金時山。
休日の金時山は、普段であれば山登りを望む人々がよくやって来て、そして、登山を楽しむ場所の1つとなっていた。
けれども、今はそうではない。山登りに来ていた人々は一様に山に近づく度になんとなく嫌気を感じてその場を立ち去ってしまう。
登山者がいなくなり、人気の少なくなった金時山の中で、護摩壇の前に胡坐をかいて座り、ただ、祈り、経を上げる、その頭に黒曜石の角を光らせる、僧らしき男。
『空』と言う名を持つその男と護摩壇に熊型の巨大な獣が、雄たけびを上げながら、巨大な爪を振り上げて襲い掛かる。
掠めただけで、人を切り殺せそうなほどの巨大な爪だったが、獣は、護摩壇にぶつかるよりも前に、その手を引っ込めた。
そして……諦めた様にくるりとその背を空に向け……山奥へと引き返していった。
「……琴さん、君は……。……いや、依、と呼ぶべきなのか……?」
まるで寝言の様に、魘される様子の北条・優希斗(思索するエクスブレイン・dn0230)。
ふと、肩を揺さぶられて顔を上げると、何人かの灼滅者達が様子を伺う様に自分を見ているのに気が付き、決まり悪そうに苦笑を浮かべる。
「……先日使者を送って来た天海大僧正勢力に、動きがあったよ。……空と言う名の僧型の羅刹が、神奈川県にある金時山周辺から一般人を追い出して、周囲の立ち入りを禁止しているらしい」
その一般人に被害は出ていない。あくまでも、追い出されている、と言う話の様だ。
淡々と呟く優希斗に、灼滅者達が軽く首を傾げた。
「実はその金時山なんだが……今はどうやら、強力な動物型の眷属が活動しているらしくて、空は、この眷属達を隔離する為に金時山を封鎖している様なんだ。僕に視えたのは、その内の一体で、熊型の眷属になる」
理由ははっきりしないけれど、と小さく続ける優希斗に灼滅者達は続きを促す。
「……君達には、この熊型の眷属か空、或いは、その両方を灼滅して欲しい。判断は君達に任せるから」
優希斗の呟きに灼滅者達は其々の表情で首を縦に振った。
「熊型の眷属は、強い。多分、皆が束にならないと勝てない相手だと思う。其れに対して、空は、封鎖する能力に長けているだけみたいだから、戦闘能力は、君達1人か、それよりもやや強い位だと考えてくれればいい」
空は勿論、熊型の眷属も、神薙使いに類似したサイキックを使う。
「後、その爪は、全てを切り裂くと思える程の威力だ。戦術道具で言えば、無敵斬艦刀と同じ様な物だと考えて欲しい」
尚、熊型の獣はクラッシャー、空は、メディックであり、『空』は護符揃えと同じ様な力を持った錫杖を使用しているそうだが、さほど実力があるわけではない。
また、熊型の眷属を倒せば、護摩壇を抱えてさっさと京都方面へと帰ってしまう。
一方で、『空』を灼滅した場合、熊型眷属は、金時山を出て何処かへと去っていく。
だが、その先にどんなことが待っているかは予測がつかない。
最も、眷属が外に出る、と言うだけで悲劇が訪れる可能性は否定できないが。
「君達がどちらを灼滅するか、または両方を灼滅するつもりなら、このことも念頭に入れて行動して欲しい」
優希斗の説明を聞き終えると、灼滅者達は其々の表情で返事を返した。
「今回の事件、今までの所、一般人の被害者は全く出ていない。けれども、眷属が町に出れば被害は出るだろうし、空の動きにも訝しさを感じている。これをどう考えるか、正直少し難しい所だ。かといって……ただ、両方を灼滅すると言うのも、少々乱暴だし、無謀な感じがする。……判断は君達に任せるけれど、無理をしないで、よろしく頼む」
優希斗の見送りに、灼滅者達は頷き、静かに教室を後にした。
参加者 | |
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伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458) |
ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125) |
森田・供助(月桂杖・d03292) |
文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076) |
海藤・俊輔(べひもす・d07111) |
木元・明莉(楽天日和・d14267) |
榊・拳虎(未完成の拳・d20228) |
冬城・雪歩(高校生ストリートファイター・d27623) |
●
――足柄峠。
とある伝説の由来の地であるその場所に、木元・明莉(楽天日和・d14267) を初めとする、8人の男女が訪れている。
「やり口が巧妙っすなぁ……俺らの印象が悪化しない様にかつ最低限の戦力で恩を着せるっすか」
「うーん、予兆で色々と動いているのは分かるしね。それだけに複雑だけど」
榊・拳虎(未完成の拳・d20228) の呟きに答えたのは冬城・雪歩(高校生ストリートファイター・d27623) 。
「まー、いろんな勢力がいろんなこと企んでるのは確かだよねー。でも、目に見えるところから確実に潰していけばいーんじゃないかなー」
仲間達の会話に、海藤・俊輔(べひもす・d07111) が加わる間に、山の地図を検討し、周囲を確認していた森田・供助(月桂杖・d03292) が錫杖を肩に担ぎ、護摩壇の前で祈祷している僧らしき男の姿を発見した。
「おっ、いたぜ」
雪歩がこの場にいない者達に連絡する間に、明莉が遠目で興味深げに観察を続けていると、其の護摩壇と僧の周囲から白い霧の様な何かが拡散している様に見えた。
恐らく、その靄が人々を遠ざける結界なのだろう、と推測を立てる。
――眷属が近寄らない理由はさっぱりだが。
「まだ、熊は来てないみたいだよ♪」
明莉が思考を進める間に連絡を受けたミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125) が他の者達と一緒にやって来たのに頷きかけ、灼滅者達は祈祷を捧げ続ける空へと近づいた。
●
スレイヤーカードに武装を仕舞い、特に警戒を感じさせない足取りで空へと近づいていくと、8人の気配に気が付いたか、空は一時的に祈祷を止め、此方へと鋭い視線を向けた。
「……灼滅者達、か」
「はい。武蔵坂学園、灼滅者の伊舟城征士郎と申します」
黒鷹をスレイヤーカードに封じたまま、誰よりも丁寧に挨拶をしたのは、 伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458) 。
「俺達には敵意は無い。人的被害回避への配慮、深く感謝しているぜ。しかし、ここでずっと祈祷を捧げているのも、大変じゃないか?」
征士郎の言葉を引き取りつつ謝意を示したのは、文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076) 。
咲哉の問いかけには答えず、空は年若い8人の男女を一瞥する。
敵意を見せぬままに、供助がフラットに空へと問いかけた。
「現状、其方も知っている通り、学園は一般人への被害を避ける為に動いており、今回も危険のある眷属がいると聞き、ここに来ただけで、其方と交戦の意志は無い」
「そうか。お前達も、自分達の務めの為に此処に来た、か。ならば、私もお前達と交戦する意志は無い。数分もすれば奴は来るであろう」
「其方は、封鎖という形をとっている様だが、眷属を倒しても問題は無いか」
「構わぬ」
供助の問いかけに、淡々と頷く空。
「どうして、封鎖という形をとっている?」
「務めだからだ」
質問には、答える様子を見せなかったが。
「奴って言うのは、眷属のことでいーんだよね? ……これって、『獣使い』に対抗してる、ってことでいいのかな?」
「さてな」
仏頂面のまま答える空に、ミカエラがポリポリと頭を掻いた。
「なんの祈祷をして、なにを降臨させるのかな?」
明莉の問いかけに、空は無言で空を見上げた。
「しっかし、こんな手の込んだことをアンタ一人の考えでやっているとは思えないっすけどね」
拳虎が探りを入れるが、空は答えず護摩壇の先を見つめる。
俊輔が、空の見ている方を見て、あー、なるほど、と1つ頷いた。
「そっちから眷属が来るって訳だねー」
「そうだ」
そのまま座り続ける空の様子を見て、明莉がほんの少しだけ苦笑した。
「こんな良い天気の日に、ただそこでじっと座っているだけって、つまらなくないか?」
「務めだ。それに、座って雲の流れを見ているのは、中々風情がある」
「へぇ……そう言う話には反応するんだな」
咲哉の問いかけに首肯する、空。
そのまま会話が途切れ、僅かな間ではあるが、沈黙が訪れた。
ただ、それを不快とは思ってないみたいだねー、と俊輔が空の顔を見ながら思う。
その空の様子に、咲哉やミカエラの心の何処かにある1つの想いが輪郭を帯びて浮かび上がって来た。
自分達とダークネスは相容れない存在とはよく言われる。
けれども、こうして何気ない話をし、僅かではあるが共に時間を過ごすことも出来るのだ。
本当に……共存することは、出来ないのであろうか。
徒然なくそんなことを考えていると、空が、咲哉に声を掛けた。
「かの眷属を殺すこと、俺に質問をしてくること以外に、何か目的があって来たのではないか?」
「ああ……そうだな。頼みがあるんだ」
会話を振られ、咲哉は、自分の懐から手紙を取り出す。
空がその手紙を見て、初めて怪訝そうな表情になった。
「なんだ、それは?」
「……この手紙には、先日の其方からの申し出について、武蔵坂学園側として追加したい条件と同じ内容が書かれている」
咲哉の言葉に、僅かに眼光を鋭くする、空。
「……何故、その様な物を?」
「不安だからだ。依が、正しく俺達の出した条件を、きちんと天海に伝えているかどうか、がな」
咲哉の懸念は最もだろう。
提案を拒絶した際の条件の中には、『闇堕ち灼滅者』の救出機会という依個人にとって不利となる条件も含まれているのだから。
すると……それまで明莉達の問いを聞き流す様にしていた空がそういう事か、と小さく呟いた。
「安心しろ。貴公たちが大僧正様に回答の際に出した条件については、依殿はきちんと伝えている。……信じるも信じないも貴公等の勝手ではあるが、真実だ。……最も、大僧正様が其れについてどう考えていらっしゃるかは、俺の考えの及ぶべくもないがな」
「そうか……」
初めて明快な回答を得られたことに、少しだけ安堵した様に息をつく、咲哉。
「刺青羅刹『依』の天海勢力での地位ってどうなっているのかな?」
「さて、な」
「じゃあさ、空は、依のこと、個人的にどう思っているのかな?」
雪歩が問いかけると、空はほんの少しだけ息をつく。
「……強いて言えば、何を考えているか分からない奴、だな。……そろそろか」
「……あー、来ているねー」
呟くと同時に空が再び祈祷を始めたのを確認し、俊輔が仲間達に警戒を促す。
同時に熊型の眷属が姿を現し、素早く爪を繰り出すが、其れは、護摩壇に触れるよりも先に結界に弾かれた。
「何か嫌なモンでも感じるのか?」
素早く熊を取り囲む陣形を作り上げながら、その様子を観察していた明莉が問いかける。
けれども、それに対する返答は、咆哮によって報われた。
「大僧正様の利に繋がるのでしたら、私達と共闘するのも一手では?」
今回の空の行動が、天海の意志に基づくものでしょう、と推測を立てていた征士郎が、スレイヤーカードから武装を展開しつつ丁寧に問いかける。
しかし、空の反応はない。どうやら、護摩壇と自らの力により、この場を封鎖することで手一杯となっているらしい。
それならば仕方ない、と思いながら、供助が結果を何となく察しながらも、眷属へと問いかけた。
「お前……何処へ行こうとしているんだ? 俺らは、人に危険が及ぶなら、お前を放置できないんだよ」
供助の言葉にも反応する様子を見せずに咆哮する獣の姿を見て、会話は不可能だと確信し、供助達は熊型の眷属へと襲い掛かった。
●
「さーて……行くぜ」
咆哮によって実りのない回答を受け取った供助が、誰よりも早く、ダイダロスベルトを射出する。
射出されたベルトで腕を絡めとられながらも、そのまま鋭い爪を振るい、攻撃を仕掛ける眷属。
だが……。
「誠に申し訳ありませんが、此処で止めさせて頂きます」
黒鷹を解放した征士郎が呟き、その攻撃を受け止めた。
「雪歩様、黒鷹」
「此処から先に進ませるわけには行かないんだよね!」
征士郎の声に応ずるように、雪歩が飛び出し、袖で隠していた盾で強打する。
袖を翻し、仲間達を庇い易い立ち位置を取る雪歩の脇から黒鷹が飛び出し、素手による攻撃を加えた。
「熊って言ったらやっぱり金太郎だよねー」
その間に、誰よりも高く飛び上がった俊輔が、流星の如き速さで蹴りを叩き付け、相手の脳天に一撃を加える。
強烈な蹴りを受け、少々動きを鈍らせつつも、反撃とばかりに牙を光らせ噛みつこうとする眷属を、明莉が無数の弾丸を撃ち出し、目晦ましにすることで阻害した。
踏鞴を踏みながら眷属が2、3歩後退で生まれた隙を見逃さずに征士郎が踏み込み、クルセイドソードで袈裟懸けに切り裂き、自らを聖戦士化させて防御を固める。
「……行くぜ」
指に嵌めた契約の指輪を、日本刀の切っ先に当てて照準を定めて制約の弾丸を撃ち出す咲哉の一撃にその身を貫かれ、軽く体を痺れさせる眷属。
「序盤は攻め攻めで行くよ♪」
癒しの矢で征士郎の傷を癒すミカエラを横目に、拳虎が口元に嬉しそうな笑みを浮かべながら、熊を見つめた。
「『熊殺し』は格闘家の誉れの一つっすからね……良いチャンスっすよ、俺には!」
その身を闇に浸すことで抑えきれない闘志を更に高ぶらせながら、拳虎が音も無く眷属に接近し、鋼鉄拳による強烈な一撃を叩きこむ。
其れは、自らの身に戦神を宿らせようとした眷属の態勢を崩す。
更に俊輔がその足に炎を纏った左右からの2連回し蹴りを叩き込み、それに乗じる様に、雪歩もまた、ロングスカートで軌跡を隠した炎の蹴りを叩き付けた。
「動物相手じゃうちの流派意味ないかなぁ? と思ってたけど、意外と効果あるもんなんだね」
「軌道を隠せば、其れだけ攻撃を読むのは難しくなりますから、その為でしょう、雪歩様」
共に仲間達を庇い易い位置を取っていた征士郎がラビリンスアーマーを彼女に施しながら呟く。
咲哉が日本刀の影から生み出した刃を放ちつことで眷属を締め上げるが、眷属は其れに動じた様子もなく、素早く体を振るうことで無理矢理影を破壊し、そのまま両の爪を交差させ、そして振るった。
「やらせるわけには行かないよな!」
明莉が爆炎の魔力を籠めた弾丸をガトリングガンから撃ち出し、右腕を焼け焦げさせ勢いを弱めるが、それでも力任せに振るわれた爪が、前衛にいた仲間達を斬り裂こうとする。
「雪歩様!」
征士郎の指示に雪歩が素早く俊輔を庇い、征士郎自身がボクシングで学んだ見切りによって辛うじて攻撃を躱しつつも隙を作った拳虎を庇った。
「次、行くよー」
状況を見定めつつ的確に指示を出し、仲間を補助する者の頼もしさを感じつつ、雪歩の影から飛び出した俊輔が体を捻ることで竜巻の様な暴風を起こして思いっきりその体を眷属に叩き付け、更に拳虎が軽やかな足さばきと同時に、ワン、ツーと連続して両の拳を繰り出す。
溜まりに溜まっていた闘気を雷へと変換し、容赦なく連続して殴りつける拳虎の攻撃を止め切れずによろける眷属に供助が接近して、その腕から雷撃を放出し、眷属を締め上げていく。
苦し気に呻く眷属の姿を確認しながら、ミカエラがイエローサインで拳虎達の耐性を強化した。
「まだまだいけるよ、皆♪」
ミカエラの激励に押される様に旧来からの友である咲哉が眷属に接近し、大上段から素早く日本刀を振り下ろして真っ向から切り裂く。
放たれた刃に、牙に傷を負わされつつ、お返しとばかりに咲哉を噛み砕こうとするが、その時には黒鷹がその攻撃を防いでいた。
「ミカエラ様!」
「了解♪」
ミカエラのラビリンスアーマーが、征士郎の傷を癒し、彼の放ったラビリンスアーマーは、黒鷹を癒していた。
その間に、俊輔が左右2連脚による回し蹴りを叩きつけて、負傷を与え、明莉が閃光百裂拳で追撃。
明莉の閃光百裂拳に、眷属が顔・胸・肩を強打され大きくよろけた所に、拳虎が踏み込み左右からのジャブで攻めていく。
拳によって叩きこまれたトラウマによって自らの体を掻き毟る様にしながら、眷属はその腕を黒曜石化させて拳虎に反撃するが、供助が撃ち出したダイダロスベルトがその足を捕え、その動きを妨げた。
その様子を見ながら、雪歩が袖を翻して鋼鉄拳を放ち、眷属の胸を打ち据える。
苦痛から前のめりになる眷属に、黒鷹がポルターガイスト現象による追い打ちを掛けると、眷属は益々苦しげに呻いた。
戦いは連携を重視し、総力を以て当たった灼滅者達に有利に進んだ。
各々が、各々の役割を果たすことで、眷属の側は終始押されている。
故に、10分を過ぎた頃には、眷属は立っているのがやっとの状態に対して、灼滅者達は誰一人欠けることなく、その場に立っていた。
「ガァ……グルァァァァァァ!」
傷だらけになって雄たけびを上げながら、眷属が素早くその腕を振り上げる。
その爪を真っ向から振り下ろすが、俊輔がその攻撃を白羽どっていた。
「そろそろ終わりかなー」
腕を絡めとられて動きを止めた眷属を、すかさず炎を纏った脚で蹴りつける。
一打目は、眷属の足を砕き、二打目が、眷属の腹部を貫いていた。
腕をパッ、と離すと、眷属はそのままフラフラと片足で足取り覚束ない様子で後退していく。
その後退の隙を見逃さず、拳虎が接近し、その場に力を溜め込むようにしゃがみ込んだ。
――そして……。
「『熊殺し』……完了っす!」
高らかな宣言と共に、全身の力を籠めて、体を大きく伸ばしアッパーカット。
叩きつけられたその一撃は、眷属の顎を見事にぶち抜き……。
眷属はそのまま大の字になってグッタリと地面に倒れ……そのまま光の粒子となって消えて行った。
●
「……終わったか」
戦いの一部始終を確認した空が呟き、そのまま護摩壇を担いでくるりと背を向ける。
そんな空を、供助が呼び止めた。
「熊を倒さないのは、他の誰かに、こいつらを留めて置いて欲しいって言われてるからか?」
「……さあな。また、何処かで会うこともあるだろう」
そのまま立ち去ろうとする空に今度はミカエラが呼び掛けた。
「あっ、待って! 空、一般人への対応ありがとうね♪ それから……あたいは修羅も嫌いじゃないけど、共存も楽しいって思ってるからっ♪」
「俺も、だ。……今すぐには無理かもしれないけれど、俺達は共存できるって信じたいんだ」
ミカエラの言葉に頷きながら、咲哉がそう言葉を投げかけると、空は、其れには何も答えず、そのままその場を去って行く。
――その意思を拒絶する様子は無かったけれども。
「さて、皆、帰ろうか。北条も心配しているだろうしね」
出かける直前、雪歩は優希斗にさりげなく約束していた。
――必ず皆で一緒に帰る、と。
「そうですね。そろそろ参りましょうか」
征士郎が雪歩に同意するように頷き、仲間達を促すと、灼滅者達は、そっとその場を後にした。
――この先どうなるか分からないけれども……今は、目的を果たして無事に帰れることを、心から喜びながら。
作者:長野聖夜 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年9月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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