松戸密室掃討作戦~放課後CrAzy

    作者:菖蒲

     松戸市で発生している密室事件。
     先日、この松戸市の密室事件を起こして居たMAD六六六の幹部であり――武蔵坂の生徒である『ハレルヤ・シオン』の救出に成功した。
     彼女は元・幹部であり、松戸の密室の警備を担当していた。
     つまり、『松戸市の密室』について更に詳しい情報を得られた。
     この情報は貴重なものだ。密室事件の解決の糸口を掴んだともいえる。
    「松戸市の密室を一掃する作戦を展開するの」
     不破・真鶴(中学生エクスブレイン・dn0213)は言う。
     松戸市の密室を一掃できれば、迷宮殺人鬼・アツシの引き籠る密室へと侵入も可能になる。
     アツシを灼滅する事で松戸市の密室事件を解決できるのだ。
     
    ●introduction
    「ええと、千葉県のダークネスにはアツシから松戸の密室を与えられてるそうなの。
     マナには予知できない場所だから、ごめんね。『そうなの』って言い方になるけど」
     密室殺人鬼アツシが与えた『密室』。人口は1000人程度の場所で暴君の様に振る舞う六六六人衆が存在するのだと言う。
    「松戸市のとある中学校を密室化してる六六六人衆・カゲロイ。
     彼は中学校の生徒達を序列化して支配してるの。カゲロイが評価する動きをするとポイントを貰えて序列が出来るらしいの」
     学校の成績付けのようにシビアな評価はカゲロイの思うがままに動かされる。
    「毎日、その評価の通りに序列が最下位の生徒が殺されて行く……。
     だから、その為に必死になってカゲロイからの評価を上げようと皆頑張ってるらしいの」
     友達を蹴落として、必死に殺人鬼に媚びる。それは正しく地獄と呼ぶにふさわしい。
     密室の中でカゲロイが殺戮を行ったのは1回のみ。見せしめのためにクラス一つを殺し尽くした。それ以外は序列に沿ってしっかりと殺す純を決めている。
    「カゲロイは言葉巧みに生徒達を操ってるそうなの。
     密室の内部は色んなバリケードが存在していて、生徒同士の牽制のし合いが見れるの。ある意味で、極限状態かもしれないの」
     それでも、子供達を救う事が出来る可能性がある。
     無論、密室へと潜入すればカゲロイは「君の居場所は此処なんだ、ほら、邪魔者を追いかえそう」と優しい言葉を投げかける事だろう。
     その言葉に従い、子供達が灼滅者に何らかの牽制を仕掛ける可能性がある。ただし、彼らは一般人だ――力はない為にどうしようもあるだろう。
    「カゲロイはハレルヤ・シオンの護衛を行っていたうちの一人だそうなの。
     紫色の目をして、優しげな顔立ちのおとこ。でもやってることは残虐だわ」
     瞳を細める真鶴は密室殺人鬼を撃退し、密室を相当する必要があると灼滅者を見回す。
     殺人鬼のサイキックと日本刀を獲物にした六六六人衆。序列は不明だが残虐な本性を持っていることには違いあるまい。
    「六六六人衆は確かに強いの。でも、松戸の密室事件を終わらせるチャンスだから……ごめんね、マナは送り出す事しか出来ないけど。
     全部の密室を相当して密室殺人鬼アツシを引き摺り出しましょうね。これ以上、誰かが不幸になるのは駄目なことだと思うの」


    参加者
    泉二・虚(月待燈・d00052)
    山城・竹緒(デイドリームワンダー・d00763)
    花檻・伊織(蒼瞑・d01455)
    橘名・九里(喪失の太刀花・d02006)
    瑠璃垣・恢(キラーチューン・d03192)
    廣羽・杏理(ソリテュードナルキス・d16834)
    鳥辺野・祝(架空線・d23681)
    依代・七号(後天性神様少女・d32743)

    ■リプレイ


     号令の音が響く。荘厳たる鐘の音とは程遠いチープな電子音に濡れながら。
     成績発表のその時に怯えるかの様にその後者は刺す様な冷たさが溢れている。差し込む夕陽の陽炎が如き揺らめきとは余りにかけ離れた怜悧な空気感は、割れた窓ガラスに反射して乱雑に積み上げられた椅子と机の存在からくるものか。
     学校と言う場所に余りに似つかわしくないバリケードを見回して、泉二・虚(月待燈・d00052)は人知れず息を吐く。旅人の外套に身を包み、学生服に身を包んだ彼の、唇から洩れた溜め息は不安を抱くかの様で。
     孤高の少年にとって、この異様な雰囲気は「相応しい」との言葉が出てくることだろう。彼にとって、灼滅者(いぶつ)にとって、相応しい――『現場』
    「此度も宜しく頼む」
     手を抜くつもりはないの強がりに、橘名・九里(喪失の太刀花・d02006)は曖昧な笑みを零す。
     からんからんと音鳴らす下駄は、その音色に聞き惚れる事も出来ないほどに早い。柑橘色の瞳は何時もと何も変わらぬと言う様に薄い笑みを浮かべていた。
    「……こっち、でしょうか」
    「そうですね。さあ、誰ひとり死なせない気概で行きましょうね」
     頭の中に叩きこんだ見取り図を思い出す様に廣羽・杏理(ソリテュードナルキス・d16834)は悩ましげに眉根を寄せる。愛しい想いを詰め込んだ花束を後ろ手に隠し、ゆるりと周囲を見回した。
     六六六人衆――MAD六六六の迷宮殺人鬼・『アツシ』が作りだした密室の中でお遊戯を行う『ヒトゴロシ』の元へ向かうのは中々に骨が折れる。極限状態の子供達へと掛けられる甘ったるい穏やかな言葉がどうにも虫唾が走ると杏理は唇を緩く噛み締めて。
    「誰だッ!」
    「ッ」
     掛けられた声に顔を上げた山城・竹緒(デイドリームワンダー・d00763)は黒目がちな瞳にあからさまな不安を抱く。ゆるゆるとしたマイペースさを前面に押し出した竹緒のペースが微妙に崩れたのは生徒達が『点数稼ぎ』に巡回しているからであろうか。
    「カゲロイを探してるんですよ」
     へらりと笑った依代・七号(後天性神様少女・d32743)はなれない学生服の裾をつい、と摘みながら『普通』の少女の如く学生へと声を掛ける。プラチナチケットを使用した彼女は今はこの場の『学生』でしかない。
    「先生になんの用だよ……まさか、お前――成績を上げろって言いに行くつもりか!」
     生徒の言葉にぴくり、と肩を揺らした鳥辺野・祝(架空線・d23681)は好意を寄せる七号が何処か困った様に肩を竦める様子へと視線を傾けて唇を引き結ぶ。
     先生、成績――殺しをゲーム感覚で行う為に与えられた舞台装置。剣の勘を丸出しにした祝の肩をぽん、と叩いた瑠璃垣・恢(キラーチューン・d03192)はふるりと首を振る。
    「瑠璃垣、痛い」
     冷静沈着、ポーカーフェイス。それが瑠璃垣・恢という青年だった筈だ。音楽探偵の余裕のなさげな様子はヘッドフォンの無音からも想像がつく。
     掴まれた肩に指先が喰いこむ感覚が、想いが先走るなよと告げるかのようで。
    「瑠璃垣」
    「――……六六六人衆、か」
     闇に濡れた彼の言葉に祝は目を伏せる。薄氷を思わせる眸に夕陽を映した花檻・伊織(蒼瞑・d01455)はゆっくりと顔を上げる。高く積み上がったバリケードの向こう側、確かに聞こえたのは生徒たちの悲痛なこえ。



     姿を隠す事が出来る伊織達は出来得る限りの周囲の哨戒を行った。情報収集に徹する七号のサポートを行う祝は生徒達による恐慌状態に並々ならぬ不安を抱いたままゆっくりと生徒達の『攻撃』をすり抜ける。
     金属バットが鈍い音を立て、生徒達ががやがやと声を漏らす。成績を気にする学生達にとって、単独行動をとりカゲロイの元へと目指す灼滅者(がくせい)は畏怖の存在でもあったのだろう。
     襲い掛かる彼等を避ける様に恢は身を捻り、より奥へと進んでゆく。見取り図を思い返しながら杏理は三階への最短ルートを探すと共に高々と積み上がったバリケードに不安を覚えた様に目を細める。
    「まるで、要塞ですね……」
     ぽそりと呟いた九里の言葉は云い得て妙だ。
     もう少しで三階、と言う所で鈍いノイズと共に放送開始の合図が鳴り響いた。

    『侵入者かあ。処刑を始めようか』

     叫声が、耳を劈いた。報告する事が序列の為のポイントを、生き伸びる為の切欠になると考えた生徒は何人も居た。
     優しげな男の声と共に校舎に響き渡る絶望にバリケードを蹴り倒した恢が階段を蹴る。がらがらと崩れる椅子を後方へと投げ捨てた九里の瞳が穏やかな色から変化する。
    「気味が悪い」
     それは、己か相手か。戦闘狂はくつくつと咽喉を鳴らして憎悪と羨望を胸に声なる方へと足を進めた。
     開け放たれた扉はまるで誘うかのようで。飛びこむと共に攻撃を放った虚の日本刀がぎらりと光る。教室の中、ゆっくりと生徒一人一人に手を掛けるカゲロイがさっと飛び退いた。
    「意外と早い到着だねえ」
    「申し訳ないが、この後は食事の予定があるものでな。オレンジジュースを打ちならす約束をしているんだ」
     黒曜石の瞳が狂気に染まり、笑う。焼き肉屋に行こうとふざけ合った教室での作戦会議が脳裏にちらちらと過ぎるかのようで彼は珍しく笑っていた。
     刃を向けたまま伊織はゆっくりと愛刀の感覚を確かめる。六六六人衆の獲物は刀、どちらも同じ『刀遣い』なれば――お誂え向け。防ぎ切るのみだ。
    「刀を人斬りの道具としか見ないか、それ以上と見るか――俺と君の違いはそこだろうね」
    「死の恐怖を一番に感じられる道具だからね」
     柔らかに笑うその表情に、嫌悪感は濃い。柄を握りしめる指先に力を込めると同時、掠める様に放たれた攻撃を受けとめた伊織の背後から杏理の鼓舞する想いが伝う。
    「早く! 此処から離れろ!」
     慌てふためき逃げ出す生徒達の中で、へたり込んだままカゲロイを眺める生徒を掴み上げ、蹴り飛ばした杏理は敵前であれど優しげな表情を崩さぬ六六六人衆と己が重なって見え、嫌悪を丸出しにしてゆく。
    (「しぬほど気にくわないな……」)
    「嫌い、という顔をしているな」
     わざとらしい言葉に杏理は「優しい皮を被ったケダモノなんて、完全に僕のお友だちだね」と冗句めかして『笑って見せた』
     しかして灼滅者とダークネスの戦いが始まり、一つの叫声にカゲロイの表情が明るくなってゆく。
    「ッ――」
     息を飲んだのは、誰だったか。教室の隅で怯えていた生徒が、生徒へと刃を突き刺した。
     それは、残されたカッターナイフか。咄嗟に走り寄った杏理が応急処置を施し、歯噛みする恢が嫌悪を丸出しに、影を大きく纏いこむ。
     だん、と地面を踏みしめた下駄の音。風に遊んだ橙色が六六六人衆の眼前へと飛び込んだ。
    「……弱者を甚振るのは愉しゅう御座いましたか? そして弱者に追い詰められる気分は如何ですかねェ」
    「追いつめられるのは、まだ先だよ」
     わざとらしく笑ったカゲロイを苛む者は無い。前のめりな灼滅者達の前線へと飛び込む彼の標的は護り手となった虚と伊織、そして祝。
     攻撃手をになう竹緒と九里を支援する様に後方から一撃一撃と重ねる恢と七号の瞳にも苛立ちは宿っていた。
    「下衆め――殺しに来たぞ、六六六人衆」
     起したD/I。鳴り響くのは肉を切り裂く、おと。
     宿敵を殺す事こそが存在意義だと恢は云う。忌み嫌う憎悪だけが彼の右腕に悪魔の如き存在を作りだした。
     夥しい程の黒は彼が作り上げる『闇』の姿。苛立つ恢の足を止めることなく刃の柄を器用に使い伊織を押し倒し九里を切りつけるカゲロイは「悪い事なんてないじゃないか」と冗談めかして笑った。
    「悪い事がない――!?」
     息を飲む、七号は神様面した男の傍若無人さに憤りを感じ、同時に前のめりな戦線の内、ディフェンダーが受け続ける攻撃量の多さに不安を抱き始めた。


    「こうしなくちゃ――こうしなくちゃ、」
     ぬらりと光るそれは夕陽の色で尚に赤く見えて。
     何処からともなく蝉時雨が聞こえてきそうな午後。からん、と取りこぼした妖の槍が指から滑り落ちる。
     緑の髪を揺らした竹緒は息を飲み、「あの、さ」とゆるゆると首を振った。廊下に広がるそれが、彼女の爪先を赤く染めてゆく。濡れた様な色の髪は、今はどこか異様なものにも似ていて。
    「殺されるんだ……僕が」
     ひ。ひ。と堪えず繰り返す息の音。呼吸器から漏れだしたそれに首を振って竹緒はカゲロイへと飛び込んだ。
    「だからって殺さなくてもいいでしょう! 序列(ポイント)なんて下らない神にも為りきれない物の遊び!
     従う道理など、何処にもないでしょう。ましてや、救いが来たと言うのに……」
     涙を流す一般人の生徒の肩を掴み、後衛へと渡す虚に頷く七号は唇を噛み締める。
     神になった彼女にとって、神様気どりは気にくわぬ。尤も、神にも為り切れぬ下らない遊戯に従う意味など感じられない。
     地面を蹴った伊織の掌で鈍色の刃が響く。眼鏡をずりあげて、ぐるりと体を反転させた九里は余裕をその表情に張り付けた男をき、と睨みつける。
    「強き者程、倒す価値があるというもの。さァ悦い声で啼いて下さいな」
     弱者(じぶん)の存在が、どこまでも強者(あいて)を壊す事が堪らない。
     くつくつと笑う九里の眼前を往く虚が日本刀をぐるりと向けた瞬時、足を止める事の無かったカゲロイの刃が翻った。
    「あ」
     息を飲んだ杏理が懸命に癒し続ける。純銀の鎧を模したブーツが地面を蹴り、揺れる蒼い焔の色の中、真っ赤に染まる夕焼けの向こう側で、滴る赤が余りに美しくて。
    「生徒のみんなのために、カゲロイさんに0点の評価をつけにきました!
     カゲロイさん、落第点だよ? そんなんじゃ、センセイにはなれません!」
     びし、と指差した天真爛漫な竹緒とて疲労の色は濃い。打ち倒された体が引き摺り下ろされて、カゲロイの刃の色を見る。
     揺れる意識で男の顔を捉えた伊織が首を振り「残念だけど、死ねないんだ」と唇だけで笑って見せた。
    「死に方位は、選ばせて貰おうか」
    「数秒なら待ってあげよう。君に幸福な死を――願わくば、」
     ひゅん、と空間を裂いた恢の一撃。リズムに乗るかのようなそれに乗せ、前線の竹緒が飛びこんだ。
     作られる一筋の傷。痛みと共に感じた鼓動。どくん、どくんと音を立てる。
     屍の上で踊る様に彼女が続ける攻撃に、長い髪を揺らした九里が眼鏡の位置を直して追従した。
     傷だらけの六六六人衆にもう少し、と感じたのは誰もが同じ。
     膝を付いた伊織が顔を上げ、サポートをする恢が「くたばれ、下郎」と低く呟く声を聞きながら七号は「いけない」と声を震わせる。
     前線で庇い手とも為り得た仲間達は昏倒している。無論、戦線が破たんしたという訳ではない―命の危機には違いない。
    「はやく!」
     守ってと伸ばした指先に、頷く杏理が地面を蹴った。此処で失う訳にはいかない、闇に飲まれても、此処で彼を――。

    「死ぬぐらいなら、せめて」
     彼を、殺さなくては。
     せめて、一人だけでも『持って』いく――その言葉と共に打ち倒された虚の眼前へと迫ったのは、殺意と言う名前の刃。


     眼前へ迫り往く男の刃。てらりと光るそれが反射したのは悪夢の様で。
     前のめりであった灼滅者の身を蝕んだのは確かな『痛み』。眼前へ迫るそれが『死』へと引き摺り落とされる心地なのだと気付き、虚は小さく笑みを浮かべた。
     ぐい、と杏理の胸を押して、好意的な相手だと笑って見せた祝は虚を助ける様に手を伸ばす。
    「しなない」
     きみが在るべくして重ねられた呪詛が染まりゆく。
    「わたしが此処で倒れたって、お前を殺す刃は届く」
     ひとすじの烟。凪いだ空気、頬を撫でる生温さ。上がり往く体温を振り払う様に地を蹴った。
     ずん、と伸びゆく髪がおぞましい程の赤を反射する。全てを飲みこんでしまいそうな程にぽっかりと口を開けた夕陽の色。
     眩しいそれから目を逸らさずに、見開いた杏理が唇を噛み締める。
     優しい皮を被ったケダモノ、此処で灼滅(ころ)さなくちゃ気が済まない。
    「嗚呼、君も完全に僕のお友だちだね――」
     剥き出しの殺意は風になる。切り裂く様に飛んだ銀の鏃を弾き、六六六人衆が息を飲む。
    「鳥辺野……」
     飲んだ息の音さえも聞こえそうな静寂を破る虚はずりずりと地を這いながら撤退線とする六六六人衆を見下ろしながら異形の存在へと視線を向けた。
     切り揃えた髪は長く伸び切って。髪先は鋭利なナイフを思わせた。月色の瞳は今や濁って『鳥辺野・祝』という少女を忘れさせるかのよう。
    「君は、そうして生きていくのか」
    「……鳥辺野さん。焼き肉、食べに行こう。良い店を知ってるんだ。予約してあるから――皆で」
     そろりと声を掛けた伊織の声に祝は柔らかに笑みを浮かべる。穏やかな少女の表情にぞわりと背へ走った違和感を振り払う様に伊織は地を蹴った。
     転がるカゲロイの身体目掛けて攻撃を繰り出すのは恢とて同じ。忌むべき存在へと変貌してゆく穏やかな想いを与える少女の姿。
     穏やかささえ忘れたかのような憎悪と、嫌悪と――『殺意』が前面に押し出されてゆく。
    「何をしてるんだ」
    「夢を見てるんだ」
     少女は云う。
     生きて。
     これ以上は誰も。死なないで、死なないよ。死ねない、ね?
     覗いた瞳は真っ赤な夕日の色にも似ていて。少女の優しい月色の瞳は変貌した様にぎょろりと揺れる。
     息を飲んだのは誰だったか。逃げださんと背を向けた男目掛けて放たれた『殺意』の塊。
     広まる紅の上に下りたって、幾度も幾度も突き刺した。
     死に絶えてゆくのは人も化け物も同じ。赤い血も、同じ。
     染まり往く色は夕陽に伸ばされて影を落としてゆく。
     扉へと背を付けたままずるりと座り込んだ七号は『歪んだ世界』を思い出したかのように首を振る。
     罅割れた窓硝子に幾度も姿が映し出された。
     絶縁の殺人鬼、とうりゃんせと闇へと走る。ぷつりと切れた赤い糸。

     ――生きてさえいれば、それで。

    作者:菖蒲 重傷:泉二・虚(月待燈・d00052) 
    死亡:なし
    闇堕ち:鳥辺野・祝(架空線・d23681) 
    種類:
    公開:2015年9月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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