臨海学校2015～異常暑熱の佐渡ヶ島

■リプレイ

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　異常な熱気に包まれる佐渡ヶ島。その佐渡ヶ島にある金銀山の廃坑の先へと歩みを進める灼滅者たち。
「あっちい……スイカ眷属を割る前にこっちが参っちまうッスわ」
　相棒であるビハインドの『ぺけ太』のクーラーボックスに頭を入れて涼みながら天草・水面（神魔調伏・d19614）が心から暑そうな様子で進む。水面以外の一行も、暑さに気だるさを感じているがそんな中涼しげな顔を浮かべるのは天里・寵（超新星・d17789）だ
「ひゅー、今年も臨海学校の日がきましたね」
　長袖パーカーに水着の身軽で涼しい格好ということもあるのだろうか、気楽な様子を浮かべて寵は廃坑を進んでいく。頭に浮かぶのはこれからの戦いよりも遊びの事で。
「去年はアンブレイカブル相手に戦いつつ、カレー食ったりワカメで遊んだり楽しんだもんですが、今年も楽しめるといいですね。――あ、ちゃんと釣り道具も持ってきましたよん。楽しみですね、シーフードカレー！」
　と、飄飄と廃坑を進んでく寵と対照的に真剣な表情で廃坑を進むのはギィ・ラフィット（カラブラン・d01039）である。
「――っと、スイカの蔦が伸びてきてる方がスイカ畑っすね？」
　スイカの蔦を目印に辿りながら、ギィは暗闇で育つスイカに試案を巡らせて。日も光もない中で一体どうやって育つのか、そんな疑問を考えている間にも坑道の最奥部が近づく。
「……まあ、ダークネスが絡んだ時点で常識は捨てないといけないっすね。お、眷属スイカがふわふわ浮いてるっす」
　と、ギィの視界に眷属スイカが映った瞬間に、噛みかかるように眷属スイカが飛来してくる。だが、ギィは即座にスレイヤーカードから『剥守割砕』を取り出すと近寄ったスイカを一振りでふり払って。
「それじゃ、夏の風物詩スイカ割りと焼きスイカショーを始めやしょう」
　ギィの強烈な一撃に巻き込まれなかったスイカ型眷属が迫るが、そこに割り込む獅子鳳・天摩（謎のゴーグルさん・d25098）。ガッチリとスイカをホールドし、攻撃を受け流すとそのまま足元に縛霊手を叩きつけてスイカ型眷属を痺れさせていく。
　更に天摩のライドキャリバー『ミドガルド』もスイカ型眷属をボディで受け止めて、はじき返してから機銃を掃射し追い払っていく。見た目こそお化けスイカであるが、ふよふよと浮くスイカに天摩は言いようのない可愛さを感じつつ。
　そこに突っ込むのは寵。ギィの攻撃を受けた中で一番ダメージを負ったスイカに狙いを定めてまっすぐに槍を打ち込む。直撃の瞬間に手を捻り鋭く穿つとスイカ型眷属は堪らず弾けて壊れ。
「敵の頭数を減らすのは、ゲームでも基本ですよねッ」
　ふふん、と鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべる寵。その横では可愛いと思った瞬間に弾けたスイカ型眷属を見て天摩が硬直し。しかし、そんな想いを知らずに他の灼滅者たちも一斉に攻撃を仕掛け始めた。
　
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「なんでうちの学校の臨海学校は毎回毎回戦闘とセットなんだろうねぇ。……まぁいいや。サクッと倒してみんなで遊ぶんだよー」
　高坂・透（だいたい寝てる・d24957）が小柄なナイフを取り出すと、スイカ型眷属の攻撃をするりと潜り抜けて輪切りにしていく。更に近づいてきたスイカ型眷属を咄嗟に屈んで回避した直後にナノナノの『なの』がしゃぼん玉でスイカを弾き飛ばして破壊して。
「割り放題のスイカ割りってやつだね」
「うん、さて、スイカ割りと行きますか」
　蹴り飛ばされたスイカ型眷属ごと、鴻上・巧（氷焔相剋のフェネクス・d02823）が放つ冷気が包み込んでいく。
「暑いんですよ。スイカなら、冷たくなっていなさい」
　冷気に覆われて罅割れながらも再び迫るスイカ型眷属。だが、さらなる冷気の壁が現れると次々に限界を迎えて落ちていく。
「ぶち割るってのは得意じゃねぇですが…お覚悟願いやしょう」
　前田・利英（メディスンバイヤー・d23971）の声と共に、ひとつ、またひとつと落ちては割れていくスイカ型眷属、そして残ったスイカ型眷属の上空からは水面が十字架を叩きつけて地面に落とし、更にはペケ太の放った弾丸が撃ち貫いて。
「この後カレー作りだからな……腹をある程度は減らしておかないと」
　一体毎の強さはやはり弱いが数こそ多い敵、まだまだ残るスイカ型眷属を日本刀で斬り割った白石・明日香（リア充宣伝担当幹部・d31470）がスイカ型眷属の奇妙な見た目から味を一瞬思い浮かべて。
「こいつら相手にスイカ割りかよ……。さっさと終らせてやるぜ！」
　そうこうして戦っていく内に次々とスイカ型眷属が倒されていく。容赦なく炎で焼き払うギィに、遊び感覚で叩き潰していく寵。その横で戦いながらも可愛いと感じたスイカがやられていく様に思わず声が出そうになるのを抑える天摩。だが――。
　咄嗟に自身の目前に迫ったスイカ型眷属に剣を叩きつける天摩。思った以上に力の入った攻撃はスイカ型眷属にクリティカルヒットして。
「スイカあたまあーーー！」
　目前で自身の手によって砕けていくスイカにとうとう抑えきれず悲痛な叫びをあげる天摩。そして残るスイカ型眷属も数えるほどに。悲痛な叫びが止むのと同じ時に、そんなスイカ型眷属も叩き割られて消え去ったのであった。
　戦闘後、アガルタの口を調査するもののこれといって目新しい発見はなく。灼滅者たちは廃坑をでるべく動き出した。
　また、戻り際に透が口にしたどうして眷属がスイカ型なのかといった疑問の声は寵と利英が、スイカがアフリカ原産だからではないかと答えることで解決されたのであった。
　
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　手早くアガルタの口を攻略したこともあり、灼滅者たちは午後に切り替わってすぐの時間には海岸へと戻ることができた。あとは他のアガルタの口が攻略されて、佐渡ヶ島の気温が下がるであろう明日を待つのみ。
　灼滅者たちは一頻り海で泳いだ後、当初の予定通りそれぞれに分かれて夕飯の準備を始める。
　いち早く仲間たちから離れていったのは寵で。出発際、仲間たちに任せてくださいと自信を持った一言を告げれば意気揚々と釣りができるスポットへ。
「場所はこの辺がいいかにゃ？　――何となく」
　鼻歌交じりによさげな雰囲気の岩場にたどり着いた寵。準備を手短に済ませると慣れた手つきで釣竿を振って、遠くまで釣り針を飛ばして。
「インターネットの釣りだけじゃなくってリアルの釣りも嫌いじゃないんですよ」
　着水して数十秒といったところ。釣りはまだこれから――。
「こう見えて割と辛抱強、……まだかな……」
　開始して直後にすぐさま飽きを見せた寵は釣竿を放置すると、日よけの傘を立てて鞄からゲーム機を取り出して。ぴこぴこと電子音を響かせながら釣りを――ゲームを楽しんでいた。
　そんな寵からやや離れた位置で、少し遅れて到着した透は寵の釣竿捌きに感嘆しながら準備を始める。釣竿を組み立てて、餌を――思うようにつけられなくて。
　しばらく苦戦した透はゲームに興じる寵へと声をかける。
「餌が上手くつかないんだよねぇ。このままちょっと休憩……は早いからコツを教えてくれないかなぁ？」
　そうすると寵も自身の実力を見せられるいい機会だと、透の釣竿を借りてパパッと餌を付けて見せる。
「ここをこうして、こうするんですよ。どうです？　分かりましたか？」
　と、雰囲気感溢れる説明だったが透も何となく理解して。お礼とばかりに持ってきていた岩塩キャンディーを寵に手渡す。受け取ったキャンディをさっそく口に頬張って、寵と透の二人が釣りを始める――だが。
「がんばる…うん、がんば……る……」
　寵の立てた日傘の下で、さっそくうたた寝を始める透。透のナノナノの『なの』も同様に竿を支えることもなく鼻提燈を膨らませて。その横では相も変わらず釣りに興味を失ってゲームを始める寵。
　時折竿が揺れると気が付いた方が適当に釣り上げて、マイペースに二人の釣りは進んでいく。
　二人とはある程度離れた地点で釣りを始めたのは水面である。
「メバル、ガシラ、アジ。――イワシにセイゴ、スズキといろいろ居るけど、カレーに合いそうなのはアオリイカかな」
　この水面の推察通りこの時期であると大きいものはあらかた居なくなってしまっているのだが、カレーに使う分には小さいものの方が都合がいいだろうと水面はアオリイカを狙いに定めて釣りを開始する。
　アオリイカを釣るために用途に合った釣竿を準備し、ひょいっと海面に放る水面。知識に見合った腕前は狙いのアオリイカを確実に捕らえていく。
　そんな水面の隣ではビハインドのペケ太が重めの重りを付けた仕掛けを放ると水底に沈んでいる獲物を捕らえていく。持てる力を駆使しながら、豪快かつ水面の的確な指示のもと次々に釣り上げられていく魚とイカ達。
　捕らえた魚はペケ太のクーラーボックスの中に。主従の二人が仲良くともに釣り上げていく、今晩の食事を少しでも豪華にしようと二人のエギングはまだまだ続く。
　と、釣り組からずっと離れた岩場に立つのは天摩だ。カレーの具になる貝を採ることと、銛を使って魚を取ることを目的とした天摩は腰に網を付けて海へと勢いよく飛び込んでいく。
　着水と同時にすいすいと海の中を泳いでいく天摩の動きはまるで魚のように、次々と水底の貝を拾いながらも捕れそうな魚を取っていく。
「地獄合宿の経験が生きてくるっすねー」
　地獄合宿で行った遠泳の経験を活かしながら、袋の中には魚介類がいっぱいに。猛暑の中で泳ぐ海はとても心地よく、わずかな休憩を挟みながらまた海へと戻る天摩。
　そんな天摩の元にやってくるのは利英だ。メンバー内で一番身体を動かすことになるであろう天摩の元へと塩分と水分補給のできる経口補水液を手渡すと暫し海を眺めて。
　体力に自信のない利英は泳ぐ天摩の姿を視界に入れながら、潮風を浴びてのんびりとした時を過ごす。そして、天摩が再び戻ってくると他のメンバーの元にも回ると告げてその場を後に。
　続けて向かったのはマイペースな釣り人二人組の寵と透の元。日傘の下でのんびりと過ごす二人には、甘いジュースの方が良いだろうとキンキンに冷えたそれを差し出して。
「いいブツがありやす。こいつをやるとすーっと気持ちよくなりますぜ……へへへ」
「おー、サンキューです！　ふふふっ、炎天下の中で飲む冷たいジュースにゲーム……じゃなかった釣りは最高ですね！」
　と、寵がごくごくとジュースを堪能したその時――釣竿が大きく撓る。
「あれ……なんか釣竿がすごい揺れてるような……。……気のせいかな」
　ふと、目を覚ました透が気付かない振りしてごろんとしたが、利英がさっと釣竿を抑えて。寵もすぐに利英から釣竿を受け取るとぐぃっと力を入れて引き上げていく。
　大きな水しぶきを上げて、釣れるのは巨大な魚。寵はしてやったりといった顔を見せると、ようやく目を覚ました透が。
「この大きさだったら解体するのにちょうどいいかなぁー？」
「やりやしたね。さて、あっしはお先に戻って炊飯の準備をしてきやす」
　と、飲み物をもう一本ずつ置いて、去っていく利英を見送って二人はまた休憩モードへ。釣れた魚を届けるのはもう少し後でもいいだろうから、と。
　
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　食材調達組が各々魚介類を集めている間、炊飯組として準備を始めたギィに巧、明日香の3人。ギィと明日香がカレーを作り、巧がお米を焚いていく。
　調理を進めるギィは的確な指示と共に市販品のルーを幾つかブレンドして、独自の配合のスパイス、隠し味にはブーケガルニを。
　食材準備を進めるギィの様子を見ながら、鍋や火の準備を進めていく。あっと言う間に準備を終えれば野菜を明日香は切り始めて。「料理本の内容通りにやれば大丈夫だよな？」
　どことなく不慣れな様子を見せる明日香だが、ゆっくりと丁寧に野菜を切っていく。分からない様子を浮かべれば、すかさずギィがフォローを加えて用意された野菜は次々カットされていって。
　てきぱきと動くギィの姿はブーメラン型の水着に薄手のパーカー、鍛えられた肉体は料理をする姿もまた様になっており、炊飯組のリーダーといった雰囲気で。そんな中に食材調達組の応援に行っていた利英も帰ってきて。
「それじゃあ、自分は巧さんの様子をみてくるっす。二人はこのままカレーの準備をお願いするっすよ」
　と、ギィが離れた間にも明日香がカレーの味を調整していく。自分好みの甘めの味へと――。
　そして、巧の飯盒炊飯。カレーにとって大事なご飯を失敗するわけにはいかないと、巧は慎重に準備を進めていた。
　まずは米を研ぎ、水量の調整。薪を重ねて火をつけて、火力の調整。そして、飯盒を火の中に置けば、あとは見守りながら待つだけ。
　高温に見舞われた気候の中で、火を前に待てば自然と汗が流れ出て。ふと、水分が欲しいなと巧が思ったその時にぴとっと冷たいものが背中にあたる。
「飲み物を利英さんから貰ったっす。巧さんの分を届けに来やした」
　そういって、差し出される飲み物をありがたく受け取った巧は乾いた喉を潤しながらお米が炊き上がるのを待つ。
「はじめチョロチョロ中ぱっぱ。赤子泣いてもフタ取るな。でしたっけ」
「そうっすね、赤子が泣いてもフタ取るな。ご飯を十分に蒸すまでに蓋を取るとおいしく炊き上がりやせんから」
　と、二人は他愛もない話をしながら飯盒を包む炎を見つめて。数分程、時間が経ったころ、そんな二人の耳に賑やかな声が届いてくる。
　食材調達に行っていたメンバーが戻ってきて、調理が本格的に進み始めたのだろうと察したギィは巧に後を任せてまた調理場へと。
　ギィが戻ってみれば、寵の釣りあげた大きな魚を透が見事なナイフ捌きで下していき、大量の貝の具を利英と天摩が器具を使って出していく。そして、アオリイカの下処理を水面とペケ太が進めていた。
　こうして、サクサクと進んだ炊飯によって出来上がったシーフードカレーを皆で食べ、持ってきていた普通のスイカで天摩が早食い対決を皆に仕掛けたりして時間は進んでいく。
　気付けばあっと言う間に時間は夜。ひとり離れて線香花火を楽しむ明日香の姿や花火を手に振りまして遊ぶ寵、打ち上げ式の花火を眺める利英にロケット花火で楽しむギィとそれぞれのスタイルで夜もまた深くなっていく。
「あーなんか夏してるなあ」
　と、打ちあがった花火を見て思わず言葉に漏れる天摩。その横で線香花火を片手に寝息を立てていた透がふと、目を覚ませば。
「まだまだ明日の帰りまでは時間があるんだよー。だからゆっくり楽しも……」
　そう言いかけたまま、また寝息を立て。水面と巧もそんな透の言葉に頷いて、明日もあるから十分楽しもうとゆっくり語り合い。
「そうですよ！　まだまだ十分遊ぶ時間はありますからね！」
　と、寵の放った花火は皆の視線を集めて、弧を描き炎の虹となっていく。――明日の帰りの時間まで、まだ臨海学校は続いていく。

作者：ＳＹＯ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年8月26日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 3／キャラが大事にされていた 5
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