ビバ!!・海オッサン!!

    作者:内山司志雄

    ●『ジェームス・本多』だっつーの
     南国のほうに、夕方になると黄昏の景色がとても絵になる岬がある。
     その岬には、『海オッサン』ないしは『こばやしたろすけ』のでんせつというのが語り継がれているという。
     現地の子供なら、大抵一回くらいは話題に持ち出すわりとポピュラーな都市伝説の類なのだ。
     言い伝えによると、大体こんな感じらしい。
     
     *
     
    「ほんみょう、こばやしたろすけーー!!」
     岬の先っちょで誰かがそう呼ばわる。
     すると、目の前に広がる大海原の底から、バーコード禿げの中年太りなオッサンが赤フンドシスタイルで浮上してくるのだ。
     そして、
    「おれはジェームス・本多だバカヤローッ!」
     と、言って怒られる。
     けれど、オッサンは太っ腹なので、すぐに謝れば許してもらえるとのことだ。
     また、ヒマな時間帯は一緒に遊んでくれたり、いいものを見せてくれることもあるらしいが、オッサンの機嫌が最悪だといきなり殺されることもあるというから、子供達のあいだではちょくちょくネタにされるキャラであると同時に、内心とても恐れられている存在なのだ。
     
     で、じっさいに海オッサンと戯れたことのある子供はいるのかって?
     ……さぁ?
     
    ●まだ海であそべるよ!
    「ねー、みんな、今度の休みに海行ってみない?」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は集まった灼滅者達にそう持ち掛けた。
    「……って言っても、ここに集まってもらったってことは、依頼のついでにって意味なんだけどね」
     都市伝説『海オッサン』の情報を、サイキックアブゾーバーが捉えた。
     今回はこの都市伝説を灼滅してもらいたい。
    「地域の子供たちにはけっこう人気(?)があるみたいなの。敵か味方か、ビミョーな部分もあるんだけれど、殺される人もいるっていうのは、やっぱり見過ごすわけにはいかないよね……。ということで、しっかり灼滅して、その後ついでに海も堪能できたらいいよね!」
     海オッサンを出現させるには、例の岬の先っちょから海に向かって彼の本名を大きな声で呼んでやればよい。
     ちなみに、アイドルタイムに呼び出せば周囲に人も居ないし、オッサンもまあまあヒマを持て余しているのでいきなり殺しにかかってくることは少ないようだ。
    「子供たちにはちょっと申し訳ないけどオッサンそんなに強くはないと思うから、ちゃちゃっとやっつけちゃって、皆でキレイな海を楽しんできたら良いと思うよ。それじゃ、よろしくね!」


    参加者
    神崎・勇人(日々之ナンパ・d00279)
    鈴森・斬火(炎刃狂姫・d00697)
    花澤・千佳(スルツェイ・d02379)
    アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)
    神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・d04335)
    惟住・多季(花環クロマティック・d07127)
    真宮寺・姫奈(小学生神薙使い・d07706)
    ニア・グト(もじもじクイーン・d08367)

    ■リプレイ

    ●みんなで呼ぶよ、せーーの!
    「ほんみょう、こばやしたろすけーー!!」
    「本名こばやしたろすけー! って結構野暮ったい名前ッスよね」
    「おいでなさい! こばやしたろすけ!」
    「こばやしたろすけさーーーーん」
    「こばやしたろすけちゃーーん!」
     灼滅者達は一斉に海に向かって呼び声をあげた。
     ざぱーあん! と白波を立てて海オッサン大登場。
    「いま野暮ったいっつったヤツどいつだあぁぁーーッ!!?」
    「うわああああへんたいだあああああああ」
     突如海底から現れ、髪(微量)を振り乱して怒り狂うフンドシ一丁のオッサンを目の当たりにして、花澤・千佳(スルツェイ・d02379)は思わずさけんだ。
    「……なんで聞こえたッスか!?」
    「バカヤロー!! おれはジェームス・本多だと何度言ったら――」
    「ごめんなさい、ついうっかり間違えちゃって」
     そこですかさず、惟住・多季(花環クロマティック・d07127)はオッサンに謝る。
    「すみませんッス! 今度は気を付けるッス!!」
     神崎・勇人(日々之ナンパ・d00279)も、オッサンのただならぬ気魄に圧されて頭を下げた。
     すると、オッサンは彼らの誠意を感じ取ってくれたのか、穏やかな表情でフンドシをはためかせながら、こくりと頷いた。
    「そうか。……まあ、ちゃんと反省してるようだし、かく言うおれも若い頃は色々やらかしたクチだからな。今回ばかりは大目にみてやるよ」
     ……なんだか話の分かるオッサンだ。
     じつはいいひとかもしれない。都市伝説だけど。
    「許してくれるんですよね、流石です、太っ腹ですね!」
     多季は手を叩きながら、本多のお腹を見て褒めちぎった。
    「よせよ……♪」
    「ねえおっちゃん、なんで本名はダメなの?」
     ニヤける本多に、真宮寺・姫奈(小学生神薙使い・d07706)は素朴な疑問をぶつける。
    「あのなぁ。おれの名前は生まれたときから『ジェームス・本多』だ。なのに、近所の奴らが勝手に本名をこばやしナントカ呼ばわりするからおれは怒るんだぜ?」
    「ふうん」
    「お嬢ちゃんだってよ、勝手に違う名前で呼ばれたら嫌だろう?」
    「うん」
     姫奈はいちおう了解したらしい。
    「けどころしちゃうのはダメダメだよね」
    「そりゃあ、こっちだってボランティアやってるわけじゃねんだ。多少キナ臭い話で盛ってやらないと、世間が食いついて来ないんだよ」
     なんか、急に下世話な話になった。
     都市伝説業界も生き残ってくためには色々大変なのかもしれない。
    「でも、それなりに相手は選んで殺ってるつもりだぜ? たとえばヤクザ(が知り合いに居ない人)とかな。それにな、『危険な香りがするけど実はいい人』ってのが、オトナの世界じゃ一番モテるんだ」
    「?……」
     けれど折角のご高説も、姫奈にはまだ何のことだかよく分からなかった様子。
    「ようするに……ぎせーしゃが出ないうちになんとかしないと、だ!」
     と、姫奈は自分なりに分かり易く解釈し、さっそく霊犬と共に神薙刃で先制攻撃。
    「ちっちゃい子の未来のために倒させてもらうよー!」
     それを見て、攻撃してOKかなと思った千佳も、オッサンのへんたいっぷりにビビりつつ制約の弾丸で攻撃。
    「ねねねんぐのおさめどきだー、かくごしろー」
    「痛てっ! お前ら、おれを誰だと思ってる!?」
     子供にあっさり先手を取られて怒る本多。
    「す……すみませーん! ファンなんですけどー!」
    「えぇ?」
     ニア・グト(もじもじクイーン・d08367)の呼びかけに、本多は怪訝そうな顔で聞き返した。
    「ファンなんですけどー!」
    「あ、私も実はファンだったの。握手して欲しいな」
     ニアに次いでアイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)も、熱っぽい視線を送って本多のファンだと名乗り出た。
    「えぇ……?」
    「ジェームス・本多サン! オレ、あんたの事誤解してたッス! あんたスゲーかっけぇッスよ!」
     勇人もサムズアップしながら興奮ぎみに空の上の本多を仰ぎ見る。
    「おいおい、からかうなよ……」
     本多、唐突な人気ぶりにちょっと本気で戸惑うが……、
    「きゃー! やっぱり本物はカッコいい! 握手してー!」
    「そのりりしいおすがたをおそばでみせてくださーい」
    「サイン下さい!」
    「あ、私も私も!」
    「なんだよ……♪ しょ~おがねーなあ!!」
     あっさり信じて有頂天に昇った♪
    「あ、そうだ。ついでにいいもの見せてあげるよ」
     まんまと口車に乗って地上へ降り立つ本多。
     フンドシをごそごそやりながら、軽い足取りで灼滅者達のもとへやって来る。
     あぶない……。見事にあぶない。
     しかし、声援のかわりに彼がそこで浴びたものは、なんと――!!

    ●\おっさん!/
    「きゃぴたア~~~ん☆!!!」
     ナゾの掛け声と共にいきなり本多大ダメージ。
     鈴森・斬火(炎刃狂姫・d00697)のレーヴァテインが真っ向から本多を斬り付け、勢い良く火柱を立てる。
    「これぞまさに、飛んで火に入る夏の虫ね!」
     燃えるような赤髪を逆立たせて神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・d04335)のガトリングが火を噴く。そして本多のカラダは早くも真っ赤っか。
    「変なもの見せないで下さい! 警察よびますよ」
    「いいものだって言ってるでしょーが!」
    「『いいもの』ってどう考えても『良い物』じゃないッスよね!?」
    「そういうの……よくないですよ……!」
    「あ、手が滑っちゃった」
     アイティアの袖が滑ったいきおいでぱんぱんに膨らみ、本多の頭上に降り注ぐ。ずごおーん!!
    「そゎそんヌぶッ!!」
    「てんばつてきめーん」
     お次は、千佳のジャッジメントレイ。
     ここぞとばかりに群がる灼滅者軍団によって、早くも本多はボッコボコです。
     それでもクラッシャーのふたりに『いいもの』を間近で見せてあげたい親切心で近付こうとする本多。フンドシもぞもぞ……。
    「んなモン女の子に見せんなッス!」
    「痛い、痛い、痛い、痛い!!」
    「逃がさねッス!」
     スパスパっと閃く勇人の太刀筋を、本多はヒイヒイ言いながらなんとかかわした。
    「お、お前らおれをころす気かっ!!」
     命からがら空中へ逃げ出す本多。
     フンドシの切れ端がヒラヒラと風に散っていった。
     ……けっきょく、『いいもの』は見せてあげられず。
    「ごめんなさい、私たちの中のダークネスがついやんちゃしちゃって……」
     などと、アイティアはうそぶいてみる。
    「わざとじゃないの、ごめんなさい」
     アイティアは、てへぺろ☆とばかりに舌をだして肩をすくめてみせた。
    「なんだよぅ……ビックリしちゃっただろ。おれこう見えてそういう冗談ニガテなんだからさ~ぁ……カンベンしてよ」
     ゼェハァいいながら、すでに弱気な都市伝説……。
     お前がビビらさんでどうするよ?
    「ところで、オッサンは毎日何してるんでしょうか?」
     多季がしれっと話題を変えた。
    「そりゃお前、仕事だよ一応……」
     本多は乱れた髪(微量)を整え直しながら答えた。
    「本多さんおしごとなにしてるのー」
    「あぁ、おれ? 高級ホテルの料理長やってる。今日はたまたまオフで」
    「へえー、おっさんすごい」
     いや、ウソだから。
     ていうかこのひとじたいがただの都市伝説ですから。
    「ケヘっ、そぉんな大した事ねーよ……♪ よかったらこんど食べに来いよ。奢ってやるから!」
     褒められるとすぐ嬉しくなっちゃう本多。
    「ついでに何歳ですか? 趣味は何ですか?」
    「趣味は、まあ……ホームパーティかな。歳は永遠の23才で、君らよりちょ~っとだけ、お・2ィ3。なんちって☆ がはははっ♪」

     【氷】。

    「あ、前髪が凍りました」
    「暖めましょうか」
     斬火はオッサンにバニシングフレアをくべた。
    「……熱ぢぃぃいっ!!」
    「おおおよく燃えるッス!」
    「ふんどし、またみじかくなった」
     灼滅者達は攻撃を再開。
     アイティアの翳すロッドから閃光がほとばしり、電撃となって本多のバーコード頭を直撃する。
    「おおおぅぅうィ!! お、お嬢ちゃんたち……年上はちゃんと敬わないとダメじゃないかっ!」
    「まあ、うん、ほら、あれだよ。一応都市伝説だし、もしかしたら人が死ぬかもしれないなら、やっぱりちゃんとやっつけないといけないような気がしなくもないよね」
     棒読み口調のアイティアがちょっとコワイ……。
    「そっそうだ、アメちゃんやるから! なっ!?」
     アメで子供を釣る作戦。オッサンそろそろHPヤバイらしいぞ。
    「ほらほら、いくぞアメちゃん! そ~れっ♪」
     ぽーい。
    「うわっ、なによこれ!」
    「ぎにゃーーっ!!!」
     本多が投げて寄越したのはアメなんかではなくて、ゲジゲジやらミミズといったうごめく虫たちだった。
    「ひゃ、ぁ……んっ!」
     服の中に入り込んだ虫の感触に悲鳴をあげる焔やニア。
     それを見て大喜びの本多。
    「くひょひょひょひょひょーっ♪ 見たか必殺! アメとムシ☆パラダイス攻撃じゃ~♪」
     予想以上の決まり具合に興奮しすぎて、本多は斬火にロックオンされてることに気が付いていない。
    「都市伝説なんて、大概が蓋を開けたら大したものでもないのが相場だけど……」
     その更に下を行っていたわ……と、斬火は溜息まじりに呟いた。
    「……絶対にコロス!」
     焔が涙を浮かべた目で殺気を漲らせ、本多を睨め上げブレイジングバースト。
    「はっひゃひゃひゃひゃっ♪ おー愉快♪」
     調子付いた本多にもう怖いものは無くなった。けれども……。
    「おっちゃん」
     小躍りする本多を、姫奈が呼んだ。
    「なんだ、お嬢ちゃんもパラダイス☆して欲しいのか?」
     姫奈はふるふると頭を振って本多を指差す。
    「ふんどし、なくなっちゃうよ」
    「ん?」
     ――ッボボォウ!!
    「ギゃあああぁぁあッ!!?」
     フンドシの前垂れはあたかもHPゲージだったかの如く、燃え尽きた瞬間にオッサンは爆散し、あっけなく終わってしまった。
     けっきょく、オッサンの見せたかった『いいもの』って、何だったんだろう。
    「オッサン…さようなら……」
    「おっさーん」
     少女達の呼び声はむなしく海にかき消える。

     ところで、
     一説によれば、海オッサンは世界中に存在し、今なお各地で語り草になっているとも云われている。今回の事件は、数ある『海オッサン伝説』の中の、ほんの一部にすぎなかったのかもしれない……。
     信じる信じないはアナタ次第です。

    ●\うみ!/
     見事なハーレム……しかも、海!
    「これはテンションあがらない方がおかしいッス!」
     勇人は水着に着替えて砂浜へ降りてきた女子達を、存分に堪能させてもらうことに!
    「あ、あまりジロジロ見ないでください……」
     戦闘時の勇ましさとは対照的に、スク水着用で勇人の前に現れた斬火は歯切れの悪い声でそう言いながら恥ずかしそうにしていた。
    「わぁ~、超楽しみ!」
     同じくスク水姿のアイティアは、斬火の背中を急かすように押しながら砂浜へ駆けていった。
    「スク水は、見慣れてるからこそ良いッス!」
     焔は青地にホワイトラインの入ったセパレート。赤い髪との対比が目を引き、豊満な体型をさらに引き立てていた。
    「なんだかドキドキするッスね……」
     ツインテールに大きな瞳が自慢の多季は、可愛らしいワンピース水着が女の子女の子して似合っている。
    「清楚な感じが良いッス!」
     勇人は女の子達の水着姿を一人ずつ褒めまくる。
     姫奈の水着はフリルとリボンのついたピンクのワンピース。小一らしいキュートな姿だ。
    「そうだ、海の家あるなら美味しいの食べたいな♪」
     早くも食にはしる六歳児。
    「ヒナ、育ち盛りだから!」
     加えて、最近覚えた言い訳をここでも遺憾なく発揮。
    「燃料と食材は買ってきてあるからBBQでもどう?」
    「するー!」
     焔が提案すると、姫奈は一気に目を輝かせた。
    「海! 海ーー!」
     ニアは生まれて初めての海ということではりきっている。が、用意した水着がちょっぴり過激すぎる露出度だったことを知り、内気な彼女はショックを受けた。どれくらい過激だったかというと、さすがの勇人も目のやり場に困ってしまうほどだ。
     けれど、せっかくの初海体験だ。一時の恥ずかしさもなんのその。
    「ニアさん、すいかはやくはやく!」
     千佳にとっても海は初めてだった。それどころか、天涯孤独の身で育った彼女にとって、こうして仲間と共に過ごす時間そのものが、貴重な体験でもあった。
     とととと走っていって水の中へダイヴ!
    「ぶぇ、くちにはいった、しょっぱい」
     初めて味わう海。
     海の青さ。美しさ。友達と一緒に居ることの素晴らしさ。
     小さな胸のなかの風景に、その一瞬一瞬を写し取りながら、千佳は自分の心の内にねむっていた沢山の気持ちを知った。
    「きれい」
     てのひらに乗せた虹色に光るきれいな貝殻。たからものにしようと決めて、いっぱい集めた。

    「スイカもってきましたーー!」
     ニアが持参してくれたので、みんなでスイカ割り対決~♪
     一番手に千佳が挑戦。
    「とりゃー」
     ぽこんっ、と見事にヒットしたけど硬くて割れず。
    「もっと右~、ちがう、右だってば~!」
     二番手の斬火は姫奈が一所懸命誘導してくれたものの、自分視点で言う姫奈と方角があべこべになってしまい、惜しくも外れ。
     三番手、ニア。チェーンソー剣を持ち出して勝ち誇った笑みを見せたが、
    「右斜め前27度ですよー」
    「後ろ後ろ!」
    「いや、横ッス!」
     ニアは多季や他のメンバーが言う出鱈目にもてあそばされ、何も無いところを切りつけていた。
    「スイカ割り楽しいね♪」
     無邪気に笑う姫奈。スイカはまだ健在だ。
    「やっとオレの出番が来たッス……」
     すっくと立ち上がり、棒を手にする勇人。
     目隠しをして、ぐるぐる回され、いざ!
     ワイワイと外野が捲くし立てる中、勇人はゆっくりと棒を振り被った――。
     ここで見事に割ることが出来れば君はヒーローだ。
     勇人がクルリと向きを変えた。
    「そこッスーっ!!」
     ばんっ!
    「………」
     残念ハズレ。

     そんなこんなで二巡くらいしたあと、焔がバッチリ割ってくれてスイカ割りは無事終了。
    「おいしい。えへへ」
     いびつなスイカの破片にかぶり付いて笑う千佳。
    「かえったらね、きょうのこと、みんなのこと、たくさん絵にかくんだ」
     千佳はお絵かきが得意なのだ。
     今日の出来事はきっと良い絵に仕上がるだろう。
    「描けたら私にもみせてよ!」
     アイティアからのお願いに、千佳は照れくさそうに頷いた。
    「次はビーチボールでも遊ぶ~」
    「よーし、今度こそカッコ良く決めてイイ所見せるッスよ!」
     風に遊ばれ宙を舞うビーチボールを追いかけて、八人は砂浜を右へ左へ飛び跳ねた。
    「はいトス!」
    「トス~」
    「い……いきます……!」

     徐々に黄昏てゆく空が、夏の終わりの近いことを予感させる。
     美しいひと夏の思い出に、ワケの分からないオッサンの記憶が同居してしまうのはいささか心外といえば心外だけれども、楽しい思い出はたしかに、彼らが内包する闇をほんのひと時でも優しく溶かしてくれたにちがいない。
     

    作者:内山司志雄 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 13
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