●茨城某所
ツチノコを使って町おこしを行った町がある。
この町ではツチノコを捕獲すれば多額の賞金が貰えたらしく、それ目当てで町に訪れる者も多かった。
しかも、そういった人間が増えるにつれて、ツチノコの目撃例が増えて行き、都市伝説が生まれたようである。
「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が、来たようだな!」
今回の語り手は、神崎・ヤマト。
何故か今日は寝癖が気になる。
今回、倒すべき相手は、ツチノコの姿をした都市伝説だ。
この都市伝説は噂に尾ひれがついてしまった結果、人を丸呑みするほどデカイヤツになっている。
しかも、都合が悪い事に賞金目当てでコイツを捕まえようとしている奴が後を絶たない。
おそらく、お前達が行く頃には、金の事しか頭にないような強欲な誰かが襲われているはずだ。
まずはコイツらの救出を優先しなくちゃいけないが、間違いなく賞金を横取りに来たんだと勘違いされる。
場合によっては、猟銃でズドンと撃たれるから、注意した方がいいだろう。
それと都市伝説の方だが、図体がデカイ割には物凄くジャンプ力があったり、口から毒を飛ばしたりとやりたい放題。
しかも真っ先に一般人が狙われるから、くれぐれも気を付けてくれ。
参加者 | |
---|---|
殺雨・空音(メイド執事・d00394) |
九宝院・黒継(迷津慈航・d00694) |
助川・総護(スターゲイザー・d01706) |
風見・空亡(超高校級の殺人鬼・d01826) |
神宮寺・琴音(金の閃姫・d02084) |
神凪・陽和(翔る疾風・d02848) |
イトセ・アクタガワ(高校生魔法使い・d06953) |
藍野・サラ(サニーサイド・d08002) |
●幻の珍獣
「ツチノコだって! ツチノコ、ツチノコ! しかも、おっきいやつだって! サラ、ツチノコって見た事、ないんだよねっ」
ツチノコに関する記事の切り抜きを読みつつ、藍野・サラ(サニーサイド・d08002)がワクワク気分で都市伝説の確認された町にむかう。
この町はツチノコを利用して町おこしを目論んでいたらしく、ある程度の目撃例がないと困るらしい。
そのため、ツチノコの目撃例を水増ししたり、やらせのような事もしていたようである。
もちろん、依頼もしっかりとこなすつもりだが、町中がツチノコ一色なので、ついつい気が抜けてしまう。
ツチノコ饅頭に、ツチノコ煎餅、ツチノコアイス、ツチノコカレー。
既にツチノコさえつければ、なんでもOKな無法地帯。
商店街の住民達もあからさまに儲ける気満々な雰囲気を漂わせているため、迂闊に彼らと目を合わせれば余計なものまで買わされてしまう。
「ツチノコ狙いで一攫千金ですか。……良いですね! ロマンがあります! 本当にツチノコが存在するのなら、僕も見てみたいですねー。もちろん、都市伝説ではなく、本物のね」
含みのある笑みを浮かべ、九宝院・黒継(迷津慈航・d00694)が答えを返す。
実際に、この場所で目撃されたのが、何なのか分からない。
本物だったのか、ヤマカガシを見間違えたのか、それとも全く異なる新種なのか。
ただ、ひとつ言える事は、後半に行くにつれて、目撃例が捏造され、嘘の比率が高くなっていると言う事だ。
「そう言えば、ツチノコって蛇に似ているんですよね? 噂ってアテにならない場合がありますし、嘘の噂が都市伝説になってしまうのがこの世界の怖い所。更にその嘘の情報に踊らされている人間が多いのも事実、ですね。一獲千金を狙ってわざわざ来た人達には、ご苦労様としか言えませんが……」
険しい表情を浮かべながら、神凪・陽和(翔る疾風・d02848)が辺りに視線を送る。
よく見れば、一攫千金を求めて、この町にやってきたツチノコハンターらしき者達がちらほらいた。
おそらく、彼らは頑なにツチノコの存在を信じているのだろう。
それ故にツチノコの姿をした都市伝説が姿を現したのかも知れない。
「どんなに多額の賞金がかかっていても、みんなちゃんと『ツチノコなんて迷信』であると分かっていると思いましたが……、彼らを見ているとそうでもなさそうですね。これが集団心理というものでしょうか」
複雑な気持ちになりながら、イトセ・アクタガワ(高校生魔法使い・d06953)がツチノコハンター達に生暖かい視線を送る。
みんな、目が血走っており、冗談半分でこの場所に来ている訳ではないと言う事が、ビンビンと伝わってきた。
「まあ、金に目が眩みすぎるのも、どうかと思うがな。大体、普通の人間があんなでかいやつに勝てる訳がないだろうに……」
半ば呆れた様子で、殺雨・空音(メイド執事・d00394)が溜息をもらす。
この様子では、都市伝説が現れた事で『ツチノコは存在する!』という気持ちが強まり、ハンター達が集まってきているのだろう。
それがどれだけ周りに影響を及ぼし、事態を悪化させているのか気づかぬまま……。
「なぁ、ひょっとして、あれかい? 噂のツチノコってやつは……」
茂みの中に潜んだ都市伝説を見つけ、風見・空亡(超高校級の殺人鬼・d01826)が指を差した。
それはどこからどう見ても、ツチノコ……とは言い難い気もするのだが、十人中九人は『ツチノコ……っぽい。いや、たぶんツチノコだ』と思うシロモノ。
「み、見てください! ツチノコですよ! なんだか都市伝説でも、見れて嬉しいですね!」
一気にテンションが上がっていき、黒継が瞳をランランと輝かせる。
その横にいたサラも大興奮!
しかも、コイツを捕獲すれば一攫千金。
一生ではないにしろ、遊んで暮らせるだけの金が入る。
「一攫千金もいいんだけど、こんな大きな猛獣、ほっとけないよ。大きい獲物を飲み込んで腹が膨らんだヘビか、既存の蛇の誤認にすぎないんだからさ」
都市伝説と対峙しながら、助川・総護(スターゲイザー・d01706)が少しずつ間合いを取っていく。
その途端、ツチノコハンター達が『最初に見つけたのは俺達だ! 横取りするんじゃねぇ!』と叫び声を響かせ、都市伝説が茂みの中へ……。
どうやら、物陰に潜んで捕獲のタイミングを窺っていたようである。
「彼らの事はお任せします。私達は都市伝説を追います」
ツチノコハンター達を振り払い、神宮寺・琴音(金の閃姫・d02084)が都市伝説の後を追う。
その視線の先で、都市伝説が一般人を襲っている姿が見えた。
●一般人
「ここは危険だから、早く安全な場所へ」
テレパスで一般人の表層思考を読みながら、総護がプラチナチケットを使って、安全な場所まで誘導しようとする。
しかし、一般人……自称ツチノコハンターは、『そんな事を言って、ツチノコを独り占めにするつもりだな』と疑惑の目を向け、迷う事なく猟銃を向けた。
既に頭の中は、金、金、金。
邪魔をする相手は即排除。
すなわち、敵と言う認識である。
口から吐き出された言葉は、自分にも当てはまるモノ。
出来る事なら独り占めにしたい。誰にも渡したくない、という心の表れ。
「ち、違うよ! サラ達は助けに来ただけで……! ああん、空音たすけてー!」
大粒の涙を浮かべながら、サラが傍にいた空音に助けを求める。
「銃口を向けるな、こいつはツチノコじゃないんだ」
サラを守るようにして陣取り、空音がツチノコハンターをあしらった。
「だったら、今すぐ俺の前から消えろ。今すぐに! そ、そうしないと……殺す!」
警戒した様子で猟銃を構え、ツチノコハンターが叫ぶ。
その間も都市伝説はツチノコハンター達を威嚇しており、低く不気味な唸り声を辺りに響かせていた。
「この様子だと、説得は難しそうですね」
妙に殺気立った様子のツチノコハンターを眺め、イトセがげんなりとした表情を浮かべる。
だからと言って、このまま放っておけば、戦闘の邪魔になる事は目に見えていた。
その上、この手の輩が何人もいるのだから、気づかれたら余計に厄介である。
「とりあえず、僕が盾になります。あまり時間を稼ぐ事は出来ないと思いますが……」
ツチノコハンターの行く手を阻みつつ、黒継が少しずつ間合いを取っていく。
もちろん、ツチノコハンターも後には退かない。
苦節30年。子供に愛想を尽かれ、妻には浮気され、そんな家族に見捨てられた彼には後が無い。
自分を馬鹿にした相手、罵った相手、裏切った相手を見返してやるためには、ここでツチノコを捕獲しなければ意味がない。
ツチノコを捕まえるため、夜も寝ず、フロにも入らず、パンツも変えず、ただひたすら、この日を待っていたのだから……。
「それじゃ、ここはお任せします。神宮寺琴音、推して参る」
ツチノコハンターの対応を黒継達に任せ、琴音が自ら名乗りを上げて突っ込んでいく。
その途端、都市伝説がピョンと飛び上がり、毒の塊を吐き捨てた。
「……やらせません!」
すぐさまサイキックソードで、陽和が毒の塊を一刀両断。
だが、飛び散った毒が腕や足に当たり、ジュッと嫌な音を響かせる。
それと同時に毒を浴びた部分が焼けるような熱くなり、激しい眩暈と吐き気に襲われた。
「かなりの猛毒……みたいね」
身の危険を感じて後ろに下がり、空亡が都市伝説の死角に回り込む。
都市伝説の毒に関しては情報が乏しいものの、死亡した者や、毒の後遺症に悩まされている者がいないため、ある程度の時間が経てば消えてなくなってしまうのかも知れない。
しかし、そのぶん即効性が強いため、油断していると一時的であれ、戦闘不能になる可能性も捨てきれなかった。
●都市伝説
「詳しい話は出来ないけど、あれはツチノコじゃない。それだけは断言できるよ」
ツチノコハンターを守るようにして陣取り、総護が都市伝説の攻撃を警戒しつつ答えを返す。
それでも、ツチノコハンターは信じない。
頭に血が上っているせいか、意地になっているのか、『そんな話、信じられるか!』と叫んで、都市伝説に猟銃をぶっ放す。
その途端、都市伝説が勢いよく飛び上がり、再び毒の塊を吐き出した。
「そんな、危ない事をしちゃダメだよぉ! いい子だから、土にかえって! ……あれ? ツチノコって土にかえるの……?」
霊犬のキーマと連携を取ってツチノコハンターに体当たりを浴びせ、サラがキョトンとした様子で首を傾げる。
キーマも一緒になって首を傾げ、頭上にハテナマークをぽやんと浮かべた。
「考えるのは後にしましょう。倒せばすべてわかります」
サラに語りかけながら、イトセが都市伝説めがけてマジックミサイルを放つ。
それと同時に都市伝説が飛び上がり、毒の塊を吐こうとしたが……。
「……たくっ! 面倒な事になったねぇ」
不満そうに愚痴をこぼしつつ、空亡が都市伝説の背後から攻撃を浴びせる。
その一撃を喰らって都市伝説が地面に突っ伏し、零れ落ちた毒がジュッと嫌な音を断てて異臭を放つ。
「この状況でもツチノコを捕獲したいと思うのですか?」
黒継の問いかけにツチノコハンターは何も答えない。
自分でも分かっているのかも知れない。
目の前にいる都市伝説が、自分の手に負えない存在である事を……。
だが、都市伝説はそんな気持ちなど察する事なく、再び毒の塊を吐き出そうとした。
「これはさっきのお返しです」
朦朧とする意識の中で距離を縮め、陽和が都市伝説に居合斬りを炸裂させる。
次の瞬間、都市伝説がどす黒い血を撒き散らし、跡形もなく消滅した。
それを見たツチノコハンターが茫然自失。
この様子では、しばらく立ち直れないだろう。
(「残念なツチノコさんは成敗……」)
都市伝説がいた場所を眺め、琴音が残念そうにする。
あのツチノコは、文献等から想像していた姿と、かなりギャップがあった。
最早、別物。コレジャナイ感満載である。
「それじゃ、帰るとするか。ヤケになって撃たれる前に……」
ツチノコハンターを横目で見やり、空音が仲間達に対して警告した。
彼には酷い事をしたかも知れないが、命があっただけでも、マシな方。
例え、あのまま邪魔をしなかったとしても、都市伝説によって命を奪われていた可能性が高い。
もちろん、本人はそうは思っていないだろう。
だからこそ、一刻も早く、この場から立ち去る必要があった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2012年9月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|