牛色のカッパは牛肉がお好き?

    ●噂
    「うーむ……プロレスの技名は難しいな。相撲なら分かるんだが」
    「そう言えば、プロレスが好きな牛色のカッパがいるらしいぞ」
    「ニワトリ色ってのもいたが……牛色となると、ホルスタインみたいな感じか?」
    「白と黒のあれだな。牛肉が好きらしいぞ」

    「牛色?」
     フェイ・ユン(侠華・d29900)が戦った小豆色のカッパは、メタボなカッパで運動嫌いだった。
    「プロレス好きな河童かぁ。牛肉を食べるんだね」
     フェイは、学園に報告する事にした。

    ●教室にて
    「みんな! 牛色のカッパを倒してきて欲しいんだかっぱ!」
     奇妙な語尾で言ったのは、カッパ(緑色)の着ぐるみを着た少女──野々宮・迷宵(高校生エクスブレイン・dn0203)だ。着ぐるみの顔の部分はくり抜かれており、そこから迷宵の顔が出ている。
    「フェイちゃんのおかげで、牛色のカッパの出現を察知できたんだかっぱ! 牛色のカッパも、例の川に現れるんだかっぱ!」
     緑のカッパ……じゃなくて迷宵が、黒板に張られた地図を指差した。とある田舎町の、とある川だ。一般人でも近付ける場所ではあるが、近付こうとする者はいないだろう。
    「牛色のカッパは、牛肉が大好きだかっぱ!」
     加熱したものだけではなく、生のままでも食べるようだ。すき焼きや牛丼なども好物。牛繋がりだからか、牛乳も飲む。
     川辺に好物があれば、牛色のカッパが川から出て来るはずだ。好物は、少しで大丈夫。
     牛色のカッパは、プロレスラーっぽい体型をした大柄なカッパ。カラーリングはホルスタイン風である。
     性別はオスで、日本語を話す。動物(ESPで動物化した灼滅者を含む)の言葉は理解出来ない。
     戦闘は、牛色のカッパが好物を食べ終えてからになる。地上戦だ。好戦的で人を襲う習性がある都市伝説なので、川に逃げられる心配はない。
    「牛色のカッパは、カッパ流プロレス武闘術の使い手で、プロレス技風の攻撃をするんだかっぱ!」
     カッパ流相撲武闘術(ニワトリ色のカッパが使ってたやつ)のプロレス版で、遠距離攻撃も可能である。
     敵の好物を持っているかどうかは、狙われやすさに影響しない。
     頭の皿は弱点ではないが、皿を攻撃するためには、スナイパーの「部位狙い」が必要だ。
     皿にヒビが入れば、割れる1歩手前。だが、今回のカッパの皿は、そんなに簡単には割れないだろう。
     仮に皿が割れたとしても、敵の戦闘力は変化しない。体力が残っているならば、戦闘不能にもならない。無論、カッパの皿を割る事ではなく、カッパの灼滅が目的である。
     なお、戦闘中に敵に好物をあげると、敵のHPが回復してしまう。回復量は微々たるものだが。それ以外の特殊な効果(回避率の低下など)は発生しない。
    「みんな! 牛色のカッパを倒してきてくれだかっぱ! 川に行くときには牛色のカッパの好物を忘れずに、だかっぱ!」
     サイキックの活性化や装備品の確認も忘れずに、だかっ……忘れずに。


    参加者
    一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)
    村雨・嘉市(村時雨・d03146)
    ゼノビア・ハーストレイリア(神名に於いて是を鋳造す・d08218)
    譽・唯(断罪を望んでいた暗殺者・d13114)
    榊・拳虎(未完成の拳・d20228)
    フェイ・ユン(侠華・d29900)
    旭日・色才(虚飾・d29929)
    秦・明彦(白き雷・d33618)

    ■リプレイ

    ●牛
     ウシ(牛)はウシ科の動物である。
     牛肉が好きな牛色のカッパは、ホルスタインのようなカラーリングをしているとか。
    「河童の都市伝説とやるのは何回目か……。もうすっかり、この川原の風景を見慣れたな」
     一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)が「セール品の安い落とし肉だけど」と牛肉を置く。
    「カッパに対峙すんのは、これで3度目か」
     村雨・嘉市(村時雨・d03146)が持って来たのは、コンビニの牛丼。
    「つーか、牛肉も食べて牛乳も飲むって……。何かもう、普通に人間みたいだよな」
    「牛肉好きでプロレス技を使う河童……。都市伝説の河童は、相変わらず、ぶっ飛んだ内容の奴が出てくるなあ」
     秦・明彦(白き雷・d33618)は溜め息をつき、パックに入った牛肉を置いた。
    「なんで牛肉が好きなんだろう? やっぱり、キュウリじゃ力出ないのかな?」
     フェイ・ユン(侠華・d29900)が首を傾げる。ビハインドの无名が力を入れると、力こぶが盛り上がった。
    「……なんだか……いいお肉を河童にあげるの、もったいない気がしてきたなぁ」と思いつつ、牛肉を川辺に。
    「さあ……牛の生肉だ……!」
     旭日・色才(虚飾・d29929)は、大げさなポーズをしていた。
    「牛のような姿をしているらしいが、牛を食べるという行為に躊躇はないのだろうか……」
     クロサンドラの鈴(ウイングキャット)を従えて川から離れ、様子見をする。
    「…………カッパ如きが……牛肉……。ふっ…………」
     譽・唯(断罪を望んでいた暗殺者・d13114)の手には、全国チェーンの牛丼屋の牛丼。
    「……ごめんよ……私の牛丼…………。君を食べるのは……私じゃなく…………カッパなんだよ…………」
    「普通じゃ絶対やらんなぁ……。まぁ、一品一品は好きなんすが」
     榊・拳虎(未完成の拳・d20228)は、牛串をおかずに牛丼を食べて牛乳で流し込む。
    「匂いでも見た目でも、引き寄せられてくれれば御の字っすな」
    「ゼノビア……カッパさんに会いに来たの……好物で呼び出すさんだよね……? ゼノビアは……牛乳さんで呼び出すさんだよ……ちゃんと飲んでくれるかな……」
     ゼノビア・ハーストレイリア(神名に於いて是を鋳造す・d08218)が、牛乳を置いた。
    「仲良しさんになったら……雨の日さんに着たりできるかな……日頃から水辺さんで雨の日対策とか……凄く努力家さんだよね」
     どうやら、牛色の「合羽」が出ると思っているようだ。雨合羽お化けと言う都市伝説ならば、この川辺にも出現した事がある。
     と、その時──。
    「川コーナーから、チャンプが登場!」
     牛色のカッパが川から出てきた。ゼノビアは「……あれ? この筋肉だるまさん……なんだろう……?」と困惑中。
    「まさか……ゼノビアのカッパさんを虐めて……?」
    「牛肉たちよ、チャンプの胃袋へ入りたまえ! ヴモォォォッ!」
     大きく口を開けたカッパが、牛肉・牛丼・牛乳を吸い込んだ。
    「ウッシ! やはり、タンパク質と言えば牛肉だな」
     お腹をポンと叩いたカッパに、暦が声をかける。
    「おい、河童。牛なのか河童なのか、ハッキリしろ」
    「チャンプはカッパだが、特殊なカッパだ。一族では『先祖返り』と呼ばれている。──ちょうどいい。君達に、先祖返りの力を見せてあげるとしようか」
    「善悪無き殲滅(ヴァイス・シュバルツ)」
     暦が武装。色才もまた、封印を解き放つ言葉を発する。
    「封印されし絢爛なる魔獣よ、我が力として顕現せよ!」
    「プロレス好きなカッパっすか……その器の真偽の程、この俺が確かめてやるっすよ」
     拳虎は、パーカーとスパッツという格好から、ボクサーの格好に。
    「武器を持っているのは、チャンプを倒しに来たからかい? 人間がカッパに勝てるとは、思えないがね!」

    ●カッパ流プロレス武闘術
    「先祖返りたるチャンプには、こんな事が可能なのだよ! モオオォォッ!」
     毒霧が吐き出された。カッパ流プロレス武闘術の毒霧は、文字通りに毒の霧。
    「その攻撃は通さないよ!」
    「俺も力を貸してやろう」
     フェイと无名に続き、色才も動いた。3人がかりで壁となり、毒霧を阻む。
    「これは驚いた。チャンプのモーレツな攻撃を受けておいて、まだ立っているとはね」
    「そういえば、牛肉以外のお肉も食べるのかな? ──と思って、豚肉と鶏肉も用意してきたよ」
     フェイが、豚肉と鶏肉をカッパに投げた。
    「チャンプをチャンプたらしめているのは、牛肉なのだよ」
     豚肉と鶏肉をポイッと捨てようとするが──。
    「あーっ!」
     フェイが裂帛の叫びを上げ、无名は霊撃を発動。
    「食べ物を粗末にしちゃいけないんだよ!」
    「は、はい……」
     カッパが、そっと肉を置いた。この肉は、後で誰かが美味しく頂くはず。
    「プロレスか。受けてから仕掛けるスタイルは、性に合わないな」
     暦は右腕のバベルブレイカーをカッパに向け、ジェット噴射で飛び出した。死の中心点を突く。
    「これも驚きだ! 幽霊君の攻撃もなかなかだったが、人間の攻撃でも、これ程のダメージを受けるだなんてね」
    「まあとにかく、被害が出る前に、しっかりぶっ飛ばしてやるぜ」
     嘉市が武器に爆炎を宿し、敵に叩き付ける。
    「こんがり仕様だ!」
    「おや、炎を操る事も出来るのか」
    「そっちがプロレスで来るのなら、それに応じてやろう」
     明彦が、暴風を伴うローリングソバットを披露した。
    「君の蹴りは、カッパ流プロレス武闘術に通じるものがあるね」
    「許せないさん……こんな筋肉牛さんに会いに来たワケじゃないのに」
     合羽じゃないカッパ(プロレスラーっぽい体型で大柄でキモい)だったので、ゼノビアが激おこ中。
    「ヴェロニカ……カッパさんの敵討ちさん……一緒に頑張ろう」
     ヴェロニカも霊撃を繰り出した。カッパの頭にある皿を狙う。
    「おっと! 危ない、危ない」
     カッパが回避するが、今度はゼノビアのマテリアルロッドが接近。こちらは躱せず、皿に魔力が流し込まれる。
    「チャンプの皿を攻撃するとは、いい度胸をしているね」
    「牛色というよりも、牛柄のカッパか。カッパ業界にも、コスプレという文化があるのだろうか」
     色才がクロスグレイブを構えた。聖歌が流れ、銃口が開放。
    「ふっ……凍てつけ」
     砲弾を放ち、クロサンドラの鈴に指示を出す。白と黒の翼を羽ばたかせ、クロサンドラの鈴が猫パンチ。
    「猫君に殴られるとは思わなかったな」
    「牛をイメージにしたプロレスラーもいるっすが、牛でカッパでプロレスってのは、属性過剰じゃ無いっすかね?」
     一時的に、拳虎の魂が闇堕ちへ傾く。
    「プロレス部所属の俺が、アンタのプロレス魂を確かめてやるっすよ」
    「プロレス部? ボクシング部だと思っていたよ」
    「……牛丼の…………仇だぁー…………」
     唯がカッパに肉迫。高速で敵の死角へと回り込むと同時、雪桜で斬りつける。刃の先端は雪のように白く、手元の方は桜色の刀だ。
    「あの牛丼のどちらかが、君の物だったようだね」
    「…………私の……牛丼…………」
    「さて、再びチャンプの番だ──」

    ●輝き
    「チャンプのラリアットは、モーレツな威力だぞ!」
     カッパ流プロレス武闘術のラリアットは、腕が発光している事を除けば、普通のラリアットと同じような攻撃。
     カッパの太い腕が、嘉市を打った。
    「いてっ……!」
    「君も耐えるのかい。頑丈だ」
    「色才くん、必殺技行くよ!」
     フェイが、カッコいいポーズをしている。
    「ほら、えーっと……あの合体技!!」
    「あの技か(どの技だ?)」
     とりあえず、色才もポーズ。
    「君達の合体技とやら、チャンプに見せてくれたまえ!」
    「必殺! 集気法!」
    「邪悪なる俺が邪悪を葬る──祭霊光!」
    「攻撃ではないのか」
    「宴の時間だ!」
    「无名!」
     クロサンドラの鈴がカッパの皿に猫魔法を放ち、无名は霊障波を飛ばした。
    「なるほど。猫君と幽霊君が攻撃するわけか」
    「それにしても、河童居過ぎだろ。何十体出たよ、此処」
     暦の闘気が、雷へと変換されていく。
    「何時もながらだけど、他の河童の事を知っているんだろうか? 時々、色が被ってる固体とか出てくるし(と言うより、誰なんだ、河童の噂する奴。レパートリー有り過ぎだろ)」
     雷を纏った拳が、敵を捉える。
    「カッパはチャンプだけではないが、チャンプのようなアニマルカラーは、割と珍しかったりする」
    「好物は、これだろ? そらよっと」
     嘉市が放り投げた生の牛肉を、カッパが食べる。
    「牛肉、うまうま。いや、うしうし」
    「つーか、牛肉好きって、なかなか贅沢だな……。いやでもやっぱ、牛色だから牛肉って安直じゃねえか……?」
     ローラーダッシュで炎を発生させ、カッパを蹴り飛ばす。
    「牛丼を食べて、チャンプは先祖返りとなったのだ」
    「カッパさんに……会いに来たのに……」
     ヴェロニカはババッと霊障波を皿に撃ち込み、オーラに包まれたゼノビアの拳が、連続でカッパの皿に打ち込まれる。
    「先祖返りじゃないカッパに会いたかったのかい?」
    「灼滅者としての務めを果たそう。今度はドロップキックだ!」
     明彦が、スターゲイザーを繰り出す。
    「その蹴りもまた、カッパ流プロレス武闘術に通じるものがあるな」
    「プロレスとは、受けと攻めの応酬。そして、倒れても立ち上がる不屈の闘志」
     拳虎の拳が、鋼鉄のように硬くなる。
    「アンタは、ただ単にプロレス技が格好良くて使ってる……そんな底の浅い奴じゃ、無いっすよね?」
    「もちろんだとも。君の武器は拳のようだ。その拳で、確かめてみたまえ」
    「このパンチを受けても立ち上がって向かってくるなら、俺はアンタの事を認めるっすよ。アンタの魂が『真のプロレスラー』そのものだって。プロレス流ボクシング──!」
     拳虎によると、本来、ボクシングは「避けて当てる」を重視したスピーディーなもの。
     しかし、自身の間合いに入った時、拳虎が足を止めた。それを見て、カッパが好戦的な笑みを浮かべる。
    「足を止めて大きく殴り合う──それが、ボクサーにしてプロレスラー、榊拳虎の生き様って奴っすよ!」
     カッパの体に拳がめり込む。よろめくカッパだったが、力強く地面を踏みしめて耐えた。
    「いい拳だったぞ、少年」
    「……お皿…………ばっきばきに……してやんよ…………」
     唯もまた、カッパの皿に興味があるようだ。
    「……牛丼の…………仇ぃー……」
     赤いオーラで形成された逆十字を出現させ、カッパの皿を攻撃。
    「……硬っ!」
    「君も、チャンプの皿を割ろうというチャレンジャーだったのかい」
    「……カッパさんのお皿……硬いー…………♪」
    「チャンプは先祖返りだからね。それでも、この勝負は決着の時が近いようだ」
     カッパの膝が光り輝いている。
    「カッパ流プロレス武闘術! シャイニングゥゥッ! ウィッザァァァァァッッド!!!」
     その場で飛び膝蹴り。すると、光が飛んだ。
    「やらせない!」
     明彦が仲間を庇う。明彦は倒れない。
    「チャンプの必殺技も、君達には通用しないか……!」
    「行くよ!」
    「絆の力を見せてやろう」
     フェイが武器に宿した炎をカッパにお見舞いし、色才は影業を伸ばした。
    「ハーッハッハッハ!」
     大きな声で、カッパが笑う。
    「チャンプは、これで引退だ!」
     そう言って、カッパは消滅した──。
    「ケツァールマスクに弟子入りしていれば、もっと手強かったのだろうが」
     明彦が続ける。
    「都市伝説は突然発生する。鍛錬を積み重ねられない分、アスリートや武人の強さが無い。まあ、こんなところだろう」
    「牛肉でも供えて、冥福を祈ってやるっすかね」
     拳虎がパックに入った牛肉を置いて、手を合わせた。
    「持って来た肉が無駄になるのももったいないから、バーベキューとかするかな。季節的にちょっぴりずれてる気もするけれど、まぁ、無駄になるよりはいいと思うから気にしない」
     暦が、バーベキューセットを探す。
    「もうどっかに保管されて常備されてる気がしたけど、どこにあるんだ」
    「あー、何か腹へってきたなあ」
     嘉市が、お腹に手を当てた。
    「牛丼でも食いてえ気分だ」
    「……私の牛丼…………仇は取ったからね…………」と唯。
    「変な筋肉倒したよ……カッパさん……ちゃんと天国に行けたかな」
     ゼノビアの勘違いは、まだ継続していた。

    作者:Kirariha 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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