臨海学校2015~夏だ! スイカだ! うどんだ!~

    作者:相原あきと

     炎天下の南の国のような暑さが佐渡ヶ島を襲う中、住民達がが噂する。
    「佐渡金銀山の廃坑……ああ、本当だ。この目で見たからな」
    「あの植物は日本のもんじゃねぇ……いったいどこから……」
     なぜか佐渡金銀山の廃坑にアフリカ植物が繁茂し、廃坑を埋め尽くしてしまったのだ。
     果たして、なぜこんなこんな事に……。

    「実は佐渡ヶ島の佐渡金銀山の廃坑が、アガルタの口になりそうな事が発覚したんです」
     鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が教室に集まった灼滅者達に開口一番そう告げる。
    「アガルタの口って……あれだっけ? 軍艦島でアフリカンパンサーがなんかしてた奴?」
     荒木・琢磨(大学生ご当地ヒーロー・dn0018)が疑問形でつぶやくと、珠希が「その通りです」と肯定する。
     『アガルタの口』――それは、かの軍艦島の地下に現れた謎の密林洞窟。
     珠希が説明するには、ダークネスの移動拠点となっている軍艦島が、佐渡ヶ島に近づいている事によって島全体が第二の軍艦島になってしまうかもしれない事態に陥っているらしい。
    「最近、北陸周辺で発生していたご当地怪人のアフリカン化の事件はこれが原因かもしれません」
     そしてこの事件を解決する為、急遽、佐渡ヶ島で臨海学校を行う事になったという。
    「みんなには佐渡ヶ島の廃坑を探索して、アガルタの口を作り出している敵を撃破。その後は軍艦島の襲来に備えて海岸でキャンプを行って欲しいの」
    「どういう事だ?」
    「えっと……佐渡ヶ島に多くの灼滅者が集まっている事を知れば、軍艦島のダークネス達も計画の失敗を悟り撤退していくと思うわ……だから、キャンプよ!」
     珠希の説明に「なるほど」と納得する灼滅者達。
     ちなみにアガルタの口を作り出している敵を撃破しても、24時間の間は佐渡ヶ島は40度以上の熱波が続くので海水浴にはもってこいとの事だ。
    「まずは敵の撃破について説明するわ」
     敵はアガルタの口化した廃坑の奥にいる『スイカ型の植物系眷属』だと言う。
     スイカ型眷属は島にある無数の廃坑(アガルタの口)に複数存在しており、今回珠希が依頼するのはそのうちの1つの廃坑との事だ。
    「廃坑の最奥はスイカ畑が広がっているわ。そこで成長したスイカからスイカ型眷属が続々生まれているの」
     ビジュアル的にはスイカの果実に目と口をつけ、浮遊しながらガシガシ噛み付いてくる感じらしい。
     強くは無いが数が多いのが特徴だ。
     とりあえずスイカ型の眷属を全滅させる事ができれば、アガルタの口化を阻止する事ができる。
     そして無事に佐渡ヶ島のアフリカ化が阻止され、気温が普通の夏の気温に戻ったら臨海学校は終了だ。
    「臨海学校がダークネスの陰謀に邪魔されてしまったのは悔しいけど、アガルタの口を制圧した後は、出来る限り臨海学校も楽しんでくれて構わないわ!」
     海の温度はそこまで上昇していないため、海水浴にはうってつけの水温でもある。
     バーベキューに花火に水泳に、何かやりたい事があれば皆で相談してやって構わない。
    「ちょっと待て! それならうどんを大量に持って行っても良いよな!?」
     笑顔で琢磨が割り込む。
    「ええっと……炎天下でうどんはどうかと思いますが……良いんじゃないですか?」
    「おっしゃー! さっさとスイカを倒して臨海学校を楽しもうじゃないか!」


    参加者
    霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)
    旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)
    月雲・悠一(紅焔・d02499)
    千景・七緒(揺らぐ影炎・d07209)
    太治・陽己(薄暮を行く・d09343)
    椋來々・らら(恋が盲目・d11316)
    天槻・空斗(焔天狼君・d11814)
    宮儀・陽坐(餃子を愛する宮っ子・d30203)

    ■リプレイ


    「ふぇぇ、あっつーいー……でも、後でいっぱい遊ぶために頑張らなきゃだね。佐渡ヶ島でスイカ退治だよー!」
     坑道内をピンクの髪を揺らして進む椋來々・らら(恋が盲目・d11316)が叫ぶと。
    「あ、いる?」
     フードにストール長袖長丈の千景・七緒(揺らぐ影炎・d07209)がアイテムポケットから保冷剤を取り出し皆に渡す。
     そのまま七緒がロマンだよね、とヘッドライトで周囲を確認しつつ先へ進めば、足下を長い棒でつつきつつ先頭を行く宮儀・陽坐(餃子を愛する宮っ子・d30203)が「スイカか……お腹減ったな」と思わず呟く。お昼は食べたとはいえ、こう暑いと……みずみずしいスイカの誘惑は集中力を途切れさせてくる。
    「異常気象の佐渡ヶ島! 廃坑の奥に人食いスイカは実在した!」
     皆の脳がスイカに染まりそうになるのを、唐突に断ち切ったのは荒木・琢磨(dn0018)だ。
    「は?」
     と意味の解らないメンバー達が疑問符を浮かべるが。
    「探検隊ですね。たっくん」
    「おう、解ってるな霧島!」
     なぜか霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)が同意する。
    「しかし……アガルタとは地球の中心にあるというが、仮にここを放置すれば坑道が別の場所に繋がったのか?」
     話題を変えるように太治・陽己(薄暮を行く・d09343)が言う。
    「アガルタの口はアフリカンな連中がパワーアップするらしいが……確かに、それ以外に何かあるのかも……」
     陽己の言葉に己の推測を月雲・悠一(紅焔・d02499)が言う。
    「軍艦島のうずめ様とやらは、こっちの動きを把握出来るみたいだからな……俺の懸念が取り越し苦労なら良いんだけど」
     と、そこで急に声を落とす悠一。
    「……っと、推測も程々にしとくか。まずは目前の障害を掃除しないとな」
     坑道の先には大きな空間が広がっていた。そして幾つもの気配が……。
     そこは広いスイカ畑だった。ライトに照らされモゾモゾと動く小さなスイカ達が見て取れる。
    「今回はスイカ型……夏の風物詩と言えば聞こえがいいか。その程度では、倒さぬ理由になってない」
     旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)が殲術道具を解放しながら言えば。
     白い長髪をなびかせ天槻・空斗(焔天狼君・d11814)もカードを解放するキーワードを叫ぶ。
    「目覚めろ。疾く翔ける狼の牙よ。吼えろ、焔天狼牙」
     カッ!
     かっこよく焔天狼牙を装備し、空斗は流れるような動きでそのまま三角耳がピンとした白い犬へと変身を遂げたのだった。
     そして、そのまま戦いが始まる。


    「スイカの丸焼きって、あんまり美味そうでは無いよなぁ……」
     悠一が闘気を高めると焔のようなオーラが立ち上り、それが腕へと収束する。
    「けど、臨海学校の楽しみの為だ! すべて駆逐する」
     焔の奔流が悠一の手から放たれ、襲いかかってこようとしていたミニスイカ眷属たちを一斉に焼き払う。
     そして、炎に照らされ広場の全容が明らかに。
     床は一面スイカの蔦と葉と実で埋まっており、眷属のスイカは小玉スイカ程度の大きさで、真っ赤な口を広げたまま獲物を見つけたとばかりに灼滅者たちへと飛んでくる。
     ダララララララッ!!!
     竜姫のライドキャリバー・ドラグシルバーが機銃を一斉掃射。スイカの皮がはじけ、周囲に甘い実の香りが広がる。
     だが、機銃の弾幕を抜け数体が近接、そこに割り込む竜姫。
     腰溜めにしたサイキックソードを真横一閃!
     光が爆発、瞬後、周囲のスイカ達が一気に爆散する。
    「できるだけ前衛は攻撃を合わせるぞ。同じ列を攻撃し一気に片を付ける」
     皆に指示を出しつつ効率的に敵を倒していく陽己。
     自身も除霊結界を展開させ、結界内のスイカが次々に爆散。
     畑で目覚め、次々に飛んでくる小さなスイカの眷属達。
     決して1つ1つは強くないが、その数だけは暴力的だった。
    「ぎゃっ、痛い痛い痛い! 噛じんないでー!?」
     ららが騒ぎつつ腕をかじるスイカを振り払う。
    「スイカがららたちを食べるんじゃなくて、ららたちがスイカを食べるんだよー」
     ナノナノのキャロラインがららの腕をハートで治療、痛みが引くとともにららが先ほどのスイカを指差し。
    「悪いスイカは……畑ごと炙って焼畑農法だよー!」
     魔導書から吹き出した炎が畑ごとスイカ達を燃やしていく。
     だが、その行為はスイカ達を畑から追い出し、その中の数匹が同時にららへ飛び込み鋭い歯を――。
     ズバッ!
     そこを助けたのは空斗……白い犬だった。その白い身体にドスドスドスとミニスイカ達の体当たりが命中。
     スイカ達は「(やったか!?)」と白犬を見つめ。
     だが「(やれやれ……面倒だ)」と犬が視線だけでスイカ達を睥睨。
     ゆっくりと口を開きつつ見据え。
    「(焼き払え! バニシングフレアぁあああっ!)」
     全力で吠える白犬。
    『………………』
    「(はっ! しまったっ!? 犬変身だとサイキックが使えないっ!!)」
     気がついた犬は俊敏な動きでスイカ達に接敵、肉球手加減パンチでパチパチスイカを粉砕していく。だがいかんせん効率が悪い。倒し漏らしがフワリと浮き上がり、犬から逃げつつ灼滅者達の中衛へと襲いかかる。
    「宇都宮餃子ビーム!」
     ジュッ!
     ビームに貫かれて四散するスイカ。
     先ほどまでは皆の活躍に見とれていたが、自分だってご当地ヒーローだ。ここでやらなきゃヒーローじゃない!
    「スイカ自体に罪はない……けど、冷えたスイカがあればきっと天地喜ぶよね、えへへ」
     何かを想像し、今は目の前への集中だと再び敵へ視線を向けた七緒は、ふとイブからもらった赤いストールを思いだし、襲いかかってくるスイカ達に向け全方位攻撃とばかりに赤い布が縦横無尽に駆けめぐり、パパパンッと一斉にスイカ達がはじける。
    「イカすじゃん、サンキュー悪友!」
     さて、次々にスイカ眷属を倒していく灼滅者達――。
    「植物型だろうがなんだろうが、ダークネスの生み出したもの。アフリカンパンサーの思惑など知らないが、様々な色があるからこそ世界は美しいのだ」
     言うと同時、ジャキンッと砂蔵が十字架を構える。
    「そんな、そんな世界を……自身のご当地色で一色に染め上げるなど、それは『理由になってない』!」
     砂蔵の十字架、クロスグレイブの全砲門が開きオールレンジに全力発射。パラパラとスイカの身と欠片が落下し……それが、スイカ眷属の最後であった。


     ぶるぶるぶるぶる!
     戦闘後、一人(匹?)磯にある潮溜まりで身体についたスイカ汁を流すは白い犬。
     誰も来ないので全力で水を切りさっぱりする犬。
     だが、誰も来ない……目撃者の無い場所でソレは起こった。
     ザッパーンッ!
     ……そして誰もいなくなった。

     キャンプの浜辺に着き、待っていてくれた玲仁に七緒が駆け寄り顔を覗き込む。
    「わーい僕頑張ったよー!」
     だが玲仁はパラソルの下でぐったり。
    「……溶けてる。ただいま、なんか僕より疲れてない?」
    「ああ、お帰り七緒、無事で何より……」
     玲仁の様子にポケットに手を入れた七緒は氷を取り出し、玲仁の服の中へ投入。
    「……おお」
    「……なんか反応薄い。もっと入れなきゃ(ドザザ)」
    「今この瞬間は……救いに思える」
     と、差し出されるは小さなお椀に入った冷たいうどん。夕飯はこれからだが、疲れた七緒への差し入れだった。
    「もう天地ってば僕のこと大好きなんだからな!」
     そう言いつつうどんをすする七緒を温かい目で見守る玲仁であった。
    「幾ら後輩相手でも容赦はしねェ。全力勝負だ! 行くぜ!」
    「こっちにはキャロラインがいるからね。あどばんてーじだよー」
     夕飯までの時間、ららとビーチボールに興じるは鉄。
     ららはいつの間にかお花が可愛いお気に入りの水着姿だ。
     ららの味方のキャロラリンが顔面トスでフォローするも、やはり鉄が一枚上手か一歩リード。
    「大人げないー!」
     ぷんすか起こったららが「お返し」とばかりに必殺サーブ!
    「必殺! 増えるサーブだよっ! どちらがボールかわかるかなー」
    「うお、ボールじゃなくてキャロラインかよ!?」
    「あっ、待って! そっちボールじゃ――レシーブしないでー!」
    「ああ!?」
     思わずキャロラインをキャッチ、ボールは地面へ。
     鉄は思わずキャロラインをぐいぐいと撫で、負けた負けたとららに返すのだった。

     ジュワァァァァっ!
     夕暮れの浜辺に設置された鉄板の上で、ソースが蒸発する美味しい音が響き渡る。
     鉄板の上で踊るは焼きうどん!
     テキパキとメイン料理人を務めるは陽己、フォロー役は琢磨だ。2人は見事なコンビネーションでバターしょうゆにソースに塩味、次々に味の違う焼きうどんを作り上げていく。ちなみに横で2人を観察する陽坐はガン見である。
    「そっちはどうだ?」
     声に反応して尻尾を立てるは犬の空斗。
     クリエイトファイアで灯した石窯の金網上では、サザエなど貝類が焼かれている。
     実は先ほど波に浚われ死ぬほど苦しい思いをしたが、結果としてコレらがあるポイントを発見、陽己や夜野達と共に現地調達できたのは波に浚われた犬のおかげだったと言える。
    「その土地の物を食べるのは健康にも良い事だ」
     陽己が満足げに言い調理を続ければ、「臨海学校だから何か学習要素を」と横で見ていた陽坐が呟き、唐突に叫ぶ。
    「自由研究! 題してスイカを使った餃子の研究」
     別にいつもやってる事じゃん……とは天の声だが、空いてるスペースで餃子を作り焼き始める陽坐。
    「スイカ果汁が肉を柔らかくするんじゃ? 角切りスイカを混ぜ込んで……と」
    「さすが研究熱心な宮儀さん! いつも感心します!」
     上州かるたのご当地ヒーロー・命が、中身がうっすら赤いスイカ餃子を見つつ感心すると、琢磨に3種のうどんを差し出す。
    「水沢うどん! 桐生うどん! 館林うどんです! 群馬もうどん処なのですよー!」
    「一気に増えたな」
     嬉しそうに琢磨が言えば。
    「どれ、俺も手伝わせてもらおう」
     腕まくりしつつ砂蔵が陽己達に並ぶ。
    「おう! 助かるぜ!」
     途中味見を挟みつつ各種焼きうどんを作っていく3人。
    「(他人の作った料理というのは非常に勉強にもなるが、何より味が新鮮で楽しいものだ)」
     内心そう思いつつ、味見の度に「うまい!」と叫ぶ琢磨に。
    「まあ、琢磨もたまにはうどんを忘れて見るのもいいのではないか?……と言っても聞かんのだろうな」
    「あっはっは、当たり前だろう?」
     砂蔵の言葉に笑う琢磨。
    「だがどうだろう、うどんの代わりにパスタ……他の麺類を試してみるのも」
    「うどん以外の麺類にも良い所はある」
     砂蔵に同意するよう陽己が言い、琢磨も麺類談義に花を咲かせつつ料理を作り続ける3人。途中から陽坐と命も話題に入って盛り上がる。
    「ふっ……」
    「どうしたよ旅行鳩?」
    「いや、こうしていると修学旅行のソーキそばを思い出すな?」
    「あー、あったなー!」
     琢磨の同意に、何の話だ? と皆が聞き返し話題は続く。
     そして――。
    『いただきまーす!』
     楽しい夕飯が始まる。
    「んんん、バター醤油おいしい!」
     ららが横の先輩の袖を引っ張りつつ美味しさに感激し、「スイカは焼くと甘くなるって聞いたんだよ? やってみよー♪」と、まだ火のついてる鉄板で余ったスイカを焼き始める。
    「おい霧島、熱いうどんで良いのか? 千景達が冷うどんも作ってくれたぞ?」
    「いえ、ここはあえて熱々を頂いているんです」
     琢磨の問いに断言する竜姫。
     胸の内には夕食後に琢磨を誘って運動するのだ、ここはしっかりエネルギー補給をせねば。
    「オレ、いろいろざいりょう、あつめた。あらきさん、オレの、うどん、つかえました?」
     空斗達と一緒に海に潜って調達した夜野が、トツトツと琢磨に聞くと横にいた陽己がしゃがみ、夜野に視線を合わせ。
    「お礼を言ってなかったな。ありがとう、おかげで良い出汁が取れた」
     陽己が夜野にお礼を言い。琢磨が「あの貝で取った出汁がうどんの隠し味に使われてるんだ」と教えてくれた。
    「もっとも、そのまま焼いた方も皆は喜んでるようだがな」
     陽己の言う通り、貝やサザエをそのまま焼いた物はキャンプならではで人気だし、確かに美味い。
    「オレ、これとった、たべます?」
     少し嬉しそうに夜野は、のべーんと伸びている白い犬(まるでノビたうどんのようだ)に声をかけ、次々に皆に勧め出すのだった。
     そんな騒がしい皆を見つつ、彩歌と一緒に食べるは悠一。
    「……いやホントなら、もうちょっと落ち着いた旅行にしたいんだけどな」
    「旅行がどうしても落ち着かないのは、もはや灼滅者の常として諦めてたりします、まして臨海学校ですよ?」
     彩歌に言われポリポリと頭をかきつつ。
    「ったく、どれもこれもダークネスが悪い……」
     そう言いながら焼きうどんをすする悠一。
    「あ、美味いな」
    「サザエとかも焼けたみたいですし、取ってきましょうか?」
     彩歌に言われ、いや俺が取ってくるよと悠一も言う。
     お互いを大事に思うからこその優しさ、これも夏の良い思い出になるだろう。


    「たっくん! 食後の運動にビーチフラッグスで勝負しましょう!」
     あらかた片付き、浜辺も薄暗くなってきた頃、そう竜姫が琢磨を誘う。
    「ビーチフラッグス? 遊びか?」
    「遊びの中にも鍛錬あり、なのです。これはライフセービング競技でもありますし、人々の命を救うという意味では我々ご当地ヒーローも同じ――」
     竜姫の勢いに琢磨も「わかった」と押され気味に首を縦に振る。
     そして、スタート位置に着きサンダルを脱ぎ捨てれば、足裏にはお台場の人口砂浜とは違う天然の砂の感触。
     思わず心が躍る竜姫。
    「よっしゃ! やるからには負けねーぜ!」
    「では参ったと言った方が負けですよ?」
     竜姫がそう言い、琢磨も「ぜってー言わねー」と笑う。
     だが……。
    「お、おい……霧島……まだ、やるのか?」
     砂浜に大の字になりつつ琢磨が言う。すでに何十回目か……。
    「たっくん、ヒーローが休んでいいのは……疲れた時と眠い時だけです!」
     同じく大の字で言う竜姫。
    「あのなぁ……」
     起き上がろうとして何かに気づいた琢磨は再び大の字に。竜姫も気が付き空を見れば、日が暮れた夜空には星が瞬く。
    「臨海学校も、悪くないよな」
     琢磨の言葉に心の中で頷く竜姫であった。

    「ふふっ、佐渡ヶ島で、40℃で、うどんで餃子で……なんか変な感じ」
     夕食後に浜辺を散歩しつつ七緒が言う。
    「そんなに変か?」
     横の玲仁が立ち止まれば、少し前を歩いていた七緒も振り返り。
    「変、だよ……でも、これだけ変なら、ずっと忘れられない日になるね」
    「おかしな想い出、か」
    「うん」
     ふと横を見れば暗闇に続く夜の海。
     ただの想い出はたくさんあれど、おかしな想い出なら……きっと、忘れない。
     波の音だけが響き渡り、まるで世界に2人しかいないようだった。

     彩歌の手を引き磯の岩場を登るは悠一、少し平たい岩に2人で座ると、空は星々、眼前は海。
     仲間達の浜辺の喧騒からは離れ、静かな世界が2人を包む。
    「こうやって悠一に手を引いてくるのって、なんだか何度やってもどきどきしますよね」
     将来を約束した誓い合った仲とはいえ、改めて彩歌に言われ少し顔が熱くなるのを感じる。
     手はそのまま、静かに波の音に耳を傾けていると。
    「そうだ、臨海学校は明日の午前もあるし……明日は海で泳いだりしようか?」
     悠一の言葉に、あっ、と彩歌が思い出したように。
    「そうですね。実は今日、新しい水着を持って来たんです」
     嬉しそうに言う彩歌に、悠一は連れて来て良かったよ嬉しく思うのだった。

     調理道具を片付け終わり、夜食用にと最低限の鉄板で調理するのは陽己。
     浜辺でビーチフラッグスをしている琢磨達は、きっと食べたくなるだろう。
     散歩から帰って来たら食べても良い? と聞いてくるららに陽己が頷き、やがて完成したのは佃煮の冷やしうどん、どうせならと薬味を刻みだす。
    「さてと……昼間に比べりゃ涼しいよな」
     犬変身を解き砂浜のごみ拾いから帰って来た空斗が言い、1人身支度を開始する。
    「どこかに行くんですか?」
     スイカをくり抜いたフルーツポンチを片手に、デザートを作っていた陽坐が聞いてくる。
    「坑道の探索にな……何もないとは思うが」
     そういうと空斗は一人いなくなる。何か掴めるかは神のみぞ知る、だ。
     やがて琢磨達も戻って来て、軽い夜食とデザートが並ぶ。
    「フルーツポンチにはスイカはもちろん、蒟蒻の白玉も入ってます!」
    「あ、それ作ったのは私です!」
     嬉しそうに命が手を揚げる……だが。
    「一番お勧めはカスタード味の水餃子です!」
     との陽坐の言葉に一瞬だけ皆の箸が止まったのはご愛嬌。
     その後、陽坐と命がご当地ネタを振れば、琢磨はもちろん竜姫も乗り出しご当地談義。
    「スイカの器にうどんを入れるのは見栄え良くないですか?」
     とのネタが出た時がうどん先輩のピークだったと言う。
     そんな仲間の輪を見つつ、砂蔵は思う。
     人と人とが関わりを持てば、こんな風に縁が繋がり新しい記憶を、想い出を作っていく……。
     ふと空を見上げれば瞬く星々。星を見る度、今日の事を僅かに思い出すなら――。
    「そんな記憶も、悪くない……」
    「ん? 何か言ったか?」
     皆の視線が砂蔵に集まるが。
    「いや、今日の戦い、皆と一緒で良かった、とな」
     その言葉を否定する者など誰も無く、自然と砂蔵の視線を追い皆が夜空を見上げたのだった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年8月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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