くるみモッチアと少年の悪夢

    作者:聖山葵

    「さぁ、行くもちぃ」
     ビシッとこちらに指を向けた少女の指示へはぁいとお気楽に答えるのは、掌に載るサイズの豊かな胸をした少女達、その全てがくるみもちで出来ていた。
    「ちょ、ちょっと待て。あの時はお腹一杯で余裕なかったんだって!」
     少年は後ずさりつつ弁明してみるが少女がプチくるみもち少女達は歩みを止めることなく。
    「あ、ちょ、アーッ」
    「ふふふ、存分に召し上がれもちぃ」
     両先端に巨大なくるみもちのついた鎖を両手から垂らしたまま、少女は襲われる少年を見て笑みを浮かべたのだった。
     
    「一般人がシャドウに闇堕ちしてダークネスになる事件が発生しようとしているようなのです」
    「闇もちぃでもあるようだがな」
     君達の前で告げた神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)の後ろから現れた座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)は補足を加えつつ、今回はくるみもちだなと続けた。
    「ただし、件の少女は人の意識を残したまま一時踏みとどまるようでね。君達には、問題の少女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちからの救出をお願いしたい」
     そうでない時には、完全なダークネスになってしまう前に灼滅を。
    「しかし、餅に関する悪夢を見せているシャドウが存在するとは……」
    「まぁ、先日タタリガミになるケースがあったばかりだからな」
     自分で推測していながらもポツリとこぼした三成にはるひは肩をすくめて見せ、では説明に戻ろうかと言った。

    「闇もちぃしかけている少女の名は、胡桃蔵・秋(くるみぐら・あき)、高校一年生の女子生徒だな」
     学年が一つ上になる憧れの先輩にくるみもちお土産を持っていった所、断られそのショックで闇もちぃ、以後、毎夜毎夜くるみもちでできた掌サイズの自分に襲われる悪夢を先輩に見せつつ、昼は普通に高校へ通っているらしい。
    「先輩の方が壊れてしまう前、つまり今ならまだ救いの手は間に合うと思うのだよ」
     先輩の方を救う為にも、秋の凶行は止める必要がある。
    「秋が下校時、近道として通り抜ける空き地で接触するのであれば、バベルの鎖に接触することもない」
     実は私有地であるらしく、そのことを知らない秋以外は通りかかることがなく、人避けも不要なのだとか。つまり、ここで待ち伏せ、接触すればいい訳だ。
    「時間も夕刻、日が沈みきるまでに何とか出来るなら明かりも不要だと言わせて貰おう」
     闇もちぃした一般人を救出するには戦ってKOする必要がある為、戦闘は避けられないが、幸いにも戦場になりそうなのは誰も居ない空き地だ。
    「ソウルボードの外で戦うと言うことになればシャドウ『くるみモッチア』は手強い相手になると思うが、人の心に呼びかけ、秋を説得することがかなえば、弱体化させることは可能だ」
     故に説得してから戦闘へ入ることを推奨すると、はるひは言う。
    「悪夢で『先輩』が弁解しているとおり、発端は誤解であり、すれ違いだ」
     よって、説得により誤解を解いてやれば、闇もちぃした理由が消え、ダークネスの戦闘力を大きく削ぐことが出来るだろう。
    「餞別にこのくるみもちを渡しておこう。これを秋に渡せば、こちらの話にも耳を傾けて貰えるはずだ」
     戦闘になった場合、くるみモッチアはシャドウハンターのサイキックの他、鎖付巨大くるみもちでロケットハンマーのサイキックに似た攻撃を使い応戦してくる。
    「すれ違いが発端の悲劇、このまま見過ごせなくてね」
     少年と秋のことよろしく頼むと頭を下げはるひは君達を見送るのだった。
     
     


    参加者
    神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)
    長姫・麗羽(シャドウハンター・d02536)
    ハイナ・アルバストル(実害の・d09743)
    竜崎・蛍(レアモンスター・d11208)
    小鳥遊・亜樹(少年魔女・d11768)
    東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)
    湯乃郷・翠(お土産は温泉餅・d23818)
    天前・仁王(銀色不定系そしてショゴス・d25660)

    ■リプレイ

    ●夕暮れに
    「人よけしなくていいなんて今回は楽だなあ」
     ポツリと漏らした竜崎・蛍(レアモンスター・d11208)の視界で蚊取り線香の煙が風に揺れた。
    「前回の救出の時は、途中で気絶してしまったんですよね。今回はそんなことが無いようにしなければ……」
     もう半ば依頼は成功に終わったとでも言うかのような余裕の有り様は、空き地にブルーシートを敷きながら、以前の出来事を反省する神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)とは、対照的だった。
    (「好意で用意したものが拒否されるのはショックなのよね……」)
     そして、以前のことを思い出した灼滅者が他に一人。湯乃郷・翠(お土産は温泉餅・d23818)の手で筒状になっているツッコミ用のパンフレットもまたかつて自分が闇もちぃした時の記憶に繋がるようで、同族としてもきっちり助けてあげないとねと言う独言が漏れる。
    「くるみもち……」
    「くるみもち、食べたことないんですよね。むしろ私が食べたいなぁ」
     ブルーシートにお茶とくるみもち。おやつの食べられる空間が完成したからか、小鳥遊・亜樹(少年魔女・d11768)がお菓子の名を口にしたからか、東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)は嘆息し。
    「じゃあ、このくるみ饅頭食べるかい?」
     無表情に横から差し出したハイナ・アルバストル(実害の・d09743)の手の上にあったのは、見違うことなきくるみ饅頭だった。
    「ありがとう。けど、どうして?」
    「こういうこともあろうかと思ってね」
     聞き返す八千華へ無表情のままハイナは答えるが、何故饅頭なのかは謎のまま。常にふざけた態度を取るハイナからすれば纏めておふざけの一環だったのかも知れず。
    (「うん。勘違いみたいだし、助けてあげよう。アキちゃんも、その先輩もね」)
     はるひ達からの説明をお復習いした亜樹が密かに頷いた頃。
    「とりあえず、こんな所ですね」
     待ち人への準備は調い。
    (「うーん、確かにお土産を持っていって、食べてもらえないときのやりきれなさってのはわかるけど、だからと言って、相手に強要するのは少し違うよね」)
     オレンジに染まる景色の中、少し離れた場所で目立たぬ様に立ち、考え込んでいた長姫・麗羽(シャドウハンター・d02536)は、ちらりと天前・仁王(銀色不定系そしてショゴス・d25660)を見る。
    「準備は、よいか?」
     仲間への言葉に続いて一点に視線を向けた仁王を。続いてその仁王が目をやったものに。
    「何? あたしの顔に何か付いてるかしら?」
     一方で見つめられた少女はきょとんとしたまま首を傾げ。
    「むしろ私の髪型どう? イメチェンしようと思って切って貰ったんだけど」
    「え? そうね……良いんじゃないかしら」
     自らの髪を摘んで尋ねる蛍へ律儀に答えた少女へと、今度は翠が問う。
    「ねえあなた、何か悩んでないかしら?」
     と。

    ●即座に
    「そっか。じゃ、あとは解放後かな」
    「な、何故それを?」
     蛍が呟く中、少女は翠に目を剥いた。
    「まぁ落ち着くのだ。慌てては事を仕損じる」
    「くるみもちもあるから少し話して行かない?」
    「くるみ……もち?」
     宥める仁王に続く形で翠が聞けば、好物の名を反芻した少女の視線はブルーシートの上に置かれたものに固定され。
    「はじめまして、アキちゃん。ぼくもアキだよ。くるみもちのお土産持ってきたよ。食べる?」
    「もちろん食べるわ! 頂きますっ!」
     同じモノを持つ亜樹が口にした提案へ、ほぼ脊髄反射の早さで応じた。
    「僕もあげ――」
    「まずはこれを食らうと良い」
    「まぁ、ありがとうっ」
     ハイナと明王が亜樹に倣うようくるみもちを差し出せば、やはり即座に受け取り。
    「それじゃ、いただくわねっ」
    「美味しいよね、どうぞどうぞ」
     食べ始めるところまで全ては一同の予定通りだった、促す必要さえ無かったかも知れない程に。
    「とりあえず、話を始めてもよいですかね?」
     ただひたすらにくるみもちを食べる様を見て、尋ねたのは、説得のチャンスを待っていた三成。
    「んん」
    「茶はいるか?」
     口の中にものが入っていつつも応じた少女に仁王がお茶の入った水筒を手に問えば、縦に振られた首が肯定し。
    「経費が掛かってるんだよな……」
     呟いた蛍はじっと見ていたくるみもちの一つを口に運ぶ。
    「うん。やっぱり、くるみもちはおいしいね」
    「……くるみもちはまだいるか? 何、遠慮はいらんぞ?」
     尚も続くおやつタイムの中、麗羽は密かに少女の後方に回り込み、退路を断つ。
    (「これで後は、説得をするだけかな。先輩の気持ちも理解して欲しい所だよね、説得は他の皆に任せても大丈夫だと思うけど」)
     あくまで目立たず、見つめる先ではもう始まっていたのだ。
    「私も友達に温泉餅を持っていったら難色を示された事があったわ……その時は怒ったけど話を聞いてみればちゃーんと理由があったりするのよね」
    「理由?」
     少女の説得が。
    「お腹いっぱいだったとか単純な理由かもしれないわよ? 悩むより聞いた方がさっぱりすると思うわ」
    「お腹が一杯って……あ」
    「腹が満ちている時に食べ物を、しかも腹持ちのいい餅を勧められても、恐らく美味しく味わってはもらえないと思いますよ? 彼の腹具合を事前に確認していましたか?」
     思い当たる点でもあったのか、声を上げた少女へ三成は問いを投げかけ。
    「ひとつ聞こう。貴様は、相手が『くるみもち』を断らざるをえない状況であったならば、どう考える?」
     少女が答えるよりも早く、別方向から視線と共に問いが向けられる。
    「美味しいものを無理やり食べたら美味しいよりも苦しいになっちゃうから先輩はその時は遠慮した。美味しく食べたいから、その時はごめんって言ったんだろう」
    「おいしいけどおなか一杯なら食べられないなあ」
     そして、答えさえも口にしたのは、少女ではなく八千華と蛍。
    「それがタイミングが悪かっただけだと言うならば……ただ闇雲に相手に当たる前に、貴様は憧れていたというその先輩に確認するべきではないか?」
    「っ、そんな……誤解だったって言うの?」
     愕然とする少女の後ろから歩み寄った麗羽は、ようやくここで口を開き。
    「美味しい物は別腹ともいうけれど、実際には一つだし、どうしても食べ切れない場合もある」
    「そう、そんなにもお腹が一杯ならどれだけ魅力的なプレゼントだとしてもパスしちゃうよね。仕方ない仕方ない」
    「うっ」
     畳みかけられて、呻きつつ後ずさり。
    「このままシャドウになっちゃうと、たぶん、現実にくるみもちを食べるのはもうできなくなると思うなぁ」
    「そ、そんなのだ……あ」
     亜樹が追い打ちをかけた直後だった、少女の身体が変貌しだしたのは。
    「もう少しの所だったのに……よくも邪魔をしてくれたもちぃな?」
     くるみ割り人形と人を足し、二で割ったような容貌で胸元にスペードのスートを具現化させた少女の両手から垂れ下がった鎖の先で揺れるのは巨大なくるみもち。追いつめられたシャドウが表に出てきたのだろう。
    「我が身は鋼鉄、闇を切り裂く剣と成す」
    「……うーん。未定!」
     幾人かが戦いの気配を感じ取り、スレイヤーカードの封印を解く中。
    「初めましてっ、くるみもちで苦しんでいる人がいると聞いて助けにきましたっ。だから……ちょっと苦しいかもしれないけれど、付き合ってもらうよ!」
     今更ながらに挨拶をした八千華は拳にオーラを集め、地を蹴った。

    ●追い込まれたもの
    「もちゃ、べっ、ばっ、がっ、げっ」
     拳の連打は容赦なく元少女を踊らせる。
    「はぁ、もちぃ、こん」
    「ごめんね」
     幾度も殴られ、ようやく乱打の領域から逃れ一息をつこうとしたシャドウ、くるみモッチアを待っていたのは、WOKシールドを今にも叩き付けんとする麗羽の姿だった。
    「もべちっ」
     弱体化は少なくとも連係攻撃を裁けないレベルに至っており。
    「ヒャッハー! 御当地だろうがシャドウだろうが未来の仲間は救ってやらぁ!」
    「な」
     恋の予感壱号の杭を高速回転させながら踏み込んできた三成への反応も、繰り出される一撃を交わすには遅すぎた。
    「逃がさぬ!」
     いや、間に合っていたとしてもかわせたかは怪しいか。戦闘形態、つまりダークネスの姿に変じた仁王の射出した帯が退路を断ちつつ向かってきていたのだから。
    「もちゃふっ、う、ぐ」
    「にゃああっ」
     杭と帯に貫かれたたらを踏む元少女へ襲いかかるのは、ウィングキャットのイチジク。
    「ちょ、ま、待、もちゃぁぁぁっ」
    「それじゃあ、悪夢から起こしてあげるね」
     空き地に響く悲鳴を聞きながら、非物質化させた殲術道具を手に亜樹はくるみモッチアに肉迫する。
    「っ、この」
     弧を描く巨大くるみもちが唸りを上げ、集中攻撃されつつも一矢報いようとする元少女を見て、蛍は思う。
    (「この調子なら楽出来そうだなあ」)
     命中を重視した一撃は、盾になったイチジクに阻まれたのだ。
    「おっけーイチジク、その調子でお願いね!」
    「みぃっ」
    「じゃ、とりあえず回復しておくよ」
     八千華の声に一鳴きして応じたウィングキャットへ癒しの力を込めた矢は飛び。
    「っ」
    「な」
    「私だって、まだっ」
     大きな胸の影という死角に飛び込む形になった翠は見上げても顎が見付けられない世の不公平に微かな憤りを覚えつつ飛びあがると雷を宿した片腕でアッパーを繰り出した。
    「もばぶっ」
     衝撃に豊かな胸を弾ませたくるみモッチアが浮き上がって放物線を描き。
    「災難だったね、けど――」
     巨大化し始めたハイナの腕は地面へ落下した元少女の身体を追う形で落ちかかる。
    「もぢゃぁぁぁぁっ」
     再び悲鳴は空き地に反響するが、この空き地には少女を救出しようとする者は居ても、ダークネスを救おうという者はいない。
    「ぐ、ぎ、もっちああああっ」
     雄叫びと共に自分を押し潰そうとした巨腕を持ち上げ、放り出し。
    「ふぅ、よくもやってく――」
    「まだだよっ」
     くるみモッチアが自由を取り戻すも、この時には既に新たな攻撃が、白光を伴う斬撃が迫っていた。
    「もぶべっ」
    「長姫先輩ありがとうございます! さ、イチジク」
     天使を思わせる麗羽の歌声が響く中、八千華は麗羽に礼を言うと、一撃を見舞ってたたらを踏む元少女を見据えたまま癒やされたばかりのサーヴァントへ声をかけた。
    「にゃあっ」
     そこから恥滅多のは、主従のコンビネーションを含む灼滅者達の連係攻撃。
    「もぢゃばっ」
    「ヒャアッ、もう我慢できねぇっ」
     ある意味で先程と同じように、されど詳細は違う。
    「もびゃつ」
    「うぐっ」
     刃と化した三成の影によってくるみモッチアの服が切り裂かれ、露出度の増した元少女の姿に何故か斬った三成まで口元を押さえて呻きをあげた点。
    「貴様が憧れた先輩は、斯様に無下に扱うような者なのか? 己を強く持て」
    「ぅ、もちぃ……」
     戦いに突入しつつも尚、仁王からかけられる声にくるみモッチアが怯むといった点などで。
    「ぼくの一撃は痛いよー」
     弱体化した元少女へ自ら痛いと評した亜樹の一撃は、容赦なく振るわれる。
    「もべがっ」
    「さて、そろそろ仕上げにしようか」
     蹌踉めくくるみモッチアを見据え、射出せんとする帯の先端を向けつつ思う。
    (「お腹いっぱいの先輩に食べ物のおみやげを渡すその間の悪さ、そしておみやげ拒否されただけで闇もちぃしちゃうこのメンタル、極めつけは堕ちて見せる悪夢がまさかのくるみもち……こいつは凄まじい才能だね」)
     しかも、墜ちかけたあげく説得されて今のありさまでもある。
    「世が世なら一時代を築いたものを。けどね、だからこそ……」
    「もべびゅ」
     オレンジ色に染まった世界を貫いた帯は、元少女の身体を地に縫い止め。
    「斬艦刀……桜花散華! 桜の如く、散りて夢見よ……」
     装甲を纏し異形がクルセイドソードを振るい、すれ違う。
    「刀って、それ、どう見ても剣……もべばっ」
     ツッコミを入れようとしつつも最後まで言葉を続けられず、崩れ落ちた少女は元の姿に戻り始め、戦いはここに幕を閉じたのだった。
    ●結実
    「ようこそこちらの世界へ」
    「私もこんな感じで正気に戻されて無事だったのよね、秋さんも大丈夫だったかしら?」
     意識を取り戻した少女が最初に知覚したのは、無表情のまま出迎えたハイナと、何処か決まり悪そうなにしつつも自分の顔を覗き込んできた翠の顔だった。
    「あたし……」
    「怪我はないみたいね。……まあ先輩とまずは話し合ってみなさいよ、行動してみれば簡単だったりするわよ」
     闇もちぃしかけていた時の記憶が残っていたのか、己の手を見て呆然とする少女へ翠は丸めたパンフで掌を軽く打ちながら微笑みかけ。
    「動いたらお腹空いちゃった。あの、くるみもち、もらってもいいです?」
    「それならこれを……温泉餅もあるわよ?」
     八千華の声に振り返り、荷物から二種類のお餅をとりだした直後だった。
    「く、くるみもちじゃないの! 頂きますっ」
     復活した少女の手が伸びたのは。
    「……もう、大丈夫そうだな」
     まだ今は気持ちの整理が着かなくとも、戻ってこられたのだ。ましてや、あの反応。明王は確信しつつ、ただ軽くなった財布に手を当てる。人助けのための出費は実を結んだのだ。
    「美味しいっ、やっぱりくるみもちは最高だわっ!」
    「タイミング見てまたクルミモチあげにいこか」
     脇目もふらずくるみもちを口に運ぶ少女を見て、蛍は呟き。
    「君にはこれから幾多の試練と、それ以上の数の同士が見つかるだろう。どう生きるかは君の自由だけど、まずは祝福するよ……って、聞いてる?」
    「はんはんふぉふぉひはふはっ」
     ハイナの贈った祝福の言葉に、顔を上げた少女は答えた瞬間。
    「あ」
    「ごぶうぇぃ!!」
     ボロボロになった服の一部がぺろりとめくれて、三成が倒れる。
    「っ、きゃぁぁぁぁ」
     一瞬遅れて響き渡る悲鳴に、訪れたカオスは収拾までに数分を要し。
    「色々お世話になったわね、ありがとう」
    「またいっしょにくるみもち、食べようね」
     感謝の言葉を述べる少女へ、黒い三角帽子の下から少女を見て、魔女っ娘ルックで亜樹は手を振り。
    「もう見失うでないぞ」
     明王も声をかけると、踵を返し歩き出した。
    「今回は大丈夫だと思ったんですけどね」
    「この調子なら、きっと」
     嘆息する三成を追う形で自分の胸を見て呟く翠の荷物からは、学園案内用のパンフレットが減っており。一同はそのまま帰路へと付く、救った少女と何処かで再会出来る予感を抱きながら。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ