紅蓮の騎士バーナルド

    作者:零風堂

     都内某所。
     大作ファンタジーTGC(自社称)を作成しようとするも頓挫し、廃業。社長及び社員の数名が自殺したというゲーム会社『カタパルトカンパニー』があったビルを中心にブレイズゲートが生まれた。
     日が暮れ、人通りもほとんど無くなった夜更けに、赤い光がまばゆく煌めく。そして現れた一枚のカードから、一人の騎士が実体化する。

    「ほう、ここが俺の新たな戦場か」
     最強騎士国グレートナイトに属する騎士のひとり。
     紅蓮の騎士バーナルドが姿を現した!
     がちゃっ、とバーナルドの体を包む、黒みがかった鋼の鎧が音を立てる。
     ばさっと赤いマントが広がり、燃える炎のような闘志を湛えた瞳が、街の見回りをしていた灼滅者たちを睨みつける。
    「問おう、貴様らが俺の『敵』か?」
     鋭い視線に警戒を強めながら、灼滅者のひとりがバーナルドの設定を確認する。
     曰く、炎を操ることから『紅蓮の暴風』の二つ名を持ち、最強騎士になる為に、強い敵を倒して自身の経験を積むのが一番の目的だとか。
    「強い奴と戦いたいなら、相手はここだぜ」
     そこで灼滅者のひとりが挑発すると、バーナルドは頷いた。
    「ならば俺の『炎大剣グランノヴァ』で、炭クズにしてやろう!」
     言葉と同時に抜き放たれた剣が、激しい炎に包まれる。
     バーナルドの発する熱気とプレッシャーを感じながらも、灼滅者たちは構え……今、戦いの幕が開く。


    参加者
    リオン・ウォーカー(冬がくれた予感・d03541)
    月見里・无凱(深遠揺蕩う銀翼の泡沫・d03837)
    村瀬・一樹(ユニオの花守・d04275)
    フゲ・ジーニ(幸せ迷宮回廊・d04685)
    システィナ・バーンシュタイン(罪深き追風・d19975)
    ホワイト・パール(瘴気纏い・d20509)
    戌井・駒吉(蒼炎を揮う夜叉・d31793)
    琴音・魅羅(もふりんちょす・d34561)

    ■リプレイ

    「今日は楽し……くはないおでかけ」
     ホワイト・パール(瘴気纏い・d20509)が小さく、口の中だけで呟いた。
    「夜だし、暗いし、ちょっと眠いし……なんかうるさいし……?」
     ホワイトの見る先には、鋼の鎧を身に纏い、炎を宿した剣を携えた騎士が居る。
    「TCGって何カナ? って思ったらトレーディングカードゲームの略だったんだネ。知らなかった!」
     琴音・魅羅(もふりんちょす・d34561)は興味深そうに言いながら、ふむふむ頷いた。
    「おー、TCGはこの前ししょーから聞いただよ! 遊びの一つらしいだすね」
     戌井・駒吉(蒼炎を揮う夜叉・d31793)も分かると言って手を挙げながら、耳をぴこぴこさせている。
    「それにしてもかぁどから、もんすたぁが出てくるとは、オラもんげーびっくりしただ」
    「カードから騎士が現れるってカッコいいネ」
     ブレイズゲート化したゲーム会社から現れる、カードの中のキャラクターたち。
    「皆、頑張ろうネ!」
     何にせよ放置はできないと、魅羅は元気よく言い放つ。
    「なんか変なのいる。あれが今回の相手……」
     ホワイトの呟きが聞こえたか、騎士は不服そうに表情を歪め、大剣を掲げるように構えた。
    「変なのではない! 我こそは人呼んで紅蓮の暴風、最強騎士国グレートナイトが騎士のひとり、バーナルド!」
     バーナルドが朗々と名乗りを上げるさまを、システィナ・バーンシュタイン(罪深き追風・d19975)がじっと見つめる。
    「紅蓮の暴風とかカッコいい……凄いカッコいい……。ボクが七不思議使いだったら絶対吸収してたな……」
     システィナは言いながらスレイヤーカードを解放させ、宙に出現したガンナイフをばしっと掴む。
    「何はともあれ……どんなにカッコ良くてもキミが最強の騎士になることはないよ!」
     ガンナイフの装着された刃の切っ先をバーナルドに向け、システィナは言い放つ。
    「ボク達が、キミを倒すからね」
     システィナの宣言を聞き、バーナルドは黙って炎の如き闘気を猛らせた。
    「みなさーん! バーナルドさん退治頑張りましょうね!」
     リオン・ウォーカー(冬がくれた予感・d03541)はそう言って、仲間たちを激励する。
    「やはりお友達同士で一緒に行く依頼っていつもより心躍りますよね! 本日はどうぞ宜しくお願いしますね!」
     リオンにぽん、と背中を押され、ホワイトは黙って頷いた。
     リオンが言うなら、そういうものなのだろう。妙に腑に落ちた気分でバトルオーラを両手に集中させ、纏う瘴気として握り締める。
    「皆とお出かけだよ! 相手がどんな強敵だって、仲間と一緒なら怖くない♪」
     フゲ・ジーニ(幸せ迷宮回廊・d04685)は笑顔を見せながら、相棒の霊犬、天照をひと撫でする。
    「しっかり守ってね!」
     フゲの言葉に応えるように天照はひと鳴きし、前線へと駆けていった。
    「前回は天使が相手でしたが、今回は騎士。腕がなりますね」
     月見里・无凱(深遠揺蕩う銀翼の泡沫・d03837)も相手の姿を一瞥し、スレイヤーカードを取り出す。
    「それに……今回は中々の曲者揃い。楽しみですね♪」
     无凱はそのまま銀の瞳を仲間たちに向けると、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。
    「総てを肯定し抗い続ける、Endless Waltz!」
     カードの力を解放し、无凱の指先から伸びた鋼糸がさらりと揺れる。
    「何やら熱い空気を纏った騎士さんがお目見えになったね……」
     村瀬・一樹(ユニオの花守・d04275)が呟きながら踏み込むと、腰のベルトが五線譜のように展開した。
    「紳士たるもの、クールかつ優雅に御相手させていただくよ!」
     射出されたレイザースラストに向かってバーナルドが踏み込み、紙一重で躱す。そして振り上げた大剣を、一樹に振り下ろす。
     ぎぃん!
     炎を纏った大剣と、一樹のチェーンソー剣がぶつかって甲高い音が響いた。同時に一瞬だけ視線を交わし、互いに再び間合いを取り直す。
    「邪魔立てするなら……切り倒すまで!」
     駒吉が刀を抜き放ち、刃に炎を纏わせつつ斬りかかった。しかしバーナルドは身を翻してそれを避け、炎のマントを靡かせる。
     ごうっ、と溢れ出すように紅蓮の炎が広がって、前衛陣を包み込む。
    「……」
     だがホワイトがその炎の幕を突っ切って、バーナルドの側面に回り込んでいる!
     リオンのビハインド、シオリが庇ってくれたお陰で直撃を免れたのだ。
     両手に纏った瘴気を鋭く、刃のようにバーナルドの太腿へと刻み付ける。
    「いきますよ!」
     リオンがシオリの手を掴み、シオリがホワイトの手を掴む。それからぐいっと引っ張って、ホワイトをバーナルドの傍から引き離した。
    「あわせるよ!」
     フゲとリオンがクロスグレイブを構え、黙示録砲で十字砲火を仕掛ける!
    「ふふ、冷たい? 炎の勢い弱まったかな?」
     光の砲弾が交差し、バーナルドの『業』を凍結すべく眩く煌めいた。
    「合わせてみるのも、良いと思うノヨ!」
    「魅羅、いくよ!」 
     システィナと魅羅が槍を突き出し穂先を揃え、妖冷弾を同時に放つ! 解き放たれた氷の槍が、光の中で凍てついたバーナルドに直撃した。
    「隙ありってね!」
     一樹が物騒な音を立てながら、チェーンソー剣を携え斬りかかる。しかし直前でバーナルドが大剣を翻し、その斬撃を受け止めた。
    「今の攻撃……見事だ。俺も全力で行かせてもらう!」
     吼えるバーナルドに向かって一樹はチェーンソー剣の刃を振り抜き、僅かに後ろへ下がらせる。
     その攻防の間に无凱がイエローサインの警告色を掲げ、前衛陣の耐性を高めていった。
    「お前に攻撃をさせる隙は……与えん!」
     駒吉が踏み込み、畏れを纏うべく日本刀を納めるが……一瞬の逡巡の後に、居合斬りを抜き放つ。
    「甘いっ!」
     バーナルドは斬撃を避けると同時に大剣を振り抜き、炎の竜巻を繰り出してきた!
     圧倒的な熱気が肌を焦がし、肺を焼く。その只中で魅羅のウイングキャット、枢がリングを輝かせ、優しい光で仲間たちの傷を癒してゆく。
    「まだまだ、大ジョブ!」
     魅羅が腰のベルトを射出するが、バーナルドはそれを片腕で弾き飛ばす。しかし足が止まった一瞬に、システィナの影が目前まで迫っていた。
    「无凱、トラウマの追い打ちヨロシク!」
     言葉と同時に、无凱は地を蹴っていた。そのタイミングで影喰らいが、バーナルドに襲いかかる。
    「了解♪ システィナぁ~、肩借りるよ!」
     无凱がシスティナの肩を踏んで更に跳び、回転を加えながら鋼糸で斬りつける。高さと速さに追い付けず、バーナルドの胸が深々と薙がれた。
    「ちょ……ちょっと! 自分だけカッコいいとかズルいよ!」
     ぶーたれつつもシスティナは拳を突き出し、无凱の拳とコツンと合わせるのだった。
    「くっ……だが!」
     よろめきながらもバーナルドは体勢を立て直し、足元に伸びてきていたリオンの斬影刃を叩き潰す。
    「別に炎とか怖くないもんね……!」
     フゲのサイキックエナジーに呼応し、ダイダロスベルトが翼のように展開してゆく。
    「真の騎士は信頼や礼節も兼ね備えてなきゃ。守るべきがあってこそ……一人の騎士は騎士じゃない!」
     全方位から迫るイカロスウイングが、バーナルドの全身に絡みつく!
    「さあ、紳士的に、手加減抜きで行かせてもらうよ!」
     その瞬間に一樹が誓約の罪架を構え、その砲口から光を放つ。真っ白な約束を象徴するかのようなその閃光は、バーナルドに直撃して炸裂した。
    「……遅い」
     ホワイトが踏み込み、高速の斬撃で斬りつける。斬撃がバーナルドの鎧ごとその身を裂くが……。
    「おおおっ!」
     バーナルドは耐え、至近距離で大剣の炎を滾らせる!
    「………!?」
     ひと呼吸の間も無く、無数の連撃が叩きつけられ、衝撃でホワイトは地面に転がった。
    「ホワイさん!」
     急ぎリオンが祭霊光を発動させ、ホワイトの傷を治療してゆく。
    「リオンちゃんはメディックの先輩だから凄く頼もしいのヨ!」
     傷の深さを見て取り、魅羅も治療に加わった。回復が早かったこともあり、ホワイトは何事もなかったかのように起き上る。
    「魅羅さんと一緒にメディック出来るのは、私も心強いですよ!」
     仲間たちの状態を確認しつつ、リオンは縛霊手の中で手を握り締める。絶対に、皆で無事に帰ってみせると。
     无凱が深き心の奥に沈んだ思念を集め、漆黒の弾丸を形作る。
    「その動き、見切った!」
     バーナルドが横に飛んでデッドブラスターを避けるが、踏み込んできた霊犬『天照』の霊刀が、がきんと腕を撃った。
     よろめいた所に枢の魔法が降り注ぎ、その動きを縛り付けてゆく。
    「お、おのれ……」
     苦しみもがくバーナルド。
    「よーし! 皆行くなぁんよー!」
     フゲが声を上げ、クロスグレイブを構える。
     続いて駒吉が炎を滾らせ、刀に纏う。渾身の斬撃を振りかぶりながら、ダッシュで敵へと突っ込んだ。
    「さて……キミが炭クズになる時間だよ……」
     システィナは闘気を集中させながら、目を細めるようにしてバーナルドを睨みつける。
     魅羅はちらりとだけその様子を確認しつつ、腕を獣化させながら相手に向かう。
    「ホワイさん、今です!」
     リオンの撃ち出した闘気の一撃が、バーナルドの左肩を貫く。
    「狙いは……ここ」
     同時にホワイトが、そこにバベルインパクトを叩き込んだ!
    「僕は凍神! 炎も凍れー♪」
    「これでどうだッ!」
     ほとんど同時にフゲの黙示録砲が迫り、そこを狙って駒吉がレーヴァテインで斬りつける。
     辛うじてバーナルドは大剣でその連携を受け止めるが……剣を支える腕に、システィナのオーラキャノンが突き刺さった。
    「ぐ……」
    「皆で力を合わせれば、大ジョブヨ!」
     魅羅の振り抜いた銀色の爪が、バーナルドの右腕をずたずたにして過ぎる。がらんと大剣が地面に落ち、炎が散った。
    「さあ、そろそろ演奏も終わりにしましょうか」
     一樹の腰から伸びた護線舞擁が蛇の如く、バーナルドの胴に喰らいつく。
     そしてバランスを崩した騎士の目前に、无凱が迫っていた。
     夢幻香炉華の柄で地を打てば、シャランと小さな音が鳴る。同時に宝珠の示す灯りが、停止を意味する赤に色づいた。
    「……見事」
     騎士の最後の呟きを、聞いた者はあっただろうか。
    「観よ! これが撃神の荒業よ!」
     脳天をぶち抜くように振り下ろされた无凱の一撃が、紅蓮の騎士との戦いを、ここに終わらせたのだった。

    「ひゃー……やっぱりまだまだ暑いカラ炎トカ使う相手だと汗かくネ!」
     魅羅はパタパタと手で扇ぐ仕草をしながら、額の汗を拭って言う。
    「うん本当に暑かったね。此処だけ夏が戻ったみたいだ」
     フゲも同意し、やれやれと息を吐く。
    「なんだか暑くなっちゃったね……なにか冷たいものでも食べて帰ろうか」
     一樹の言葉に、魅羅と駒吉の耳がぴくんと反応した。
    「あ、だったら、今からコンビニ行ってアイス買わねぇだか?」
    「アイス……」
     駒吉の提案に、魅羅が喉を鳴らす。
    「冷たいもの、良いですね。納涼と言うのでしょうか? 私もアイス食べたいです!」
     リオンも喜び、手を上げながら声を上げる。
    「買う人は、くじびきでもして決める? だけど僕って、そんなにツイてる方じゃないからなあ……」
     一樹は言いながら、心配そうに財布を覗き込む。
    「あ……オラ前にお金使っちまったから、今そんな持ってねーだ……」
     駒吉もがっくりと肩を落とした。
    「アイス良いね? よし食べに行こう!」
    「システィナさん奢り嬉しいナ! ミラは苺のが良い!」
     システィナが言った瞬間に、魅羅がぴょこんと飛び付いて言う。
    「って……ボクが奢るの!? いや、うん……ボクも食べたいから良いけど……!」
    「オラはバニラがいいだ!」
    「システィナさんアイスくれるの!? はいなぁん! 僕ビエネッタがいい!」
     駒吉やフゲも便乗し、希望のアイスを挙げている。
    「よーし、ここはボクの奢りだから皆好きなのを選んでくれると良いよ! ボクはシロクマが食べたい!」
     思い切ったシスティナの宣言に、仲間たちから歓声があがった。
    「システィナさんが奢ってくれるんですよね? 私はソフトクリームで♪」
     リオンはそう言ってから、ぼーっと待っていたホワイトの手を引き、仲間たちについてゆくのだった。

    作者:零風堂 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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