久寿餅怪人の暴挙を撃破しよう

    作者:東条工事

     久寿餅(くずもち)。制作者の名前に、めでたい意味合いの言葉も重ねて名前の付けられた和菓子だ。
     葛餅と間違われそうだが、江戸の終わり頃から庶民のおやつとして親しまれてきた、別の食べ物である。
     小麦粉の澱粉を、長い時では二年は寝かせ発酵させた物を蒸して作る和菓子で、黒蜜に黄な粉を掛けて食べたりする。
     この久寿餅、発祥の地である江戸から外へ出されなかったのか、今でも東京を中心とした関東圏以外ではあまり知られていない。
     もちっとしていながらしっかりとした弾力のある食感と、発酵によって生まれた味わいが黒蜜や黄な粉と合わさり楽しめる。

     などという事を、頭が三角形の久寿餅姿の怪人は目の前の気絶した十数人に語り続ける。
     和菓子イベントに参加していた参加者を、怪人が殴りつけ気絶させたのだ。当然、怪人の話を聞いている者は居ない。だというのに、
    「――つまり、久寿餅は決して葛餅をパクったりした訳ではなく、独自のオリジナリティあふれる和菓子であり発酵しているが故の独特な風味が素晴らしい……聞いてるのか貴様ら!」
     気絶した人達を更に蹴りつける怪人。気絶してるんだから聞こえている訳がないだろうという突っ込みを入れたくなるが、そんな突っ込みを食らっても無視しそうな怪人は、
    「おのれ、どいつもこいつも。なにもかも、全ては葛餅のせい。何がぷるるんつるり食感でパチ物とは違うだ……二度とそんことを言い出す輩が出ぬよう、この世全ての葛餅を滅ぼしてくれるわ!」
     怒りのあまり吠えるように叫びながら、野望の声を上げるのであった。

    ● 
    「他を貶める人が薦める物は、それがどんなに魅力的でもくすんでしまう物なのに……気付いてはいないんでしょうね」
     悲しげに言う九重・朔楽(花と在る・d34203)に、
    「気付いてないでしょうし、気付いていたとしても決して認めないでしょうね。今回のような事をする人は」
     東雲・彩華(高校生エクスブレイン・dn0235)は同意するように返すと、集まってくれた灼滅者達に説明を始める。
    「九重・朔楽さんからの情報提供により、葛餅を排除しようと一念発起をする久寿餅怪人に関する未来予測を行いました。灼滅をお願いします」
     そう言うと資料を皆に配り、更に説明を続ける。
    「今回の怪人ですが、資料にある和菓子イベント会場に午後二時に現れます。皆さんにはその時間帯より前にイベント会場に訪れて頂き、現れた怪人を資料にある人気のない空き地に誘導してから戦って頂きます。怪人は葛餅を特に敵視していますが、他の和菓子も全て敵視していますので、イベント会場の喫茶スペースで怪人が現れる時間帯に合わせて和菓子を美味しく食べて頂きますと襲い掛かってきます。
     怪人はその際サイキックを使わずに襲い掛かってきますので、皆さんもサイキックを使わずにフルボッコにして頂けますと、怪人は皆さんを完全に敵視し簡単に挑発に乗り空き地まで誘導できますので、そこで本格的に戦って下さい。イベント会場でサイキックを使いますと被害が出ますので使用は控えて頂けるようお願いします」
     ここまで言うと、今度は敵の戦力に関して説明する。
    「今回の相手は、ご当地ヒーローと妖の槍に相当するサイキックを使ってきます。ポジションはキャスター。攻撃力と防御力はそこそこなのですが、非常に高い回避力を誇ります。バットステータスが付いていない状態ですと、かなり避けられる可能性が高いですのでお気を付け下さい」
     そこまで言うと、最後に激励を口にする。
    「今回の怪人は放置すると、和菓子だけでなく全てのお菓子を滅ぼす為に罪のない一般人の方達を手当たり次第に襲うようになります。そうなる前に、ぜひ灼滅をお願いします。いつも願う事しかできませんが、皆さんのご無事とご武運を願っております」


    参加者
    遠藤・彩花(純情可憐な元風紀委員・d00221)
    風真・和弥(風牙・d03497)
    文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)
    壱越・双調(倭建命・d14063)
    タロス・ハンマー(ブログネームは早食い太郎・d24738)
    空本・朔和(おひさまスタンピード・d25344)
    新堂・桃子(鋼鉄の魔法使い・d31218)
    九重・朔楽(花と在る・d34203)

    ■リプレイ

    ●まずは和菓子を楽しもう
     怪人を誘き寄せる為、エクスブレインの指示に従い灼滅者達は動いていた。

    「これで良し。あとは桜葉で包んで……完成です」
     和菓子制作イベントに参加した九重・朔楽(花と在る・d34203)は、ご当地ヒーローらしくご当地の材料を使って葛桜を作る。
     丸めたこし餡に吉野桜の塩漬けを入れ、それを吉野葛で包み、更に吉野桜の葉っぱで包む。透明感のある葛生地を通して餡が見え、涼しげだ。そしてほんのりとした塩味が餡の甘さを引き立て、桜葉の香りがふんわりと優しい。
     それを共に制作イベントに参加していた文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)は褒める。
    「綺麗だな、それ」
    「ありがとうございます、文月先輩。……これで絶対に久寿餅怪人は来る筈です」
     朔楽は礼を返し、言葉の最後を呟くように言う。関東に来るまで知らなかった久寿餅の事も美味しいと思っている彼は、今回の怪人の事を悲しく思っていた。
     だが灼滅者として意識を切り替える為にも、直哉の作った和菓子に感想を返す。
    「文月先輩の練りきり、かわいいですね。子供達にも人気でしたし」
    「ありがとな! へへっ、子供達も喜んでくれたから嬉しいぜ」
     着ぐるみのご当地ヒーローな彼は、当日も黒猫着ぐるみでやって来たのだが、それにイベント参加していた子供達が歓喜。その後着ぐるみに似せて作った練りきりも喜ばれ、欲しがる子供達に配ったりしていた。
    「ちょっと多く作るのに手間が掛かったけど、良かったぜ」
     そうして和菓子を作る灼滅者が居る一方、色々と買い巡りをしているのは風真・和弥(風牙・d03497)。
    「お、煎餅もあるんだ。すみません、それください。あと、その揚げ餅も」
     最中に饅頭、桜餅に柏餅、大福やおはぎなど、会場の和菓子を制覇する勢いで買っていた所に追加注文。周囲の注目を浴びる。
    「甘いのも良いけど、やっぱしょっぱいのも良いよな。あ、その唐辛子煎餅ってのは……へ~、辛さで違うのもあるんだ。折角だし、全種類下さい」
     こうして文字通り山盛りに買い、皆が集まる喫茶スペースに。既に皆も集まり、それぞれ会場で手に入れた和菓子を並べていた。
    「すみません、お茶奥の方にも渡して貰えますか? 抹茶もありますけれど昆布茶や生姜湯もありますよ。それとコーヒーも有ったので持ってきました。要る人は教えて下さいね」
     テキパキと、まさに委員長というオーラを漂わしている遠藤・彩花(純情可憐な元風紀委員・d00221)は、会場で貰ってきた飲み物を皆に渡して行く。
    「ありがとうございます。では抹茶を頂けますか?」
     丁寧な口調で壱越・双調(倭建命・d14063)は返すと、更に他の仲間の分も受け取り行き渡らせていく。行き渡らせると皆は持ち寄った和菓子を広げていく。そこで新堂・桃子(鋼鉄の魔法使い・d31218)は、朔楽の作っていた葛桜を見詰めながら提案。
    「怪人が現れる時間帯に合わせて食べるのはどうかな? 葛餅に特に敵対心があるみたいだし、食い付き易いと思う。勿論その前に、他の和菓子を食べておいた方がより効果があると思うけど」
     これに皆は頷き、怪人が現れる時間帯に合わせ食べる事に。とはいえ、まだ時間があったので他の和菓子も楽しんでいく。
    「うん、美味いなこれ。甘過ぎないしいける」
     気持ちの良い食べっぷりを見せるのはタロス・ハンマー(ブログネームは早食い太郎・d24738)。最中に豆大福、羊羹に揚げ饅頭、更におはぎに桜餅。幾つもの和菓子を一口でぺろりと。全ての食事に対する敬意を抱いて居る事もあって、食べ方は豪快ではあるが見ていて気持ちの好さだけが伝わってくる。
     箸休めに煎茶をごくり。一息つくとお土産用の和菓子に視線を向け、
    「これなら喜んで貰えるかな」
     お世話になった人達の事を想い笑みを浮かべた。そうしてお土産を気にしているのは空本・朔和(おひさまスタンピード・d25344)も。
    「おだんごうまうま!」
     姉の事を気に掛けて広島から出て来た朔和は、渡す前の味見も兼ねみたらし団子を食べる。口の端にタレが付いても美味しそうにもぐもぐ。それに、
    「これを、どうぞ」
     彩花は会場で用意されていた紙ナプキンを渡す。
    「ありがとう!」
     受け取り口を拭く朔和。そして更に皆に必要な物は無いか聞いて回る彩花。皆で和気藹々と食べて行き、他の食べている物が気になり聞く者も。
    「それもおいしそうだねぇ……おだんごと一個交換してほしいな」
     良い音をさせ煎餅を食べる和弥に、三色団子のトレードを口にする朔和。
    「いいぜ、交換だな」
     各種煎餅を交換。唐辛子の煎餅は中辛でも結構な辛さだったので止めておく。一番辛いのは、話の種に持ち帰り用に回す。
     そうして皆で楽しんで食べ、時にそれぞれの和菓子を交換しながら、時間になったので葛桜を食べていると現れる怪人。
    「久寿餅を食べず葛餅を食うとは何事だ貴様ら!」
     猛然とダッシュ。そこに双調が立ち塞がる。
    「邪魔だ貴様!」
     問答無用で放たれた拳を、双調は左に半身避けながら右手で掴む。僅かに体勢の崩れた怪人に左のジャブを放った瞬間、右掌打を顎に。
    「暴力はいけませんよ」
     丁寧な口調で笑みを浮かべて言う分、余計に凄味が。それに激昂し掴み掛ろうとする怪人に、
    「だから暴力はダメだってば」
     桃子は足払い。こける怪人。そこに掛けられたのは双調の言葉。
    「この程度ですか? 貴方の久寿餅を愛する気持ちの強さは」
     これに怪人は即座に起き上がると、
    「舐めるな貴様! いつでも120%だ!」
     切れ気味に声を上げる。それに周囲はざわつき集まって来るが、
    「危ないです。近寄らないで下さい」
     彩花は必死に一般人を遠ざける。その間も怪人は喧嘩腰。
    「久寿餅も食べん奴らが調子に乗るなよ! そんな崩れた和菓子のどこが良い! 他のもまとめてゴミにしてくれる!」
     プロの作った物とは違うが愛嬌のある黒猫型の練りきりを馬鹿にされ直哉は、
    「ぐ、多少歪だろうが俺の力作だぞ、バカにすんな! 白黒つけてやる、こっちに来い!」
     怪人を挑発。更にタロスや朔和も、
    「食い物を粗末にするな! 食い物の恨みが一番怖いって教えてやる!」
    「おだんごは渡さないぞ! 食べ物の恨みは怖いんだぞ!」
     そして止めに、
    「ここでやり合うと、未来の久寿餅のファンに迷惑だし、他所でやろうぜ?」
     和弥の言葉で怪人は誘導され戦場となる空き地に。そして、
    「大和が桜守・九重朔楽……いざ参る」
     戦闘へと意識を切り替える為の言葉を朔楽は口にし、皆もそれぞれが戦闘へと集中する。そしてESPも使い一般人対策も十分な中、戦いは始まった。

    ●横暴な怪人を灼滅せよ
     序盤は、灼滅者達の方がやや不利だった。
     回避力の高い怪人はとにかく避け続ける。攻撃力はそこそこだったが、妖の槍に相当するサイキックでエンチャントとBS付与を狙う。
     しかし灼滅者達の戦いの組み立ての巧さが凌駕した。
     可能な限りエンチャントによる能力上昇。スナイパーがBS付与により敵回避力を下げ、敵からのBSはメディックがキッチリ解除。
     この、それぞれの役割の巧さが無ければ拙い方向に行っていたが、見事な流れで灼滅者達は怪人を追い詰めて行く。

    「いくよ、すわん!」
     朔和は自身のライドキャリバー・ぶらっくすわんと共に連携攻撃。突撃するぶらっくすわんの側面から弧を描きエアシューズでローラーダッシュ。
    「舐めるな!」
     先行して突撃するぶらっくすわんにビームを放つ怪人。しかし回避するぶらっくすわん。同時に距離を詰めていた朔和の跳び蹴りが怪人を蹴り飛ばし、体勢が崩れた所にぶらっくすわんの機銃掃射。
     膝に食らい動きが鈍る怪人に迫る彩花。
    「暴力で思い通りにしようなんて許しません!」
     生真面目に宣言しレッドストライクを放つ。食らい続けたBSもあり避け切れない怪人。頭を交通標識で殴りつけられる。
    「貴様!」
     怪人は怒りの声を上げるも、衝撃で揺らされた頭ではまともに動けない。その隙に回復や攻撃を連続で灼滅者達はこなす。
    「ダメージは気にされずに。こちらで確実に癒します」
     双調は祭霊光を使い最もダメージを受けた仲間を癒す。序盤からダメージコントロールとBS除去をこなす双調は、怪人にとってはむしろ攻撃して来いと言いたくなる活躍を見せている。
     そして回復がなされる中、連続して攻撃が叩き込まれた。
    「吹っ飛べ!」
     人造灼滅者として3m程の巨人となったタロスは怪人に向け一気に突撃。デモノイドヒューマンとして右腕部に取り込んだWOKシールドを展開。ショルダータックルの要領でぶつかると、勢い良く吹っ飛ばす。吹っ飛び転げる怪人。即座に起き上がるも、その時には既に和弥が間合いに踏み込んでいた。
     右手に日本刀・風牙、左手にクルセイドソード・一閃。二刀を手に死角から黒死斬を放つ。
    「おのれっ! 葛餅なんぞ食っていたヤツラに!」
    「拘り過ぎだろ。ご当地品が大事なのは分かるけど、美味しいものはどれも美味しいじゃダメなのか?」
     半ば本心からの言葉に、挑発と取った怪人は蹴りを放とうとする。それを止めるようにスターゲイザーを放つ直哉。
     和弥に気を取られていた怪人はまともに食らう。骨の折れる音をさせながら蹴り飛ばされる。
    「思い知ったか! 人の作った物にケチを付けるからそうなるんだ!」
    「貴様っ!」
     直哉の挑発に頭に血が上った怪人は乗ってしまう。その隙を逃す灼滅者では無い。
    「余所見してる暇なんてないよ!」
     仲間の攻撃に合わせ移動していた桃子はスターゲイザーを放つ。
    「これでもくらえっ!」
     これまで狙アップのエンチャントを自身に付与していた事もあり勢い良く命中。蹴りの威力に怪人は地面を跳ねるように叩き付けられる。
     しかし即座に起き上がると憤怒の声を上げた。
    「俺の久寿餅への愛を邪魔をするな貴様ら!」
    「そう思えるなら、なぜ他の和菓子も認めてあげられないんです」
     悲しげに声を上げたのは朔楽。しかし怪人は聞く耳を持たない。
    「他の和菓子などすべて敵だ!」
     怒声を上げ周囲を薙ぎ払うようにビームを放つ怪人。だが怒り任せの攻撃は狙いが甘く、朔楽は避けると縛霊撃で殴りつけ霊力の網で動きを封じる。その間、彼の霊犬・伊勢が回復に動き、怪人は呪うように声を上げる。それを悲しげに見つめながらも、朔楽は戦いに集中した。

     そして戦いは続いていく。序盤の回避力の高さをBSにより封じられた怪人に、打ち倒すべく攻撃を集中する。

    「逃がさん!」
     逃げるような動きを見せた怪人にタロスのスターゲイザーが入る。勢いの良いミサイルキックは頭に命中。地面に陥没させる勢いで叩き込まれた。
     怪人は何とか起き上がるも足元がおぼつかない。そこに和弥の紅蓮斬が。
    「があっ! 貴様、俺の命を食ったな!」
    「それなりの味だな。久寿餅とどっちが美味いか、食べて比べてやるよ。お前を倒した後でな」
    「舐めるな!」
     挑発に乗る怪人に和弥は、仲間の攻撃を助ける為に注意を引きながら動く。誘導される怪人。そこへ直哉のジグザグスラッシュが。
    「切り分けてやる!」
     久寿餅の形をした怪人の頭を切り裂く。怪人が痛みに直哉を睨み付けた瞬間、桃子の鋼の如き拳が減り込む。
    「いっくよー!」
     鋼鉄拳が腹に突き刺さり、溜まらず体を折る怪人。そこに間髪入れず影縛りを放ったのは朔楽。影に縛られ動きが封じられた所に伊勢の斬魔刀が入る。
    「クソがっ!」 
     重ねられた攻撃の痛みと憎悪に怨嗟の声を上げる怪人。
    「久寿餅以外の全てはクソだろうがあっ! それを滅ぼす邪魔をするな!」
     自分を縛る影を無理やり引き千切ろうとする怪人。それを朔楽は必死に抑えながら、
    「何故そんなに久寿餅以外を憎むんです! 僕は久寿餅を関東に来るまで知りませんでした、でも葛餅とは違う魅力を持った久寿餅を美味しいと思えたのに……!」
     訴えかけるような言葉も、完全に闇に落ちた怪人には届かない。
    「久寿餅以外を認める貴様らなんぞに負けるか!」
     影の拘束を無理やり引き千切るとビームを乱射。だがまともな狙いもつけられておらず当たらない。
     激情のままに攻撃を放ち息を切らす怪人。そこへ朔和は突進する。
    「ねえねえ、久寿餅って食べたことないんじゃけど……美味しい?」
     久寿餅な頭の怪人をガン見しながら食べたそうに言う朔和に、
    「俺の顔を食う気か! 愛と勇気が友達なヒーローと一緒にするなよ貴様!」
     怪人は激昂。掴み掛ろうとするが横からぶらっくすわんが突撃し吹っ飛ばすと、起き上がろうとした所に朔和の神薙刃が。カミの力宿す暴風に怪人は切り裂かれる。
    「おのれ……!」
     怪人は憎悪の声を上げるも声に力は無い。そこに彩花のグラインドファイアが入る。蹴り飛ばされ炎に包まれる怪人。
    「貴方のしている事は久寿餅の評価を落しているだけです。それに気付くべきです」
     彩花の言葉に、怪人は憤怒の声を上げる。
    「ふざけるな! 久寿餅の事を何も知らん貴様らのたわ言なんぞ知るか! 俺だけが久寿餅の事を考えているのだ!」
    「……貴方の気持ちは分かります」
     静かな声で双調は告げる。
    「私もかつて闇堕ちし、拘りのあまり凶行を齎しました。けれどだからこそ断言できます。貴方のような方は、誰かが止めねばならないんです」
     暴風が双調の元に集う。双調の元に降りたカミの力がそれを束ね、断罪の刃として走らせる。
     その威力に怪人は避けようとするも避け切れない。怪人の動きを先んじるように走った暴風は呑みこむと同時に切り刻む。
     風に断末魔も肉体も切り刻まれ、怪人は虚空に融けるように消えて行った。

     こうして戦いは終わった。周囲の片づけを終り、気持ちを切り替えるように灼滅者達は言葉を交わす。
     戦いから日常へと戻るために、あるいは灼滅した怪人への手向けのように久寿餅を話題にしながら。
     こうして灼滅者達は日常へと戻って行く。あとには何も残らず、静かに風が吹いて行くだけだった。

    作者:東条工事 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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