狼森・紅輝(群れの温もり知らぬオオカミ・d31598)は、こんな噂を耳にした。
『窓に美少女が現れた』と……。
この美少女は都市伝説で、窓の向こう側で微笑み、手招きをしているらしい。
そのため、『俺のマイスイートハニー!』とばかりに飛び掛かっていくのだが、近くまで行くと蜃気楼の如く遠ざかってしまうため、大怪我をしているようである。
中には2階から転げ落ちる者や、ビルから落下する者などもおり、深刻な事態に陥っているようだ。
しかも、都市伝説は1メートル以上近づくと遠ざかってしまうため、遠距離から攻撃しなければならない。
その上、常に窓の向こう側にいるので、あまり窓にダメージを与え過ぎてしまうと、別の窓に移動してしまうようである。
また、潤んだ瞳で助けを求める事もあるため、誘惑されないように気を付けておかねばならない。
そういった事も踏まえた上で、都市伝説を倒す事が今回の目的である。
参加者 | |
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アッシュ・マーベラス(アースバウンド・d00157) |
卜部・泰孝(大正浪漫・d03626) |
エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746) |
嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475) |
藤堂・氷弥(週休五日な人生・d20979) |
月夜野・噤(夜空暗唱数え歌・d27644) |
霞月・芳夜(幾望・d34794) |
守部・在方(日陰で瞳を借りる者・d34871) |
●麗しき少女
「心の奥に秘めし欲望、隠し続けば苦しみ増そう。都市伝説の仕業とし、解放す事で重荷解かれる」
卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)はまるで呪文を唱えるように呟きながら、仲間達と共に都市伝説が確認された空き家にやってきた。
都市伝説は美少女の姿をしており、窓の向こう側から手招きをして、相手の心をガッチリと掴み、不幸な結末へと導いているようである。
「届きそうで届かない都市伝説さん……ですか」
月夜野・噤(夜空暗唱数え歌・d27644)が、事前に配られた資料に目を通す。
資料を読む限り、都市伝説は相手を誘惑するだけのようだが、魅了されると後先考えず窓に突っ込んでしまうため、色々な意味でトラブルが絶えないようである。
「窓に美少女かぁ、ニホンにはまた不思議な噂が流れているんだね……」
アッシュ・マーベラス(アースバウンド・d00157)が、しみじみとした表情を浮かべた。
一体、誰がこんな噂を広めたのか分からないが、おそらく心の底から美少女が現れる事を夢見ていた誰かだろう。
それが誰なのか分からないが、少なからずその人物の夢は叶ったと言える。
「窓から女の子が覗いてるだけなら、危ない都市伝説ではないと思ってたのだけど、これはこれで危険な都市伝説だね……」
霞月・芳夜(幾望・d34794)が、複雑な気持ちになった。
おそらく、都市伝説に悪意はない。悪意はないが、善意で行動しているとも言えなかった。
「まるで誘蛾灯か、何がしホイホイのような釣れっぷりだね。ある意味、都市伝説としては完成してるんじゃないかな? ……ただし男に限るけど」
藤堂・氷弥(週休五日な人生・d20979)が、皮肉混じりに呟いた。
実際に、被害は拡大しつつあり、男性であれば確実に引っかかっているようである。
しかも、都市伝説はどんなに近づいたとしても、遠ざかってしまうため、捕まえる事が出来ないらしい。
逆に考えれば、一定の距離を保ちつつ戦えば、確実にダメージを与える事が出来るだろう。
「……まったく、とんだ恥ずかしがり屋がいたもんだ。……とは言ってられないっすかね。でも、飛びつきたくなるなんて大したことじゃないっすよ。自分なんか街行く男たちが振り向くからホント困っちゃうみたいな? エレガント過ぎる女っすからね! まぁ十中八九警察呼ばれてるんすけど……」
嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)が、どこか遠くを見つめる。
「でも、1メートル以内なら何をしてもおっけー! ってことよね!」
エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)が過剰に胸を揺らしながら、瞳をランランと輝かせた。
それならば、一定の距離を保ちつつ、あんな事や、こんな事。
やり方次第で、色々な事が出来そうである。
「ところで、上から植木鉢でも落としたら、どうなるんだろう?」
守部・在方(日陰で瞳を借りる者・d34871)が、不思議そうに首を傾げた。
この時点では、やってみないと分からない。
だが、試してみる価値はありそうである。
そして、在方は空き家の一階で都市伝説が現れるのを待つのであった。
●窓の向こう側
それから、しばらくして……。
窓の向こう側に、都市伝説が現れた。
都市伝説は窓の向こうで、必死に自分をアピール。
「美少女だ! 美少女が出たぞ! 絶やせ!」
すぐさま、絹代がサウンドシャッターを使う。
都市伝説は絹代達を見つめてニコッと微笑むと、恥ずかしそうに手招きをした。
「ワォ、噂通りだっ! 近づいて、見に行こーっと」
それに気づいたアッシュが、瞳をランランと輝かせ、都市伝説に駆け寄ろうとする。
しかし、霊犬のミックが慌てた様子で、アッシュの服を引っ張った。
「わわっ、動けないよ、ミックー!」
そのため、アッシュは都市伝説に近づく事が出来ず、困惑ムード。
ミックは『アッシュを逃がすまい』とばかりに、全身全霊でじゃれついている。
「カワイイ! ヤッター!」
その間にエルファシアが水鉄砲を持って興奮気味に飛び上がり、全力ダッシュで1メートル手前までやってきた。
その位置から都市伝説の匂いをくんかくんかした途端、ほんのりと花の香りが漂ってきたため、きゅいんきゅいんしながら鼻血を噴いた。
「確かに可愛いんだけど……なんていうか、私にそっちの気はないんだよねぇ……」
氷弥が残念そうに溜息をもらす。
だが、都市伝説はめげずに瞳をウルウルさせ、『早くこっちに来て』と言わんばかりに手招きを繰り返す。
「そんな事をしたって、誰も誘惑され……あれ? 朔の目がなんだかキラキラしてる……。朔、だめだよ、誘惑されて……行っちゃだめー!」
芳夜がわたわたした様子で、朔(霊犬)に飛び掛かる。
しかし、朔は大興奮!
今にも都市伝説にダイブしそうな勢いで、前足を蹴っていた。
「しっかり……です……です!」
噤も一緒になって、朔の身体を掴んでいるものの、既に限界。
ふたりともプルプルしながら、朔の身体を押さえ込んでいる。
「グッ!? むむっ、自称許婚、我に迫りし女子違い、安らぎ、癒しを齎す存在が眼前に……?」
次の瞬間、泰孝が自分の意思に反して、身体がフラフラ。
まるで操り人形の如くぎこちない動きで、勢いよく窓に突っ込んだ。
だが、そこに都市伝説はいない。
我に返った泰孝が辺りを見回した瞬間、目の前に落ちてきたのは植木鉢。
「あ、あの……、都市伝説がこっちに逃げてきたんですが……、何でしょうね。色々な意味で負けた気が……」
在方が2階から都市伝説を見上げる。
一瞬にして都市伝説が自分の前を上空に向けて通過していったのだが、無駄に胸がデカかったため、たゆんと挟まれてしまったようだ。
その感触はマシュマロに近く、一瞬にして敗北感を味わうほど。
そのせいか、戦う前からどんよりとした空気が、在方のまわりに漂っていた。
●大きなこぶ
「アイタタタタッ! いきなり植木鉢を落としたら痛いじゃないですか!? 次はありませんからね」
都市伝説が頭に大きなたんこぶを作って、ぷんすか。
どうやら、在方が落とした植木鉢に自ら突っ込み、瀕死の重傷を負ってしまったようである。
しかし、都市伝説はめげる事なく、別の窓に移動すると、涙目になりつつ、再び男性陣にアピール。
一方、在方は都市伝説が通り過ぎた時、胸の谷間に挟まれてしまったらしく、自分の胸と比べつつ、圧倒的なまでの『差』を感じていた。
「僕は女の子の誘惑には乗らないよ……! 七不思議使いにとっては都市伝説も宿敵のようなものだから」
芳夜がキリリとした表情を浮かべる。
その間も朔はハートマークを浮かべているが、なるべく気にしない事にした。
「あ、いや、別に……酷い事をしようとは思っていませんから」
都市伝説が涙目になって言い訳をする。
実際に自分から手を出す事はないのだが、間接的であれ相手に怪我をさせている事に違いはない。
「とても可愛い方なのです、その、ごめんなさいです……です!」
噤が申し訳なさそうに謝った。
「い、いえ、別に謝らなくても……。ただ、こちらに来てくれればいいんです。こ、怖くないですよー」
都市伝説も慌てた様子で、自分が無害である事をアピール。
そのせいで、余計に怪しくなっているが、都市伝説に自覚はないようである。
「誘惑すりゃ突っ込んでくるとでも? 都市伝説だってわかってりゃどうってことないんすよ! 多分」
絹代が都市伝説にレイザーポインターをしつこく当てた。
「う、うわっ、やめてください。やめてくださいよぉ」
途端に都市伝説が涙を浮かべる。
本人としては別に危害を加えるつもりがないため、余計にショックだったのかも知れない。
「それに近づかなくても出来る事はいっぱいあるって思い知らせてアゲルわ!」
エルファシアが胸元をガン見しつつ、暗黒微笑。
都市伝説が逃げようものなら、空飛ぶ箒で追尾する勢いのようである。
「あ、あの……怖いです……」
これには都市伝説もドン引き。
身の危険を感じて、身体を強張らせる。
「……なんか相手は都市伝説なんだけど、ちょっと可哀想に思えてきたよ。ただし、君が泣いても、攻撃するのを、やめない」
氷弥が『まさに外道』と言わんばかりの表情を浮かべ、都市伝説にDESアシッドを発射した。
「ふ、服が……! きゃああああああああああああ!」
それと同時に都市伝説の服が溶け、辺りに悲鳴が響き渡る。
「我、足りぬを知る。されど此れは自らを知る良き機会」
それに合わせて、泰孝が都市伝説に狙いを定め、オーラキャノンを撃ち込んだ。
「ど、どうして、私がこんな目にっ!」
次の瞬間、都市伝説が納得の行かない様子で、断末魔を響かせた。
「べ……、別に悔しいわけじゃないんですからね。ほ、本当ですよ?」
在方が自分の胸を押さえて言い訳をする。
だが、思ったよりもダメージは大きく、都市伝説から受けたショックは絶大。
とりあえず、家に帰ったら牛乳を飲もう。飲んで、飲んで、飲み明かそうと思うには十分なほどのアレだった。
「でも、これで事故が起きる心配もないです……です!」
そんな事とは露知らず、噤が嬉しそうに尻尾をぱたぱた。
「霊犬、抱っこして帰る灼滅者なんて他にいるのかなぁ、というか、ボクも帰ったら寝よっと……」
アッシュも戦いの途中で眠りについたミックを抱き上げ、ホッと一息。
既にミックは、夢の中。
どんな夢を見ているのか分からないが、とても幸せそうである。
そして、アッシュ達は色々な意味でもやもやとした気持ちを抱えつつ、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年8月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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