松戸密室掃討作戦~其は暴君の獄舎

    作者:六堂ぱるな

    ●『密室』掃討戦
     松戸市で発生している『密室』事件。
     その解決の糸口となる対応のために集まった灼滅者たちの前で、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)がぺこりと頭を下げた。
    「もう聞き及んでいると思うが、松戸市『密室』事件を起こしていたMAD六六六の幹部、ハレルヤ・シオンを無事救出した」
     重傷者二名、闇堕ちを二名出す激戦だった。死力を尽くした彼らの戦いの甲斐あって、救出に伴い、松戸市の『密室』の詳しい情報を得られた。
    「よって、『密室』を一掃する作戦が決行される」
     この作戦が成功すればアツシが引き籠る『密室』に侵入できる。アツシを灼滅すれば『密室』事件は解決するのだ。
     この機を逃さず、確実に潰したいところである。

     玄乃が預かってきたのは、茂多・静穂(千荊万棘・d17863)が調査中の案件だった。相変わらず『密室』内のことはエクスブレインの予知にかからず難航している。この案件もハレルヤの情報で裏付けられた。
     場所は松戸市内の廃業した印刷工場。たくさんの人が閉じ込められている。
    「『密室』の主は羅刹だが、どうも加虐嗜好の気があるようだ」
    「そういうの得意です」
    「いや先輩、得手不得手の話ではなく」
     ツッコまれてつぶらな目で見返す静穂と見つめあった玄乃が、切り替えて話を続けた。
     羅刹は『看守』と名乗っている。もともとが粗暴な羅刹のため、羅刹の気に障らぬよう、一般人たちはうつむき、工場の各所に作りつけられた檻の中で生活を送っているらしい。
     しかし羅刹の気分次第で暴行を受け、一度に数人死に至らしめられるのも日常だ。

     『看守』は神薙使いと同じサイキックと、ウロボロスブレイドのサイキックで戦う。
     顔だけ見れば害のなさそうな糸目の中年男だが、額からは5本の短い角が放射状に生え、首から下は顔とのバランスが悪いほど筋肉がついている。
    「一般人の避難はさせられないんでしょうか?」
     静穂の問いに、玄乃はファイルへ目を落とした。
     閉じ込めた一般人が近隣住民150世帯、500人弱と多すぎるため、羅刹はその全員の顔が頭に入っていないらしい。つけいるならばそこだ。
    「『看守』は自分の生活の世話を、独房から出した一般人に当番制でさせている」
     灼滅者が当番に入って問題を起こして注意を引き、その間に残りの仲間で避難誘導、という手が取れなくはない。もちろん、羅刹が一般人に危険が及ばない場所にいる時に全員で不意をうつ、という手もあろう。
     工場内は明るく広いが、一区画ごとに一般人を閉じ込めた檻がある。彼らを閉じ込めた檻がないのは、『看守』の部屋と食事の支度をする炊事場ぐらいだと思われた。
     製版部や現像室などに危険な薬品も残っているので、一般人を外に出さずに戦った場合、羅刹との戦闘に巻き込まれ薬品による被害が出ることも考えられる。
    「なにぶん私の予知が及ばぬ中のことだ。具体的な対処法は諸兄らに委ねる」
     予知ができないことに不愉快げなため息をついて、玄乃はおおかたの説明を終えた。
    「長らくふざけた殺人を続けてくれたアツシに、引導を渡す下準備の戦いとなるだろう。諸兄らの活躍に期待している」
    「閉じ込められた人々の痛みは私が引き受けます。その上で確実に倒してきましょう。大事な一掃作戦ですからね」
    「よろしく頼む……ん? 前半部分は必要か? あれ?」
     考え込む玄乃を残し、静穂は松戸へ向け出発したのだった。


    参加者
    古海・真琴(占術魔少女・d00740)
    久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)
    万事・錠(ハートロッカー・d01615)
    天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)
    霧渡・ラルフ(愛染奇劇・d09884)
    茂多・静穂(千荊万棘・d17863)
    アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・d22426)
    ロベリア・エカルラート(御伽噺の囚人・d34124)

    ■リプレイ

    ●獄舎に忍び入る者
     薬品の匂いが漂い、うす汚れた床に壁、出入り口には檻。
     閉じ込められた人間の抵抗力を、心身ともに奪う場所だった。
     本来の工場の間取りからは大幅に改造されている。一般人の中にまぎれ込んだ茂多・静穂(千荊万棘・d17863)は給湯室で一息ついていた。まさか本当に密室看守がいるとは、というのが本音だ。
     扉から軽いノックの音がして、顔を出したのは万事・錠(ハートロッカー・d01615)だった。静穂同様、守備よく『看守』の世話役を一般人と代わってきたらしい。機嫌を損ねれば殺されるのだ、喜んで世話をする者も居ない。
    「密室を完全に終わらせるためにも、今まで与えた痛みをここで全部贖って貰いましょう」
    「おう、しっかり味わって貰おうぜ」
     そこへ半開きにしていた扉から蛇が這いこんできた。囮班の一人であるアルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・d22426)だ。松戸市を解放するためにもこの作戦、必ず成功させなければと思っている。
    (「だが今は、この看守とやらを確実に仕留めなければ」)
     アルディマがついてこれるスピードで、『看守』の食事を乗せたワゴンを押して静穂と錠が動きだした。溶接された搬入口の陰で久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)が見送る。
    (「密室事件も之で終止符を打てれば良いのですが」)
     二人は工場の通路を通り抜け、端にある二階への階段の前で足を止めた。
    「お食事の準備が整いました」
     静穂の声に応じて、二階の階段を上がってすぐの部屋から羅刹が顔を出す。見たところ暴力など縁がなさそうな顔つきだ。かったるそうに階段を下りてくる。
     震えた手が滑ったふりをして、静穂は『看守』に食事のトレイをひっくり返してみせた。料理が服にかかった羅刹が盛大に舌打ちをする。
    「す、すいません! ごめんなさい!」
    「満足に給仕もできないのか?」
     明らかに怯えた様子の静穂に、『看守』のスイッチが入ったようだった。怯えた様子を装い、静穂がその場を駆け出す。ついさっき『看守』が出てきた部屋へ逃げこむのを見て、羅刹が愉しげに唇を歪めた。
     静穂を追って『看守』が部屋へ入ると同時、撫子はインカムに告げた。
    「避難誘導を始めて下さい」

    ●支配からの解放
     インカムの相手は霧渡・ラルフ(愛染奇劇・d09884)だった。工場の溶接されていた正面入り口を音もなく斬り裂いて、悠然とした足取りで入ってくる。
     続いて入ってきた天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)が、声を立てないよう唇の前に指をたてて一般人たちの前を駆け回る。顔を見合わせる彼らの前で、ラルフが不敵な笑みを浮かべた。
     次の瞬間、人々を閉じ込める鉄格子を音もなく鮮やかに斬り落とす。驚きで人々が声をあげかけるのを必死で制しながら、優希那がぷるぷると首を振る。
    「何も悪いことをしてないのに牢屋に閉じ込め、暴行を行うなんて酷いのです……。怖いけど頑張って、囚われてる方々をお助けするのです!」
    「自分の趣味に他人を巻き込むのはご法度だと思うんだけどね……正直、気に入らない相手だね」
     『看守』の性癖に怒りを覚えているロベリア・エカルラート(御伽噺の囚人・d34124)の呟きには、影を滑らせて檻を破壊しながら古海・真琴(占術魔少女・d00740)も同意するしかない。
    「ワタクシが案内しますから、なるべく音を立てずに外へ避難を。できマスか?」
     ラルフの言葉に一般人は一も二もなく従った。幸い、撫子からきた情報からすれば入口は看守の居る部屋と反対側だ。恐怖で震える者はロベリアがケアを担当する。
    「大丈夫、今安全な所へ連れてくから」
     薬品の対処には真琴が奔走する。砂入りのバケツを『天狗丸』にひっかけ、薬品が何かの拍子で漏れて広がったりしないよう、念入りに砂をかけて回った。たまたまいた元の従業員によれば、内装は火災に強い素材のようだ。
     避難は順調に進む。

     その頃『看守』は、きっちり灼滅者たちの罠にはまっていた。静穂の刺激で調子に乗った『看守』が、暴行を喘ぐ彼女に浴びせ続ける。
    「ゆ、許して……やめて……」
    「愉しそうだがな?」
     羅刹がせせら笑う。実際、被虐性質のある静穂がちょっとは楽しんでいたのは事実だ。
     その時、入口から錠が突進した。わざと力を加減し『看守』につっかかる。
    「女ばっか甚振って悦んでんじゃねェぞ、この変態野郎が!」
     吠えて静穂に覆いかぶさった錠に、今度は『看守』の加虐心が向いたようだった。
    「おまえにも下僕の分際を思い知らせてやるよ!」
     『看守』なりに手加減しているらしいが、充分に重い打撃が錠に襲いかかった。加減はしているらしいが、羅刹の膂力ではさしたる気休めにもならない。急所を外しつつ、錠は殴打に耐えた。
     数日前の救出劇で、自分を含む仲間を庇って闇に堕ちた二人を思うと自責の念で胸が軋む。それでも今は前を向いて、出来ることに全力で突き進むしかない。
    「待ってくれ! 二人に任せたのは私だ、私が罰を受ける!」
     アルディマの声が響いた。蛇変身を解いて飛び出してきたらしい。
    「ほう。今日は希望者の多い日だな」
     笑い声をあげた羅刹が、今度はアルディマの襟首を掴んで殴り始めた。顔の次は腹、苦鳴をあげる反応を楽しんでいるらしい。
     その時、隠しもしない足音が廊下に響いたと思うと、数人の少年少女が姿を現した。
     様子を確認していた撫子、避難誘導に動いていたラルフに優希那、真琴と相棒のペンタクルス、それにロベリアと顕現したアルルカンであった。

    ●『看守』と『囚人』
     呆気にとられる『看守』をよそに、アルディマは錠と静穂を抱えて彼の傍らを駆け抜けた。仲間と合流を果たす。
    「ちょっと大丈夫? 今回復するから!」
     ロベリアが結構な怪我をしている錠に目を丸くする。しかし当の錠は血にまみれながらも身を起こし、狂喜の笑顔で舌舐め擦りをしていた。
    「本番はこっからだぜ。愉しい愉しいバラし合いだ!」
    「灼滅者……! ガキどもが俺の『密室』で、ふざけた真似をしてくれたな!」
     『看守』が壁に異形の腕を叩きつけて吠えるのへ、ブラックフォームで傷を癒しながら静穂が告げる。
    「これまでこれから全ての痛み、私達が引き受けます!」
    「ここで全てを終らせましょう。油断成されぬ様に」
     静穂の宣言に続いて、立ちあがった撫子が裾の埃を払って仲間に声をかけた。
    「『殺戮・兵装(ゲート・オープン』」
     封印を解く囁きとともに、着物の袖からカードを取り出し軽く口付ける。桜の花弁のように炎のかけらが舞い散った。楚々たる挙措で携えるは身長よりも長い十文字鎌槍。 
    「『我が名に懸けて!』」
     力を解き放つ言葉を唱え、アルディマもまた槍を手に羅刹と相対した。

     異形化した腕が真っ先に狙ったのは静穂だった。乗せられて余計に腹が立つらしい。
    「仕置きが足りなかったらしいな!」
     骨も砕き肉を引き裂く鬼の爪が静穂を捉えたが、彼女はもう悲鳴をあげなかった。
    「さっきの続きと行きましょうか。ただし、今度はこっちからも攻撃するので悪しからず!」
     静穂の全身をくまなく覆うダイダロスベルトがしゃっと音をたてる。主を絞めあげながら翻った意志あるそれは、『看守』を引き裂いて戻るとじわりと狙いを補正した。
    「おいおい、隙だらけじゃねェか?」
     錠の手にした『JUDAS』が破邪の光を放ちながら脇腹を裂き、撫子の十文字鎌槍が斬撃と同時に羅刹の身に火種を残していく。一粒、桜色の輝きを宿す『八重紅枝垂』を掲げた優希那の魔力弾が肩を撃ち抜き、麻痺を刻みこんだ。
    「アルディマさんは手当しておきます!」
     真琴の手から飛んだ『RiderWaite-TAROT』の一枚が、アルディマの痛手を癒した。ペンタクルスは羅刹に挑みかかるが、意外な素早さでかわされる。
     その動きを読んだラルフの『Les Miserables』が、葡萄色の刀身に破邪の輝きを宿した。自身に加護を加えつつの斬撃は鋭く、脚が止まった一瞬を狙ってアルディマの足元から迸った影が鳩尾を突く。
    「こいつら!」
    「おっと、コレ以上はやらせないよ!」
     ロベリアの足元で影が蠢いた。地面を滑るように這ったイバラの形の影が、『看守』を捉えて絞めあげる。アルルカンの衝撃波に撃たれ、刺に引き裂かれ、からみつく影に足をとられ、『看守』が怒りを爆発させた。
    「お前ら皆殺しだ!!」
     手にした鞭が前衛たちに襲いかかる。避けきれないアルディマの前には錠が、撫子の間にはアルルカンが飛び込んだ。錠の防具が軋み、アルルカンが衝撃で揺れる。烈しい一撃を目の当たりにして、優希那が慌てた声をあげた。
    「大丈夫ですか? 今回復しますねっ」
     懐に飛び込んだ撫子の手には桜色の鞘。鞘走りの音を立てて現れた漆黒の刀身が、両断しかねない深さで羅刹の胴を居合に薙ぐ。
     一秒でも早く、一撃でも重く。それが攻撃手の己の責務であり、仲間の安全に繋がる。アルディマの握る槍が苛烈さを増して羅刹に捻じ込まれた。

    ●地獄への送還
     敵を力で圧倒し叩き潰してきた『看守』にとって、灼滅者など子供も同然のはずだった。しかし生憎と、灼滅者たちはかなりの手練が揃っていたのである。ものの数分で『看守』は劣勢に追い込まれて行った。
    「クハハッ! ご最期が近そうですネ?」
     慇懃な一礼とともに、笑うラルフの影から無数の蝶がはばたいた。『Dazzling Fairies』――金色の眼状紋が不吉な胸騒ぎをよぶ大きな蝶は、全てが鋭い牙を備えている。雨の降るような音をたて、『看守』を覆うように乱舞する蝶の群れ。
    「半端者どもが生意気な、この……っ!!」
     大きな手が必死に影の蝶を払いのけようと振り回される。肉体と精神をついばむ蝶たちが消えた途端、十文字鎌槍が風を引き裂いて襲いかかった。避ける暇もなく、舞う花びらのような炎をまとった穂先が『看守』の胸を貫く。
    「弱い物いじめはさぞ楽しかった事でしょう。如何ですか? その立場になるのは」
    「げっ……こっの!」
     槍をへし折ろうと異形の腕が振り下ろされるより早く、撫子が片手で身長よりも長い槍を引いて舞のように優雅に回る。外道にかける情けもない。徹底的に潰すだけだ。
     詠唱圧縮した魔力を凝らせ、真琴が矢として解き放つ。魔矢は狙い過たず羅刹の背を穿った。ペンタクルスの猫パンチが脚の筋に入り、痺れで一瞬動きが止まる。
     そこに優希那のまとう和装の帯、『桜吹雪舞う踊帯』が翻って引き裂き、もんどりうった羅刹が倒れ、すぐさま跳ね起きた。ついでにぎろりと優希那を睨みつける。
    「あばばばっ! ご、ごめんなさいですよぅ」
     睨まれた優希那が途端に度を失った。攻撃が苦手な彼女には少し相手に迫力がありすぎたが、それももはや虚勢だ。
    「随分好き勝手やってくれたね!」
     ロベリアの足元から影のイバラがぐうんと伸びる。鋭い刺が羅刹の身体を引き裂き、たたらを踏んだところに距離を詰めたアルルカンが霊撃を加えた。
    「クソがぁ!」
     床にひびを入れた『看守』の拳撃は、もはやロベリアを捉えることができない。
     死角に飛び込んだ錠の『St. PETER』が赤い閃光を帯びて脚を薙ぎ払った。よろめいたところへアルディマの手にした槍が炎をまとって脇腹を抉る。『看守』の全身を這う炎が一段と激しさを増し、刺突の衝撃で氷も身体を蝕んでゆく。
     非物質化した静穂のクルセイドソードの刃が、羅刹の身体に深々と突き立ったのは次の瞬間だった。
    「く……は」
     精神を抉られた『看守』が喘ぎ、勢いでダイダロスベルトに絞めつけられた静穂も快楽の吐息をもらす。
    「さよならエセ看守様。地獄で今度は囚人をお楽しみ下さい」
     囁いた静穂が剣を抜くと同時、羅刹はどっと膝をついた。身体のそこここが弾け始める。弾けるたびに身体は闇でも詰まっているように黒い粉を噴き、また弾け。
     床に倒れこんだ衝撃は、身体を完膚無きまでに弾けさせ、一瞬漂った黒い粉も、やがて消え去っていった。

    ●打ち砕かれた『密室』
     羅刹がこの世から消え去るのを確認し、優希那が仲間全員の無事を確認する。
    「皆様お疲れ様でした。お怪我の具合は如何でしょう?」
     最初からそれなりの傷を負っていた静穂や錠の怪我は重かったが、幸い戦いが終われば癒しきることができた。休む暇もなく、一行は逃げ遅れの一般人がいないか確認に回る。
     実際、『看守』に受けた暴行で怪我人と、彼らを手助けしていた者たちがまだ建物内にいた。派手なパフォーマンスで注意を引いたこともあり、ラルフや真琴を見て数人が安堵したような表情になる。
    「肩貸すぜ。コッチは任せな」
     傷の治療を受け終えた錠が2人を引き受けて歩きだした。
     工場の内部を一通り見回った真琴は、何か『密室』関連の文書でもないかと、『看守』の部屋を調べてみる。しかし手掛かりになりそうなものは見つからなかった。
     十数人もの遺体が置かれた部屋も発見され、錠は『走馬灯使い』が施せそうな遺体を数人分見つけた。やるせなさを覚えながらも、彼らをいっとき蘇らせる。
     己の死を覚えていない彼らは、自由になった驚きと、それ以上の喜びや安堵に沸いた。
    「助かった、本当に助かったんだな!」
    「本当に怖くて、気が変になりそうだった……もう大丈夫なんだね!」
     与えられるのはかりそめの生命にすぎない。彼らはほんの数日生きて、再び避けられぬ、けれど穏やかな死を迎える。
     それでも、せめて。
    「……皆で帰ろうぜ」
     万感をこめた錠の言葉に全員で頷いて、一行は廃工場を後にした。

     松戸市内に散らばる『密室』の一つは、こうして解かれた。
     この日この街で行われたたくさんの戦いが、忌まわしい『密室』の首魁を追い詰め引き据えることだろう。
     可能な限りの人々を救い出した灼滅者達の刃が首魁――アツシに届くのも、遠くない。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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