、ここだと狙いをつけて渾身の一撃を叩き込む。
     巨大なスイカは砕けた。勢いのまま砕け散った。
     見事に粉微塵だとやけに冷静にコメントをする和守の横で、紺子がスイカのかけらを集め始める。
    「……え、それを食うのか?」
     和守が覗き込むと、紺子が悟りを開いたような笑みで首を縦に振った。
    「それがスイカ割りの醍醐味ですぜ、旦那」
    「俺たちがスイカに出来ることなど、美味しく食べることだけだろう。少しくらい形が崩れても気にするな」
     うんうんと、廉也も和守の肩を叩く。
     元が巨大スイカだったので、欠片と言えども十分食べる事ができる。
     皆で仲良くスイカを割り、スイカを分け合い、生徒達は夕暮れまで遊び続けた。
     ああ、海は楽しい。水着姿が可愛い。スイカは美味い。それぞれが臨海学校を満喫していた。

    ●そして、もうすぐ日が暮れます
     浜辺には、花火を始めた生徒達の姿があった。
    「火消し用は海水を汲んでこようか」
     持ち寄った花火セットを広げていた小鳥が、バケツに海水を汲んできた。
     小鳥の用意した花火は、手持ち花火が多め、置き花火も少々ある。
     取りあえずと、手持ち花火を両手に持って火をつけ高いところから火花を落としてみる。バチバチと、弾ける花火がとても綺麗だ。
    「噴出し花火におみくじ花火、ああ、蛇玉もあるね」
     ずらりと並ぶ花火を眺めていた仙が蛇玉を持ち上げる。すると、黒耀が尻尾を振ってじっとそれを眺めた。
    「んじゃ、それ点けようか」
     小鳥が気付き、着火してやる。
    「でも触ったら熱いからね」
     仙はにょるにょるとのびる蛇花火を避けるように黒耀を抱き上げた。
    「糸木乃は暑さ弱いのに、ホントに黒耀が好きだなあ」
     その様子を見て、小鳥は思わず笑ってしまう。
     持ち寄った花火でしばらく遊んだ2人は、最後に線香花火に火をつけた。
    「火が落ちなかったら……なんだっけ。おまじないみたいなのあったよね」
    「……あぁ、火が落ちなかったら願いが叶うんだっけ」
     どちらが長く保つか、競争しながら小鳥は少し考え、こう言った。
    「この前の仕返しで、大事な人たちとずっと一緒にいられますようにって願っておこうか」
    「いや仕返しとかするようなものじゃ無いと思うんだけど」
     じっと小鳥を見返した仙は、こう願う。
    「じゃ。自分は志水や黒耀と沢山楽しい思い出を作れますように、かな」
     じっとしている事を指示された黒耀が、2人の傍らで静かに花火が弾けるを見ていた。

    「稀星くん、じゃがバターなに食べる? 結構色々持ってきたから何でも選べるよ」
    「上里の好きなのでいいぜ」
    「うーん、じゃあ一番を選ぶのは難しいけど……今日は塩辛にしよう」
     稀星と桃は夜の海岸で、2人並んでじゃがバターを一緒に食べていた。
     勿論花火も楽しむつもりで色々準備している。
    「買ってきました、打ち上げ花火!」
     じゃじゃじゃーんと、桃が満面の笑顔で打ち上げ花火を取り出した。
     稀星は桃の笑顔を一瞬見つめ、何度か瞬きをする。
     それから、倒れないよう花火を固定して火をつけた。
    「上里。打ち上げ花火はな、綺麗に上がったら『たまやー!』って言うんだぜ」
     打ち上げ花火は勢いをつけて飛び、爆ぜる。
     2人は海岸に上がる花火とじゃがバターを十分に堪能した。
     その後は、手持ち花火も取り出し遊ぶ。
    「あ、そうだ収穫したスイカは持って帰ってお土産にしようよ」
    「いいぜ! とにかく山ほどあるからな」
    「クラスのみんなで食べようね」
     スイカ割りをして食べたスイカはどれも甘くて美味しかったし、きっとみんな喜んでくれると思った。
     そんな他愛ない話をしながら、次々に花火に火をつける。
     キラキラ光りながら、いくつも花火が弾けて落ちた。
    「あのさァ……来年もまた一緒に遊びに行こうな」
     稀星の言葉は、桃に届いただろうか?
    「今度はオレ線香花火やる!」
    「よーし、それじゃ線香花火でどっちが長く残るか勝負」
     やっぱり最後は線香花火だ。
     2人は顔を見合わせ、同時にそっと火をつけた。
     ふと、涼しげな風が頬を撫でる。
     廃坑を探索した昨日と比べると、それは心地良い風だった。
     熱波が引いていったのかもしれない。
     生徒達はゆっくりと、あるいは楽しく、臨海学校を過ごした。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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