『絆』の行方は

    作者:叶エイジャ

     夜空を羽音が駆けていく。
     天上に褥(しとね)の如く雲が広がっている。その裂け目から漏れ出た光を浴びて、蛾のような羽を生やした芋虫が飛んでいた。ただれた臓物のような赤と黒が、淡い光にてらてらと輝いていた。異常に膨らみ蠕動する腹部。それは、ナニモノカが蠢いているようにも見えた。
     廃液色の羽を動かして、芋虫――シャドウは一軒の家へと降りていった。空いている窓から入ると、部屋で寝ている男性へと近づいていく。
    「う……」
     シャドウがソウルボードへ消えると同時、男性が苦しげに呻く。しばらくその声は続き、やがてぴたりと止まる。
     男性の寝息は穏やかなものに戻っていた。ぼんやりと月に照らされた窓辺からは、虫の声が聞こえてくる。
     何も異常はない――そう思えた。

    「確認、とれたよ」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)の言葉に、彩瑠・さくらえ(望月桜・d02131)がやっぱり、とうなずく。
     ベヘリタスの卵が完全羽化した事例――さくらえが懸念し探っていたことは、エクスブレインにより補強された。
    「ベヘリタスの卵に関して、予知が最近なかったのもこのせいかもっ」
    「『タカト』が次の行動に移ってたってことかな?」
    「うん。羽化してから十分成長したシャドウが、眠ってる人のソウルボードに入る光景が見えたよ」
     どこからともなく現れるこのシャドウ。どうやら入り込まれた人間が起きる前に、ソウルボードの中に入り撃破する必要があるらしい。
    「ソウルボードに入る前に攻撃すると、バベルの鎖で察知されちゃうんだ。別の人のソウルボードに入って対処できなくなるから気を付けて」
    「なら……」
     シャドウがソウルボードに入るのを確認してから部屋に入り、追う展開になるだろう。
    「入った直後だけど、配下はいるのかな?」
    「いないみたい。シャドウ本体と戦うよ」
     シャドウの、ソウルボード内での戦闘力はさほど高くはない。そしてこのシャドウはソウルボードを通じ撤退する能力を持っていない。
    「だから、中で撃破すれば、現実世界に現れるよ」
     現実に出てきたシャドウは強敵だ。さくらえの表情が厳しいものになる。
    「でも、今の僕たちなら」
     いまや決して倒せない敵ではない。強敵との戦闘経験は、確実に自分たちを成長させている。
     可能な限り灼滅できるように戦って欲しい――と、カノンも言った。
    「シャドウの戦闘能力を説明するね。外見は絆のベヘリタスを芋虫にして、蛾のような羽を付けた感じだよ」
     2メートルほどの大きさだ。前の足が鋭く、この一撃は広範囲に毒の真空波を生み出す。また、羽によるはばたきは毒の風を巻き起こしてくる。
     前者は乱れ手裏剣、後者はヴェノムゲイルとほぼ同等らしい。
    「あと、シャドウハンターと同等のサイキックも使ってくるよ」
     ソウルボードの中と外では、強さこそ違うが攻撃方法は同じらしい。
    「気を付けて。このシャドウは絆のベヘリタスとは違うけど、なんだか嫌な予感がするんだ。確実に灼滅して欲しいんだ。あとね……」
     そこでカノンは複雑な顔。さくらえが不思議に思って促す。
    「実はね……このシャドウのお腹から、別のシャドウの気配を感じたんだ」
     蠢くシャドウの腹部を見たらしい。確かにあまり良い光景とはいえない。
    「戦闘能力はかなり低いと思うけど、油断しないでね。気配は複数あったから」


    参加者
    狐雅原・あきら(アポリアの贖罪者・d00502)
    彩瑠・さくらえ(望月桜・d02131)
    穂照・海(陰鬱インフェルノ・d03981)
    森村・侑二郎(一人静・d08981)
    守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)
    ハイナ・アルバストル(実害の・d09743)
    志乃原・ちゆ(トワイライト・d16072)
    夜伽・夜音(星蛹・d22134)

    ■リプレイ

     開いた窓から、巨大な芋虫が家の中へと入っていく。
     家の真正面には駐車場が、さらにその向こうには公園がある。シャドウが侵入したことを確認して、灼滅者たちは公園の樹木から歩み出た。
    「色々と出てこられると困るんですよねえ」
     狐雅原・あきら(アポリアの贖罪者・d00502)がギターケースを背負いなおす。ハイナ・アルバストル(実害の・d09743)は、シャドウの消えた窓を無表情に見つめ呟いた。
    「『絆』を糧に羽化か。確かにベヘリタスは、蟲に見えなくもなかったけどね。もしやタカトとやらの中身も――」
    「それ以上は言わないでください」
     森村・侑二郎(一人静・d08981)がハイナの言葉を止めた。虫は苦手というか、嫌いだ。肩をすくめるハイナ。代わりに言葉を紡いだのは穂照・海(陰鬱インフェルノ・d03981)だった。
    「だが、心の闇に付け入るシャドウ……実に興味深い」
     あのシャドウはタカトの次の一手だ。何かしらの意図があるのは明白だろう。この事件を手掛かりにどこまで至れるかが、真相に近づく一歩と言えた。
    「ベヘリタス。漸く、動いたね。逃がさない……絶対、絶対に」
     強い決意をにじませる夜伽・夜音(星蛹・d22134)。灼滅者たちは頃合いを見計らって部屋に入ると、まだうなされている男性の精神世界へと入っていく。夜の世界から一転、緑の広がる世界が眼下にあった。ジャングルと思しき大地へと、灼滅者たちは空をゆっくり下降していく。夢の世界のせいか、歩くような感覚で空を進む事ができた。
    「チェーンジ、ケルベロース! Style:Bloodpool!!」
     説明しよう! 別府のご当地ヒーロー、地獄の番犬ケルベロスこと守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)。その身体が真紅に輝く時、そこに地獄八湯が一つ、血の池地獄の力が宿るのである!
    「地獄めぐりの所要時間は、観光バスなら2時間弱!」
     観光PRももちろん忘れない。神楽は続いて視界をスイープ。先に入った芋虫シャドウを探す。
     いた。
     灼滅者たちのやや前方、ジャングルにより近い場所を飛んでいた。その毒々しい翅がはばたくたび、毒の鱗粉が森にまき散らされていく。虫が大嫌いな志乃原・ちゆ(トワイライト・d16072)は、明るい場所で見るその姿に、物凄く嫌そうな顔をした。
    「卵関連で今まで何度か戦ってきましたが、行動が行動なだけにその中身も醜悪なのですね」
     そのまま、隣の侑二郎に言ってしまう。
    「知ってますか、森村さん。どこかの国では芋虫が貴重なタンパク源らしいですよ」
    「ええぇ……」
     妹のように思ってる彼女からの情報に、虫嫌いな侑二郎がドン引く。ウイングキャットわさびに信じられませんよねと目を向けるが、「しらんがな」とばかりに無視されて肩を落とす。
     世界が冷たい。そして無情にも敵影はどんどん近づいてくる。
    「……やるしかないですよね」
    「そうだね、頑張ろう」
     和装の女子となった彩瑠・さくらえ(望月桜・d02131)が苦笑をし――表情を改めた。
     ――かつて何もかも諦めていた僕に未来を見せてくれたのは、学園で出会った皆が結んでくれた絆の力だった。
     シャドウがこちらに気づき、振り返った。誰かの絆を奪って、そして羽化した存在。絆は心と同じ。「ひと」として必要でかけがえのないもの。だからこそ、その存在を許すわけにはいかない。
    「最後まで諦めない。灼滅させてもらうよ」


     さくらえの鋭い言葉に応じるかのように、シャドウが耳に不快な鳴き声を上げる。反転した芋虫は灼滅者へと羽ばたき、猛毒の鱗粉を飛ばす。
    「来たれ夜。逢魔の彩糸花。漆の帳を星留めて」
     夜音のサイキックが黄色の糸を編み、交通標識を染め上げる。耐毒の力が、今まさに毒のただ中へと突き入る前衛たちを包み込んだ。
    「連射連射で蜂の巣デスよお」
     あきらが白いガトリングガン『PSYCHIC HURTS』をケースから取り出す。展開と同時に砲身が回転。弾丸の雨が毒鱗粉の膜を貫き、シャドウのおぞましい身体へ突き立っていく。シャドウの奇鳴が耳をつんざいた。メディックとスナイパーの動きに、羽ばたきを続けながら毒液の滴る爪をもたげる。
    「前と後ろばかり見てると、凍り付くよ?」
     ハイナの槍から放たれた妖冷弾が、先んじてその爪へと殺到した。ジャマー効果で増した氷の呪力は爪の動きを封じる。
     その時には前衛が毒の膜を抜けていた。さくらえの拳が閃光となり、神楽のバベルインパクトと共にシャドウに大打撃を与える。吹き飛んだ芋虫が空中を錐揉みした。制動しながら放った毒の弾丸を、海の手甲から伸びた障壁が防ぐ。
    「……言葉は分かるか、醜悪な者よ?」
     敵の蠢く腹部に警戒と観察の視線を向けつつ、海はシャドウに声を掛ける。
    「名を何という?」
     返ってきたのは、いくつもの絃を掻き切ったような、耳を弄する高音の鳴き声だった。会話は成立しえなかった。ただその鳴き声には、一種の嘲弄の気配が含まれているのを海は感じとった。
    「……得る物がないのは残念だが、侮るなら滅ぼすまでだ」
     海が吸血鬼の霧を生み出し、武器に炎を灯して突き進む。毒鱗粉が彼を出迎えた。さきほどまでのやられようとはうって変わって、爪による毒の真空波が近づく灼滅者たちを切り裂き、鱗粉から距離を取ろうとしたところを毒の弾丸で狙い撃ちしてくる。一撃の威力以上に厄介なのは無論、浸透する毒だった。メディックを中心にディフェンス役もヒールサイキックを発動し、蓄積する前に解毒を行っていく。
    「ちゆさん!」
     侑二郎が剣から清浄な風を巻き起こし、漂う毒を吹き散らす。そのままシャドウへと向かう彼に合わせ、ちゆの胸元でスートの輝きが広がる。ダイヤに絡んだ薔薇の茨が宙に伸び生え、荊棘の毒と化した。
    「行きますよ」
     わさびの破魔の力も付与し、ちゆのデッドブラスターが夢の世界を駆け抜ける。振り下ろした侑二郎の神霊剣と重なって、芋虫の胸部が閃光を発して爆散した。
    「逃げたか。連戦は覚悟の上だ」
     そのまま溶け消えていくシャドウにハイナが呟く。このシャドウはソウルボードを渡るすべがない。この後に待つのは、現実で全力を出したシャドウとの戦いだ。神楽が汗をぬぐう。
    「よだきいなぁ――けど、想定より早く倒せた感じやね」
     事前に毒対策や、長期戦を見越した話し合いをしたおかげか、夢の世界での疲弊はかなり少ない。もちろん、灼滅者各自の成長あってこその成果だ。
    「現実でシャドウの本体と戦うのは初めて……正直、ちょっとわくわくする」
    「引き続き回復は任せて。決着をつけに行こう」
     人のゆめ、こころを守る。意志を貫いた夜音は安堵を半分、シャドウへの衰えぬ感情を握った右手に宿す。
     油断のないままに、灼滅者たちは夢の世界を後にした。


     現実世界に戻った直後、耳を貫いたのは破砕音だ。
     目覚めた灼滅者たちの視界で月の光が流れ込んで来る。家の窓と壁を破壊して、シャドウは夜闇の中へと飛んで行こうとしていた。あきらが即座に殺界を、さくらえがサウンドシャッターを発動する。
    「逃がさないよ、絶対に……!」
     駆けた夜音が矢を放ち、シャドウの翅を貫く。もう一方の翅に、海のサイキックが赤光の逆十字となって咲く。バランスを崩した芋虫が街路に落ちる。降り立った灼滅者は挟み込むように移動した。横は開け、戦闘場所と定めた公園へ行くよう立ち回る。シャドウが警戒するように足を激しく蠢かした。侑二郎は顔を引き攣らせながらも、感じる疲労を振り払って剣を握り直す。
     対峙するシャドウの力は、夢の時のそれを大きく上回る。
    「……」
     神楽とさくらえが無言で機をうかがう。自らの力が何処まで通じるかを見定めるため。そしてその先につながった可能性を絶やさぬため。
    「――!!」
     シャドウが動いた。直前にあきらの放った妖冷弾をかわし、駐車場へと飛び跳ねる。停車していた車を巨体で押しつぶすと、さらに跳躍。想定通り公園へと逃げる芋虫。その前方に、さくらえが地を蹴って追いつく。手に持つのは誓いを込めた叶鏡の槍。
    「!」
     振り返りざまの螺穿槍は、硬い響きに止められた。芋虫の爪が槍の切っ先を跳ね上げる。体勢の流れたさくらえへと、もう一方の爪が真空波を生み出す。そして同時にシャドウは前進した。
     包囲を切り抜けるつもりだ。
    「ここから先は一歩たりとも通しはしない!」
     海がワイドガードを展開し、真空波と巨体の突進を一手に引き受けた。シャドウに押され、障壁を切り抜けた毒の刃が海の華奢な身体を切り裂いていく。海は流れた血を炎へと変えて、足を地面に突き立てた。シャドウの動きが止まる。
    「何物も……この“火照”を鎮むること能わず!」
     闇をおそれず立ち向かえば、負ける道理無し――裂帛の気合に、噴き上がった炎が牙を剥いた。炎にたじろいだ芋虫に、縛霊手がレーヴァテインとなって突き刺さる。
    「お前がベヘリタスの何かは知らないが、我々を倒し、絆を奪えるものなら奪ってみるがいい」
     強い意志のこもった声に、シャドウは今度は嘲弄の声は上げなかった。痛みと怒りに満ち満ちた動きが、周囲に毒をまき散らしていく。
    「その程度じゃ、もう止まらないデスよ」
     毒に蝕まれても、あきらの余裕は消えない。増える傷と痛みに半ば酔うように、ガトリングガンのトリガーへ指をかける。
    「んじゃ、もうちょっと遊ぼうか……見せてみな、そのハラの中身をね……!」
    「連撃なら、こちらも負けません」
     あきらのガトリング掃射に合わせ、ちゆもレイザースラストを放つ。弾丸と帯の猛攻が毒としのぎを削ったところで、跳躍したハイナが重力の蹴りを見舞う!
     その、寸前。
    「――学習能力はあるってわけか」
     硬質の爪がハイナの蹴りを受け止め、翻った爪の真空波が彼の身体をくしけずっていた。空中に投げ出されたハイナにはしかし、苦痛の色がない。
    「この程度は想定内の犠牲。意外でもなんでもないさ」
     呟きに先立って、彼の血に染まった帯『狩人の誤算』が動き出す。まさに愚者への鉄槌だった。撃退したと思っていた上空からの再攻撃に、シャドウが今度こそ苦痛の声を上げる。ハイナが地面に着地した。
    「さあ、その胎の中から何が出てくるんだろうね? 楽しみだよ」
    「胡蝶の夢、夜に誘う影の蝶」
     夜音がすかさずヒールを行う。七不思議は穏やかな眠りを運ぶ噺。話の力は言霊となってハイナや海をはじめ、灼滅者たちを癒していく。
     夢の中での消耗が少なかったため、対毒以外の癒しは必要最小限で済んでいる。
    「そろそろ、消えてもらいます」
     毒を再び十字剣で吹き散らす侑二郎。彼の言葉にわさびが初めて呼応した。彼女のリングから力を貰い、侑二郎は炎の蹴りをシャドウへ叩きつける。のけ反った芋虫へ、示し合わせたようにちゆのヴェノムゲイルが穿っていく。
    「ぅぉっと!」
     振り回される爪をかいくぐり、あきらが弾倉を排出。スカーレットテールをなびかせ、取り出し装填するは紫の弾。
    「この弾に込めるのは、強力な毒デスよ」
     深淵の暗き想念に、黒く染まる弾丸。撃ち出されたそれが、あきらの不安定さを示すかのように、シャドウの体内で荒れ狂う毒となり果てる。芋虫の動きが目に見えて遅くなった。振るった爪はさくらえの和装を貫くが、意識を奪うまでには至らない。
    「これで……!」
     さくらえの妖冷弾が、シャドウの全身を氷漬けにする。
    「その氷ごと、君を焼き尽くす!」
     神楽の足にヒーローの源泉、血の池地獄の劫炎が宿る!
     本物の血の池地獄は真っ赤な鑑賞用の温泉だが、溢れんばかりのご当地愛は現実をも昇華する!
    「併設された足湯も、お薦めです!」
     観光PRも忘れずご当地パワーに変換。放ったご当地キックは、凍り付いたシャドウを派手に砕き散らしていった。


     砕けたシャドウの身体。その中でひときわ大きい腹部の残骸が、突如として中から裂け、破壊されていく。
     中から飛び出したのは今戦ったシャドウと同じ姿をした、ミニサイズの芋虫たちだ。
    「……ぅ」
     芋虫撃破もつかの間、むしろ気持ち悪さの増した光景に侑二郎が青ざめる。ちゆも一瞬、目を逸らした。
    「ホント、形状から何から何まで、気持ち悪いです……」
    「戦わず逃げるみたいだね」
     あきらのその言葉通り、総勢三十匹ほどの小型芋虫たちはわらわらと蠢いたのち、羽ばたいてその場を去ろうとする。
    「一匹たりとも逃がしてはならないよ!」
     内部に別のシャドウが潜んでいる――ダークネスに生殖能力がない以上、今までの常識を覆された気持ちの海だったが、目前にいるのは紛れもないシャドウの群れだった。放置するわけにはいかない。
     ハイナがイカロスウイングで先頭の数匹を狙う。飛び立ったばかりのシャドウは、あっけなく帯に貫かれて粉々になった。
    「個体の強さはさほどないのか」
     落ちてきた小型シャドウの破片の内、大きなそれを興味深そうに手にし、やがて握りつぶすハイナ。
    「なら、さっさと倒そう」
     神楽がバベルブレイカーで攻撃していく。あきらもガトリングガンで複数攻撃を行い、夜音も弓を引き絞り、光の蝶を描くような矢で、悪趣味な蛾もどきをしとめていく。
     数分の後には、すべてのシャドウが灼滅されていた。
    「内部にいたのは、一体何だったのだろうな」
    「確かに、何だったんでしょうね」
     薄気味悪さの残る公園に、海とちゆの疑問が投げられる。
    「ひとつ断言できるのは、生かして返しちゃいけない存在というだけだ」
     ハイナが言う。神楽が頷いた。現実のシャドウは強敵だが、相手にできる力量に自分たちは近づいてきている。これ以降も出るなら叩けるはずだ。あきらも得物をケースに納めて首肯した。
    「なんであろうが、ドンと来いデスね!」
     夜音が指輪に触れる。
    「ブレイズゲートのベヘリタスか、タカトへ繋がる手掛かりを見つけたいね」
    「ええ、この場に残された手掛かりは少なさそうですが……」
     それでもやれることはある。侑二郎の言葉にさくらえは頷く。
    「これは繋がった糸だ」
     今回のシャドウがベヘリタスと違うものであっても、たどる先には何かが必ずある。さくらえが瞑目する。
     ――望む路を諦めない。タカトへの糸をここから繋いで、辿り着いてみせる。
     闇の沈んだ向こうには、まだ大きな謎が潜んでいるのだろう。
     伸ばした指先に何が触れるのか。
     その未来はまだ、ようとして知れなかった。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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