真夏の夜の水族館―ワンダリング・アクアナイト

    作者:志稲愛海

     今年の夏休みも、残りあと僅か。
     でも……まだまだ、夏休みは終わっていないから。
     涼を求めて、真夏の夜のお出かけをしませんか?
     溢れんばかりの光が弾ける――ナイトワンダーアクアリウムへ。


    「ね、今年も行かない? 涼しくて幻想的な、真夏の夜遊びに」
     飛鳥井・遥河(高校生エクスブレイン・dn0040)のそんな誘いに頷くのは、綺月・紗矢(中学生シャドウハンター・dn0017)と伊勢谷・カイザ(紫紺のあんちゃん・dn0189)。
    「わたしも、今年も行きたいなと思っていたところだ」
    「折角の夏休みだからな、目一杯遊ばなきゃ損だよな!」
     遥河はその言葉を聞きつつ、へらりと笑んで続ける。
    「うんうん、遊び行こーっ。夜の水族館に!」

    「それで、今年はどんな夜の水族館に行くんだ?」
    「いろんな色彩溢れる光の水族館、なんてどう?」
     そう言って遥河が取り出したのは、彼の情報源のひとつであるスマートフォン。そして興味を持った皆に、映し出された画面を順にみせるのだった。
     ――光の花咲くアート空間で泳ぐ、魚たちの姿を。

    「物体に映像を投影する、プロジェクションマッピングって知ってるよね? 今年の夜の水族館はね、そんな幻想的な光の演出や面白い仕掛けがたくさんされてるんだって!」
     光の花々が咲き乱れるのは、沢山の魚たちが泳ぐ大水槽。煌く海のスクリーンに咲いた色とりどりの花々は、魚たちが泳ぐたびに散っては舞い踊る。そして光の花は海だけでなく、悠々と泳ぐエイやサメたちさえも彩るという。魚たちの動きに合わせて変化する光の水槽は、その瞬間にしか見ることができない幻想的な世界を作り出すだろう。
     また、この花と魚の大水槽にいたるまでの空間も、光溢れる世界が広がる。
     入口から足を踏み入れたそこには、海に揺蕩うクラゲのように浮かんでいる、たくさんの大きな光の球体が。このボールは、人が触れるたびにその色を変え、幻想的な音を奏でるという。
     そして、並ぶ小さな水槽も、次々と鮮やかにその色を変えていくのだという。水槽のガラスに近づけば、鮮やかに変化する光の彩り。いや、光だけでなく、その色特有の音色を響かせて。次々と近くの水槽も呼応していき、同じ光、同じ音色を響かせるのだという。
    「色や音色が変化する光の水槽は、すごく綺麗で幻想的だろうな……。あ、それから、この体験もとても面白そうだ。自分が好きな色で塗った海の生物たちが、スクリーンの水槽を泳ぐ、なんてな」
     そう紗矢が興味を示したのは、お絵描きされた魚たちが泳ぐ、スクリーンの水槽。
     紙に描かれたクラゲやカメやサメなどの海の生き物を、自分らしく塗ってデコって。それをスキャンして貰えば、自分オリジナルの海の生き物がスクリーンの水槽に登場し、気ままに泳ぎ始めるという面白い体験もできるし。
    「お、こっちも綺麗そうだぜ。クラゲって、普通でもなんか神秘的で癒される感じだけど……3Dプロジェクションマッピングクラゲショーとか、より幻想的そうだな。イルカショーも、今の時期は夜の特別ショーがあるらしいぜ!」
     カイザの言うように、クラゲをイメージした半球体の水槽では、3Dプロジェクションマッピングショーが。この時期だけの、特別な夜のイルカショーも見逃せない。
    「あとは、水族館カフェの季節限定スイーツとか、お土産のショップなんかもチェックしておきたいよね!」
     期間限定のラムネやアップルマンゴーのソフトクリームに、イルカのクッキーが乗った爽やかなパフェやクラゲをイメージしたソーダ、定番のカキ氷まで。水族館にあるカフェで休憩するのも良いし。思い出にお土産を選ぶのもまた、楽しそうだ。

     遥河は、代わる代わるスマートフォンを覗き込む皆の姿を見守りながらも。
    「ね、夏休み終盤の思い出作りにさ、夜の光の水族館に遊びに行かない?」
     改めてそう、楽しそうに微笑むのだった。


    ■リプレイ


     一歩足を踏み入ればそこは、音と光溢れる幻想的な海の世界。
     こう言うの好きそうだなぁって思ったんだ、と。一は強引にリュシールの手を引いて。
    「リュシールもやってみろよ、面白いぜ」
     リズミカルに光の玉を奏で彩を変えては、得意気に笑む。
     そんな一の合の手に合せて。
    「ふふ、どうかしら?」
     満面の笑顔を宿す彼女が並べた音が、光の即興曲に。
     それに一が音と色を重ねれば……不思議で楽しい、夜のサマーセッション。
     そして眩しい笑顔のリュシールを見て。
     一は何となく握ったままの手に、ほんの少しだけ、力を籠めて。
     敢えて表情こそ変えないけれど。
     Merci……cher ami――小さな呟きとともに、リュシールもそっと、その手を握り返す。
     幻想的な夜の水族館でふと、クロードが思い出すのは。
     緊張気味に隣を歩く僥倖の、ある癖。
    「迷子になると探すのが面倒だ。俺の服の袖でも掴んでおけ……」
     その声に、素直に彼の服を掴んでから。
     同じものを見ている事が新鮮で、自然と笑み零す僥倖。
     クラゲの様な光の球体から、そんな彼女へと視線を向けたクロードは。
    「……そう言う顔もするんだな……」
     呟きと同時に、僅かに自分も微笑んだ……気がするのだった。
     そして僥倖はお誘いの礼を告げて。
    「気になる方と一緒だと、実際より輝いて見えるものですね」
     口元に触れ、余計なことまで言ってしまったか、と。
     でも、普段通り端的な言葉を返したクロードであったが。
    「気になる……か……」
     ぽつりとそう、呟きを漏らすのだった。
     【露草庵】の皆が目指すは、プロジェクションマッピングされた大水槽。
     でもその途中で、ちょっぴり寄り道。
    「見て見て、色が変わったわよ!」
     何気に触れた光のボールの変化に、巳桜は思わず大はしゃぎして。
    「音雪ちゃんこっちこっち」
     触れるたび奏でられる音に目を輝かせ、夜音は音雪と頑張って高いボール目掛け、うーんと背伸びを。
    「ちょっと高いところはムリ、かなぁ……」
     でも、次の瞬間。
    「ほらよ、届くか?」
     ひょいっと御伽に抱えられた音雪はびっくりしつつも、目的のボールにタッチ。ありがとです! と興奮して喜んで。
    「皆で音を合わせたら、ちょっとした合奏みたいじゃない?」
    「合奏できるかな?」
     重なり合う音と光に、四人の合奏に悪くねぇな、と笑む御伽。
     そして光と音に導かれ、辿り着いた大水槽。
    「光と音に溢れる夜、っていうのも、とっても素敵さんだねぇ。海のお花畑、光とお花がいっぱいで綺麗なの」
     静かで暗い夜の海が好きな夜音も見入るほどの、海のお花畑。
    「わ、見て下さいお魚がお花柄ですよ! 海のお花畑ですね」
    「ふふ、花柄のお魚って可愛らしいわね。コワモテのサメですらこんなに乙女チックだもの」
     泳ぐ魚にさえ咲き誇る光の花に、音雪と巳桜も頷けば。
    「花柄のサメなんてすげー乙女」
     そう、可笑しくなって笑う御伽。
     みんなで揺蕩う海のお花畑は、幻想的でキラキラ綺麗で。
     何より、来てよかったと……そう思うくらい、楽しい。

     初めて『デート』だと誘った1年前も来た、夜の水族館。
     あの時は緊張しすぎていたけれど。
    「今年はリラックスして楽しめるよ。手も繋げてるし」
     そんな真咲に、むしろハッスルしすぎではないかね? と返しつつも。
     お洒落してきた彼の手を握る初美も、今日はお気に入りのコーデ。
     そして、煌く大水槽の前で――無音でも、東条君となら悪くない、かな……なんて。
     ぽーっとしていた初美の顎が、くいっと持ち上げられた、瞬間。
    「っ!?!? な、ななななにえお!?」
     ふいに重なった唇に、はっとした後。
    「このぐらい積極的じゃないと、好感度は上がらないでしょ?」
     顔を背け何も言えなくなった教授の横顔に、真咲は微笑む。
     紗矢と紅緋が眺めるのも、光のお花畑と化した大水槽。
    「ええと、ぷれ……ぷろぜ……なんて言うんでしたっけ、これ?」
    「ぷろぜく……プロジェクションマッピング、か」
     ガイドブックでそう確認しつつ、綺麗な光の海に竜宮城を連想し合いながらも。
     紗矢が耳を傾けるのは、海の異界の話を聞いて育ったという、紅緋の話。
     流希も、光と水と魚達の競演を、静かに眺めながら。
    「いやはや、綺麗、とはありきたりですが、その言葉以外、思いつきませんねぇ……」
     いい思い出ができたと、幻想的な色を堪能して。
     ドキドキ胸を弾ませ、逸る気持ちのままに、繋いだ蓮次の手を先へ先へと引く夏蓮。
     様変わりした夜の水族館を眺める蓮次も、つい足早になって。
     万華鏡のような大水槽の中心で、クリスマスみたいな幻想的な煌きにびっくり。
     そして泳ぐ魚たちに咲いた光の花。
    「にっこりお洒落したみたいですごくかわいい!」
    「海中であったら怖い奴らまで華やかに彩られててちょっと笑っちゃうね」
     コワモテなサメやエイも何だか可愛くて。同じ様に光の花咲いた顔を見合わせ、二人一緒にくすくす。
     でも夜だから楽しめる事は、まだ沢山。
    「夜行性の魚もいるから、きっと面白いよ」
    「夜行性の魚の機敏なところみたいかも!」
     手を繋いで、水族館を探険だー! と。
     はぐれぬようしっかりと、菖蒲の姿を確認しながらも。
     好きな魚を訊かれたヒノエは。
    「魚……ではありませんが、クラゲをみてるのが好きかもしれないですね」
     ……笑わないでくださいよ? とそう答えて。
    「笑わないよ。いいじゃん、俺もクラゲすきだぜーのんびりしてるよな、あいつら」
     彼に微笑み返した後、迫力あるサメを見つけ、水槽を指さす菖蒲。
    「ほら、あそこのサメとかすげぇかっこいい」
    「あ、菖蒲! サメに花柄模様が投影されて凄く幻想的になっていますよ!」
    「だな、すげぇ綺麗……!」
     キラキラ輝く夜の海はロマンチックで。二人ではしゃぐ時間は、とても楽しい。
     でもティータイムしたその後も……まだまだ、夜の水族館の楽しみはこれから。
     二人でどこかへ……というのは、いつぶりだろうか。
    「せっかくの夜、少し派手なのも綺麗だと思いませんかねぃ」
    「派手も良いけど、こういう淡い光のもの静けさがキミの言うロマンなんじゃないかい?」
     大水槽の光を眺めつつ、明浩が時折見つめるのは、光に照らされた詩織の姿。
     そして――おや、向こうに泳いでいる魚は何だい、と。
     不意に縮まった距離と耳をくすぐった囁きに、思わず少し飛び退いて。
     赤らむ顔を隠す明浩の反応に、可笑しそうに笑む詩織。
     それからカフェで、明浩はアイスをひとすくい。
    「……ま、そっちがその気ならいいだろう」
     口元に差し出されたそれを、ぱくりと食べた後。
    「普通は逆じゃないんですかねぃ」
     詩織もそう彼へと、一匙を。

    ● 
     のんびりふよふよと漂うクラゲを見ていると、慌しい情勢も忘れられるし。
     それを夢中で眺める、お姫さんの瞳に揺蕩う色は、とても優しい。
     優志は自らの柔らかな漆黒の海に、美夜の姿だけを泳がせながら。
     ――隣に俺も居るんですけど?
     そう、そっと握り締めた手で、自己主張を。
     そして海のような宇宙のような煌きの中、ふと彼に視線を向けた美夜は。
    「足元気を付けてな?」
     そんな相変わらずの過保護っぷりに。
    「そっちこそ、暗いんだから迷子にならないでよ?」
     どうして視線がこっちにばっかり向いてるのかしらね……と、いつも通りな優志の手を、ぎゅっと握り返す。静かに煌く夜の世界を、今年もまた一緒に、揺蕩いながら。
     夕と結城のお目当ても、3Dクラゲショー。
    「す、すり、すりーでぃーぷろじぇくしょんまっぴんぐくらげしょー……三次元投影関連付け水母舞台??」
     普通のライトアップ水槽とも違うようだし、とにかく何だか凄そう!?
     結城は、静かな席を選んで座って、買った飲み物を彼女に手渡しながらも。
    「クラゲちゃんも水槽で見ると可愛いんですけどね~」
     ふよふよふよふよふよ~す~と、泳ぐクラゲ達を眺める夕と、寄り添い合う。
     冷たい夜の海の中でも……出来るだけ二人で近づいて見れば、あったかいだろうから。
     でも――ふよふよと幻想的に泳ぐクラゲ達よりも。彼女の方に、気がいってしまいそうだけど。
     妹に勧められて真琴と訪れた、夜の水族館で。
     七波も色とりどりのクラゲが漂う、3Dクラゲショーを鑑賞中。
    「クラゲも結構綺麗だね……というよりこのふわふわ感は癒されるね」
    「ちょっと失礼かもですが、こんなに綺麗だなんてすごく意外でした」
     そう、ふよふよと漂う幻想的なクラゲ達を、わぁと興奮気に見上げる真琴へと。
     何となく……七波は、その手を伸ばして。
    「ふえっと!? なななんですか?」
    「ごめんごめん、軟らかそうだったからつい」
     クラゲのように柔らかそうなその頬を、指でつんつん。
     でもそんな彼の不意うちに、ちょっと困惑したものの。
     真琴も意表をついて、最後に彼の頬へと、つんつんのお返しを。
     前回の水族館デートは一緒にイルカを観たから。
     今日はクラゲでもいい? と、拓馬とクラゲ水槽へと向かう樹。
     彩られたミズクラゲたちがのんびり流れる様を並んで眺めたり、ドームの映像に見入りながら。
    「それにしてもクラゲって不思議な生き物だよね。形状だけなら深海にいそうな、独特な神秘性を感じるんだ」
    「真ん中のアレが5つとか6つある仔を探してみたりするのが好きなのよ。それ以外のも可愛かったり面白い形をしてるから見てて飽きないの」
     語り合い微笑み合って、一緒にいられる時間をお互い嬉しく思いつつ。
     クラゲたちと共に、煌く夜の海を揺蕩う。暗く静かな海で迷子にならないように。しっかりと、手を繋いで。
     イルカショーを観た後、水花とカイザも、3Dクラゲショーを眺めながら。
    「そういえば、去年買ったペンギンのぬいぐるみ、お気に入りで、今も部屋に飾っているんですよ」
     そう言った水花に、じゃあペンギンに仲間を買ってってやらないとな、と笑うカイザ。
     今年は、クラゲかイルカか……きっとまた、お土産屋で悩みそう。

     昼とはまた違った雰囲気の、初めての夜の水族館で。
    「ああ海藻ね……あれも草か……」
     由乃が全力で見ているのは、水草!
     でも綺麗に配置された草や木も、観ればなかなか面白い。
     エルメンガルトはそんな植物達やキラキラ光る水槽を由乃と眺めた後、お目当ての水槽へ。
    「ペンギン? お前いつの間にペンギン派になったんですか」
     由乃はそう言いつつ、フォルムとか羽とかは鳥のくせになかなか、と。
     光の花々背負ったキュートなペンギンを眺めるも。
     ……いつも、見られてばかりだから。
    (「……いつもの楽しそうなゆるい面ですね」)
     今日は、彼の観察も。
     そして……お、見てる見てる、と。
     エルメンガルトもちらり、由乃へと満足そうな瞳を。
     夜宵にとって、生まれて初めての水族館。
     そんな彼女の手を引く潮は、下調べもばっちり、良い席でイルカショーを。
    「わぁ、イルカって、すごく優しい目をしてる、のね……かわいい」
    「イルカってさ性格は猫と似てるんだって。つまりウチの猫達みてえに悪戯好きだったりするらしいぜ」
    「へぇ、そんな風に、見えないのに……不思議!」
     刹那、ぱしゃりと跳ねた飛沫に、きゃっと声をあげては、はしゃぐ夜宵。
     その表情を横目でそっと盗み取った潮も、安堵の微笑みを零す。
     そして留守番中の猫や犬達に見せたいと、果敢に狙うシャッターチャンス!
     楽しくて素敵な、夜の水族館。
     愛しい人が楽し気に笑っていれば……もっともっと、お互い嬉しくなる。


     今年の夜の水族館デートは文化的な事に挑戦??
     慧樹と羽衣も、お絵描き水族館へ。
    「俺サメね! 縦縞を青で入れよっかな……」
    「じゃあウイはカニを塗る!」
     慧樹は、エメラルドグリーンに塗ったサメに縦縞を入れて。
    「おー、すげー!泳いでる泳いでる!」
     よーく見れば――サメの模様にかくれんぼしている「うい」の文字。
     そしてサメの隣には……ある意味才能爆発な、都市伝説に出てきそうなカニ!?
     そんなサメとカニの様に、仲良く二人並んで。
    「クラゲソーダ、飲みに行こう。お前は何がいい?」
    「ういはねぇ、イルカパフェがいいな!」
     羽衣は、映像を見ながら繋いだ手を、ぎゅっと握り締める。
     いつも、想ってくれてありがとう――と。
     初デートで訪れた夜の水族館も、もう恒例の場所。
     ぎゅっと芥汰と手を繋いで。一緒に夜深が挑戦するのも、お絵描き水族館!
    「星食イ白鯨さン!! 御腹、星空。ピかぴカ、ナのヨ♪」
     夜深は、星を食べたピカピカおなかの白鯨さんを。
     芥汰のトビウオは、カラフルなヒレでひらり海を舞う蝶々のよう。
     そして、沢山の魚が泳ぐ中。
    「夜深と俺のお魚サンだからね、この先も末永く一緒でしょうよ」
     仲良く幸せそうに並んだ自分達の魚に、芥汰は蒼海の眸を細めて。
    「あくたん。プろジェく…まッピ……も。見テこ?」
    「もちろん、お姫様がおねむでなければ、喜んで」
     そう言った彼に、眠くなったりしないと、ふんすと返す夜深。
     だってもう、九歳のお姉さんだから。
    「レイネ、レイネ! 面白いものがあるわよ」
     ……ん? どうかしたの? と返る言葉に、仁王は続ける。
     ねぇ、私達もやってみましょうよ、と。
     それは、オリジナルの魚を泳がせる事ができる、お絵描き水族館。
    「好きな彩り、か……まあ、こんなものかしら」
    「フフフ……うまく描けたと思わない?」
     レイネの魚は、薄い黒で縁取られているものの、その色はほぼ白。
     逆に、ハイセンスな色彩感覚を駆使した仁王の魚は、鮮やかな極彩色。
     はっきり個性が出た各々の魚をスクリーンの海に泳がせてから。
     この時間がいつまでも続けばいいのに……と。
     再び言った仁王に、そうね、とレイネは返す。
     この時間を今は、気楽に楽しみたいと、そう思うから。
     今年も、真夏の夜の水族館デート。
     ハイテクな光彩る中、手を繋いで。並んで歩くクリスと桃夜が見つけたのは。
    「ん? イラストの魚が泳いでる……」
    「やってみたいなぁ、電子の海に泳ぐ魚を見るのも面白そうだ」
     そう、お絵描き水族館。早速、二人もチャレンジ!
    「トーヤは何を描いたのかな。ちょっとクリス画伯にみせてごらん?」
    「人魚じゃなくてパー子の魚だから、パ魚の完成!」
     ナノナノみたいな海月と……とっても斬新な、パ魚!?
     そんな完成した魚たちを、スクリーンの海に泳がせてみれば。
    「パ魚、僕の海月ナノナノ追いかけまわしてる。うわっめっちゃ速っ! 怖っ」
    「描き手に似るのかな……」
     描いた本人に、何だか似ています??
     水族館デートに訪れた圭一と劉麗も、オリジナル生物を考え中。
    「俺はタコ描こうかね。墨でリボン体操してるタコ」
    「私もタコを描くわ! タコツカサ!」
     誰がタコじゃい、確かに俺赤いけど、と言いつつも。
     圭一も、タコにリボンとツインテをつけて。
    「ほれ劉麗、ちょっとこのタコと同じ動きしてみん?」
     劉麗っぽいタコの完成!?
     そんな無茶振りする彼に、負けてられない! と。
     劉麗が増殖させるのは……見知った顔のタコ軍団!?
     勿論そんなクラブ水槽には、イクっぽいバッカルコーン頭なクリオネも……何ならもう、直接スクリーンに!?
    「え? 嫌なの……? そう……残念ね……」
    「そう、残念だな……」
     イヤイヤするイクに、圭一も劉麗の口調で、そう真似っこを。

     夜の冒険ってカンジでワクワクする、夜の水族館。
     でもそれも、少し休憩。水族館カフェで今日の冒険の成果を語り合う【武蔵坂軽音部】の面々。
     イルカのパフェを堪能する錠が印象に残っているのは、クラゲ水槽。
    「見てると癒されるっつーか、惹き込まれるカンジがしてよ」
    「僕も、クラゲ好きだった、な。あんな風に、暗がりで……のんびりゆらゆら、生きてたい……」
     アップルマンゴーソフトを食べつつ頷いたイチの前には、何気にソーダとパフェも。
     朋恵も、しゅわしゅわなクラゲのソーダを飲みながら。
    「いーっぱいおっきな光の球があって、さわったら色が変わるんですけど、音を聞きながらみとれちゃいましたですっ」
     音と光で溢れる、沢山の不思議な光の球の道を思い返して。
     葉が選んだのは、地上に咲く花と海を泳ぐ魚――同じ空間に存在しない2つが交わった、大水槽。
    「海の底というより宇宙空間を思わせて、ちょっと離れがたかったな」
     アップルマンゴーソフトと、期間限定のラムネも外せなかった葉だけど。やっぱり気になるソーダとパフェは、錠以外とシェア希望!?
     葉月も、限定メニュー頼んでなんぼ! そうパフェとソーダを頼みつつ、色々皆とシェアして。
    「時間が経つのを忘れるって言うか……こういうの見ていると、創作意欲が湧くかも」
     イルカパフェに手を伸ばすイチも、葉月の言葉に同意。
     でもまだまだ……ガイドブックという冒険地図を広げれば、序の口。 
    「ナイトイルカショーってまだ間に合うかな?」
    「わわ、夜にもイルカショーやってるんですねっ」
    「夜だと昼間とはまた違った趣向が見られるんだろうな。すっげー楽しみだぜ!」
    「ん、行きたいです。水掛かる席、取りましょう」
     錠の誘いに、朋恵や葉月やイチも賛成!
     次の冒険の前に1枚、記念撮影をしてから。 
    「その次は何処へ行こうか。絵を描く? それともお土産見に行く?」
     閉館時間まで泳いでこうぜ、と。葉も皆といざ再び、光煌く夜の大航海へ。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月9日
    難度:簡単
    参加:46人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 2
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